消防点検コラム

HFDは防火ダンパーのこと?役割や設置基準について解説

「HFD(排煙用防火ダンパー)って防火ダンパーのこと?」や「HFDには設置基準があるの?」といった疑問を持ったことがある人はいませんか?

防火ダンパーのひとつであるHFDは、火災発生時に排煙口から炎や煙が他の場所へ広がらないようにするための装置で、この他にも防火ダンパーには煙感知または熱感知によって作動する様々な種類があります。

一方、HFDをはじめとする防火ダンパーの多くは馴染みが浅いことから、その仕組みや設置基準などが知られておらず、あまりよくわかっていないという人が多いようです。

そこでこの記事では「HFD(排煙用防火ダンパー)」について、役割や仕組み、そして設置基準など、消防点検のプロが初心者にもわかりやすく解説します。

HFDとは

HFDとは、排煙用防火ダンパーのことで、英語のHigh Temperature Fire Damperの頭文字を取った略語です。

主に厨房から伸びる排気ダクトに取り付けられることが多く、排煙が280度に達した時点でダクトを塞ぐように作動し、炎や煙が広がることを防ぎます。

HFD以外にも、SFDやPFD、そしてFDなどの種類がありますが、これらをまとめて防火ダンパーと呼ぶことが定着しています。

つまり、ひと言で防火ダンパーと言っても、それがHFDを指しているのか、それともSFDを指しているのか区別ができません。

このような誤解を防ぐ意味でもHFDやSFDといった呼称が用いられています。従って、HFDやSFDなどの呼称が何を指しているのかや、その仕組み、作動方式なども含めて理解することが大切です。

HFDの役割

HFDの役割は、排煙口から排煙ダクトに流れ込んだ炎や煙が他の部屋などに広がらないようにすることですが、作動するきっかけが280度以上の高温になった時という特徴があります。

HFDに限らず、防火ダンパーの役割はすべてで共通しています。防火ダンパーは、台所などで発生した煙や炎がダクトを伝搬して他の部屋に広がることを阻止するストッパーのような役割を担っています。

HFDは、280度の高温に達するまでは排煙機能を活かしつつ、排気が280度の高温になった時点で作動し、煙や炎の伝搬を防ぎます。

HFDの仕組み

HFDの仕組みは、温度を感知する部分が280度に達した時点でヒューズが溶けて作動するようになっています。

HFDに限らず、防火ダンパーは常時開放状態にすることが規定されています。火災が発生した際に生じる煙の温度が72度、120度、280度のいずれかに達した時点でヒューズが溶けて、閉鎖状態になる、すなわち防火ダンパーが作動するという仕組みです。

HFDをはじめとする防火ダンパーの仕組みで鍵となるのがヒューズです。ヒューズが一定温度に達することで溶断し、ダンパーのロックが解除されるようにして閉鎖状態になりますが、これらのヒューズには溶断温度があります。

溶断温度つまり作動温度は、72度、120度、280度のいずれかで、HFDの場合は280度のヒューズが用いられています。(FDは72度または120度)

ちなみに、消防設備士試験の問題において、HFDなどの防火ダンパーのヒューズ溶断温度を問う問題が頻出しますので、受験を検討している人はよく覚えておきましょう。

HFDをはじめとする防火ダンパーの設置義務基準

HFDなどの防火ダンパーは以下の要件に該当する場合において設置する義務が生じます。

・防火区画内で異種用途区画と竪穴区画をダクトが貫通する場合や、ダクトが延焼の恐れがある部分を貫通する場合
・油脂を含む蒸気が発生する可能性がある厨房設備にダクトを設置する場合
・ガス系消火設備がある開口部

ダクトが防火区画を貫通するケース

ダクトが異種用途区画と竪穴区画を貫通するような構造の場合や、延焼する危険性がある部分を貫通する場合は、防火ダンパーを設置しなければいけません。

具体的には、複数階建てのビル内に住居と店舗が混在し、それらをダクトが貫通する場合などが該当します。

また、エレベーターシャフトや階段などの竪穴区画を貫通する場合も同様で、防火ダンパーの設置義務が生じます。

建物内において、ダクトがどのような経路で配置されているかを確認することで設置義務の有無がわかるでしょう。

ダクトが厨房設備に付属しているケース

厨房設備にダクトが付属している場合も防火ダンパーを設置しなければいけません。厨房設備に付属するダクトやその周辺では、油脂を含む蒸気が発生しやすく、炎や煙が伝搬する可能性が高くなります。

ガス系の消火設備がある開口部

酸素濃度を下げることで消火する仕組みのガス系消火設備が設置されている場合も防火ダンパーの設置義務が生じます。

ガス系消火設備は酸素を遮断する、つまり外部とは遮断状態にすることで消火作用が高まります。

室内を閉鎖状態にすると同時に、消火ガスを屋外に漏らさないためにも、防火ダンパーによってダクト部分を塞ぐ必要がある訳です。

防火ダンパーの種類

HFD以外の防火ダンパーの種類についても理解しておきましょう。防火ダンパーには主に以下のような種類があります。

・HFD(排煙用防火ダンパー)
・SFD(煙感知器連動防火ダンパー)
・PFD(消火ガス圧式防火ダンパー)
・FD(防火ダンパー)

HFD(排煙用防火ダンパー)

HFD(排煙用防火ダンパー)は排煙系統のダクトに設置し、炎や煙が280度に達することで作動するダンパーです。

日常的に生じる排気が高温になりやすい厨房などに用いられ、誤作動を防ぐために280度で作動するように設定してあります。

SFD(煙感知器連動防火ダンパー)

SFD(煙感知器連動防火ダンパーまたは防煙防火ダンパー)とは、Smoke & Fire Damperのことで、煙感知器と連動して作動することが特徴です。

無人の環境下であっても、煙感知器が作動するのと同時に機能するため、火災による炎や煙をいち早く防ぐことが可能で、ヒューズ溶断よりも早く対処できる利点があります。

PFD(消火ガス圧式防火ダンパー)

PFD(消火ガス圧式防火ダンパー)は、Piston Fire Damperのことで、ガス系消火設備と連動して作動するダンパーです。

基本的には、消火ガスの放射圧力によって作動する仕組みですが、他の防火ダンパー同様にヒューズが取りつけてあり、72度に達した時点で作動するようにもなっています。

FD(防火ダンパー)

FD(防火ダンパー)は、Fire Damperのことで最も典型的な防火ダンパーと言えます。機能や役割、仕組みなどはHFDとほとんど同じで、唯一の違いがヒューズの溶解温度です。

HFDは高温仕様のため280度であるのに対し、FDは72度、火気を使用する場所では120度に決められています。

FDを設置する場所は、防火区画または延焼する危険性がある部分を貫通するダクトで、すぐに高温になってしまいやすい厨房には用いません。

HFDとFDの違い

HFDについて理解する際に、よくある疑問として「HFDとFDの違い」が挙げられます。HFDとFDの違いは主に以下の通りです。

・ヒューズの溶断温度
・設置場所

HFDのヒューズ溶断温度は280度であるのに対し、FDのヒューズ溶断温度は72度または120度です。

ヒューズの溶断温度が異なる理由は、火気や油脂などを使う厨房においては、平時であっても72度または120度に達する可能性が高く、この結果として誤作動を起こすことが考えられるためです。

このことからHFDは厨房などの排煙用ダクトに設置され、FDは空調や換気用ダクトなどに設置され、それぞれ設置場所が使い分けられています。

HFDとSFDの違い

次によくある疑問として「HFDとSFDの違い」があります。HFDは排煙が280度に達した時点で作動しますが、SFDは煙感知器と連動して作動する仕組みです。

つまり、HFDとSFDの違いは「作動する仕組み」が違うと言えます。また、HFDはヒューズが溶断するまで作動しませんが、SFDは煙感知器が煙を感知するのと同時に作動するため、作動までの時間も違うと言えるでしょう。

ただし、SFDにもヒューズが取りつけられており、煙感知器の作動またはヒューズ溶解のいずれか早い方で作動するようになっています。

HFDは日常的な点検が最も重要

HFDは厨房などと繋がる排気ダクトに設置するため、とりわけ油脂を使う機会が多い焼肉店やラーメン店などは、日常的な点検がとても大切です。

日常的な掃除や機能点検を怠った場合、仮に火災が発生し、排気ダクト内に炎や煙が大量に流れ込むと、ダクト内に付着した油脂に引火し、大きな損害が生じる可能性が否定できません。

HFDの仕組みや設置基準を知ることも大切ですが、最も重要なことは日常点検ということを忘れないでください。

HFDをはじめとする防火ダンパーの点検は、6ヶ月に1回の自主点検(日本防排煙工業会推奨)、そして1年に1回以上の建築設備定期検査(義務)の際に実施しましょう。

HFDの点検義務について

HFDをはじめとする防火ダンパーは以下3つの点検に基づいて実施するようにしてください。とくに、防火ダンパーの汚れや腐食、変形といった外観検査は日常的に実施しましょう。

・日本防排煙工業会推奨の自主点検
・消防用設備点検(ガス系消火設備のみが対象)
・建築設備定期検査

HFDなどの防火ダンパーは厳密には消防用設備等には該当せず、建築基準法が定める建築設備のうちの換気設備という扱いになります。(ガス系消火設備は除く)

このことから、防火ダンパーは消防法で規定されている6ヶ月に1回以上の機器点検、1年に1回以上の総合点検には含まないとする考えもあるようです。

しかし、6ヶ月に1回の自主点検が推奨されていることや、1年に1回以上の建築設備定期検査が義務付けられていることを考えると、消防点検と同じように点検することが望ましいと言えます。

まとめ

HFDは複数ある防火ダンパーのひとつということが分かったと思います。また、HFDは280度で作動する仕組みで、厨房等の排気ダクトに設置されるため、日常的な点検がとても重要な設備です。

HFDなどの防火ダンパーの点検や整備については、消防点検のプロに相談するようにしましょう。

 

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