消防点検コラム

防火管理者

2023.06.26

防火管理者の選任に影響する収容人員について解説

「防火管理者が必要かどうかは何で決まるの?」や「収容人員によって防火管理者を選任するの?」といった疑問を持ったことがある人は多いのではないでしょうか。

消防法では、一定規模以上の防火対象物では防火管理者を選任が義務付けられています。防火管理者は、火災による被害を防止することを目的にした消防計画の作成、さらには防火管理業務の責任を負う、とても重要な存在です。

一方、多忙な建物管理者やオーナーにとって、防火管理者を選任しなくて済むのであれば、それに越したことはないというのも実情でしょう。

そんな防火管理者の選任を決定付ける要因のひとつが「収容人員」です。この記事では、収容人員によってどのような影響が生じるのかや、収容人員の算定方法などについて分かりやすく解説します。

防火管理者とは

防火管理者の選任に影響する収容人員を理解するうえで、防火管理者の選任要件や役割について知っておきましょう。

そもそも防火管理者とは、複数の人が利用する建物において、火災などによる被害を防止するために、防火管理やこれに伴う防火管理業務の計画および遂行の責任者のことです。

防火管理者は国家資格であり、最大2日間におよぶ防火管理講習を修了する必要があります。防火管理者は甲種または乙種の2種類があり、甲種は建物の用途や規模、収容人員にかかわらずすべての防火対象物において防火管理者として活動できるのに対し、乙種は小規模な建物に限定されます。

乙種防火管理者は以下の制限があります。

・乙種防火対象物で特定防火対象物の場合は延べ面積300平方メートル未満、非特定防火対象物の場合は500平方メートル未満のもの
・甲種防火対象物内のテナント等で収容人員が特定用途の場合は30人未満(施設の条件によっては10人未満)、非特定用途の場合では50人未満の事業所

このように、防火管理者は火災被害を防ぐために様々な防火管理業務の責任を負う役割であり、講習を修了し国家資格を保有している者と覚えておくとよいでしょう。

収容人員とは

防火管理者の選定有無を決定する要素のひとつが「収容人員」です。収容人員とは、様々な防火対象物に出入り、勤務、居住する者の数のことを指しており、防火対象物の用途ごとに決められた算定基準によって導き出されます。

算出された収容人員によって、防火管理者の選任をはじめ、設置しなければならない消防用設備等が変わります。

よくある誤解として、対象となる建物にどれだけの人が収容できるかといったことがありますが、あくまでも消防法における収容人員の定義は「防火管理者の選任や消防用設備等の設置基準」を示すために用いられる基準です。

消防法における収容人員を理解するためには、収容人員の算定基準を知っておくことが求められます。

収容人員によって生じる影響

収容人員によって主に以下のような影響が生じることを覚えておきましょう。

・甲種防火対象物または乙種防火対象物の区別
・防火管理者の選任
・消防用設備等の設置

上記それぞれについて解説します。

甲種防火対象物または乙種防火対象物の区別

収容人員によって「甲種防火対象物または乙種防火対象物の区別」が決まります。防火対象物は、収容人員によって甲種または乙種に区分され、この区分によって防火管理者の選任条件である講習区分が変わります。

例えば、甲種防火対象物の場合、防火管理者は「甲種防火管理講習の課程を修了した者等」となり、乙種防火対象物の場合は「乙種または甲種防火管理講習の課程を修了した者等」となります。

防火管理者講習の甲種と乙種では、講習の内容や講習で受けることのボリュームに違いがあり、一般的には甲種の方が時間も労力もかかるとされています。

甲種はおおむね10時間(2日間の講習)であるのに対し、乙種はおおむね5時間(1日の講習)です。

講習内容については、甲種は防火管理の意義や制度、訓練、教育、そして消防計画など幅広い内容であるのに対し、乙種は防火管理業務の基礎的な知識と技能といったように範囲が限定されています。

参考:防火管理講習、一般社団法人日本防火・防災協会

防火管理者の選任

「防火管理者の選任」も収容人員によって決まります。例えば、飲食店やホテルといった特定防火対象物に該当する建物の場合は「収容人員30人以上」で、学校や工場といった非特定防火対象物の場合は「収容人員50人以上」で、それぞれ防火管理者の選任が義務付けられます。

ただし、特別養護老人ホームや、自力避難困難者が入所する小規模社会福祉施設などは「収容人員10人以上」と、要件が厳しく設定されているので注意が必要です。

消防用設備等の設置

収容人員によって「消防用設備等の設置」も決まります。具体的には、収容人員によって避難器具や非常警報装置といった消防用設備等の設置が義務付けられます。

2階にある病院や老人福祉施設などにおいては、収容人数が20人以上の場合、避難はしご、緩降機、避難タラップなどを設置しなければいけません。

避難器具は火災などの非常時に有用である一方、ビルのオーナーにとっては設備投資や、継続的な点検義務など、金銭的な負担や法令遵守といった責任が生じることも事実です。

このような負担を可能な限り減らしたうえで法令を遵守し、安全性を確保するためにも、収容人員の算定方法を知っておくことが大切です。

収容人員の算定方法については次で解説します。

収容人員の算定要領

収容人員の計算方法は主に以下のような要素を用います。

・床面積
・固定椅子の数や長椅子の長さ
・従業者の数
・ベッド数
・施設を利用する人数など

注意すべきポイントとして「建物の用途ごとに算定基準が異なる」ことが挙げられます。例えば、映画館とホテルでは収容人員の算定基準が異なります。

そのため、消防法施行規則第一条の三で定められている、以下の収容人員の算定要領を参考にしてください。

参考:消防法施行規則第一条の三

収容人員の計算方法例

実際に収容人数を計算した例を紹介します。

例1

以下の条件で仮定した場合、先述した算定方法の表を参考にすると、収容人員は75人という計算結果になります。

・建物の用途:百貨店
・従業員:30名→従業員の数を基準にして「30人」
・休憩室:60平方メートル→床面積を3で割り「20人」
・その他のスペース:100平方メートル→床面積を4で割り「25人」

例2

以下の条件で仮定した場合は、上記同様の計算方法の結果、収容人員は90人となります。

・建物の用途:旅館・ホテル
・洋室:30室→ベットの数を基準にして「30人」
・飲食スペース:固定椅子20脚→固定椅子の数を基準にして「20人」
・その他のスペース:120平方メートル→床面積を3で割り「40人」

このように収容人員の算定方法は、建物の用途ごとに基準が決められていますので、それぞれの基準に当てはめるようにして計算します。

まとめ

防火管理者の選任にも影響する収容人員について解説しました。収容人員については、計算式を用いると言うよりも、消防法で規定された基準に落とし込むようにして算定します。

収容人員を計算する場合は、この記事で紹介した「収容人員の算定要領」の表を活用してみてください。

 

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