消防点検コラム

地震火災の原因や対策、地震火災を防ぐポイントを解説

「地震火災」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。なかには「地震火災はなぜ起きるのか?」や「地震火災を防ぐためにはどうすればいいの?」といった疑問を持っている人もいることでしょう。

地震火災は、いつ発生するか分からない地震に備えて、過去にどのような事例があったかを把握し、その教訓をいかして日頃から対策を講じることが大切です。

そこでこの記事では、消防点検のプロが地震火災の対策を検討している方に向けて、地震火災の事例や原因、そして具体的な対策法などを分かりやすく解説します。


【目次】

1. 地震火災とは
2. 地震火災の事例
3. 地震火災が起きる原因
4. 地震火災対策
5. 地震火災を防ぐポイント
6. まとめ

1. 地震火災とは

地震火災とは、地震による揺れが原因となって発生する火災のことです。例えば、地震によって転倒した家具の下敷きになった家電製品の電源コードがショートして発火するケースや、本震の揺れによりストーブの上に洗濯物やカーテンなどが覆い被さって発火するケースなど、様々なパターンがあります。

また、大規模地震によって道路が損傷すると、消防車をはじめとする消火活動にあたる車両や人が火災現場に辿り着けず、地域一帯で消防力が低下し、結果として広範囲で火災が多発することがあり、災害の大きさは計り知れません。

とくに住宅密集地においてこのような事態に陥ると、人命の危険のみならず、街全体に及ぶ大規模火災に繋がる恐れがあることから、阪神大震災や東日本大震災などの被災を教訓にして、地震火災の対策や予防が求められています。

2. 地震火災の事例

地震火災の対策や予防のためには、地震火災の事例を知ることが不可欠です。総務省消防庁が紹介している、阪神淡路大震災や東日本大震災などで実際に起きた地震火災の事例(*)を基に紹介します。

・通電火災
・漏電火災
・津波火災

上記について解説します。

通電火災

地震火災の事例として最も多いものが「通電火災」です。通電火災とは、停電から復旧した際、家電製品に再び通電したタイミングで発生する火災を指しています。

例えば、電気ストーブなどが代表的です。地震の揺れによって、電気ストーブに燃える物が落下し、停電が復旧した際、落下した物に火が着いてしまうことがあります。

とくに震度が大きい地震だと家具の転倒が起こりやすいため、様々な箇所で通電火災が発生しやすくなります。

総務省消防庁によると、2011年の東日本大震災で発生した39件の火災を調査した結果(*)、17件が地震火災に該当し、そのうち6件が通電火災だったことが分かっています。

(*)出典:総務省消防庁

漏電火災

「漏電火災」も地震火災の事例に含まれます。漏電火災とは、電気が流れているケーブルが損傷することで起こりやすく、ショートしたり、熱を帯びたりすること(蓄熱)で出火する現象を指しています。

1995年の阪神淡路大震災において、地震の揺れによって転倒した家具が、家電製品の電源ケーブルを傷つけ、そのまま火災に発展したケースが見られました。

ある調査結果(*)では、阪神淡路大震災においては、241件中85件が電気による発熱体が原因だったとあることから、地震火災の代表的な事例と言えます。

(*)出典:独立行政法人消防研究所,阪神淡路大震災における火災からの教訓

津波火災

地震火災の事例には「津波火災」も含まれます。津波火災の具体例としては、地震によって漏れた家庭用プロパンガスに引火することや、貯油タンクが破損して引火する、さらには自動車のガソリンに引火し、それらが津波によって運ばれ、火災が広がるケースなどがあります。

いずれも、地震による揺れで想定外の発火が起こり、なおかつ津波によって火災が拡散されてしまうことが特徴です。

地震調査研究推進本部事務局(*)によると、東日本大震災では159件の津波火災が発生したあり、地震火災のひとつに挙げられています。

(*)出典:地震調査研究推進本部事務局,津波火災現象の解明とその対策

3. 地震火災が起きる原因

地震火災が起きる原因は複合的であることが特徴です。主に以下のような条件が重なることで火災につながることを理解しておきましょう。

・家屋の倒壊
・家具の転倒
・物の散乱
・電気やガスを遮断していない

それぞれ解説します。

家屋の倒壊

地震火災の原因のひとつが「家屋の倒壊」です。地震によって、主に老朽化した住宅や、耐震補強されていない家屋が倒壊し、倒壊した家屋内で電気やガスなどの火元から出火します。

また、家屋が倒壊すると、火が小さなうち、すなわち初期消火が困難になるため、火災が大きくなりやすいとされています。

家具の転倒

「家具の転倒」も地震火災の原因です。屋内にあるタンスや食器棚といった大型家具が固定されていないことでそれらが転倒し、電源ケーブルを傷つけてショートしたり、ストーブなどの火元に覆いかぶさったりして出火します。

阪神淡路大震災の時に出火原因として指摘されて以降、家具の転倒を防止するための固定が定着しつつありますが、地震火災の大きな原因になり得るでしょう。

物の散乱

地震火災の原因として「物の散乱」も挙げられます。地震の揺れによって、燃えやすい物がストーブや電化製品の周りに散乱し、通電火災または漏電火災をきっかけにして出火します。

一般家庭においては、カーテン、タオル、布団、さらには日常的な洗濯物などが要因になりやすいとされています。

電気やガスを遮断していない

「電気やガスを遮断していない」ことは地震火災の大きな原因です。総務省消防庁(*)によると、東日本大震災で発生した火災の54%は、電気関係が原因だったとあります。

また、津波火災の要因として家庭用プロパンガス等に引火したケースなども指摘されていることから、地震後の混乱下で、ブレーカーを落とすことや、ガスの供給を止められないと火災に繋がります。

(*)出典:総務省消防庁,【コラム】地震火災対策について

4. 地震火災対策

地震火災対策では以下のようなことが大切です。

・家屋の耐震補強
・家具の固定
・感震ブレーカーを設置する

上記の対策について解説します。

家屋の耐震補強

地震火災の対策として「家屋の耐震補強」があります。阪神淡路大震災では、強い揺れによって家屋が倒壊し、火災の発生や拡大を招きました。

この教訓をいかし、1995年12月に耐震改修促進法が施行され、とくに老朽化した家屋の耐震補強が求められています。

耐震補強工事にかかる費用の助成や、税制優遇措置などがありますので、対策を実施するにあたっては、自治体に相談することをおすすめします。

参考:東京都,耐震化助成制度

家具の固定

「家具の固定」も地震火災対策として有効です。阪神淡路大震災や東日本大震災などでは、家具の倒壊によって電源ケーブルが損傷したり、ストーブなどの火元にぶつかったりして火災につながったケースが指摘されています。

地震火災の約半数が電気火災と言われていますが、電気火災を招くきっかけの多くが家具の転倒です。

市販されている「家具転倒防止ストッパー(突っ張り棒)」などを使用し、家具を固定する対策がおすすめです。

感震ブレーカーを設置する

地震火災対策として「感震ブレーカーを設置する」ことも挙げられます。感震ブレーカーとは、地震による揺れを感知した時点で自動的にブレーカーを落とす機能を備えた電源ブレーカーのことです。

地震火災は「通電火災」に起因するものが多く、地震の際には電源ブレーカーを落とすことが肝心です。

感震ブレーカーを設置することで、通電火災や漏電火災を高い確率で防げるようになります。東京都では、木造住宅を対象にして感震ブレーカーの配布を実施している他、全国の自治体で設置補助の取り組みが行われています。

また、感電ブレーカーの導入と合わせて住宅用火災警報器の設置もおすすめします。地震火災対策と防災対策を合わせて実施しておくようにしましょう。

参考:東京都防災ホームページ,出火防止対策

参考:内閣府防災情報,都道府県における感震ブレーカー支援制度一覧(令和元年度)

5. 地震火災を防ぐポイント

地震火災を防ぐためのポイントは「地震前」と「地震後」に分けて考えることをおすすめします。

また、地震火災の半数以上は「電気火災」に起因することを念頭に置き、電気火災を起こさないための対策がポイントになります。

地震前から気を付けるべきポイント

・地震火災対策(耐震補強、家具の固定、感震ブレーカー)
・消火器や消火用スプレーを設置する
・ストーブ等の火元付近に燃えやすい物を置かない

日頃から地震火災に備えて、耐震補強や家具の固定、整理整頓避難を含めた防災訓練といった、基本的な対策や備えを心がけてください。

また、万が一の時に備え、消火器や消火用スプレー(エアゾール式簡易消火具)などを準備しておきましょう。

阪神淡路大震災では「コップ一杯の水」があれば消火できたような火が原因となり、大規模火災につながった例があったことから、日頃から自然災害に備えて初期消火できる環境を整えておくことがポイントです。

地震後に気を付けるべきポイント

・揺れが収まったら電気ブレーカーを落とす
・石油ストーブ等の油漏れを確認する
・電気が復旧する際は異常の有無を確認する

地震の揺れが収まったら、速やかに電気ブレーカーを落とすことがポイントです。仮に、停電によって電気が使えない状態であったとしても、電気が復旧した時に火災が起こることを考慮し、電気ブレーカーを落とすことが大切です。

また、石油ストーブなどから灯油が漏れていないかも確認してください。停電が復旧した際、家電製品でショートが起こり、その際の火花が漏れ出した油に引火する恐れがあります。

停電が復旧し、ブレーカーを戻す際は、煙や焦げたにおいなどが発生していないか、十分に確認することがポイントです。

6. まとめ

地震火災は、通電火災や漏電火災といった電気に起因する火災が半数以上を占めています。電気火災は、家屋の倒壊や家具の転倒、さらに物の散乱などによって起こるため、地震発生時はブレーカーを落とすといった「火を発生させないための対策」が求められます。

また、仮に出火するような事態になったとしても、初期消火で対応できるよう、消火器や消火スプレーなどの備えも忘れないでください。

感震ブレーカーや消火器、そして住宅用火災警報器の設置などについては、消防点検のプロに相談することをおすすめします。

 

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