消防点検コラム

消火器

2023.06.26

消火器の能力単位を計算するのに欠かせない単位面積とは?

消火器の設置数を知るうえで必ず必要になるのが必要能力単位の計算です。能力単位とは消火器の消火性能を示す数値指標で、消防法ではこの能力単位を用いて消火器の設置数が決まります。

必要能力単位を算出するのに必要となるのが「単位面積(能力単位算定面積)」と呼ばれる面積の基準です。

この面積の基準である「単位面積」を知っておかなければ必要能力単位の算定はできません。つまり、消防設備士乙種第6類の試験で問題が解けない事態に直面してしまいます。

そこでこの記事では、消火器の設置数を算出するのに必要な「単位面積」について、関連する重要な基準なども含めて分かりやすく解説します。

消火器の設置基準

単位面積を知るうえで最も基本となる「消火器の設置基準」について解説します。消防法では、消火器の設置基準として主に以下のような基準が定められています。

・消火器は各階に設置する

・各部分から歩行距離20メートル以内に消火器を設置する

・消火器は設置場所に適応したものでなければならない

・避難などに支障が生じず、使用する際に容易に持ち出せる場所に設置する

・床面からの高さ1.5メートル以下に設置する

・屋外や厨房といった蒸気やガスが発生するような場所では格納箱に収納し防護対策を施す

このように、消火器には細かな設置基準が定められています。これらの設置基準の根底にあるものが「消火器の設置数」と言えるでしょう。

消火器の設置数は、建物の用途、面積、構造などによって変化するため、一概に記すことはできません。

そのため、消火器の設置数を求めるための、いわば「公式」のようなものが存在しています。この公式に基づいて計算することで、その建物に設置しなければいけない消火器の数が分かる訳です。

消火器の設置が義務付けられる用途と面積

消火器の設置有無については「建物の用途」と「面積」で決められます。従って、まずは「消火器の設置が必要か否か」を判断する必要があります。

消火器の設置が必要かどうかは、以下の表のように規定されています。ちなみに、地階、無窓階、3階以上の場合は条件が厳しくなり「50平方メートル以上」になるので注意しましょう。

防火対象物の用途
強制的に必要な用途劇場(映画館、演舞場、演劇場)、キャバレー、遊技場、性風俗、カラオケ、飲食店、老人福祉施設、地下街、文化財
150平方メートル以上で必要になる用途

*地階、無窓階、3階以上の場合は50平方メートル以上

集会場、百貨店、旅館、ホテル、共同住宅、病院、デイサービス、特別支援学校、蒸気風呂、一般浴場、工場、スタジオ、車庫格納庫、倉庫
300平方メートル以上で必要になる用途

*地階、無窓階、3階以上の場合は50平方メートル以上

学校、図書館、車両停車場、神社、事務所、美容室、エステ、整骨院など

このように、消火器の設置については、まずは上記表のように「消火器の設置が必要か否か」を判断することになります。

消防設備士試験においても「消火器の設置有無」を問う問題は頻出ですので、基本情報として覚えておくことをおすすめします。

能力単位とは

消火器の設置について欠かせないものが「能力単位」です。能力単位とは「消火器1本あたりの消火性能を数値化したもの」で、消火器の種類によって異なります。

例えば、一般的に用いられることが多い「粉末10型消火器」の普通火災に対する能力単位は3で、「粉末6型消火器」は2となります。

能力単位は消火器を製造販売しているメーカーによって、消防法で規定されている測定方法に基づいて計算され、消火器本体のラベルに記載されています。

具体的には、ラベル上に「能力単位A-3」や「能力単位B-7」といったような表記がされており、この場合のA-3は普通火災における能力単位が3、B-7は油火災における能力単位が7という意味です。(Aは普通火災、Bは油火災、Cは電気火災で区分されている)

消火器の能力単位の使い方は、建物の面積を単位面積(能力単位算定面積)で割った結果、すなわち「必要能力単位」と照らし合わせるようにします。

例えば、必要能力単位が30となった場合、先述した「粉末10型消火器(能力単位3)」が10本(30÷3=10)となります。

消火器の能力単位はラベルに記載されているものを読み取るだけですが、「必要能力単位」の算出は計算が必要です。

この「必要能力単位」の計算については次で解説します。

必要能力単位の求め方

消火器の設置数を求めるためには「必要能力単位」を算出する必要がありますが、これを求めるために以下のふたつを用います。

・建物の延べ面積または床面積
・単位面積(能力単位算定面積)

計算式は以下の通りです。

・必要能力単位=建物の延べ面積または床面積÷単位面積(能力単位算定面積)

上記の計算式で不可欠となるのが「単位面積(能力単位算定面積)」です。単位面積がなければ必要能力単位を求めることができません。

また、用いる単位面積を間違えると、誤った必要能力単位が算出され、結果的に消火器の設置数も違うことになります。

仮に、誤った必要能力単位に基づいて消火器を設置してしまうと、消防法違反に該当する可能性があるため、極めて重要な計算と言えます。

ちなみに、消防設備士試験(乙種第6類)においては、試験問題にこのような計算問題も出ることがあるため、しっかり対応できるようにしておきましょう。

単位面積(能力単位算定面積)とは

必要能力単位の算出に不可欠なのが「単位面積(能力単位算定面積)」です。単位面積とは、建物の用途によって3つに区分(50、100、200平方メートル)され、3つそれぞれに規定された面積のことを指しています。

3つの区分における単位面積は、主要構造部が耐火構造で、なおかつ内装に「難燃材料(不燃材料または準不燃材料)」を用いている場合、つまり防火性能が高いとみなされる防火対象物の場合は単純に倍化されます。

具体的には、以下の一覧表のように区分され、それぞれの単位面積が規定されています。

防火対象物の用途単位面積(能力単位算定面積)単位面積(能力単位算定面積)*主要構造部が耐火構造かつ内装が難燃材料の場合
劇場、キャバレー、パチスロ、風俗、カラオケ、個室ビデオ、地下街、準地下街など50平方メートル100平方メートル
集会場、飲食店、百貨店、物販、旅館、共同住宅、病院、助産所、デイサービス、特別支援学校、蒸気浴場、一般浴場、工場、スタジオ、車庫、倉庫など100平方メートル200平方メートル
学校、図書館、車両停車場、神社、事務所、美容師、その他の事業所など200平方メートル400平方メートル

このように、必要能力単位を計算する場合は、対象となる防火対象物の単位面積がどれに該当するかを判断しなければいけません。

仮に、消防設備士試験を受験する場合は、上記一覧表を暗記し、適切な単位面積を用いて計算することになります。

単位面積を用いて必要能力単位を計算する具体例については次で解説します。

単位面積を用いた計算の具体例

実際に、単位面積を用いて必要能力単位を求めてみましょう。

例題1

延べ面積3,000平方メートルを超える、難燃材料が用いられていない映画館の必要能力単位はいくつでしょうか?

この問題に解答する場合、以下のロジックで回答を導くことになります。

1.消火器が必要か否かを一覧表に基づいて判断する→必要
2.対象建物の延べ面積を確認する→3,000平方メートル
3.建物の用途を確認する→映画館(劇場)
4.建物の構造を確認する→非耐火構造
5.一覧表に基づいて単位面積を選ぶ→50平方メートル
6.必要能力単位の計算式に当てはめる→3,000÷50
7.必要能力単位を計算する→60

よって、回答は「60」となります。必要能力単位が60ということは、能力単位が3の消火器の場合は20本と言えます。

仮に、上記の問題が、耐火構造でなおかつ難燃材料が用いられている映画館だとしたら、どうなるでしょうか?

耐火構造で難燃材料を用いている建物の場合、防火性能が高いと判断されるため、単位面積が倍になります。(実質的な緩和措置)

つまり、単位面積は50平方メートルの倍、100平方メートルを用いる訳です。これを計算式に当てはめると、3,000÷100となり、必要能力単位は30になります。

必要能力単位が30ということは、能力単位が3の消火器だと10本設置する必要があることが分かるでしょう。

例題2

延べ面積1,000平方メートルの図書館に対し消火器はいくつ必要でしょうか?(非耐火構造)

以下のロジックを使って回答します。

1.消火器が必要か否かを一覧表に基づいて判断する→必要
2.対象建物の延べ面積を確認する→1,000平方メートル
3.建物の用途を確認する→図書館
4.建物の構造を確認する→非耐火構造
5.一覧表に基づいて単位面積を選ぶ→200平方メートル
6.必要能力単位の計算式に当てはめる→1,000÷200
7.必要能力単位を計算する→5

従って、能力単位が3の消火器であれば2本となります。仮に、上記の問題が耐火構造および難燃材料を用いている図書館だとした場合、計算式は1,000÷400となり、必要能力単位は2.5です。

必要能力単位の小数点は「切り上げ」と決められていますので、必要能力単位は3となり、能力単位3の消火器が1本必要となります。

例題3

延べ面積150平方メートル以下の倉庫には何本の消火器が必要でしょうか?

この問題に解答する場合、以下のロジックで回答を導くことになります。

・消火器が必要か否かを一覧表に基づいて判断する→不要

よって、回答は0本となります。

このように、単位面積を用いて必要能力単位を求める場合は、回答に向けたロジックに当てはめることがポイントです。

消防設備士試験では紹介した例題1から例題3のような簡単な問題は出題されませんが、解き方の基本を知るためには有効ですので活用してください。

まとめ

単位面積は、消火器の設置数を算出する際に必ず必要になります。単位面積については、一覧表を暗記するのがおすすめです。

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