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2020.10.21
耐火構造とは?防火構造との違いもわかりやすく解説
【目次】
1. 耐火構造とは外に火災を広げず最後まで形を保つ構造
2. 耐火構造の基準をより詳しくチェック
3. 耐火構造と準耐火構造の違いについて
4. 耐火構造と防火構造の違いについて
1. 耐火構造とは外に火災を広げず最後まで形を保つ構造
耐火構造と防災構造、どちらも「火災が発生しても構造的に強いもの」というイメージは湧いてきますが、どのような差があるのかわかりにくいですね。
まずは耐火構造についてご説明しましょう。
耐火構造は建物内部で火災が発生したとき、火災により建物が炎上したり倒壊することを防ぐ構造になっています。
通常、火災が発生してから消火、鎮火するまでに30分~3時間かかり、その間隣の建物に延焼すると大変なことに。
それを防ぐには建物が燃えない構造であることが重要です。
壁、床、柱が鉄骨、レンガ、石など不燃性の建材であれば燃え広がることがありません。
不燃性建材を使った住宅は火災時の延焼を防ぐことから「周囲の建物にはとても安全」な構造となります。
耐火建築物と準耐火建築物
主要構造部を耐火構造にて建築した建造物を耐火建築物といい、外壁の開口部、かつ延焼(火が燃え移る)してしまう可能性の高い部分にも、防火設備が設置されています。
耐火建築物以外の建築物のうち、その主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段)が準耐火性能を満たし、かつ、延焼の恐れのある開口部(窓やドア)に防火戸など、火災を遮る設備を有する建築物を準耐火建築物といいます。
防火地域では、地上3階建て以上の建物である場合、または階数に関わらず延床面積100㎡以上の建物は耐火建築物、準防火地域では、4階建て以上、または階数に関わらず延床面積1500㎡超の建物は耐火建築物に、延床面積が500㎡超1500㎡以下の建物は階数に関わらず準耐火建築物以上に、延床面積500㎡以下で1または2階建ての木造建築物は外壁や軒裏、開口部などに一定の防火措置が必要になります。
2. 耐火構造の基準をより詳しくチェック
耐火構造の概念がわかったら、外壁や壁で使われる素材(不燃材料)についてさらに詳しく見てみましょう。
外壁
外壁に求められる耐火時間は建物の条件にもよりますが1~2時間です。
壁に使われる不燃材料は主に鉄筋・鉄骨コンクリート、ラス・モルタル、コンクリートブロック、石・れんが、軽量気泡コンクリート製パネルなど。
これら不燃素材を使い認められる工法は
・鉄筋コンクリート・鉄骨コンクリート造
・鉄骨造+ラス・モルタル造
・補強コンクリート製ブロック造
・軽量気泡コンクリート製パネル
これら4つのみです。
耐火時間を延ばすためには素材の厚みを広げなければなりません。
壁
間仕切り壁に求められる耐火時間は建物の階数にもよりますが1~2時間となります。
間仕切り壁も外壁と同じ素材を使うことが基準とされ、工法も外壁と同様です。
また耐力壁とは、建物が地震力や風圧力などの水平力に耐えるために必要な構造力学上重要な役割を担う壁のことで、マンションのように同じ間取りが並ぶような建物の場合、柱・梁で支えるものの戸境壁に耐力壁が入っているケースが多くみられます。
屋根
屋根に求められる耐火時間は建物の高さにかかわらず30分となります。
屋根に使われる不燃素材は鉄筋・鉄骨コンクリート、鉄筋コンクリート製パネル、軽量気泡コンクリート製パネル、ラス・モルタルなど。
屋根に認められる工法は
・鉄筋コンクリート造
・ラス・モルタル造
・鉄筋コンクリート製パネル
・軽量気泡コンクリート製パネル
上記4工法のみになります。
階段
階段の耐火時間は30分で、使用される不燃素材は鉄筋・鉄骨コンクリート、れんが・石、コンクリートブロックなど。
認められている工法は
・鉄筋コンクリート造
・れんが造・石造
・鉄造
上記3工法のみになります。
天井
天井に関しては規定がないため、屋外外壁の基準を当てはめて考えることになります。詳しくは「外壁」をご覧ください。
床
床は建物の階数によって耐火時間が1~2時間と決められています。
使用できる不燃素材は鉄筋・鉄骨コンクリート、鉄材、コンクリートブロック、れんが、石、ラス・モルタルなどになります。
認められている構造は以下の3種類のみです。
・鉄筋コンクリート造
・補強コンクリートブロック造等
・鉄骨造+ラス・モルタル(コンクリート)
これら部位のほかにも、梁や柱に対しても不燃素材を使用しなければなりません。
3. 耐火構造と準耐火構造の違いについて
耐火構造と準耐火構造の違いについてご説明しましょう。
耐火構造は「建物内で発生した火災により建物が倒壊、炎上、延焼することを防止する」この基準が満たされたものをいいます。
これに対して準耐火構造は「火災による延焼を抑制する」ものです。準耐火構造は耐火構造とは違い、建物火災による倒壊を防ぐ必要はなく、延焼を抑制するだけでよいことになります。
この2つの構造の大きな違いは…
・耐火構造は一定時間火災に耐え、その後も建物の形を維持していなければならない(倒壊や延焼の防止)
・準耐火構造は一定時間の火災に耐えたあとは建物が炎上、倒壊してもよい(延焼の抑制)
人が大勢集まる施設や、階数が高く延床面積が大きな建物のほか、建設地が防火地域・準防火地域の場合、かなりの割合で「耐火構造」、「準耐火構造」のどちらかで建てなければなりません。
このようになります。
木造建築は準耐火構造に該当する
耐火性のある素材は鉄筋コンクリートやレンガ、石、鉄などの素材に限られ、木材には耐火性はありません。
それを考えると「木造住宅では耐火構造や準耐火構造の家は作れない」と考えてしまいそうになります。
ところが木造住宅でも準耐火性構造にすることは可能です。準耐火建築物は、柱や梁を「燃えしろ設計」(木の表面が燃えても耐力に支障がないこと)にすることで対応できるため木材をそのまま使うことができます。
主要構造物は耐火被覆ですべて覆うことが必要ですが、2019年6月に改正されたの改正建築基準法により、準耐火構造対応の木造住宅が設計、施工しやすくなりました。
4. 耐火構造と防火構造の違いについて
耐火構造はすでにご紹介したとおり、火災が発生しても一定時間建物が炎上、延焼、崩壊せず、消火後も建物の形が残っている構造をいいます。
防火構造はこの発想とは真逆で「周囲で起きた火災に対して延焼しにくい建築素材を使用し、もらい火を起こさない構造であること」をいいます。。比較的小規模な住宅でも、防火地域・準防火地域で建てる場合に求められるのが「防火構造」です。
建築物の耐火・防火施工は全国消防点検.com
以上のご説明からもわかるように、建物の耐火・防火施工には建築基準法を順守した適切な施工が必要になります。
建築基準法をしっかりと理解し、最適な建築素材の調達、施工管理、検査など法律に適合した建築物を造り上げることは一筋縄ではいきません。
全国消防点検.comでは豊富な施工経験により、立地条件や予算に合わせた建物の耐火・防火施工をおこなうことができます。ご用命の際はぜひ全国消防点検.comまでお問合せください。