消防点検コラム

消火器

2023.08.29

スプレー式消火器とは?効果や特徴、処分方法を解説

「市販されているスプレー式消火器って効果あるの?」や「スプレー式消火器は普通の消火器のように使えるの?」といった疑問を持ったことがある人は多いのではないでしょうか。

スプレー式消火器は、主に家庭のキッチンなどに非常用として用いられることが多い一方、天ぷらなどの油を使った料理店では、予備の防火グッズとして置いているケースもあります。

そんなスプレー式消火器は、消防法で設置が義務付けられているのかどうかや、消火効果、さらには使用期限など、あまり知られていないことが多いようです。

そこでこの記事では「スプレー式消火器」について、消防点検のプロが初心者にもわかりやすく解説します。

スプレー式消火器とは

スプレー式消火器とは、主に一般家庭を対象にした、片手で噴射可能な消火剤入りスプレーのことで、その多くは「エアゾール式簡易消火具」と呼ばれています。

ちなみに、スプレー式消火器における「エアゾール」という言葉の意味は、ガスと消火剤を弁がある容器に封入し、ガスの力で消火剤を放出させる構造のことを指しています。(ヘアスプレーや消臭剤等と同じ構造)

スプレー式消火器は、液化ガスまたは圧縮ガスを使って消火剤を霧状に噴射する仕組みで、小規模な普通火災や天ぷら油火災などに適応しています。

一般的な消火器と比べて圧倒的に軽くて小さいことが特徴で、初期消火性能が高いにもかかわらず、収納するのに場所を取らない利便性に長けていることから、家庭用の消火器具の代表的な存在と言えるでしょう。

なお、スプレー式消火器は消防法等で設置義務が課せられている物ではありません。あくまでも、任意での設置扱いです。

一方、スプレー式消火器は、一般的な消火器と比べて消火性能が低いことや、製品単体に使用期限が定められていることなど、あらかじめ知っておくべきこともあります。

とくに知っておきたいことを次で解説します。

効果

スプレー式消火器は、小火災の初期消火に効果があるとされています。具体的には、料理中で目を離した隙にコンロから火がたってしまったような場合や、タバコの不始末で周辺に火が燃え移ったというようなケースが想定できるでしょう。

スプレー式消火器のポイントは「小火災」と「初期消火」と言え、大きな火災では十分な消火効果は得られない可能性が高く、一般的な消火器の効果よりも劣ると言わざるを得ません。

従って、スプレー式消火器は一般的な消火器の代替品としての効果は薄く、あくまでも小火災の初期消火向けの効果に限定されると考えた方がよいでしょう。

適応火災

スプレー式消火器は、製品ごとに適応火災が異なります。言い換えれば、製品によって消火できる火災と、そうでない火災の種類があるということです。

エアゾール式簡易消火具の品質評価を実施している日本消防検定協会は、以下の火災目的を紹介しており、これらに適応しているかどうかが目安になります。

・小規模普通火災
・天ぷら油火災
・ストーブ火災
・自動車用クッション火災
・電気火災

昨今のスプレー式消火器は、上記いずれにも適応したタイプの製品が多いものの、メーカーや製品によっては「天ぷら油火災に非対応」といったことも考えられます。

従って、スプレー式消火器ならどれでも良いと考えず、目的と用途に見合った物を選ぶ必要があることを知っておきましょう。

消火剤

スプレー式消火器で使用される消火剤は、リン酸アンモニウムや硫酸アンモニウムなどを含む粉末や、カリウム、ナトリウムといったアルカリ金属塩類等の強化液など様々です。

スプレー式消火器の多くの製品が普通火災、油火災、そして電気火災のようなあらゆる火災タイプに対応しています。

一方、注意したい点として「ハロンを使ったスプレー式消火器は天ぷら油火災に適さない」ということがあります。

ハロンには燃焼物の冷却効果がないため、400度を超える油火災では一旦消火できたように見えても再焼する可能性があり、結果的に消火できないかもしれません。

天ぷら油火災に適応したスプレー式消火器を使用すれば問題ありませんが、購入から時間が経過していたり、誰がどのように管理したりするかによって、火災発生時に最善の対処が取れない可能性があるため、十分に注意しましょう。

使用期限

スプレー式消火器には使用期限があります。使用期限はおおむねどの製品も「製造から3年」とされており、使用期限を超えた物は消火性能が低下、または噴射しない可能性があります。

スプレー式消火器は日常的に触る物ではないため、気が付いた時には使用期限を超えていたということも十分に考えられます。

緊急時に支障なく使用できるように、使用期限切れでないか日頃から確認する習慣を付けたいところです。

エアゾール式簡易消火具と消火器の違い

エアゾール式簡易消火具と消火器の違いには、主に以下のことが挙げられます。

・消火性能
・操作性
・使用期限
・価格

それぞれ解説します。

消火性能

エアゾール式簡易消火具と呼ばれるスプレー式消火器と、一般的な消火器の最も大きな違いが「消火性能」です。

スプレー式消火器は、小火災の初期段階で効果を発揮しますが、消火器はより大きな火であっても消火できるため、消火性能は大きな違いと言えます。

一般的な消火器はスプレー式消火器よりも、消火剤の容量が多く、噴射時の圧力が高い、そして噴射持続時間が長いため、消火性能が高い訳です。

操作性

エアゾール式簡易消火具と消火器の違いには「操作性」もあります。エアゾール式簡易消火具は、本体上部の噴射ボタンを押すだけで消火剤が噴射されるのに対し、消火器は安全栓を抜いたり、ノズルを火元に向けたりしなければいけません。

スプレー式消火器の方が圧倒的に容易と言え、消火器はその仕組みや操作手順を理解していないと噴射できない可能性があります。

使用期限

「使用期限」もエアゾール式簡易消火具と消火器で違いがあります。スプレー式消火器の使用期限はおおむね製造から3年であるのに対し、消火器は家庭用で5年、業務用は10年です。

スプレー式消火器は購入後3年で買い替える必要があり、うっかり忘れていると使用期限が切れた物を使うことになり、肝心の消火性能に支障が生じる可能性が高くなります。

スプレー式消火器は3年に1度とは言え、消火器よりも頻繁に交換する必要があるため、手間に感じるかもしれません。

価格

エアゾール式簡易消火具と消火器の違いには「価格」もあります。スプレー式消火器は1本あたり1,000円が相場であるのに対し、消火器は1本あたり4,000円程度です。

また、スプレー式消火器は一般ゴミとして捨てられますが、消火器はリサイクルが義務付けられており、リサイクルシールを1本あたり1,000円から2,000円で購入しなければいけません。

消火器は、購入時だけでなく、廃棄時にもお金がかかる仕組みになっているため、気を付けましょう。

スプレー式消火器を選ぶ際のポイント

スプレー式消火器すなわちエアゾール式簡易消火具を選ぶ際の大切なポイントは以下の3つです。

・NSマーク
・サイズ
・予備の準備

それぞれのポイントについて解説します。

NSマーク

「NSマーク(鑑定適合マーク)」はスプレー式消火器を選ぶ際に重視したいポイントです。NSマークとは、日本消防検定協会による品質評価に合格したことを示す証で、NSマークが付いている製品は規格に適合していることになります。

また、NSマークとは別に、製造者が自主的に規格適合を自己認証する「自主表示マーク」もあります。

そのため、スプレー式消火器を選ぶ際には「NSマーク」と「自主表示マーク」の2つが記載されているかどうかを確認するとよいでしょう。

参考:受託評価業務、日本消防検定協会

サイズ

スプレー式消火器を選ぶ際は「サイズ」がポイントです。具体的には、スプレーの大きさ、重量、消火剤の容量といったことが含まれます。

使いやすさや収納のことを重視すると、小さな物を選ぶことになると思いますが、サイズが小さいことは消火剤が少ないことでもあるため、消火性能が低くなるかもしれません。

対照的に、消火性能を優先するとサイズが大きくなるため、力が弱い女性や高齢者が容易に使用できない可能性も生じます。

従って、スプレー式消火器を使用する可能性が高い人のことを考慮し、それに適したサイズを選ぶようにすることがポイントです。

予備の準備

「予備の準備」もスプレー式消火器を選ぶ際に大切なポイントです。スプレー式消火器は、多くの場合において火元付近に置くことが多いと思います。

しかし、予想以上に火が強まった場合、スプレー式消火器がある場所に近づけない可能性もあります。

このような事態に備え、火元付近にひとつ、そして離れた場所から消火する時に使うための予備、合計2つを用意しておくことで安心につながります。

また、ひとつだけだと緊急時に「どこに置いたっけ?」となる可能性もあります。スプレー式消火器は、日常的に触れる物ではないため、バックアップとして火元以外の分かりやすい所にも置いておくことをおすすめします。

スプレー式消火器の処分方法

エアゾール式簡易消火具(スプレー式消火器)は家庭ゴミとして捨てられます。(各自治体の制度にもよる)

使用期限を迎えたり、不要になったりした場合は、ポリ袋の中に新聞紙や布切れを入れて、その中で飛散しないように消火剤とガスを出し切ってしまいましょう。

そのポリ袋は燃やすゴミとして、そしてスプレー缶は、缶やビン類として廃棄してください。なお、噴射し終えた消火剤やガスは引火の危険性はないため、燃えるゴミとして捨てても問題ありません。

まとめ

スプレー式消火器は、設置義務はないものの、小火災の初期消火に優れた効果を発揮し、女性や高齢者でも使いやすいことが利点です。

一方、消火器と比較すると消火性能は劣るため、あくまでも「消火器の補助」として利用することが望ましいでしょう。

既設の消火器に加えて、スプレー式消火器を導入しようと考えている場合は、適切な物を導入できるよう消防点検のプロに相談することをおすすめします。

 

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