消防点検コラム

福祉施設の消防設備点検のポイントを解説

特別養護老人ホームや介護老人保健施設といった福祉施設における消防設備点検は、他の施設と比べて厳しく設定されていることをご存知でしょうか。

福祉施設には、要配慮者や避難行動要支援者に該当する「災害弱者」が多くいます。ひとたび火災が発生すると人命被害も想定されることから、消防設備点検などを通じて、人命を守るための備えを万全にしておく必要があります。

そこでこの記事では、消防点検のプロが「福祉施設における消防設備点検」について、福祉施設に関係するすべての人が知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。


【目次】

1. 福祉施設における消防設備点検
2. 福祉施設に該当する施設とは
3. 福祉施設で設置が義務付けられている消防用設備
4. 福祉施設における消防設備点検のポイント
5. 福祉施設における消防設備点検の違反事例
6. 福祉施設で重要な消防訓練とは
7. まとめ

1. 福祉施設における消防設備点検

消防設備点検は、6ヶ月に1回の頻度で実施する「機器点検」と、1年に1回の頻度で実施する「総合点検」の2種類があります。

「機器点検」は主に消防用設備等の外観点検であるのに対し「総合点検」はすべての消防用設備等を実際に作動させて点検するものです。

機器点検および総合点検いずれの点検も消防法で実施が義務付けられています。また、福祉施設の場合は「1年に1回の報告義務」が課せられており、他の建物が3年に1回であることと比べ、厳しい条件になっていると言えるでしょう。

この違いは消防法で規定されています。消防法上では、老人ホームや介護施設といった社会福祉施設は「特定用途(特定防火対象物)」に区分され、そうでない「非特定用途(非特定防火対象物)」よりも、厳しい要件が課さられます。

この理由は、対象となる建物において「不特定多数の人が出入りする」や「災害弱者」が多いためで、火災発生時に甚大な被害が起きやすい建物と判断されていることが根底にあります。

このように、社会福祉施設は消防法上「特定用途(特定防火対象物)」に該当するため、消防用設備点検をはじめとする様々な要件が、他よりも厳しく設定されていることを理解しておきましょう。

参考:消防法第17条の3の3

2. 福祉施設に該当する施設とは

消防用設備点検をはじめとする、消防法の規定が厳しくなる福祉施設とは、具体的にどのような施設を指しているのかについても把握しておきましょう。

総務省消防庁がまとめている「消防法施行令別表第1(6)項ロに掲げる施設の概要(*1)」では、以下の施設が該当するとあります。

  • 老人短期入所施設
  • 養護老人ホーム
  • 特別養護老人ホーム
  • 有料老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 老人短期入所事業を行う施設
  • 認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設
  • 救護施設
  • 乳児院
  • 障害児入所施設
  • 障害者支援施設
  • 軽費老人ホーム
  • 小規模多機能型居宅介護事業を行う施設
  • デイサービス

上記の施設において「収容人員10人以上」になる場合は「防火管理者」の選任が必要です。(*2)防火管理者とは、対象となる防火対象物において、火災による被害を防止するための安全対策(消防計画)を策定し、防火管理上で必要な業務を遂行する責任者を指しています。

つまり、収容人員が10人を超えるような社会福祉施設においては、消防用設備を設置し、点検および報告するだけでなく、防火管理者という責任者を選任することも義務になる訳です。

(*1)参照:総務省消防庁,消防法施行令別表第1(6)項ロに掲げる施設の概要

(*2)参照:総務省消防庁,グループホームなど小規模社会福祉施設の防火安全対策

3. 福祉施設で設置が義務付けられている消防用設備

2009年の消防法改正によって、すべての社会福祉施設において、以下の消防用設備等は設置義務になっていることを知っておきましょう。

  • 消火器
  • 自動火災報知設備
  • 火災通報装置
  • スプリンクラー設備(延べ面積275平方メートル以上の施設)

これらが設置義務であるということは、1年に2回の消防設備点検(機器点検および総合点検)が義務になるということです。

参考:一般社団法人日本消防設備安全センター,小規模社会福祉施設における消防法改正概要

3. 福祉施設における消防設備点検のポイント

福祉施設における消防設備点検では、以下のポイントが重要です。

  • 設置義務の消防用設備
  • 点検周期
  • 報告周期

それぞれ解説します。

設置義務の消防用設備

福祉施設の消防設備点検では、あらかじめ「設置義務の消防用設備」を理解しておくことが大切です。

具体的には、消火器、自動火災報知設備、火災通報装置は設置義務で、延べ面積275平方メートル以上はスプリンクラー設備も義務化されます。

2009年以前は、建物の延べ面積によって設置義務が変わりましたが、現在ではすべての施設で義務化されていることに注意してください。

点検周期

「点検周期」も、福祉施設における消防設備点検で重要なポイントです。6ヶ月に1回の「機器点検」と、1年に1回の「総合点検」を実施しなければいけません。

いずれの点検も「消防設備士」または「消防設備点検有資格者」が実施する必要があります。点検周期については、業者任せにするのではなく、施設のオーナーや管理者が責任を持って管理しなければいけません。

報告周期

福祉施設における消防設備点検では「報告周期」も重要です。社会福祉施設のような特定防火対象物に該当する建物の場合「1年に1回」管轄の消防署に対し、点検結果を書面で報告する必要があります。

点検で異常がなかったとしても報告しなければいけません。報告は指定された書面の「消防用設備等点検結果報告書」にまとめる必要があるため、業者に依頼するのが一般的です。

消防設備点検を業者に依頼する場合は「報告書の作成および消防署への提出」が含まれているかどうかを確認するようにしてください。

参考:東京消防庁,消防用設備等点検結果報告書

5. 福祉施設における消防設備点検の違反事例

社会福祉施設における消防設備点検で、違反が起こりやすい事例についても理解しておきましょう。

とりわけ、以下のようなケースにおいて、違反となることが多いと言われています。

  • 増築
  • 建物の使用用途変更
  • 建物の収容人員の増加
  • 消防法改正を把握していない

上記について解説します。

増築

「増築」によって違反となることはよくあります。例えば、対象となる福祉施設を拡張した際、スプリンクラー設備の設置が義務付けられる基準である「延べ面積275平方メートル」を超えてしまう場合などが挙げられます。

前もって消防署に増築する際の届出がなされていればこのような事態は起こり得ませんが、増築工事や書類手続きを業者任せにしていると、結果として違反になっていたということは十分に想定されます。

建物の使用用途変更

福祉施設の違反事例として「建物の使用用途変更」もあります。例えば、事務所として使用していた建物内の一部屋を、デイサービス施設に変えることなどが当てはまります。

このようなケースは「同じ建物だから何も届け出なくていいと思っていた」という思い込みが生じやすく、なおかつ頻繁に起こり得ることなので注意が必要です。

参考:デイサービス施設が入居する対象物に対する違反処理

建物の収容人員の増加

「建物の収容人員の増加」も違反につながりやすいでしょう。現行の消防法では、福祉施設において収容人員が10人以上になる場合、防火管理者の選任が義務付けられています。

これを知らずに防火管理者を選任せず、消防点検の際に指摘されるケースがあります。延べ面積だけでなく、収容人員も影響することを覚えておきましょう。

消防法改正を把握していない

福祉施設の違反事例のほとんどは「消防法改正を把握していない」ことが原因です。消防法は頻繁に改正されており、建物のオーナーや管理者は最新のものを理解しておくことが求められます。

とりわけ、火災発生時に被害が大きくなる可能性が高い福祉施設の関係者は、常に最新の消防法や自治体の火災予防条例を把握しておく必要があります。

最新の消防法等を把握するためには、定期的な消防設備点検の際に、最新情報も提供してくれる業者を選ぶのがおすすめです。

6. 福祉施設で重要な消防訓練とは

様々な社会福祉施設において、消防用設備を適切に設置し、なおかつ消防設備点検を継続していくことはとても重要です。

一方、消防設備点検を違反なく終えることが目的になってはいけません。最も重要なことは、火災が起きたとしても福祉施設を利用する人たちを守ることで、消防用設備はそれを実現するための一部です。

利用者を守るために不可欠な要素とされているのが以下3つで構成される「消防訓練」です。消防設備点検と並んで重要なことですので、合わせて理解しておきましょう。

  • 消火訓練
  • 通報訓練
  • 避難訓練

それぞれ解説します。

消火訓練

福祉施設における重要な消防訓練のひとつが「消火訓練」です。具体的には、消火器や屋内消火栓をはじめとする、消火作業に役立つ消防用設備を使いこなせるように訓練しておくことが該当します。

福祉施設の職員らは、日頃から消火器の位置や使い方を理解することに努め、万が一の時であっても冷静に対処できるように訓練しておく必要があります。

通報訓練

「通報訓練」も福祉施設では重要です。例えば、緊急事態においてもパニックにならず、迅速かつ確実に消防へ連絡できるかや、建物内の放送設備の使用方法、火災報知の手順などを訓練しておくことが求められます。

福祉施設では、火災発生時に自動的に消防へ連絡を入れる「火災通報装置」の設置が義務付けられていますが、これがどのように機能するのかも理解しておくべきでしょう。

避難訓練

福祉施設では「避難訓練」も欠かせません。前もって規定した避難経路を通って、安全な場所へ全員が避難できるよう訓練する必要があります。

また、避難はしごなどの避難器具の場所や使用方法なども前もって理解しておかなければいけません。

7. まとめ

福祉施設における消防設備点検は、一般的な建物よりも厳しい内容になっています。設置しなければならない消防用設備を用意するだけでなく、それらの維持や管理、そして報告も求められます。

消防法によって厳しい要件が規定されていることや、これらの規定は随時改正されるため、消防点検のプロと連携して準備することをおすすめします。

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