消防点検コラム

解説

2022.10.11

甲種・乙種とは?防火管理者が必要なケースについて解説

火災発生時の被害を防止するため、一定規模以上の施設に防火管理者が必要となります。防火管理者の資格は、防火対象物の用途・規模により「甲種」と「乙種」に分けられています。
しかし「防火管理者の役割を知りたい。」「甲種と乙種の違いがわからない」など、防火管理者について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

今回は、防火管理者の仕組みや選任要件、防火対象物の種類、甲種防火管理者と乙種防火管理者などについて解説します。

そもそも防火管理者とは?

多数の人が利用する建物や工作物などの施設における火災の被害を防止するため、消火活動の業務を行う責任者を指します。

 

消防法8条1項に基づき、管理権原者は防火管理者の資格を有するものから防火管理者を選任し、任命されたものは防火管理業務を行わなければなりません。

 

防火管理者になるには、以下の方法があります。

・消防法令で定める講習会の課程を修了し、効果測定試験に合格する

・大学、短期大学、高等専門学校などで、防災に関する学科や課程を修めて卒業し、1年以上、防火管理の実務経験を有するもの

・市町村の消防職員で、管理または監督的な立場で1年以上の経験がある

・一定の学識経験を有すること

管理権原者とは?

消防法上の管理について権原を有するもので、防火対象物について正当な管理権を有し、防火対象物の管理行為を法律、契約または慣習上当然行うべきものを指します。

 

例えば、建物の所有者や賃借人、共同住宅の所有者、各住戸の居住者などです。

 

つまり、防火管理の最終責任者となります。

管理権原者の責務

・防火管理者の選任・解任(所轄の消防署長に届ける)

・防火管理者に防火管理に係る消防計画を作成させる

・防火管理業務が法令および防火管理に係る消防計画に従って適正に行われるよう指揮・監督する

防火管理者の選任要件

・防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的・監督的な地位にあるもの

 

大規模な施設や事業所では、総務部長や安全課長、管財課長、工場長などが該当します。小規模な施設や事業所では、社長や専務、支配人、事務長などが該当します。

 

・.防火管理の知識や資格を有するもの

防火管理講習修了者、学識経験を有するものなど。

 

防火管理者の選任・解任の届出を怠った場合は、30万円以下の罰金または拘留に処されます。

防火対象物の種類

防火対象物とは、 消防法第2条第2項で「山林、又は舟車、船きょ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属するものをいう」と規定されています。

 

防火対象物には「特定防火対象物」と「非特定防火対象物」の2つに分けられます。

・特定防火対象物

特定防火対象物とは、消防法施行令別表第一に記載のある不特定多数の者が出入りする用途の建物で、火災が発生した場合などの​​危険を考慮して指定する防火対象物です。

 

特定防火対象物は、原則、建物全体の収容人数 30人以上の場合に防火管理者の選任が必要です。

自力避難困難者が入所する(6)項の特別養護老人ホーム等は、収容人数10人以上の場合に防火管理者の選任が必要です。16イ、16の2項のうち6項口の存するものも含みます。

 

特定防火対象物の一覧

 

(6)項 ロ ⑴ 老人短期入所施設、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム(避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る。)、

有料老人ホーム(避難が困難な要介護者を主として入居させるものに限る。)等

⑵ 救護施設

⑶ 乳児院

⑷ 障害児入所施設

⑸ 障害時支援施設、短期入所施設、共同生活援助施設(避難が困難な要介護者を主として入

居させるものに限る。)

(16)項 イ 複合用途防火対象物のうち、その一部に(6)項ロの用途部分を含むもの

(16 の 2)項 地下街のうち、その一部に(6)項ロの用途部分を含むもの

 

(1)項 イ 劇場、映画館、演芸場又は観覧場

ロ 公会堂又は集会場

(2)項 イ キャバレー、カフェー、ナイトクラブその他これらに類するもの

ロ 遊技場またはダンスホール

ハ 性風俗関連特殊営業を営む店舗等

二 カラオケボックス、個室ビデオ等

(3)項 イ 待合、料理店その他これらに類するもの

ロ 飲食店

(4)項 百貨店、マーケット、物品販売店舗又は展示場

(5)項 イ 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの

(6)項 イ 病院、診療所、助産所

 

ハ ⑴ 老人デイサービスセンター、軽費老人ホーム(⑹項ロ⑴に掲げるものを除く。)、有   料老人ホーム(⑹項ロ⑴に掲げるものを除く。)等

⑵ 更生施設

⑶ 助産施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童養護施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター等

⑷ 児童発達支援センター、情緒障害児短期治療施設、放課後等デイサービスを行う施設等

⑸ 身体障害者福祉センター、障害者支援施設(⑹項ロ⑸に掲げるものを除く。)、地域活動支援センター、福祉ホーム等

ニ 幼稚園、特別支援学校

(9)項 イ 蒸気浴場、熱気浴場等

(16)項 イ 複合用途防火対象物のうち,その一部が特定防火対象物の用途部分を含むもの((6)項、(16 の2)項を除く。)

(16 の 2)項 地下街(その一部に(6)項ロの用途部分を含むものを除く。)

・非特定防火対象物

非特定防火対象物とは、特定の従業員、作業員などが利用する用途の特定用途に該当しない防火対象物です。消防法施行令別表第1に記載されています。

 

非特定防火対象物は、原則、建物全体の収容人数 50人以上の場合に防火管理者の選任が必要です。

自力避難困難者が入所する(6)項の特別養護老人ホーム等は、収容人数10人以上の場合に防火管理者の選任が必要です。16イ、16の2項のうち6項口の存するものも含みます。

 

非特定防火対象物の一覧

 

(5)項 ロ 寄宿舎、下宿又は共同住宅

(7)項 小学校、中学校、高等学校、高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その他これらに類するもの

(8)項 図書館、博物館、美術館等

(9)項 ロ 公衆浴場(蒸気浴場、熱気浴場等は除く)

(10)項 車両の停車場又は船舶若しくは航空機の発着場

(11)項 神社、寺院、教会等

(12)項 イ 工場又は作業場

ロ 映画スタジオ、テレビスタジオ

(13)項 イ 自動車車庫又は駐車場

ロ 飛行機又は回転翼航空機の格納庫

(14)項 倉庫

(15)項 前各項に該当しない事業場

(16)項 ロ イに掲げる複合用途防火対象

(17)項 重要文化財等

(18)項延長50メートル以上のアーケード

甲種防火管理者と乙種防火管理者

防火管理者には、建物の用途・規模に応じて「甲種防火管理者」と「乙種防火管理者」があります。

 

甲種防火管理者

甲種防火管理者は、すべての施設で防火管理者になることが可能です。2日の講習で修了します。

 

講習内容:防火管理の意義及び制度

     火気管理、施設・設備の維持管理

     防火管理に係る訓練及び教育

     防火管理に係る消防計画

 

甲種防火管理者は乙種防火管理者を兼ねることが可能です。

 

甲種防火管理者は、以下の条件が設定されています。

建物収容人数

・特定防火対象物:30人以上

・非特定防火対象物:50人以上

 

建物面積

・特定用途(店舗・飲食店等)対象建物延べ面積300㎡以上

・非特定用途(共同住宅等)対象建物延べ面積500㎡以上

 

乙種防火管理者

乙種防火管理者は、建物の用途と収容人数により、​​比較的小規模の建物を防火管理者として選任が可能です。1日の講習で修了します。

 

講習内容:防火管理の意義及び制度、火気管理、施設・設備の維持管理、防火管理に係る訓練及び教育、防火管理に係る消防計画のうち、基礎的な知識及び技能

 

乙種防火管理者は、以下の条件が設定されています。

建物収容人数

・特定防火対象物:30人以上

・非特定防火対象物:50人以上

 

甲種防火対象物に入居するテナント等のうち、以下に該当する場合は、乙防火管理者の対象となります。

・不特定多数の方が出入りするもので収容人員が30人未満

・事務所、倉庫などで収容人員が50人未満

・自力避難困難者が入所する養護老人ホーム等で収容人員が10人未満

(参考:東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」)

https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/office_adv/jissen/p04.html

 

建物面積

・特定用途(店舗・飲食店等)対象建物延べ面積300㎡未満まで

・非特定用途(共同住宅等)対象建物延べ面積500㎡未満まで

 

また、自力避難困難者が入所する社会福祉施設等は、

 

防火管理者資格には有効期限はありません。

防火管理者の講習について

防火管理者は、​​指定講習期間が主催する防火管理者講習を受講しなければなりません。

 

・講習実施者

都道府県知事、消防本部及び消防署を置く市町村の消防長、総務大臣登録講習機関

 

・講習の種類

甲種防火管理新規講習、乙種防火管理講習、甲種防火管理再講習

 

申込みは、最寄りの消防署や日本防火・防災協会で申し込むことが可能です。ただし、講習の主催によって申請方法や受講料は異なります。

 

講習にかかる費用は、一般的に5,000円~7,000円程度です。

 

講習後は、効果測定試験を受ける必要がありますが、合格しないと資格取得ができないわけではありません。

 

合格に満たしていない場合は、補習を受けることになります。

 

甲種防火管理再講習とは

不特定多数の者が出入りする建物で、建物全体の収容人員が300人以上で、甲種防火管理者の選任を必要とする建物又はテナントの防火管理者のうち、資格取得講習で甲種防火管理者の資格を取得した方を対象としたものです。

(参考:一般財団法人 日本消防設備安全センター 名古屋事務所「防火管理講習」)

https://www.fesc.or.jp/nagoya/koushu_bouka_kanri.html

 

防火管理者を取得した後に行うこと

 

防火管理者として業務を行う場合は、消防署に各種届出を行う必要があり、消防法第8条の2に「防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない」と規定されています。

 

届出者は、管理権原者となります。複数のテナントが入る建物は、建物の所有者とすべてのテナントでそれぞれ届出が必要です。

 

区分所有のマンションでは、管理組合の理事長が届出者となります。

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