消防点検コラム

消防法

2023.07.26

消防法の避難器具とは?種類や設置基準について解説

消防法の避難器具にはどんな種類があるの?や、消防法の避難器具は複雑な設置基準があるって本当?と疑問を持ったことがある人は多いと思います。

消防法で規定されている避難器具には、避難はしごや緩降機(かんこうき)、さらには避難ロープなどがありますが、これらは建物の用途や収納人員によって設置基準が変わるため、理解するのはとても難しいとされています。

消防法の避難器具については、消防設備士第5類(甲種および乙種)で専門的に扱われており、その理解の難しさや複雑さを示しています。

そこでこの記事では「消防法の避難器具」に関して、その種類や設置基準、知っておきたいことなどについて、消防設備点検のプロが初心者にもわかりやすく解説します。

消防法の避難器具とは

消防法の避難器具とは、消防法で規定(厳密には消防庁告示)された消防設備のことで、火災時に人が避難するために使用することを目的にしています。

具体的な避難器具としては、避難はしごや緩降機などが挙げられますが、この他にも、滑り台や避難橋、すべり棒など、日常的に触れる機会が少ない物などもあります。

規定外ではありますが、誘導灯・標識は非常口の位置や避難の方向を示すもので、照明装置が付いた誘導灯と、照明装置が付いていない誘導標識に分けられます。

消防法で規定されている避難器具は合計8種類あり、それらは建物の用途、収容人員、そして階数などによって設置基準が異なります。

建物の用途、収容人員、そして階数の複雑な組み合わせによって、設置すべき避難器具が決まるため、避難器具それぞれの特徴と合わせて、設置基準の正しい知識を身に付けておくことが求められます。

避難器具の種類

消防法で規定されている避難器具は合計8種類です。

・避難はしご
・緩降機
・救助袋
・滑り台
・避難用タラップ
・避難橋
・避難ロープ
・すべり棒

上記8種類の避難器具について、それぞれの特徴や用途、目的について解説します。

避難はしご

消防法の避難器具で最も代表的な存在と言えるのが「避難はしご」でしょう。避難はしごは、建物の上階から下階へ避難するために使用するもので、マンションのような集合住宅などでは、バルコニーに開閉式の蓋が設置してあるため、見たことがある人も多いと思います。

避難はしごの種類は様々で、その素材は樹脂製や金属製の物、設置方法は固定式の物もあれば、吊り下げ式、ハッチ格納式などがあり、いずれも消防法で規定された基準を満たす必要があります。

昨今では、収納場所で幅を取らない吊り下げ式やハッチ格納式の避難はしごが多く見られますが、それぞれで使用方法が異なることに注意が必要です。

緩降機

「緩降機」も消防法で規定されている避難器具の代表的な存在です。緩降機とは、上階から下階へ降下避難することを目的にした避難器具で、体にロープを括り付けるようにして、自重によって一定速度で降下します。

一般的な緩降機は、調速器、調速器の連結部、ロープ、そして着用具で構成されており、いずれも消防法で規定されている基準を満たしている必要があります。

降下中の姿に恐怖感を覚える人もいるかもしれませんが、使用者の体重にかかわらず降下時の速度は一定で、着地時のショックもないよう工夫されており、有事の際でも円滑に避難を実現します。

救助袋

消防法で規定されている避難器具には「救助袋」もあります。救助袋は、筒状の袋の中を滑るようにして降下避難する物で、建物から斜めに滑り降りる「斜降式救助袋」と、垂直方向に螺旋状に滑るようにして降りる「垂直式救助袋」の2種類に分けられます。

救助袋は「袋に包まれた滑り台」のような物を想像するとよいでしょう。設置するには一定のスペースを設ける必要があるため、学校などに多く設置してあります。

すべり台

「すべり台」も消防法で規定されている避難器具のひとつです。すべり台は、一般的な公園にあるようなすべり台みたいなもので、消防法では「勾配のある直線状又はらせん状の固定された滑り面を滑り降りるものをいう」と規定されています。

避難はしごや緩降機、救助袋などと比較すると、短時間で多くの人が避難できるため、収容人員が多い病院や学校、幼稚園など防火対象物に設置されることが多いようです。

避難用タラップ

消防法の避難器具には「避難用タラップ」も含まれます。避難用タラップとは、手すりが付いている階段状のはしごのことで、安定した姿勢で、より安全に降下避難することが可能とされています。(客船などに乗り込む際のタラップに共通している)

一方で、避難用タラップは設置場所が限られることから、近年ではあまり見かけることがない避難器具のひとつです。

避難橋

「避難橋」も消防法に規定される避難器具です。避難橋は「建築物相互を連絡する橋状のものをいう」とあり、当該建物の屋上などから、隣接する建物に避難することを目的にした避難器具と言えます。

避難はしごや緩降機のように、垂直方向への避難とは対照的で、横方向への避難を実現する物ですが、避難先となる建物の許可や、必ずしも隣接する建物が同じ高さでないことが多いため、設置することは容易ではないとされています。

避難ロープ

消防法で規定される避難器具として「避難ロープ」もあります。避難ロープは、滑り止め用の結び目が付いているロープで、上階から下階へロープを伝って避難するための物です。

他の避難器具と比べて収納場所を選ばないことや、設置しやすさに長けていると言えますが、避難時の安全性に劣ることから、使用者を選ぶ避難器具かもしれません。

すべり棒

「すべり棒」も消防法で規定されている避難器具のひとつです。すべり棒は、垂直方向への避難が容易で、かつ非常に迅速な避難を実現する一方、降下速度を調整しにくいため、万人向けとは言えません。

消防署に待機している消防隊員が緊急出動する際に、上階から下階へ瞬時に移動する際に利用する物と同じですが、使う人を選ぶ避難器具と言えるでしょう。

参考:避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目

避難器具の設置基準

 

避難器具の設置基準は「建物の用途」、「収容人員」、そして「階数」の組み合わせによって違いが生じます。

これらは以下5つのグループに分けて考えることで理解しやすくなります。

・収容人員20人以上の病院や老人ホーム、幼稚園等
・収容人員30人以上のホテルや旅館等の宿泊施設や共同住宅等
・収容人員50人以上の劇場や学校、飲食店、物販店等
・収容人員100人以上の工場や事業所等
・収容人員10人以上で上記4つ以外の建物(複合用途など)

上記5つのグループで、それぞれどのような避難器具を設置しなければいけないのかについて詳しく解説します。

なお、消防法施行令では、避難器具の設置について「避難階及び11階以上の階を除く」とあるため、このことを念頭に置いておいてください。

11階以上の高層階で避難器具の設置が除外される理由は、スプリンクラー設備等の他の消防設備が備わっているためです。

収容人員20人以上の病院や老人ホーム、幼稚園等

・地階:避難はしご、避難用タラップ

・2階:すべり台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、避難タラップ

・3階:すべり台、救助袋、緩降機、避難橋

・4階および5階:すべり台、救助袋、緩降機、避難橋

・6階から10階:すべり台、救助袋、避難橋

なお、下の階に劇場やカラオケボックス、風俗、飲食店、物品販売店、浴場、車庫、事務所などがある場合は「収容人員10人以上」となり、規制が厳しく設定されます。

収容人員30人以上のホテルや旅館等の宿泊施設や共同住宅等

・地階:避難はしご、避難用タラップ
・2階:すべり台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、すべり棒、避難ロープ、避難タラップ
・3階:すべり台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、避難タラップ
・4階および5階:滑り台、避難はしご(ハッチ式)、救助袋、緩降機、避難橋
・6階から10階:滑り台、避難はしご(ハッチ式)、救助袋、緩降機、避難橋

このグループにおいても、下の階に劇場やカラオケボックス、風俗、飲食店、物品販売店、浴場、車庫、事務所などがある場合は「収容人員10人以上」となり、規制が厳しく設定されます。

収容人員50人以上の劇場や学校、飲食店、物販店等

・地階:避難はしご、避難用タラップ
・2階:滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、すべり棒、避難ロープ、避難タラップ
・3階:滑り台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、避難タラップ
・4階および5階:滑り台、避難はしご(ハッチ式)、救助袋、緩降機、避難橋
・6階から10階:滑り台、避難はしご(ハッチ式)、救助袋、緩降機、避難橋

このグループにおいても、下の階に劇場やカラオケボックス、風俗、飲食店、物品販売店、浴場、車庫、事務所などがある場合は「収容人員10人以上」となり、規制が厳しく設定されます。

収容人員100人以上の工場や事業所等

・地階:避難はしご、避難用タラップ
・2階:なし
・3階:すべり台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、避難タラップ
・4階および5階:すべり台、避難はしご(ハッチ式)、救助袋、緩降機、避難橋
・6階から10階:すべり台、避難はしご(ハッチ式)、救助袋、緩降機、避難橋

収容人員10人以上で上記4つ以外の建物(複合用途など)

・地階:なし
・2階:すべり台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、すべり棒、避難ロープ、避難タラップ
・3階:すべり台、避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋、避難タラップ
・4階および5階:すべり台、避難はしご(ハッチ式)、救助袋、緩降機、避難橋
・6階から10階:すべり台、避難はしご(ハッチ式)、救助袋、緩降機、避難橋

参考:消防法施行令第二十五条

まとめ

消防法の避難器具は合計8種類あり、それらの設置基準は建物の用途、収容人員、そして階数によって異なります。

避難器具の設置基準は、その条件が一概に示せない程に混ざり合うため、消防設備士第5類の資格保有者や、消防設備点検のプロに相談しましょう。

消防設備点検のプロであれば、より複雑な設置緩和基準や建築基準法も考慮した提案してくれるでしょう。

 

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