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防火対象物定期点検報告(消防法第8条の2の2)の要件や対象物件をまとめて解説|全国消防点検.com 防火対象物定期点検報告(消防法第8条の2の2)の要件や対象物件をまとめて解説 – 全国消防点検.com

消防点検コラム

COLUMN

2023.02.22

防火対象物定期点検報告(消防法第8条の2の2)の要件や対象物件をまとめて解説

「防火対象物定期点検って何をするの?」や「防火対象物定期点検と消防設備点検は違いがあるの?」と思ったことがある人は多いのではないでしょうか。

防火対象物定期点検報告は消防法第8条の2の2によって義務付けられており、点検の対象となる建物の場合は避けて通れないことです。

一方で、防火対象物定期点検報告は消防設備点検(消防用設備等点検報告制度)と混同しやすく、うっかり対応を忘れてしまうこともあります。

この記事では、防火対象物定期点検報告について、制度の要件や基準、さらには点検の対象となる建物一覧などを初心者にもわかりやすく解説します。

防火対象物定期点検報告制度とは

防火対象物定期点検報告制度に関して理解しておきたいことを項目ごとに解説します。

目的や趣旨

防火対象物定期点検報告とは、対象の建物防火管理が正常かつ円滑に実施されているかどうかや、定められた防火基準を満たしているかどうかといったことを目的にした一連の点検作業のことです。

具体的には、防火管理者の選任有無や避難訓練の実施有無、防火戸や避難経路に障害物が置かれていないかといったことを点検し、報告書にまとめたうえで管轄の消防署長に提出します。

防火対象物定期点検報告はすべての建物が対象になる訳ではありません。後述する「防火対象物定期点検報告制度の対象となる防火対象物一覧」に該当する場合のみ義務が生じます。

防火対象物点検報告制度が導入されたことで、一定条件を満たす防火対象物(ビル・マンション等の建物)の管理について権原を有する者(所有者、借受人等)は、年1回の有資格者(防火対象物点検資格者)による点検と報告が義務づけられました。

防火対象物定期点検報告制度については、どのような点検項目があるのかといったこと以外にも、管理している建物が点検義務の対象になるかどうかも合わせて理解しておかなければいけません。

また「消防設備点検」と混同しやすく、勘違いや失念も起こりやすい制度のため、建物管理者や防災管理者は注意すべき制度と言えます。

参考:消防法第八条の二の二

要件や基準

防火対象物定期点検は原則として以下の要件が定められています。

・収容人員が300名以上のすべての建物
・収容人員が30名以上300名未満の建物で、なおかつ特定用途部分が地階または3階以上に存するもの(避難階は除く)
・収容人員が30名以上300名未満の建物で、階段がひとつのもの(屋外に設けられた階段等であれば免除)

要件に関する基本的な考え方としては「収容人員」と「建物の用途」が基準になっています。とくに、百貨店、遊技場、映画館、病院、老人福祉施設といった火災発生時の人命危険が高い用途の建物は要件が厳しく設定されています。

一方、収容人員が30名未満の建物は防火対象物定期点検の対象外となります。

消防設備点検との違い

防火対象物定期点検と消防用設備点検の違いは点検の対象です。具体的には、防火対象物定期点検は防火基準の適否といったソフト面の点検が中心であるのに対し、消防用設備点検は消防設備の設置、消火設備や動作確認といったハード面の点検が中心です。

防火対象物定期点検と消防用設備点検はまったく別の制度であり、建物の規模や用途に応じて、両方の点検が義務付けられることもあります。

義務化された背景

防火対象物定期点検は要件に当てはまる場合は義務となります。この制度が義務化された背景には、平成13年に新宿歌舞伎町で発生した新宿区歌舞伎町ビル火災で小規模な雑居ビルなのに対し、44名が死亡するという大惨事となりました。

この火災現場では、避難経路だった階段付近に大量の障害物が置かれていたことや、消防設備の点検が実施されていなかったこと、さらには避難訓練も実施されていなかったことが明らかになりました。

これを受け、避難経路に障害物が置かれていないかどうかや、避難訓練の実施有無といったことを点検および報告する防火対象物定期点検が義務化されています。

主な点検項目

防火対象物定期点検における主な点検項目は以下のようなものがあります。

・防火管理者選任の有無
・防火扉や避難階段といった避難経路上に障害物が置かれていないかの確認
・避難訓練の実施有無
・カーテンなどが防炎性能を有する物かの確認
・消防法令に沿った消防設備等の設置確認

点検および報告の頻度

防火対象物定期点検は年に1回実施しなければいけません。また、点検した内容を報告書にまとめたうえで管轄の消防署長宛てに報告する必要があります。

詳しくは後述しますが「特例認定」を受けた建物の場合は、防火対象物定期点検が最大3年間を限度にして免除されます。

罰則規定

防火対象物定期点検を未実施または虚偽報告をおこなった場合、30万円以下の罰金または拘留の罰則規定が定められています。

また、点検を怠った法人に対しても30万円以下の罰金が科せられるため注意しましょう。

点検する者の資格

防火対象物定期点検は「防火対象点検資格者」の有資格者が実施しなければいけません。防火対象点検資格者は、火災予防や消防防災分野で一定期間の実務経験を有する者で、登録講習機関による講習を修了することで免状が交付されます。

例えば、消防設備士や消防設備点検資格者、防火管理者の有資格者は3年以上の実務経験、一級建築士や二級建築士、建築設備士は5年以上の実務経験、市町村の消防団員は8年以上の実務経験が求められます。

消防設備点検と比較すると点検項目が容易に見えるため、誰でも点検できると思いがちですが、防火対象物点検資格者が実施しなければいけないことを覚えておきましょう。

表示制度

防火対象物定期点検で管轄の消防署長から適合の判定を受けた場合「防火基準点検済証」または「防火優良認定証」が交付されます。

基本的には「防火基準点検済証」が用いられますが、3年連続で適合判定を受け、なおかつ申請が許可されれば「防火優良認定証」が交付され、以降3年間は防火対象物定期点検が免除される仕組みです。

特例認定

防火対象物定期点検において3年連続で適合判定を受けた場合、管轄の消防署長に「特例認定」の申請が可能になります。

特例認定の申請が認められると防火対象物定期点検が3年間免除されます。これを証明するのが先述した「防火優良認定証」です。

費用

防火対象物定期点検にかかる費用の相場は20,000円から100,000円とされています。防火対象物の大きさや用途、管理権原者(テナント)の数によって、費用は変わってきます。

防火対象物定期点検は原則として消防設備の交換や動作確認といった作業を伴わないことから、点検サービスを提供する企業の多くは「建物の規模(床面積)」で料金を区分けしています。

防火対象物定期点検報告の流れ

防火対象物定期点検報告の流れは以下の通りです。

1.点検の依頼
2.点検の実施および報告書作成
3.報告書の提出
4.点検済証または認定証の交付

はじめに、建物管理者は防火対象物点検資格者または防火対象物点検資格者がいる会社に点検を依頼することから始まります。

その後は防火対象物点検資格者による点検を実施、そして報告書を作成し、管轄の消防署長宛てに報告書を提出します。

おおよそ1週間から2週間で点検済証または認定証が交付される流れになっています。仮に、消防署から指摘や指導を受けた場合はその都度対応する必要がありますが、消防設備点検と異なり、大掛かりな改善作業や投資が求められることは少ないでしょう。

防火対象物定期点検報告の対象となる防火対象物一覧

防火対象物定期点検報告の対象となる防火対象物は以下の通りです。

防火対象物の種類収容人員

(防火対象物)

収容人員

(特定1階段等<※1>)

延床面積消防長の指定

<※2>

点検結果報告特定防火対象物
劇場、映画館、演芸場又は観覧場300人以上30人以上年1回
公会堂又は集会場300人以上30人以上年1回
キャバレー、カフェー、ナイトクラブの類300人以上30人以上年1回
遊技場又はダンスホール300人以上30人以上年1回
カラオケボックス、漫画喫茶、ネットカフェ、テレフォンクラブ、個室ビデオ等300人以上30人以上1000㎡以上年1回
待合、料理店の類300人以上30人以上年1回
飲食店300人以上30人以上年1回
百貨店、マーケットその他の物品販売を営む店舗又は展示場300人以上30人以上年1回
旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの300人以上30人以上年1回
寄宿舎、下宿又は共同住宅1000㎡以上3年に1回
病院、診療所、助産所等300人以上30人以上年1回
非難困難要介護者・重症者が入所する社会福祉施設等300人以上30人以上年1回
介護を要さない方の入所する社会福祉施設等

または要介護者の通所する社会福祉施設等

300人以上30人以上1000㎡以上年1回
幼稚園、特別支援学校300人以上30人以上年1回
小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、高等専門学校、

大学、専修学校、各種学校の類

1000㎡以上3年に1回
図書館、博物館、美術館の類1000㎡以上3年に1回
公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場の類300人以上30人以上年1回
上の公衆浴場以外の公衆浴場1000㎡以上3年に1回
車両の停車場又は船舶若しくは航空機の発着場1000㎡以上3年に1回
神社、寺院、教会の類1000㎡以上3年に1回
工場又は作業場1000㎡以上3年に1回
映画スタジオ又はテレビスタジオ1000㎡以上3年に1回
自動車車庫、駐車場1000㎡以上3年に1回
飛行機又は回転翼航空機の格納庫1000㎡以上3年に1回
倉庫1000㎡以上3年に1回
前各号に該当しない事業場(事務所など)1000㎡以上3年に1回
複合用途防火対象物のうち、

特定防火対象物の用途に供される部分が存在するもの

300人以上30人以上1000㎡以上年1回
複合用途防火対象物のうち上に掲げる防火対象物以外のもの1000㎡以上3年に1回
地下街300人以上30人以上1000㎡以上年1回
準地下街300人以上30人以上1000㎡以上年1回
文化財保護法の規定により重要文化財、重要有形民俗文化財、

史跡若しくは重要な文化財として指定され、

又は旧重要美術品等の保存に関する法律の規定によって

重要美術品として認定された建造物

1000㎡以上3年に1回
延長50メートル以上のアーケード1000㎡以上3年に1回

※1)特定1階段等防火対象物とは、地下階または3階以上に特定用途部分があり、かつ屋内階段が1つしかない建物のことです。

※2)延床面積1000㎡のうち、消防長が指定するもの。

まとめ

防火対象物定期点検報告は、要件に当てはまる場合は必ず実施しなければいけません。また、実施にあたり防火対象点検資格者の有資格者が実施する必要があり、罰則規定も伴います。

建物管理者や防災管理者は防火対象物定期点検報告の対応を忘れることがないよう日頃から注意するようにしてください。

 

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