消防点検コラム

防火管理者

2023.08.29

防火管理者手帳(防火防災管理手帳)とは?

みなさんは「防火管理者手帳」を見たことはありますか?防火管理者手帳とは、防火管理講習を修了した者に対して付与される手帳のことで、国家資格である防火管理者の証明書のような役割があります。

本人名義の防火管理者手帳を保有している者は、防火管理者として様々な防火管理業務の計画や遂行に携わることが可能になります。

一方で、そんな手帳の存在のことなど知らなかったという人や、手帳なんて見たことないという人も多いのが実情のようです。

そこでこの記事では「防火管理者手帳」について、どのような物なのかや、どうすれば入手できるのかといったことなどを含めつつ、消防点検のプロがわかりやすく解説します。

防火管理者手帳とは

防火管理者手帳は「防火防災管理者手帳」とも呼ばれ、国家資格である「防火管理者」の資格を保有する者の証明です。

防火管理者手帳は、名刺やカード入れ程度の大きさで、防火管理者になるための「防火・防災管理新規講習」を修了した「修了証」と対になっています。

つまり、防火管理者手帳は、防火管理者の講習を修了した証明と言い換えることもできます。そもそも、防火管理者の資格は、最大2日間におよぶ防火管理講習を受講(講習内で効果測定試験有)することで得られるため、実質的には講習修了証の意味合いが大きいと言えるかもしれません。

ちなみに、防火管理者手帳のケースには、各自治体の名称が印字されており、東京都では「防火防災管理者手帳・東京消防庁」、札幌市では「防火管理者の証・札幌市消防局」というように、デザインは若干異なります。

防火管理者とは

防火管理者手帳を有する者は、必然的に防火管理者ということになります。そもそも、防火管理者とはどのような存在なのかも合わせて知っておきましょう。

防火管理者とは、多くの人が利用するような建物において、火災被害防止のために必要な防火管理や、これに伴って必要になる防火管理業務を計画したり、推進したりする際の責任者です。

消防法では、多数の人が利用する一定規模以上の施設や建物の場合、防火管理者を必ず選任しなければいけないと決まっているため、とても需要が多い国家資格とされています。

また、最大2日間の講習で取得可能ということや、講習内で実施される試験は容易な問題ばかりということもあり、合格率は100%に近いと言われるほどです。(市町村の消防長が行っている地域(東京都、鳥取県、岐阜県内や千葉市、横浜市、大阪市など)では、一般財団法人 日本防災・防災協会主催の一般向け講習は実施しておりません。ただし、一部の講習は、東京都内で実施する場合があります。)

防火管理者になるための講習の最後(効果測定の後)に、防火管理者手帳および講習修了証が配布されます。

防火管理者の甲種と乙種の違い

防火管理者には甲種と乙種の2つがあります。甲種と乙種の違いは、防火管理者として活動できる建物の規模です。

具体的には、甲種の場合は、建物の規模や用途、収容人員に関係なく、すべての防火対象物で活動可能であるのに対し、乙種の場合は、建物の規模や収容人員が以下のように限定されます。

・乙種防火対象物で特定防火対象物の場合は延べ面積300平方メートル未満、非特定防火対象物の場合は500平方メートル未満のもの
・甲種防火対象物内のテナント等で収容人員が特定用途の場合は30人未満(施設の条件によっては10人未満)、非特定用途の場合では50人未満の事業所

甲種と乙種にはこのような違いがありますが、一般的には建物の規模や収容人員による制限がない「甲種」の資格を取得する人の方が多いとされています。

防火管理者の主な役割

防火管理者手帳は、国家資格である防火管理者の証です。防火管理者の有資格者でなければできない任務として、主に以下のようなことが挙げられます。

・管轄の消防署に対し「防火管理に係る消防計画」の作成および届出を行うこと
・避難施設の維持管理
・消防用設備等の点検、整備、維持管理
・火気の使用または取扱いに関する監督
・放火防止対策や教育
・自衛消防活動
・収容人員の管理
・必要に応じて管理権原者に指示を求め、誠実に職務遂行する

このように、防火管理者が担う業務は多岐にわたります。とりわけ、重要な業務とされているのが「防火管理に係る消防計画」の作成および提出です。

防火管理に係る消防計画とは、対象となる防火対象物における、火災などの災害予防と、その被害を最小限に抑えることを目的にした計画書のことです。

管轄の消防署へ提出する書式が決められているため、決して難しい物ではありませんが、防火管理者は消防計画を提供することによって法的な責任を負う立場となります。

この他に、日常的な業務として、避難器具や避難通路が正常に機能する環境にあるかどうかの確認や、関係者に対する消防用設備等の説明や使用訓練、そして収容人員の管理といったことがあります。

防火管理者になるには

防火管理者手帳を手に入れる、つまりは防火管理者の資格を取得するためには、防火管理講習を受講し、講習内で実施される効果測定で合格する必要があります。

前述したように、防火管理者の資格は甲種と乙種の2種類がありますが、建物の規模や収容人員による制限がない甲種を受けることが一般的です。

甲種防火管理者の資格を取得するためには、2日間(おおむね10時間)の講習を受け、座学、ビデオ視聴、ごく簡単な実技、そして効果測定と呼ばれる実質的な試験をこなします。都道府県知事や消防本部または市町村の消防長、総務大臣登録講習機関で行われます。なお、講習修了資格は全国共通です。

講習は効果測定も含め、難易度は非常に低く、ほぼ全員が合格できると言われるほどです。実質的には、講習に参加するだけで取得できるため、防火管理者の資格を得るのは容易と言えるでしょう。

一方で、防火管理者講習を修了し、防火管理者手帳および講習修了証を手に入れただけでは、防火管理者にはなれないことに注意が必要です。

正式に防火管理者になるためには、所轄の消防署に「管理者選任(解任)届出書」を提出する必要があります。

消防署に受理されると、防火管理者手帳の裏面に受付印が押され、対象となる防火対象物の防火管理者に就任となります。

防火管理者は、講習による資格の取得と届出の2つを終えないと正式には認められないことを知っておきましょう。

防火管理者になるための要件

防火管理者は原則として誰でもなることが可能です。防火管理者になるためには、防火管理講習を受講し、修了することのみが要件であり、講習の受講に対する要件はありません。(防火管理講習を修了していない場合でも、一定の立場や経験を持つ場合(学識経験者、消防職員など)は防火管理者になることができます。)

また、年齢による制限もなく、身分証明書として顔写真入りの学生証や生徒手帳が認められているため、実質的には高校生や大学生でも防火管理者になれます。

注意すべき点として、自治体によっては、受講要件として防火管理者に選任されることが前提としているケースもあるため、単なる資格取得という意味で受講することはおすすめしません。

なぜ防火管理者が必要なのか

防火管理者は、一定の条件に該当する防火対象物の場合、必ず選定しなければいけません。この背景には「防火対象物定期点検報告制度」が関係しています。

防火対象物定期点検報告制度とは、原則として1年に1回の頻度で、対象となる防火対象物において、防火管理者が選定されたうえで、しっかり防火管理が実施されているかどうかをチェックする規則です。

この制度は消防法第八条の二の二で規定されているもので、チェック項目のひとつに「防火管理者が選定されているかどうか」があります。

つまり、法律で義務付けられている点検制度を遵守するためにも防火管理者が必要という訳です。

ちなみに、この制度では、防火管理者の選定を確認する他、防火扉や避難経路周辺に障害物が置いていないかどうかや、避難訓練の実施状況の確認といったことがあります。

また、防火管理者の選任の要否、乙種防火管理講習修了者の選任の可否については、防火対象物の用途、規模、収容人員、管理権原の範囲等により異なりますので、事業所を管轄する消防本部(局)、消防署にご確認ください。

参考:消防法第八条の二の二

防火対象物定期点検報告制度の対象

防火管理者の選定などを確認する防火対象物定期点検報告制度は、すべての建物が対象とはならず、以下の要件に該当する場合のみが対象です。

・収容人員が300名以上のすべての建物
・収容人員が30名以上300名未満の建物で、なおかつ特定用途部分が地階または3階以上に存するもの(避難階は除く)
・収容人員が30名以上300名未満の建物で、階段がひとつのもの(屋外に設けられた階段等であれば免除)

基本的な考え方としては「収容人員」と「建物の用途」が基準になっており、百貨店や病院、老人福祉施設といった不特定多数の人が集まりやすい建物ほど厳しいと言えるでしょう。

なお、収容人員が30名未満の建物は対象外です。

防火管理者が変更になった場合の対応

防火管理者は一定条件の防火対象物においては必須ですが、担当者の異動や離職、さらには建物の売買、譲渡などによって防火管理者が代わる場合、管轄の消防署へ「防火・防災管理者選任(解任)届出書」を提出しなければいけません。

その際には新しい防火管理者の防火管理者手帳が必要です。申請は、窓口、郵送、そしてオンライン申請の3通りがありますが、いずれの方法であっても、防火管理者手帳あるいは写しが必要ですので、あらかじめ準備しておきましょう。(オンライン申請未対応の自治体もある)

なお「消防計画」や「管理権原者」に変更が生じた際も同様で、新たな届出が必要なことを覚えておいてください。

まとめ

防火管理者手帳は、国家資格の防火管理者であることを証明する大切なものです。また、防火管理者として選任される際には、届出時に必ず必要になります。

単なる資格証明書や講習修了証として扱っていると紛失してしまい、いざ必要な時に手数料を払って再発行しなければいけなくなるかもしれません。

防火管理者手帳は、防火管理者としていつでも使えるように大切に扱いましょう。

 

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