消防点検コラム

消防法

2023.07.26

消防法の防炎規制とは?対象となる種類や設置基準を解説

みなさんは高層階ホテルなどの客室に付いているカーテンに「防炎」と書かれたラベルが貼り付けられているのを見たことはありませんか?

カーテン以外にも、カーペット、シャワーカーテン、さらには建物内の暖簾(のれん)などに同様のラベルが付いているのを見たことがあるかもしれません。

実は、これらは消防法で規定されている「防炎規制」を満たした防炎物品と呼ばれる特殊な物で、法律で様々な規定がされています。

この記事では「消防法の防炎規制」の内容をはじめ、防炎物品の種類や設置基準、さらにはどうやって購入すればいいのかなど、消防点検のプロが初心者にもわかりやすく解説します。


【目次】

1. 消防法の防炎規制とは
2. 防炎物品の見分け方
3. 消防法で防炎規制の対象になっている防炎対象物品
4. 消防法の防炎規制の設置基準
5. 消防法の防炎規制を満たす製品は登録業者を利用すること
6. まとめ

1. 消防法の防炎規制とは

消防法の防炎規制とは、高層建築物や地下街などを主な対象とし、火災が発生した際に人命被害が大きくなることを防ぐ目的で、防炎性能を有する防炎物品の使用を義務付けた規制のことです。

具体的には、防炎規制の対象となる防火対象物(高層ビルや地下街等)で使用される、カーテンや絨毯(じゅうたん)、展示用の合板などが規制の対象になります。

万が一、これらの設備に火がついてしまうと、火が立ち昇るようにして天井や周辺に急速に拡大することが懸念されます。

この結果、不特定多数の人が出入りしやすい、高層ビルや地下街は瞬時に危険な場所となり、避難が困難になる可能性があります。

このような事態を招かないために、消防法の防炎規制が制定され、消防法の改正毎に強化されるようにして、今日に至ります。

消防法の防炎規制が強化されてきた背景

消防法の防炎規制は、1948年に規制された東京都の条例が原型とされています。当初の規定内容は「公衆集合所において可燃性装飾用材料を使用する場合は、有効な不燃剤で処理しなければならない」というもので、現在のように具体的な物品を指定するような細かな規定はありませんでした。

その後、アメリカ進駐軍施設の内装仕様に倣うようにして、1951年に防炎規制が消防法に組み込まれています。

昭和30年代には、明治座火災や東京宝塚劇場火災といった火災事故で、舞台の幕類や緞帳(どんちょう)などにも着火した火災が相次いだため、緞帳も防炎規制の対象になりました。

昭和40年代には、川崎市金井ビル火災や磐梯熱海温泉磐光ホテル火災などを教訓に、絨毯(カーペット)やカーテンも防炎規制の対象になっています。

このように、消防法の防炎規制が強化されてきた背景には、建物内にある絨毯やカーテンといった布製品等が火災被害を拡大した原因となり、多数の犠牲者が生じた悲惨な事故がある訳です。

 

2. 防炎物品の見分け方

消防法の防炎規制を満たしている物は「防炎物品」と呼ばれ、それが防炎物品であるかどうかは「防炎ラベル」の有無で見分けられます。

防炎物品であるかどうかは、製品の見た目や感触だけでは判別できません。公益財団法人日本防炎協会が発行する防炎ラベルを、製品を販売する企業が同協会の認定を受けたうえで購入し、製品に縫い付ける仕組みになっています。

例えば、カーテンはカーテンレール通しの隅や、製品タグなどと一緒に、赤文字で「防炎」と書かれたラベルが縫い付けられています。

カーペットの場合は、目立ちにくい角部分などにラベルが貼り付けられていたり、清掃などで容易に剥がれてしまわないよう、透明のプラスチックカバーで留められたりしています。

ちなみに、防炎ラベル1枚の価格は、カーテン1枚当たり33円ですが、そのカーテンが水洗い洗濯およびドライクリーニングに対応した製品の場合、防炎ラベルをもらう際の認定試験に48,600円かかります。

防炎規制を満たした製品を販売しようとする企業は、防炎ラベルの入手が不可欠で、防炎ラベルを入手するには認定申請料などを払って認定業者になること、そして製品試験に合格する必要があり、これら一連の流れはすべて公益財団法人日本防炎協会の独占業務になっています。

防炎物品にするための防炎加工

消防法の防炎規制を知らない人や企業のなかには、防炎規制の対象建物であるのにもかかわらず、防炎物品を使用していないケースもあることでしょう。

例えば、地上31メートルを超える高層ビルに入居しているテナントが、防炎ラベルが付いていない(防炎性能が認められていない)カーテンを使用していたり、地下街に入っているテナントが防炎性能がないカーペットを使っていたりするようなケースです。

このような場合、悪意の有無や、うっかりミスなどは考慮されず、消防法に違反しているため、速やかに改善しなければいけません。

対応としては、カーテンやカーペットなどを取り替えることが前提となりますが「防炎加工」というサービスを利用すれば対処できるかもしれません。

防炎加工サービスとは、既存のカーテンやカーペットなどに後付けで防炎加工を施す技術で、防炎加工を終えた後は、防炎ラベルを貼ってもらうことも可能です。

つまり、防炎規制対象外の物品であっても、後から防炎性能を持たすことが可能であるため、このような方法があることを知っておくと役に立つかもしれません。

防炎加工を依頼する際は、消防庁防炎表示者登録番号を明示している業者を利用するようにしましょう。

3. 消防法で防炎規制の対象になっている防炎対象物品

消防法の防炎規制では、以下の物が防炎対象物品として対象になっています。

・カーテン
・布製のブラインド
・絨毯、カーペット等(2平方メートル以下の物は除く)
・展示用合板や掲示板
・舞台において使用する幕、水引、袖幕、大道具用の合板
・暗幕や緞帳
・工事用シート

4. 消防法の防炎規制の設置基準

消防法の防炎規制は、原則として以下の防火対象物が該当します。

・高さ31メートルを超える高層建築物
・地下街(地下の工作物内に設けられた店舗、事務所その他これらに類する施設で、連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道とを合わせたもの)
・劇場、映画館、演芸場、観覧場
・公会堂又は集会場
・キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの
・遊技場又はダンスホール
・性風俗関連特殊営業を営む店舗
・カラオケボックス
・料理店、飲食店
・百貨店、マーケット、物品販売店
・旅館、ホテル、宿泊所
・病院、老人ホーム等
・公衆浴場
・映画およびテレビスタジオ など

このように、上記に該当する防火対象物の場合、防炎規制を満たした防炎物品を使用しなければいけません。

なお、正しく防炎物品を使用しているかどうかは、消防設備点検や防火対象物定期点検報告といった、消防法で規定された点検の際に確認されますので、気を付けましょう。

参考:防炎の知識と実際(P.7-9)、消防庁

5. 消防法の防炎規制を満たす製品は登録業者を利用すること

先述したように、消防法の防炎規制は、対象となる防火対象物で使用することが義務付けられています。

防炎物品を使用する場合において気を付けたい点は、防炎ラベルが付いている製品を使用すること、そしてそれらの物品は公益財団法人日本防炎協会に登録している登録業者から購入することが挙げられます。

防炎ラベルが付いている製品だからと言って、必ずしも防炎性能があるとは限りません。その理由は、防炎ラベルの品目間流用(本来の製品とは違う物に流用する不正行為)や、防炎ラベルの偽造の可能性が否定できないためです。

仮に、防炎性能が基準に満たない物を使用してしまった場合、それを利用した者がコストを負担して交換や付け替えといった責任を負うことになることから、慎重に対応しなければいけません。

このような事態を回避するためにも、防炎ラベルに記載されている登録番号を確認するようにしましょう。

防炎ラベルに記載されている登録番号は、大文字のアルファベットと数字の組み合わせです。(例:E-999555)

アルファベット部分で「業種カテゴリー」が判別できますので、参考までに知っておくことをおすすめします。

・A:製造業者
・B:合板の製造、防炎処理業者
・C:防炎処理業者
・D:防炎処理業者(吹付け)
・E:裁断、加工、縫製業者
・F:輸入業者

防炎規定を満たしているかどうかの判定

消防法の防炎規制を順守しているかどうかは、年に1回の頻度で実施される「防火対象物定期点検報告」または「消防設備点検」などの際に確認されます。

とくに、防火対象物定期点検報告では、点検項目のひとつに「カーテンなどが防炎性能を有する物かの確認」という項目がありますので注意しましょう。

ちなみに、年1回の防火対象物定期点検報告は、防炎物品を使用しなければいけない建物の多くが実施義務の対象に該当すると考えてよいでしょう。

仮に、防炎物品が使用されていないことが発覚し、改善されないような場合は、30万円以下の罰金や拘留の罰則対象になりますので気を付けてください。

参考:防火対象物定期点検報告の要件や対象物件をまとめて解説

6. まとめ

消防法の防炎規制は、主に高層建築物や地下街といった不特定多数の人が多く出入りするような場所で、カーテンやカーペットなどに防炎物品を使用しなければいけないというものです。

防炎物品であるかどうかは、各製品に防炎ラベルが付いているかどうかで判断可能で、規定に見合った物が使われているかどうかは、年に1回の防火対象物定期点検報告などでチェックされます。

罰則規定を伴う規則ですので、防火管理者や建物の管理者は、あらかじめ消防設備点検のプロに相談することをおすすめします。

 

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