消防法
2022.12.22
すべての基礎、消防法とは
火災はいとも簡単に命を奪います。
そんな悲惨な事態をできるだけ未然に防ぐために日本には消防法という法律があります。
この法律があるおかげで、多くの建物に消防設備の設置や点検が義務付けされているんです。
毎年の点検がめんどくさかったり、設置しなければならない消防設備の多さに辟易したりするかもしれませんが、その手間や面倒くささによって人の命や文化、財産が守られています。
人は発生していない事件や事故を軽視してしまう傾向にありますが、消防設備の設置・点検はこれらを防ぐためにも必要なんです。
今回はそんな消防設備等設置のいしずえとなっている消防法についての解説です。
【目次】
1. 消防法とは
2. 消防法における危険物とは
3. 指定可燃物とは?危険物とは何が違う?
4. まとめ
1. 消防法とは
消防法とは、消防設備などの設置や義務、規制について広く基本的な事項を定めている、いわば防災のためのルールブックです。
消防法では一番最初に『この法律は、火災を予防し、警戒し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もって安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。』
とあります。日本は地震大国ということもあり、不意の災害が他の国と比較しても非常に多いです。
火災は、冬場の乾燥や暖房器具の事故以外にも、地震や津波などの災害から派生して発生することもあり、油断できません。
そんな、どこで起きるかわからない火災に対してのルールブックがこの消防法ですが、ときには想像もしていなかった災害や、時代変化に伴い、たびたび改正が行われています。
当初では問題のなかった設備でも老朽化したことによる新たな問題が発生したり、消防設備が少なくてもいいとされていた規模の建物で多数の死傷者が出たりするたびに、丁寧にルール改正が行われた経歴があります。
そのため、消防設備点検などの業務に従事している方は常に最新の情報を追っておく必要があります。
改正された消防法たち
とはいっても、全国ですぐに対応するには無理がありますので、改正は基本的に猶予を持って段階的に行われます。
その中でも今年2022年から使用できなくなったものや今後改正されるルールなどを少し紹介します。
改正されたルールに則っていないと対象の建物が違反扱いになり、各消防本部のホームページで公表されたり、罰則を受けたりする可能性があります。
何よりも、新ルールに乗っ取らないと不要な被害を拡大させてしまう可能性もあります。しっかりと確認しておきましょう。
・旧規格の消火器の廃止
2022年現在、新しく旧規格の消火器を設置することは違反です。
このルールが定められたのはなんと2011年まで遡ります。
現在の消火器規格が定められたのが同年1月1日。
それにともなって旧規格の消火器の設置ができなくなりました。
新・旧製品の見分け方は製造年で、2010年以前のものはすべて旧規格です。
反対に2012年以降のものはすべて新規格です。
間の2011年代に製造されたものは新旧混在しており製造年で見分けることができません。
その場合は適応火災表示のマークが絵で表示されているものが新規格となります。
・二酸化炭素消火設備の基準変更令和5年4月1日から施行
令和に入ってから、二酸化炭素消火設備に係る死亡事故が多発しました。
これを受け、基準が見直され、新たな基準が追加されることになりました。
二酸化炭素消火設備とは主に、電気設備や立体式駐車場などに設置されている消火設備で、水消火が向いていない場所で使用されていました。
特定のシーンには大活躍していた二酸化炭素消火設備ですが、使用すると人体にとって致死量以上のガスを放射します。
そのため使用規則などでも細心の注意が張られていたはずですが、二酸化炭素消火設備の点検時に不幸にも事故が相次いでしまいました。
この事件を受け、設備の技術上の基準の追加と全域放出方式の二酸化炭素消火設備が設けられている防火対象物は、消防設備士等に点検させなければならないこととされました。
2. 消防法における危険物とは
消防法において、取り扱い方法を間違えると火災発生の可能性が高まり、火災になった場合は急激な延焼や爆発を起こしやすい物品は『危険物』として明確に指定されています。
危険物の種類
危険物はその名の通り、使用方法を間違えると火災を引き起こす可能性の高いもののことで、身近にも「引火性液体」と呼ばれる非常に引火しやすい液体があります。
車を動かすのに必要なガソリンや、髪の毛のセットに使うヘアスプレー、接着剤なども実は危険物にあたります。
危険物に該当するものは判別がつくように容器に次のような表示がされています。
・マニキュアの場合
第1類石油類
危険等級2
火気厳禁
・ヘアスプレーの場合
アルコール類
危険等級2
火気厳禁
身近にある引火性液体にはどのような危険性があるのでしょうか。
引火性液体は非常に燃えやすく、静電気の火花でも着火してしまいます。
また、油という特性上、消火に水も使用できません。
そのため、火元から十分に離れ、換気をしながら使用上の注意を守りつつ使用しましょう。
上記の引火性液体は危険物の一部で、その他にも次のような性質を持つものが危険物に該当します。
・火災発生の危険性が高いもの
・火災拡大の危険性が大きいもの
・消火の困難性が高いもの
危険物指定数量まではOK?
家庭でマニキュアなどを使用する際には問題ありませんが、たくさん同じ場所に保管されるとその分危険性が高まります。
そのため、政令により品目ごとに一定の数量が定められています。
この数量のことを『指定数量』といい、指定数量以上の貯蔵・取り扱いは基準を満たし、許可を受けた危険物施設で行わなくてはならないと定められています。
指定数量は市町村条例により決まるので、土地によって最大数量が異なります。
品目により異なりますが、指定数量は200~6000リットルで設定されており、品名が異なる危険物を同一場所で貯蔵・取り扱う場合はそれぞれ指定数量を下回っていたとしても、各々の指定数量における貯蔵量の割合を足したものが1を超えた場合は基準を満たし、許可を受けた危険物施設で行わなくてはなりません。
申請・届け出について
危険物の貯蔵取扱量が指定数量以上になった場合は危険物貯蔵所(取扱所)設置許可申請書及び関係書類を保管する場所の所轄の消防署に提出し許可を受けなければなりません。
指定数量以下であっても、各市町村が決めた割合以上の場合は少量危険物貯蔵取扱届出書及び関係書類を使用・保管する場所の所轄の消防署に提出し、完成検査を受けなければなりません。
少量危険物貯蔵取扱届出書が必要になる数量の基準は各市町村によって異なるので事前にしっかりと確認しておきましょう。
手間がかかる作業ですが、危険物の取り扱いはそれだけ危なく、扱い方を間違えてはいけないということです。
3. 指定可燃物とは?危険物とは何が違う?
消防法では危険物のように『指定可燃物』という分類もあります。
ではどのように危険物との違いがあるのでしょうか。
指定可燃物とはわら製品や木毛その他の物品のことで、火災が発生した場合に一瞬で拡大したり、消火活動が著しく困難になるもの。として定められています。
こちらも危険物と同じように貯蔵や取り扱いについて市町村条例によって定められており、基準を超える場合は届け出を行う必要があります。
しかし危険物と基準の決め方が少し異なり、まず、品目ごとに指定されている数量を超えると、指定可燃物として認定され、位置や構造、その他設備について条例に定められた技術上の基準を遵守する必要があります。
指定可燃物になる量の5倍以上を貯蔵・取り扱う場合は担当区域の消防長に届け出る必要があります。
その中でも、再生資源燃料、可燃性固体類、可燃性液体類、合成樹脂類は指定可燃物となる数量以上を貯蔵・取扱うだけで、位置・構造や設備について市町村の火災予防条例に定められた技術上の基準を順守するとともにあらかじめ消防長(消防署長)に届け出が必要です。
通常は指定可燃物となる量と届け出が必要になる量が異なりますが、上記の再生資源燃料などは指定可燃物となる数量がそのまま届け出が必要な数量になります。
また、今回紹介した5倍という数値はあくまで一例です。
届け出が必要になる基準などは市区町村によって決まっているので必ず所属している自治体の条例を確認してください。
指定可燃物と危険物の違い
指定可燃物は保管する分にはそこまで危険なものではありません。しかし一度火災が発生すると火があっという間に広がり消火が困難になるものばかりです。
危険物は指定可燃物とは異なり、引火を誘発したり、自然発火する可能性が高いもののことです。つまり、危険物に指定されている物品そのものの危険性が高いんです。
また危険物を取り扱うためには危険物取扱者の資格が必要です。
4. まとめ
今回は消防法についてのお話でした。
消防法は火災を防止・発生しても被害を最小限に留めるための創意工夫が施された広範なルールブックです。
その中でも今回は危険物や指定可燃物、ルール改正について解説しました。
一つの記事では紹介しきれないほどの内容が含まれているのが消防法です。
一人で全てカバーするのは大変ですし、間違いがあってはいけません。
消火器や自動火災報知機の設置基準などについても記述されているのが消防法ですが、事故の多発などからルールが改正されることもあるので管轄の消防署や専門の会社などに相談しながら進めてください。
全てに違反しないで施工を行うのはとても大変で、うまくいかないこともあるかもしれません。
しかし、命や建物を守るために継ぎ足し改善されながら出来上がっているものが消防法なのでその手間や大変な施工によって人の命や文化、財産が守られているという意識を持ちましょう。
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