消防点検コラム

消防用設備

2022.10.11

天井裏には必要?火災感知器の種類や設置場所、誤作動の注意点について解説

火災が発生した際、熱や煙を感知して、火事の情報を送り素早く周囲に知らせる「火災感知器」があります。直径10cm程度の円形の物で、天井に取り付けられているのを見かけたことはないでしょうか。火災感知器には、複数の種類があり、重要な役割を果たしています。

そこで今回は、火災感知器の仕組みや種類、火災感知器の仕組みや種類、天井裏に火災感知器が必要なケース、火災感知器の​​設置を免除できるケースなどについて解説します。

【目次】

1. 火災感知器とは?
2. 火災感知器の種類
3. 天井裏に火災感知器が必要なケース
4. 火災感知器が誤動作の原因と対処法

1. 火災感知器とは?

火災により生じた煙、炎を利用して自動的に火災が発生した旨の信号を受信機もしくは中継器または消火設備等に発信するものです。

つまり、火災に対し適切に対応するため、​​火災現象を早期に知らせる重要な​​機器で、自動火災報知設備の一部となっています。

火災感知器は、​​建物の各警戒区域に設置されています。

警戒区域について

警戒区域とは、火災が発生した場合にその場所を特定するため設けられている区域のことです。

火災受信機では、いくつかの警戒区域に分けられて表示されています。
警戒区域の表示窓が光ると、どこで火災を感知したかが分かる仕組みです。

警戒区域の設定は、 消防法施行令21条〔自動火災報知設備に関する基準〕の2項について規定されています。

原則、 防火対象物の2つ以上の階にわたらないとされています。警戒面積は600㎡以下とし、その一辺の長さは50m以下にしなければなりません。

ただし、実務上は消防法施行規則23条で例外規定があります。警戒区域の面積の合計が500㎡以下の場合は、2つ以上の階にわたることが可能です。

2. 火災感知器の種類

火災感知器の種類は、煙感知器、熱感知器、炎感知器の3種類に分けられます。

煙感知器

火災の初期に発生する煙によって自動的に感知するものです。主に天井面に取り付けられます。

煙感知器は、​​光電式スポット型感知器、光電式分離型感知器、光電アナログ式スポット型感知器、光電アナログ式分離型感知器、イオン化式スポット型感知器などがあります。

光電式スポット型煙感知器は、感知器内部に常時LEDが発光し、光の乱反射を用いて煙を​​感知する方式です。

2種は、主に自動火災報知設備用、3種は、主に防火扉や防火シャッター用として使用されています。

光電式分離型煙感知器は、送光部の感知器と受光部の感知器間に光線が遮光され、光線の減り具合を受光部で検知するものです。

イオン化式スポット型煙感知器は、煙濃度が一定の値以上となったときに火災信号を発するもので、イオン電流の変化を利用した感知器です。

感度に応じて,1種, 2種、3種があります。

煙感知器の主な設置基準:感知区域は壁から600mm以上の突出物で区画される、壁から600mm以上離隔する、空調や換気吹出口から1,500mm以上離隔する、600mm以上の段差がある場合は、同一感知区域にできません。

熱感知器

周囲温度の上昇をとらえ、火災の熱を感知するものです。つまり、煙から火に移行した後の熱を検出します。主に天井面に取り付けられます。

熱感知器は、差動式分布型感知器、差動式スポット型感知器、定温式スポット型感知器、熱アナログ式スポット型感知などがあります。

温度上昇率をキャッチしてスイッチを入れるのが「差動式」、一定の温度で熱を感知するのが「定温式」です。

差動式は、価格も安く、幅広い箇所で使用されています。

定温式には、感知器の反応する時間により、特種、1種、2種、3種に分かれています。緩やかに温度上昇するような箇所に使用されることが多いです。

熱感知器が発報する温度は、約65度となっています。

熱感知器の主な設置基準:感知区域は壁から400mm以上の突出物で区画される、空調や換気吹出口から1,500mm以上離隔する、400mm以上の段差がある場合は、同一感知区域にできません。

炎感知器

物が燃焼するときに発する炎の放射エネルギーを利用し、火災を感知するものです。

炎感知器は、赤外線式スポット型感知器、紫外線式スポット型感知器などがあります。

赤外線式は、赤外線の変化が一定量以上になったときに作動するもので、紫外線式は、紫外線の変化が一定量以上になったときに作動するものです。

炎感知器の主な設置基準:一般的に天井高さ20m以上の場所に設置され、センサーによって床面にある火種を検出します。

火災報知器と火災感知器の違い

間違いやすいのが火災報知器と火災感知器です。

火災報知器とは、自動火災報知設備や火災警報器などの総称です。

自動火災報知設備

火災による煙や熱を感知器が早期に自動的に感知し、建物内の人に火災を知らせる設備を指します。

自動火災報知設備には、自動火災報知設備システムと住宅用火災警報器の2種類があります。

火災警報器

火災による熱や煙などを感知すると、感知器自体を鳴らす機器です。したがって、室内で警報が鳴り響くのは火災警報器なのです。

火災感知器

火災感知器は、火災による熱や煙などを感知器が感知し、建物内にある受信機に火災信号が送られ、建物全体にベルや音声が流れて火災を警告します。

そのため、火災感知器自体が音を出すわけではありません。

火災感知器の​​設置を免除できる

火災感知器の設置が免除されるケースは、火災発生の可能性が著しく低い部分です。

消防法施行令・施行規則による火災感知器​​設置の免除は、以下のとおりです。

・主要構造部を耐火構造とした建築物の天井裏の部分

・政令別表表第1の防火対象物又はその部分(施行規則第23条第2項で定めるものを除く。)にスプリンクラー設備、水噴霧消火設備又は泡消火設備(いずれも表示温度が75℃以下で作動時間が60秒以内のスプリンクラーヘッドを備えているものに限る。)を、それぞれの技術基準に従って設置したときは、当該設備の有効範囲内の部分。

・天井裏で天井と上階の床との間の距離が0.5m未満

(参考:.e-gov「消防法施行令」)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336CO0000000037

(参考:.e-gov「消防法施行規則」)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336M50000008006

政令第32条の特例によるものは、以下のとおりです。

不燃材料で造られている防火対象物又はその部分で、出火源となる設備や物資がなく、出火のおそれが著しく少なく、延焼拡大のおそれがないと認められるもの

例えば、浄水場、汚水処理場等の用途に供する建築物で、内部の設備が水管、貯水池または貯水槽のみであるもの、屋内プールの水槽部分、プールサイト部分(売店等の付属施設を除く。)及び屋内アイススケート場のスケートリンク(滑走部分に限る。)の上部の部分、

便所、浴室及びこれらに類するものなど。

一方、軒下に設置する熱感知器や、外気が流通する有効に開放された部分から5m以内は、免除される可能性が高いです。

ただし、所轄消防による免除判断の有無が異なる場合もあるため、注意が必要です。

3. 天井裏に火災感知器が必要なケース

​​天井裏は、火災感知器が必要な場合と必要ではない場合があります。

・建物の構造が耐火構造ではなく、天井の高さが0.5m以上

建物の構造が耐火構造ではなく、天井の高さが0.5m以上ある場合に必要となります。

*耐火構造ではないというのは、耐火被覆がない鉄骨造や木造などのことです。

天井裏に火災感知器を設置する場合は、取付け面の高さ、耐火構造・耐火構造以外で感知面積が異なるのです。

例えば、熱感知器の差動式スポット型2種では、取付け面の高さ4m未満、耐火構造70㎡、耐火構造以外40㎡になります。

​​取付け面の高さ4m以上8m未満では、耐火構造35㎡、耐火構造以外25㎡です。

このように使用する感知器の基準をあらかじめ確認することが大切です。

・天井裏の火災感知にメンテナンスが必要

また、天井裏に火災感知器が必要になった場合は、定期点検でメンテナンスが必要になります。

そのため、簡単に点検ができるよう点検口を設け、火災感知器が確認できるように設置しなければなりません。

定期点検なメンテナンスを怠ると、天井裏の火災感知器が誤作動を起こす場合も否定できません。

4. 火災感知器が誤動作の原因と対処法

火災感知器は、さまざまな影響により誤作動を引き起こす場合があります。ここでは、その原因と対処法について解説します。

経年劣化や故障による誤作動

火災感知器を長く使用することで、空気を逃がすためのリーク孔という穴にほこりなどが溜まり、ふさがってしまうことで誤作動を引き起こすケースです。

火災感知器の​​耐用年数は10年程度と言われています。そのため、劣化した火災感知器じゃ、交換して対処するのが良いでしょう。

暖房器具の使用による誤作動

暖房器具を使うことで室内の温度が急上昇し、差動式スポット型感知器が誤作動を引き起こすケースです。

また、エアコンの送風口と感知器の距離が近すぎる場合にも誤作動を起こす可能性があります。

このような誤作動は、エアコンのルーバーを下に向けたり、温度設定を変更する、火災感知器の場所を移動するなどで対処します。

上階からの​​結露や雨水による誤作動

上階から漏れてきた雨水などが火災感知器の内部に入ると、​​結露などの原因となります。

また、内部に溜まった水に電気が通り、接点部分が錆びることによって誤作動を引き起こす場合もあります。

煙感知器の場合も内部に溜まった水蒸気が光の乱反射の影響により、誤作動を引き起こす可能性もあるのです。

一方、​​台風などによる気圧の変化により、空気が膨張し、火災感知器が作動する場合もあるため、注意が必要です。

これらの誤作動は、防水タイプの火災感知器に交換するのもひとつの方法です。

異物の侵入による誤作動

火災感知器に羽虫やクモ、ゴキブリ、それに伴う殺虫剤などの影響により、誤作動を引き起こすケースです。また、タバコの煙によっても誤作動を引き起こす場合もあります。

燻煙式の殺虫剤は、利用する際に火災感知器の周りを覆うようにと説明書に記載されています。

異物の侵入による誤作動は、こまめに掃除するか、虫を侵入させないような工夫が必要です。

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