消防点検コラム

初期消火は何をすればいい?時間や手順、失敗を防ぐ方法

火災発生時、被害を抑えるために重要な行動となるのが「初期消火」です。初期消火は多くの人にとって馴染みがある言葉かもしれません。

一方、実際の行動として、どのようなことをすればいいのか、何を使うのか、何分以内に対応すべきかといった具体的な基準などについては知らない人の方が多いかもしれません。

そこでこの記事では、消防点検のプロが「初期消火」について、あらかじめ知っておきたい知識、具体的なやり方、さらには失敗しやすいケースなどについて、初心者にも分かりやすく解説します。


【目次】

1. 初期消火とは
2. 火災の原因別、初期消火のやり方
3. 初期消火に失敗するパターン
4. 火災が発生した時の対処法
5. 初期消火マニュアル
6. まとめ

1. 初期消火とは

初期消火とは、火災発生時に、出火の初期段階で実施する消火活動のことです。具体的な方法としては、消火器や、水、タオルなどを使って消火することが含まれ、火元から火が燃え広がること、または周辺に火が燃え移る前に対処し、火災被害を最小限に抑えることを目的にしています。

初期消火は、出火から2~3分内に実施する消火活動です。火の高さが低い段階、あるいは火が小さいうちに消火することで成功する確率が高まると言われています。

火災が発生し、消防署消防局に連絡してから消防車が到着するよりも早く消火するための初期対応と考えるとよいでしょう。

一方、火災発見が遅れた時などは、火の高さが天井まで届いていることもあるため、このようなケースでは、初期消火よりも周囲に火災を報知することや、避難が優先されます。

初期消火の三原則

初期消火には「初期消火の三原則」として知られる3つの対応があります。万が一の時でも慌てずに対応できるよう、以下3つを覚えておくようにしましょう。

・早く知らせる
・早く消す
・早く逃げる

初期消火の成功率

一般社団法人日本消火器工業会(*)によると、初期消火で使われる機会が多い消火器による消火では、約7割が成功するとあります。

初期消火は、出火から時間が経過するほど困難になると言われています。逆を言えば、出火から間もない時間であれば、高い確率で初期消火による消火が可能ということです。

(*)出典:一般社団法人日本消火器工業会,消火器のしおり,P.3

時間(何秒)の目安

初期消火の時間の目安は、出火から2~3分(120~180秒)です。一般的な火災では「出火から約2分30秒」で火が天井まで届くと言われており(*)、火が天井まで達すると初期消火は困難になります。

このことから、初期消火によって消火できる時間の目安は2~3分とされています。初期消火の時間の目安は、あくまでも「出火」が起点であり「発見」ではないことに注意しましょう。

(*)出典:舞鶴市消防本部,初期消火について

火の高さの目安

初期消火で対応できる火の高さは「消火する人の背の高さ」が目安です。火の高さが身長を超えるような場合は、初期消火に固執せず、迷わずに避難することが推奨(*)されています。

火災発見時に、火の高さが「目線より上か下か」で初期消火の対応を判断するとよいでしょう。なお、火の高さが目線を超えるような場合は消防隊による消火活動やスプリンクラーなどによって消火することになります。

(*)出典:浦安市役所,備えよう!火災対策

初期消火に使用する物

初期消火に使用できる物として、以下のような物があります。

・消火器(粉末系消火器、水系消火器、二酸化炭素消火器など)
・水
・毛布や布団
・濡らしたタオルやシーツ

初期消火で最も成功確率が高いとされているのが「消火器」です。一般的な消火器は、粉末系消火器の「ABC粉末消火器」や、水系消火器の「強化液消火器」がほとんどでしょう。

消火器は、油料理や家電製品、ストーブなど、日常生活において火災リスクが高いあらゆる物に対応できるため、消火器を使った初期消火が望ましいと言えます。

参考:総務省消防庁,初期消火

2. 火災の原因別、初期消火のやり方

初期消火のやり方を火災の原因別に解説します。総務省消防庁が公開している「消防白書(*)」の出火原因として多いケースを中心にして見てみましょう。

・たばこ
・たき火
・こんろ
・電気機器(家電製品)
・ストーブ
・着衣

たばこ

出火原因として最も多いのが「たばこ」による失火です。たばこの火の不始末によって、布団やカーテン、絨毯などから出火するケースが考えられます。

このような場合、消火器を使用するのが最善ですが、消火器がない場合は座布団や布団などを使って火を覆うようにして消火する方法が有効です。

たばこの火によって失火する事例は多く、少しでも早く火災に気づくために住宅用火災警報器の設置が推奨されています。

 

たき火

「たき火」が原因の場合は、消火器や水を使うことが有効です。たき火による失火は未然に防ぐための対策が重要で、あらかじめバケツに水を汲んでおくことで迅速な初期消火が実現します。

こんろ

出火原因として身近な「こんろ」は、消火器や家庭用消火スプレー(エアゾール式簡易消火具)などによる初期消火が適しています。

天ぷら油から出火するケースや、こんろの消し忘れで火が付いた場合、消火器がなくとも、湿らせたタオルや座布団で代用できます。

なお、油による火災に対して水を使うことは厳禁です。油料理の際に出火した時は、可能な限り早く酸素を遮断すること、そして温度を下げることがポイントになります。

電気機器(家電製品)

「電気機器(家電製品)」から出火した際の初期消火のやり方は、消火器や湿らせたタオル等をかけるのが有効です。

水を使った初期消火も有効ではあるものの、通電している場合は、感電リスクも考えられるため気を付ける必要があります。

感電を避けつつ消火するためには、電源ケーブルを抜く、あるいはブレーカーを落とすといった対処も忘れないでください。

ストーブ

一般家庭における出火原因として多いのが「ストーブ」です。ストーブから出火した場合、初期消火には消火器が最も有効ですが、湿らせたタオルや布団、シーツなど、ストーブ全体を覆ってしまえるような物を使って酸素を遮断しましょう。

ストーブから出火すると、火が消えた以降もしばらくは高温状態が続くため、再び自然発火する可能性があります。

消火した後は、発火リスクが完全になくなるまで警戒するようにしてください。

着衣

「着衣」に対する初期消火は、水をかけることや、寝転ぶようにして火が付いている部分を地面に押し付けることが有効です。

着衣から出火するケースでは、火が付いている服を着ている本人がパニックに陥ることが想定されるため、初期消火にあたる周囲の人が冷静に対処することが求められます。

(*)出典:総務省消防庁,令和4年版消防白書(資料編),P.14

3. 初期消火に失敗するパターン

初期消火は必ずしも成功するとは限りません。以下のような初期消火に失敗するパターンも合わせて理解し、万が一の時に成功させるための参考にしてください。

・火災発見時に限界を超えている
・消火器がない(見つけられない)
・初期消火マニュアルがない
・訓練不足

上記のパターンについて解説します。

火災発見時に限界を超えている

初期消火に失敗するパターンとして「火災発見時に限界を超えている」があります。言い換えるならば「火災発見が遅れる」となるでしょう。

初期消火は、出火から2~3分内に対応することが目安とされています。この時間を経過すると、初期消火の限界とされる「火が目線より上」に達する可能性が高まります。

初期消火では、対応できる範囲に限界があることを理解しておきましょう。

消火器がない(見つけられない)

「消火器がない(見つけられない)」も失敗パターンです。初期消火で最も成功確率が高い方法が消火器を使った消火活動とされています。

つまり、初期消火では、いかに早く消火器を使って消火するかが重要になります。一般家庭のように消火器を設置していないケースや、緊急時に消火器を見つけられないといったケースではとくに注意すべきパターンです。

初期消火マニュアルがない

初期消火に失敗するパターンとして「初期消火マニュアルがない」こともあります。ごく簡単に言えば、初期消火に関わる人たちが「初期消火で何をすればいいかわからない」ということです。

例えば、消火器の場所や使い方がわからない、適切な消火方法を知らない、さらには判断を誤った行動をとるなど、初期消火でやるべきことや行動の流れなどを理解できていないと起こりやすいでしょう。

訓練不足

「訓練不足」も初期消火で失敗するパターンに含まれます。訓練不足は、実際に炎を前にするとパニックになってしまったり、消火器の操作手順が分からなかったり、様々な支障を招く可能性があります。

一般家庭も含め、火災が起きた時の対処法や行動の流れなどは定期的にシミュレーションしておくことが大切です。

4. 火災が発生した時の対処法

初期消火は、あくまでも火災発生時に取るべき行動のうちのひとつです。火災発生時は、以下の行動手順を守るようにしてください。

1.消防に通報および周囲へ火災報知
2.初期消火
3.避難

それぞれ解説します。

消防に通報および周囲へ火災報知

火災発生時、最も始めにやるべきことが「消防に通報および周囲へ火災報知」です。一般家庭や集合住宅、複合ビルなど、いかなる環境下においても、通報と報知を忘れないでください。

火災発生時はパニックに陥りやすく、火を消すことに気を取られがちです。仮に、初期消火が失敗すると、周辺被害も大きくなるかもしれないため、火災の時は通報と報知を徹底しましょう。

初期消火

通報と報知を終えた後に「初期消火」に移行します。火の高さが自身の身長を超えるか否かで対応を判断し、消火器や水、濡らしたタオルなどを使って消火しましょう。

初期消火によって消火できる限界を超えているにもかかわらず、消火を試みたり、現場を離れないでいたりすると、当事者の命の危険もあります。

避難

火災発生時、初期消火で対処できないような場合「避難」してください。初期消火による対応の限界を超えているような火災は人命にもかかわる可能性が高いため、身の安全を最優先に考えましょう。

5. 初期消火マニュアル

東京消防庁は「初期消火マニュアル(*)」を公開しています。初期消火の流れ、消火器をはじめとする消防用設備の使用方法、そして初期消火訓練の方法などがまとめられています。

日頃から初期消火や防火の重要性や、初期消火の手順や流れなどを把握しておくことに有効ですので、参考にしてください。

(*)出典:東京消防庁,初期消火マニュアル

6. まとめ

初期消火は、火災発生から2~3分内を目安に、消火器等を使って消火することです。火災発生時に取るべき3つの行動である「通報および報知」「初期消火」「避難」のひとつとして覚えておきましょう。

また、初期消火のマニュアルを参考にし、その流れや判断基準、さらには消火器の使い方なども理解しておくことをおすすめします。

 

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