消防点検コラム

消防用設備

2022.12.22

自動火災報知設備の設置基準や設置対象物は?

「自動火災報知設備の設置基準が複雑でよくわからない」や「自動火災報知設備の設置は義務なの?」といった疑問を持ったことはありませんか?

 

自動火災報知設備(自火報)の設置基準は、建物の広さや用途といった様々な条件で異なるため、すべての建物に対して一概に決まった基準が適用されるとは限りません。

 

また、同じ建物であっても部屋の仕切りかたや、その他の消防用設備との組み合わせによっても基準が変わります。

 

この記事では、初心者にもわかりやすく自動火災報知設備の設置基準、さらには設置基準が緩和されるケースなどについても解説します。

 

この記事を読めば、最低限の知識として知っておきたい「自動火災報知設備の設置基準」についてわかるようになります。

自動火災報知設備とは

 

自動火災報知設備は複数の装置によって構成されており、主に以下のような装置が該当します。

・受信機
・中継器
・発信機
・表示灯
・感知器
・音響装置
上記それぞれについて解説します。

 

受信機

 

自動火災報知設備を構成する機器のひとつ目が「受信機」です。受信機は「火災受信機」と呼ばれることもありますが、同じ物を指しています。

 

受信機は火災時に感知器から発せられる火災信号を受信し、警報ベルを鳴らしたり、防火防炎シャッターを下ろしたり、さらには消防署や警備会社などへ自動的に通報するといった役割があります。

 

また、建物内のどの区域(部屋)で火災が起きているのかを一目で確認できるタイプや、

 

ビルやマンションといった建物の場合、管理人室や防災センター室、中央管理室などに設置されていることがほとんどです。

 

受信機は自動火災報知設備の心臓部と言え、あらゆる操作や管理が出来るようになっています。

 

中継器

 

「中継器」も自動火災報知設備を構成する機器のひとつです。中継器はその名の通り、感知器からの火災信号を受けて、受信機へ送信する役割があります。

 

中継器は供給電源方式(電源の有無)や、信号の処理方式(蓄積式、アナログ式等)で大きく区分されますが、基本的には「感知器からの信号を受信機へ伝える機器」と言えます。

 

中継器は火災信号を受信開始してから発信開始まで5秒以内に作動することが定められています。

 

火災発生時に初期消火や避難といった面で混乱が起こりやすい大きな建物やビルにおいては中継器の存在が非常に重要と言えます。

 

発信機

 

自動火災報知設備を構成する機器のひとつが「発信機」です。発信機はビル内で目にすることが多い壁に備え付けられている非常ボタンと表示灯、音響装置が一緒になった物を指しています。

 

火災が発生した際に人が非常ボタンを押すことで火災信号が発信される仕組みで、火災発生場所に人がいる場合は、感知器が火災を感知するよりも、さらに迅速に火災発生を知らせることが可能です。

 

発信機は人的に火災信号を発する「非常ボタン」、火災発生を知らせるための「音響装置」、そして発信機の設置位置をわかりやすく知らせるための「表示灯(赤色灯)」の3つで構成されています。

 

これら3つが収納されている箱状の物を「総合盤」または「機器収納箱」と呼ぶことを合わせて覚えておきましょう。

 

表示灯

 

「表示灯」も自動火災報知設備を構成する機器のひとつです。先述した「発信機」と一緒に設置されている赤色灯のことで、非常時であっても非常ボタンがどこにあるか判別しやすいようになっています。

 

感知器

 

自動火災報知設備を構成する機器には「感知器」もあります。感知器は火災感知器と呼ばれることもありますが、廊下や部屋の天井に設置されているドーム型の白い機器のことです。

消防法において住宅用火災警報器の設置基準は義務付けられています。改正消防法により、2006年以降の新築住宅が対象になった後、2011年以降は全市町村で設置が義務付けられました。なので、住宅用火災警報器をイメージされるとわかりやすいのではないでしょうか。

 感知器は「煙感知器」、「熱感知器」、そして「炎感知器」の3つに大きく分けられますが、一般的には煙感知器または熱感知器のいずれかと思ってよいでしょう。

 煙感知器は、火災発生時に発生する一定量以上の煙を感知することで作動し、火災受信機または中継器に火災信号を送信します。

 

感知器内部に煙が充満すると、内部にある光電素子の受光量が変化することで反応する仕組みで、感知器内部にある送光部と受光部の間に煙が入ると光が遮られ、光が一定量以上「減光」することで作動します。

 

ちなみに、タバコの煙や料理の煙で誤作動を起こさないようにリーク孔と呼ばれる煙を逃がす穴が開いているため、少量の煙では反応しないようになっています。

 

熱感知器は、感知器内の温度上昇や一定以上の温度差が生じると火災信号を発信する仕組みです。

 

温度上昇率で反応する物を「差動式熱感知器」、温度差によって反応する物を「定温式熱感知器」と呼びますが、いずれも煙には反応しません。

 

熱感知器は誤作動を防ぐために喫煙室やキッチン、事務所、押し入れ、そして水気が多い場所に設置されることが多いのが特徴です。また、エアコンの吹き出し口や換気口などの位置から、1.5メートル以上離しましょう。住宅用火災警報器に関しては、市町村の火災予防条例により、キッチンや寝室、その他の居室にも設置が必要な地域があります。詳しくは管轄の消防本部・消防署へお尋ね下さい。

 

音響装置

 

 

自動火災報知設備には「音響装置」も含まれます。音響装置はベルやブザー、サイレン、音声案内等を発するための機器です。

 

多くはスピーカーのような外観をしており、非常時でも周辺に異常が伝わるような構造になっています。

 

音響装置は、発信機と表示灯と一緒になった「総合盤」を構成する機器のひとつとして覚えておきましょう。

自動火災報知設備が作動する流れ

 

自動火災報知設備を構成する機器の種類と役割が分かったところで、火災発生時にどのように自火報が機能するのかを解説します。

 

自動火災報知設備が作動するのは以下の流れです。

1.感知器または発信機により火災信号が発信される
2.中継器または受信機が火災信号を受信する
3.受信機が火災警報(ベルやサイレン、音声等)を発する
4.消防署への通報やエレベーター停止、オートロック解除、非常用シャッター降下などが行われる(連動装置がある場合)
初期消火や避難が円滑に進むように一連の流れは数秒内に行われる仕組みになっています。上記の流れすべてを人的におこなうと火災被害が大きくなる可能性が高いことから、ビルや大型建物といった場所では自動火災報知設備の設置が義務付けられている訳です。

 

自動火災報知設備の設置基準

 

自動火災報知設備の設置基準は大まかに以下の基準で区分されています。

・建物の面積による基準
・収容人数による基準
・指定可燃物等の数量による基準
基本的には上記3つが基準になりますが、建物の用途によっても異なるため、非常に複雑な組み合わせになります。

 

さらに、火災予防条例といった各地方自治体が定める条例によっても基準が変わる可能性があることから注意が必要です。

 

このように、自火報の設置基準の複雑さもあるため、すべての建物に対して一概に当てはめられないことを把握しておいてください。

 

次で、主な設置基準について解説します。

 

自動火災報知設備の設置基準(具体例)

 

自火報の設置基準は「強制的に設置が必要なケース」と「通常の設置基準」そして「通常の設置基準の例外」で区分するとわかりやすくなるでしょう。

 

強制的に設置が必要なケース

 

自動火災報知設備が強制的に設置しなければいけないケースは以下の通りです。

・11階以上の階
・カラオケボックス等
・避難に介助が必要な病院
・避難に介助が必要な有床診療所
・病院、有床診療所、無床診療所
・老人デイサービスなどで入居又は宿泊ができるもの
・航空機などの格納庫
・文化財
・特定一階段等防火対象物(屋内階段が1つしかなく、1階と2階以外の階に遊技場や飲食店、販売店舗等の特定用途部分がある建物)
上記に共通する点として「火災発生時に甚大な被害が想定される」ことが挙げられます。自火報がなければ危険とされるような場所は設置基準が厳しいと言えるでしょう。

 

通常の設置基準

 

通常の設置基準は「面積」が基準になります。

 

延べ面積防火対象物
300平方メートル劇場、集会場、キャバレー、性風俗特殊営業、料理店、飲食店、物品販売、百貨店など
500平方メートル共同住宅、学校、図書館、一般浴場、工場、車庫など

 

通常の設置基準の例外

 

通常の設置基準ながら条件によってはより厳しい設置基準が当てはまる場合もあります。設置基準が厳しくなる主な条件は以下の通りです。

・無窓階
・地下階
・3階以上
上記にあてはまる場合は、設置基準に用いられる「面積」が狭くなります。例えば、キャバレーの場合、300平方メートル以下であれば自火報の設置義務はありません。

 

しかし、無窓階や地下階、または3階以上にあるキャバレーの場合は「100平方メートル」が基準になるため、自火報の設置義務が生まれます。

 

したがって「無窓階、地下階、3階以上」のいずれかに該当する場合は自火報の設置基準が厳しくなるため注意が必要です。

 

消防設備士の甲種4類の試験では頻出ポイントとされるほど複雑な部分のため覚えておきましょう。

 

参考:火災警報設備等に関する主な規定について総務省

 

自動火災報知設備を後付けする

 

自動火災報知設備の設置については、消防点検の結果、設置しなければいけないことが判明することもあります。

 

既存の建物に対して新たに自火報を設置する場合、専門業者に依頼し「自火報をの後付け工事」をしてもらわなければいけません。

 

工程

 

自火報の設置工事は基本的には以下のような工程です。

・点検口の設置
・天井内に配線を設置
・総合盤や感知器の設置
・受信機の設置
いずれも壁の穴あけや天井裏へのアクセスといった大掛かりな工事になります。

 

費用

 

自火報の後付け工事の費用は目安として100万円程度とされていますが、穴あけや配線のしやすさなどによって条件がことなりますので、複数の業者に見積もってもらうことをおすすめします。

 

まとめ

 

自動火災報知設備の設置基準はとても複雑です。同じ用途の建物であっても窓の有無や地下階によって設置基準が変わるため入念なチェックが求められます。

 

消防点検で指摘や指導を受けないようにあらかじめ確認するようにしてください。

消防設備点検なら全国消防点検.comまで


全国消防点検.comでは消防設備点検のご相談を承っております。

「古い建物でいつ設置されたものかわからない・・・」
「消防設備についてよくわからないし、点検もしているのかな?」

などなど、些細なことでもご相談を承っております。

消防点検に限らず、様々な設置や点検等も承っており、
依頼する業者をまとめたい、点検類をまとめて依頼したいなど幅広くご相談が可能です

まずはご相談だけでも大歓迎です!
どうぞお気軽にお問い合わせください。

かんたん10秒ご相談・見積もりフォーム

    • お名前必須
    • お電話番号必須
    • メールアドレス必須
    • 建物の所在地必須
    • ご相談内容必須