消防点検コラム

COLUMN

2023.05.31

火災報知器のボタンを押すと何が起こる?仕組みや戻し方も解説

「火災報知器のボタンは押すとどうなるの?」や「火災報知器ボタンの復旧方法はどうやるの?」といった疑問を持ったことがある人は多いのではないでしょうか。

火災報知器のボタンは、火災を発見した人が速やかに火災発生を報知するために使用するもので、多くの人にとって非常に身近な消防用設備のひとつと言えます。

一方で、ボタンを押すと実際にどのような仕組みで火災警報が発せられるのかや、どんな影響が生じるのかまでを正しく理解できている人は少ないようです。

そこでこの記事では「火災報知器のボタン」について、消防点検のプロが初心者にもわかりやすく解説します。

火災報知器のボタンとは

火災報知器のボタンとは、自動火災報知設備の「発信機」のことを指しています。その多くは、建物の廊下や出入口付近等の壁に埋め込むようにして設置してあります。

火災報知器のボタンは、赤色の丸形で中央部分にはプラスチックカバーが付いており、そのカバーには「強く押す」と記載されています。

火災報知器のボタンすなわち発信機の目的は、火災を発見した人がボタンを押し、周囲に異常を知らせることです。

ボタンを押すと、ゴング式のベルがけたたましい音で鳴ったり、大型ビルなどではサイレンが鳴ったりし、火災発生を周知するための火災放送などが流れます。

このように、火災報知器のボタン(発信機)は「人が火災発生を周囲に伝えるために使うもの」と考えてよいでしょう。

火災報知器のボタンについては、その仕組みや影響、そしてボタンを構成する設備についても理解することが大切です。

火災報知器ボタンの構成については、次で解説します。

火災報知器ボタンの構成

火災報知器ボタンの構成を理解するには「総合盤」について知っておきましょう。火災報知器のボタンは、それ単体で可動する訳ではありません。

あくまでも、大がかりな自動火災報知設備を構成する設備の一部です。自動火災報知設備を構成する複数の設備が、どのように結びついているかを理解すると、よりわかりやすくなります。

火災報知器のボタンすなわち発信機は「総合盤」と呼ばれる設備のうちのひとつに該当します。

総合盤は3つで構成されています。常時赤いランプが点灯している「表示灯」、総合盤の中にあるスピーカー等の「音響装置」、そしてボタンの「発信機」です。

これら3つはひとつの収納箱に収まった状態で、建物内にある廊下等の壁に埋め込まれています。

この総合盤は、管理人室や防災センター室などに設置されている「受信機(制御盤のようなもの)」と繋がっており、ボタンが押された時には受信機が信号を受信して、非常放送や消防署への通報が自動的に行われます。

つまり、火災報知器のボタン(発信機)は「火災発生の異常を周囲に知らせるスタート地点」のような存在と考えるとよいでしょう。

火災報知器のボタンの設置基準

火災報知器のボタン(発信機)は、消防法によって細かく設置基準が定められています。知っておきたい設置基準としては、主に以下のようなものが挙げられます。
・各階で、その階の各部分から発信機までの歩行距離が50メートル以下
・多数の人の目につきやすいよう廊下や階段、出入口付近に設置する
・消火栓がある場合は、その直近に設置する
・押しボタン(発信機)の位置は、床面から0.8メートル以上、1.5メートル以下
・発信機の直近に「表示灯」を付ける
・色は赤色

上記のなかで注意すべき点として、発信機の色があります。発信機の色は赤色とされており、建物の内装や雰囲気に合わせて別の色に塗りなおしたり、シールで覆ったりすることは許されません。

参考:消防法施行規則第二十四条八の二

火災報知器のボタンを押すとどうなるの?

火災報知器のボタンを押すとどのようなことが起きるのか、具体例を解説します。火災報知器のボタン(発信機)は、自動火災報知設備を構成する設備のひとつであることから、自動火災報知設備が作動することをイメージするとわかりやすくなるでしょう。

1.火災報知器のボタン(発信機)を押す
2.受信機が火災信号を受信する
3.火災放送が流れる、または非常ベルが鳴動する
4.消防署へ自動通報される(例外有)
5.防火扉等の設備が作動する(例外有)

上記はあくまでもひとつの例です。消防署に自動的に通報する自動通報装置などがない場合は、このようなことにはなりません。

また、発信機を押したからといって一斉にスプリンクラー設備が作動して、建物内が水浸しになることもありません。

火災報知器のボタンを押すことによる影響を理解するうえでポイントとなるのが「発信機を押すということは火災確定である」ということです。

例えば、発信機を押すことではなく、熱感知器や煙感知器による火災感知の場合は、火災確定の前に「火災未確定」という段階を踏むことになります。

火災未確定の段階を経る理由は「余計なパニックを防ぐこと」や「火災感知器類の誤作動の可能性があるため」です。

このような、火災未確定の場合は「発報放送(火災感知を知らせる)」を経て「火災放送(火災発生を知らせる)」に移行しますが、ボタン(発信機)を押した場合は、発報放送を経ることなく、即座に火災放送が流れます。

発報放送をスキップするのは「ボタン(発信機)は火災を発見したヒトによる操作でしか作動しない」ということが前提にあり、いたずら等でない限り、感知器類と比べて火災発生の現実度が極めて高いことが理由です。

従って、火災報知器のボタンを押すということは「周囲に火災確定を知らせる」意味があり、思わぬ誤解やパニックを招く可能性を否定できません。

このようなことにも対処できるよう、火災報知器のボタンの戻し方や復旧方法についても知っておくことをおすすめします。

火災報知器ボタンの戻し方については、次で詳しく解説します。

火災報知器ボタンの戻し方

火災報知器のボタンの戻し方および復旧方法のポイントは「発信機の復旧」と「受信機の復旧」のふたつです。

厳密には、メーカーによって異なることや、発信機のタイプでも変わりますが、原則として「発信機の復旧」と「受信機の復旧」を頭に置いておくとよいでしょう。

発信機の復旧

発信機の復旧は、発信機(総合盤の一部)側で実施する作業です。具体的には、発信機付近に付いているカバーを開けて、元の状態に戻すための「ツメ」を切り替えることで完了します。

メーカーによっては、発信機ボタンの真上に、蓋でカバーされた状態の「復旧スイッチ」等が備え付けられているパターンもありますが、作業そのものは容易です。

基本的には、発信機だけ復旧しても受信機では異常を知らせる状態が続いていますので、続いて「受信機の復旧」も対応してください。

受信機の復旧

受信機の復旧は、受信機(管理人室等)側で実施する作業です。受信機はメーカーによって様々な表記やボタンがあるため、一概に示すことはできませんが、基本的な構造は共通しています。

多くの場合「復旧ボタン」を押すことで完了します。古いものだと「復旧スイッチ」のようにツメで切り替えるパターンも考えられます。

受信機の復旧においてポイントとなるのが「発信機の復旧を終えてから」ということです。例えば、受信機の復旧ボタンを押したにもかかわらず、非常ベルが鳴りやまないという場合は、発信機を復旧させてから、受信機を復旧すると解消されます。

このように、火災報知器のボタン(発信機)を戻すことは、作業としては難しいものではありません。

しかし、発信機側および受信機側の両方で復旧作業が必要となりますので、注意するようにしましょう。

火災報知器ボタンを押すことは罪にならない

火災報知器のボタンを押すことは正当な理由がある限り罪にはなりません。結果として、火災を誤認した場合(炎や煙が出ているように見えた等)や、勘違いしてしまった等の理由であっても罪にはなりません。

建物管理者や地元自治体関係者は、悪意がない通報をした者を咎めたり、混乱の責任を追及したりすることはできません。

一方、悪意を持ってボタンを押す、いたずら、さらには周辺を混乱させる目的などで押した場合は「威力業務妨害罪」で罰せられます。

この場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されるので、火災発生時以外では絶対に押さないようにしましょう。

また、消防法第18条および第39条では「何人も、みだりに火災報知器、消火栓、消防の用に供する貯水施設又は消防の用に供する望楼若しくは警鐘台を使用し、損壊し、撤去し、又はその正当な使用を妨げてはならない。」そして「第18条第1項の規定に違反して、みだりに火災報知器、消火栓又は消防の用に供する貯水施設を損壊し、又は撤去した者は、これを5年以下の懲役に処する。」とあります。

建物管理者は、いたずら防止の目的であったとしても、発信機を隠すようなことをしたり、目立たなくする改造行為、さらには自動火災報知設備の電源を切ったりするようなことはしてはいけません。

とくに、小さな子どもが興味本位で押してしまったり、悪ふざけで押してしまったりしないよう、関係する大人たちが日ごろから指導することも大切です。

引用:消防法第十八条・第三十八条

まとめ

火災報知器のボタンは、自動火災報知設備を構成する設備のひとつである「発信機」のことで、火災発生(火災確定)を周囲に知らせるためのものです。

火災発生時にボタンを押すだけで自動的に周辺へ報知されるため、一刻を争うなような事態の場合はとても重要な役割を果たします。

このようなことから、発信機の設置や点検整備は欠かすことができません。非常時でも円滑に作動するよう、日頃の点検は消防点検のプロに依頼することをおすすめします。

 

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