消防点検コラム

消防法

2023.11.30

民泊に適用される消防法や消防用設備を解説

これから民泊を始めようと考えている人のなかには「民泊は消防法と関係があるの?」や「民泊にはどんな消防法が適用されるの?」といった疑問を持っている人もいると思います。

民泊とひと言で言っても、建物の大きさや用途など様々なケースが考えられ、それぞれで基準となる消防法や消防用設備が変わる可能性があります。

適用される消防法は民泊ごとに異なると言っても過言ではありません。そこでこの記事では、消防点検のプロが「民泊と消防法」について、これから民泊運営を始めようと考えている人に向けて、ポイントを分かりやすく解説します。

民泊と消防法の関係を理解するためのポイント

住宅宿泊事業法(民泊に関わる法)の施行等に伴い、民泊施設における消防用設備等の設置基準を整備するため、消防庁では「消防法施行規則等の一部を改正する省令」等を平成30年6月1日に公布しました。

民泊と消防法を理解するうえでポイントとなるのが「民泊施設が消防法で規定されている防火対象物の何に該当するか」ということです。

消防法では「防火対象物の用途区分」が規定されており、対象となる建物が「どの防火対象物」に該当するかによって、適用される消防法が変わります。

れから民泊施設として使用しようとしている建物が、消防法で規定されているどの防火対象物に該当するかによって、設置しなければいけない消防用設備が変わる、さらには定期的な消防点検の対象になるという訳です。

例えば、対象となる民泊施設が、消防法が規定する「旅館、ホテル、簡易宿所、その他これらに類するもの」に該当する場合は、消火器や誘導灯、そして特定小規模施設用自動火災報知設備などを設置しなければいけないかもしれません。

このように、民泊と消防法の関係は「民泊施設がどの防火対象物に該当するか」を理解するのがポイントと言えます。

参考:消防法施行令別表第一(防火対象物の用途区分表)、総務省消防庁

民泊の消防法令上の用途を判定する方法

民泊として使用する建物が消防法令上、どのような用途区分に該当するかは、以下の2つが基準となります。

一戸建て住宅のような「住宅」、アパートやマンションのような「住戸」いずれにおいても、以下の基準が用いられますので覚えておきましょう。

・人を宿泊させる間、住宅に家主が不在になるか否か
・宿泊室の床面積の合計が50平方メートルを超えるか否か

それぞれ解説します。

人を宿泊させる間、住宅に家主が不在になるか否か

これは、利用者が民泊として使用する建物に宿泊している間、家主が同じ建物に居住しているかどうかという基準です。

家主が居住している場合は、火災危険性が低いと判断され「一般住宅」と判定されます。一般住宅に判定されるということは、住宅用火災警報器以外に新たな消防用設備の設置は必要ないということです。(住宅用火災警報器は市販の物でよく、自分で設置可能)

ただし、家主が不在とならない場合であっても、宿泊室の床面積が50平方メートル(30畳程度)を超える場合は「旅館やホテルなどの宿泊施設」と同じ判定になるので注意しましょう。

消防法施行令別表第一における「(5)項イ」の「旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの」として扱われます。

この場合、消防法に基づいて自動火災報知設備、誘導灯、防炎物品(カーテンやじゅうたん)そして年に2回の消防用設備等の点検および1年に1回の報告義務が課せられます。

なお、自動火災報知設備については、建物の延べ面積が300平方メートル以下の一戸建て住宅だと、より簡易的な「特定小規模施設用自動火災報知設備」でよいとされています。

また、建物の延べ面積が150平方メートルを超える場合、そして地階、無窓階、3階以上の階で床面積が50平方メートルを超える場合は、消火器の設置義務が加わります。

参考:民泊を始めるにあたって(P.2とP.5)総務省消防庁

宿泊室の床面積の合計が50平方メートルを超えるか否か

もうひとつ知っておきたい基準は、民泊として使用する建物における宿泊室の床面積の合計です。

家主の居住の有無に加えて、宿泊室の床面積の合計が50平方メートルを超えるかどうかがポイントになります。

宿泊室の床面積の合計が50平方メートルを超えるかどうかを単体で判断するのではなく「家主の居住の有無」と組み合わせて判断することに注意しましょう。

民泊に適用される消防法

 

民泊に適用される消防法は、消防用設備の設置などについて定めた消防法第17条が基準になると考えてください。

これらは、旅館業法や住宅宿泊事業法(民泊新法)、特区民泊といった規定と合わせて理解しておく必要があります。

建物ごとに異なる具体的な設置基準については「消防法施行令別表第一」に規定されている防火対象物の用途区分によって変わりますが、民泊の場合は主に以下のような消防用設備、消火設備が該当します。

  • 自動火災報知設備または特定小規模施設用自動火災報知設備
  • 誘導灯
  • 消火器
  • 防炎物品
  • スプリンクラー設備

一般的な一戸建て住宅を使って民泊を始める場合、家主が常時在宅する場合は上記の消防用設備は必要ないと考えてよいでしょう。

一方、家主不在型の場合においては、ほとんどの場合は特定小規模施設用自動火災報知設備の設置や、防炎物品の使用が必要になります。

これらの最終的な判断は、所轄の消防署がおこなうため、民泊を始める場合は最初から所轄の消防署の見解を仰ぐことが賢明です。

参考:消防法第十七条第四章消防の設備等

民泊の建物別に見る消防法で規定されている消防設備

民泊は建物ごとに設置しなければいけない消防用設備が異なります。以下、民泊でよくある3つの事例を参考に、消防法で設置が義務付けられている消防用設備を見てみましょう。

家主居住型の一戸建て住宅(宿泊室の床面積の合計が50平方メートルを超えない)

「家主居住型の一戸建て住宅(宿泊室の床面積の合計が50平方メートルを超えない)」は、家主が不在でないこと、そして宿泊室の床面積の合計が50平方メートル以下ということから「一般住宅」と判定されます。

よって、消防用設備の設置は不要です。ただし、ホームセンターなどで市販されている「住宅用火災警報器」は設置してください。(1個3,000円ほどで簡単に設置可能)

家主不在型の一戸建て住宅

「家主不在型の一戸建て住宅」は、家主が不在という時点で広さに関係なく「旅館やホテルなどの宿泊施設」と判定されるため、消防法施行令別表第一(5)項イに該当します。

この場合、原則として特定小規模施設用自動火災報知設備、誘導灯、そして防炎物品の設置が義務付けられます。

なお、地上3階建ての建物である場合は特定小規模施設用自動火災報知設備は使えません。建物の延べ面積が150平方メートルを超える場合は消火器の設置が必須となります。

アパート・マンション(家主不在型)

「アパート・マンション(家主不在型)」は、対象となる建物において9割以上を民泊用として利用する場合は「宿泊施設」、9割以下の場合は「複合用途防火対象物」に区分されます。

9割以上の場合は、消火器、自動火災報知設備、誘導灯、そして防炎物品の設置が義務付けられます。

一方、9割以下の場合は、誘導灯、自動火災報知設備、防炎物品が必要になり、11階建て以上だとスプリンクラー設備も設置しなければいけません。

ただし、原則としてマンションの場合は自動火災報知設備やスプリンクラー設備は、既に設置されていることがほとんどですので、新規設置しなくてもよいケースが大半です。

民泊で必要な消防用設備の費用相場

民泊では消火器や誘導灯、そして自動火災報知設備などの設置が義務付けられるケースが多く、これらは専門家による設置工事が一般的です。

それぞれの費用相場は以下を参考にしてください。

住宅用火災警報器

住宅用火災警報器は、原則としてすべての民泊(寝室)で設置が必要です。ホームセンターなどで1台あたり3,000円程度で入手でき、電池で作動するため素人でも十分に取り付け可能です。

誘導灯

誘導灯は避難経路を示すためのもので、1個あたり25,000円が相場と言われています。天井部に取り付けることが多いため、工事代も含めると50,000円ほどするかもしれません。

消火器

消火器はホームセンターやインターネット通販などで、1本あたり5,000円内で購入可能です。民泊施設では「業務用」を設置しなければならないことに注意しましょう。

消火器の購入と設置は自分でも出来ますが、複数の設置が必要な場合は、設置間隔などの要件を満たす必要があるため、専門家に依頼した方が無難です。

消火器は、共同住宅(マンション等)と旅館・ホテル等の設置基準が同一であるため、新たな規制はかかりません。

特定小規模施設用自動火災報知設備

特定小規模施設用自動火災報知設備は、簡易的な自動火災報知設備と言え、複数台設置してもそれぞれが無線で連動しているため、1台が反応するとそれ以外も一斉に警報を鳴らす仕組みです。

1台あたり2万円程度とされています。設置にあたり電気工事などは必要ありませんが、正常作動を確実にするためにも専門家に依頼した方がよいでしょう。

自動火災報知設備

自動火災報知設備は、受信機・発信機・表示灯・地区音響装置・感知器から構成された火災報知機です。3階建ての建物や地階、無窓階などがある場合に設置せねばならず、複合的な設置工事が必要です。

専門家による工事が必須で、規模によって異なるものの最低でも40~50万円はかかるでしょう。

まとめ

民泊は消防法の基準を満たす必要があります。適用される消防法は建物の条件によって異なるため、自己判断することはおすすめしません。

民泊の手続きを円滑に進めるためにも、所轄の消防署や保健所といった行政組織、さらには消防点検のプロに相談することから始めるようにしてください。

 

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