消防点検コラム

消防設備

2023.11.30

民泊運営に必要な消防設備って一体何?

はじめに:民泊と消防設備

コロナウイルスが5類に移行したことで、制限されていた海外渡航は身近なものへと戻ってきました。

併せて日本への渡航を考えていた外国人も多く来日しており、インバウンド需要の伸びが期待されています。

インバウンド需要を見越した民泊を開業しようとしている方は注意が必要です。

民泊は形態により、消防法上の扱いが異なります。

今回は、消防法上の扱いを紹介した上で、必要な消防設備について解説します。

民泊とは何か

民泊とは、主に旅行者が一般の民家に宿泊することを指します。

一戸建ての住宅を貸し出したり、マンションの、自身が所有している一室だけ貸し出したりすることなどが一般的です。

民泊の種類と特徴

主に民泊の種類は4種類あります。消防法において、それぞれ用途の取り扱いが異なったり同じ法律に準拠している民泊でも、条件によって取り扱いが異なるの
で、運営する予定の民泊がどの種類に該当するか確認しておきましょう。

住宅宿泊事業法(民泊新法)による民泊

住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づくこの民泊は、年間180日以内しか民泊として営業ができません。
消防法においては、宿泊室の床面積の大きさや家主が不在かどうかで用途が規定されています。
宿泊室とは住宅における就寝の用に供する室の床面積の合計のことをいいます。
人を宿泊させる際に家主が不在になる場合は宿泊施設として(5)項イに準拠した設備が必要です。
民泊用として遠隔地に物件を購入する場合は、おそらくこちらの(5)項イに準拠した設備を伴う宿泊施設に該当すると思われます。
家主が不在の場合、宿泊室の床面積は不問のため、寝室の大きさに関わらず(5)項イに準拠した宿泊施設として扱われます。
もしも、人を宿泊させる間、当該住宅に家主が不在とならない場合は床面積によって条件が異なります。
宿泊室の床面積が50平方メートルを超える場合は、家主が不在の場合と同様に宿泊施設として(5)項イに準拠した設備が必要です。
反対に宿泊室の床面積が50平方メートル以下の場合は一般住宅として扱われます。
現状、一般住宅には自動火災報知機の設置などは義務付けられていません。
人を宿泊させる場合でも、家主が在宅している一軒家で、宿泊室の床面積が50平方メートル以下の場合は新たに設備を設置する必要はありません。
ただし、住宅用火災警報器だけは寝室などに設置しなければいけない点には注意が必要です。
マンションの場合も同様に用途判定を行います。
注意点は、マンションの一室を民泊用途で使用したい場合、家主の在・不在は当該住戸にいるかどうかで判定されます。
また、家主の判定と宿泊室の床面積の合計で分類分けした後、民泊用住戸が入っている棟の用途判定が必要です。

宿泊施設(5項イ)に該当する場合

民泊の住戸に家主が不在であったり、家主が在宅していても宿泊室の床面積の合計が50平方メートルを超えるパターンです。
マンションを例に挙げると、当該マンションの「9割以上の住戸が宿泊施設で、(5)項イに該当」する場合は、そのまま(5)項イに基づく基準をクリアする必要があります。
「9割未満の住戸が(5)項イ」の場合は複合用途(16)項イに準拠してください。

一般住宅に該当する場合
当該住戸に家主が不在とならない場合で、宿泊室の床面積が50平方メートル以下で一般住宅と判定されたパターンです。
このパターンで住戸が入っている建物の住戸が全て一般住宅扱いの場合は、共同住宅(5)項ロに準拠する必要があります。

宿泊施設(5項イ)に該当する場合

民泊の住戸に家主が不在であったり、家主が在宅していても宿泊室の床面積の合計が50平方メートルを超えるパターンです。

マンションを例に挙げると、当該マンションの「9割以上の住戸が宿泊施設で、(5)項イに該当」する場合は、そのまま(5)項イに基づく基準をクリアする必要があります。

「9割未満の住戸が(5)項イ」の場合は複合用途(16)項イに準拠してください。

一般住宅に該当する場合

当該住戸に家主が不在とならない場合で、宿泊室の床面積が50平方メートル以下で一般住宅と判定されたパターンです。

このパターンで住戸が入っている建物の住戸が全て一般住宅扱いの場合は、共同住宅(5)項ロに準拠する必要があります。

特区民泊

特区民泊とは国家戦略特別区域法第13条に基づく民泊で、特定の自治体のみで許可されています。

国家戦略特区の区域として代表的なものは東京都や大阪府が挙げられます。

自治体が個別に設定したルールに基づき民泊を行う事ができる地域のことです。

この地域で行う民泊は、上記で紹介した住宅宿泊事業法(民泊新法)による民泊と同様の取り扱いで可能です。

そのため、家主が在宅か不在かという点や宿泊室の床面積によって適用されるルールが異なります。

旅館業法による民泊

旅館業法(簡易宿所営業)に基づく民泊のことで、マンションの1室などを利用している民泊のことです。

点在する複数の民泊部屋をひとつのフロントで管理することが可能な点が特徴です。

この民泊方式は届出住宅と同様の利用形態となることが確認できる場合は、上記の住宅宿泊事業法(民泊新法)による民泊と同様のルールで設備を設置する必要があります。

届出住宅とは、一定の基準を満たした物件のことで、届け出を行えば、簡単に民泊運営ができるようになります。

この一定の基準とは通常の「住宅」の条件に加えて以下の2つの基準のことを指します。

・届け出住宅に定められる消防設備の設置が可能かどうか

・賃貸や共同住宅を利用する場合は、物件の所有者やマンション規約に民泊を行うことが許可されているかどうか

この条件を満たした住宅が届出住宅の申請をすることができます。

反対に、届出住宅と同様の利用形態と確認出来ない場合は、従来どおり、従属関係にて用途判定されることになります。

 

イベント民泊

民泊のなかでも馴染みのないものがイベント民泊ではないでしょうか。

イベント民泊とは、厚生労働省事務連絡に基づく民泊で、イベントなどの際に年数回程度(2~3日程度)自治体の要請等を受けて実施するもののことです。

この場合に限っては、消防法においては住宅として扱うことが認められています。

ただし、自治体から要請を受けないと実施することがそもそも不可能な点も特徴のひとつです。

民泊の種類に応じた消防設備

ご自身で運営する民泊がどの消防法に準拠する必要があるか分かりましたでしょうか。

ここでは、建物の用途に応じて必要な消防設備について解説いたします。

注意点は、建物の形状や規模感、自治体による条例などが定められている場合もありますので必ず、管轄の消防署へ確認をしましょう。

一般住宅

一戸建てでかつ当該住宅に家主が常駐しており、宿泊室の合計が50平方メートル以下の場合は、一般住宅に分類されます。

一般住宅の場合は、住宅用火災警報器を寝室などに設置するのみです。

住宅用火災警報器とは煙や高温を感知した際に警報を鳴らす機械等のことです。

通常の家庭用物件では、洗面所やキッチンの天井などについていることが多いものです。

共同住宅(5)項ロ

共同住宅で民泊を行う場合に全ての住戸が一般住宅扱いの場合はこちらに該当します。

消火器

消火器が必要になるのは以下の条件に当てはまる部分に設置が義務付けられます。

1.延べ床面積が150平方メートルの場合

2.地階・無窓階・3階以上の階で床面積が50平方メートル以上の場合

自動火災報知設備

自動火災報知設備とは感知器や非常放送設備などで構成されている避難や初期消火活動を促すための複合的な設備です。

自動火災報知設備の設置条件には複数の条件があります。

民泊として使用するために該当する条件を列挙いたします。

1.述べ床面積が500平方メートル以上の場合

2.地階・無窓階・3階以上の階で床面積が300平方メートル以上の場合

3.11階以上の部分は全て

 

住宅用火災警報器

共同住宅における住宅用火災警報器は上記の自動火災報知設備で代替することが可能です。

誘導灯

誘導灯とは、避難口や避難方向を表示する照明器具の一つです。

廊下の天井や非常階段の入り口などについている緑色のピクトグラムが描かれているものです。

共同住宅において地階・無窓階・11階以上の階に設置が義務付けられています。

スプリンクラー設備

火災を感知し自動的に水を放出することで火災の早期鎮火を促すのがスプリンクラー設備です。

スプリンクラー設備は11階以上の階に設置が義務付けられています。

消防用設備等の点検報告

消防設備は定期的な点検が法律で義務付けられています。

消防設備の点検は年2回、報告は3年に1回行うことが求められます。

防火管理

防火管理とは、防火管理者の選任や消防計画の作成などが含まれます。

しかし、共同住宅において防火管理が必要になるのは、建物全体の収容人員が50人を超える場合に限ります。

防炎物品の使用

カーテンや絨毯など調度品にもこだわりを出せるのが民泊の良いところですが、防炎物品は使用しているでしょうか。

防炎物品の使用が義務付けられているのは、高さが31メートルを超える場合です。

宿泊施設(5)イの場合

一戸建て型の民泊では、家主が不在の場合や不在でなくても、宿泊室の床面積の合計が50平方メートルを超える場合、宿泊施設(5)イに該当します。

また、マンションの一室を利用した民泊などで、住戸が入っている棟の9割以上が(5)イの場合も該当します。

消火器

消火器の設置義務条件は共同住宅と同様です。

1.延べ床面積が150平方メートルの場合

2.地階・無窓階・3階以上の階で床面積が50平方メートル以上の場合

自動火災報知設備

宿泊施設(5)イの場合、自動火災報知設備の設置は無条件で必須です。

延べ床面積が300平方メートル以下の場合に限り、特定小規模施設用自動火災報知設備という、少しミニマルな自火報を設置することは可能です。

 

住宅用火災警報器

宿泊施設(5)イの場合、住宅用火災警報器の設置は義務付けられていません。

誘導灯

誘導灯の設置は、全ての場合で義務付けられています。

スプリンクラー設備

スプリンクラー設備は、建物によって設置義務が異なります。

1.延べ床面積が6000平方メートル以上の場合

2.地階や無窓階が1000平方メートル以上の場合

3.11階以上の建物

消防用設備等の点検報告

消防設備は定期的な点検が法律で義務付けられています。

消防設備の点検は年2回、報告は1年に1回行うことが求められます。

防火管理

宿泊施設(5)イにおいて防火管理が必要になるのは、建物全体の収容人員が30人を超える場合に限ります。

防炎物品の使用

宿泊施設(5)イでは全ての建物において、防炎物品の使用が義務付けられています。

複合用途(16)イの場合

マンションの一室を利用した民泊などで、住戸が入っている棟の9割未満が(5)イの場合は、複合用途(16)イに該当します。

消火器

消火器の設置義務条件は、共同住宅部分と宿泊施設(5項)イに該当する部分とそれぞれで考える必要があります。

条件は以下の通りです。

1.延べ床面積が150平方メートルの場合

2.地階・無窓階・3階以上の階で床面積が50平方メートル以上の場合

自動火災報知設備

1.延べ面積300平方メートル以上のもの

2.地階や無窓階、3階以上で床面積が300平方メートル以上の階

3.11階以上の部分全て

住宅用火災警報器

複合用途(16)イの場合、自動火災報知設備さえ設置されていれば、住宅用火災警報器の設置は義務付けられていません。

誘導灯

誘導灯の設置は、全ての場合で義務付けられています。

スプリンクラー設備

スプリンクラー設備は、建物によって設置義務が異なります。

1.延べ面積が3000平方メートル以上かつ(5項)イの住戸がある階

2.地階や無窓階が1000平方メートル以上かつ(5項)イの住戸がある階

3.11階以上の建物

消防用設備等の点検報告

消防設備は定期的な点検が法律で義務付けられています。

消防設備の点検は年2回、報告は1年に1回行うことが求められます。

防火管理

複合用途(16)イにおいて防火管理が必要になるのは、建物全体の収容人員が30人を超える場合に限ります。

防炎物品の使用

複合用途(16)イでは、高さが31メートルを超える場合と、(5項)イの部分に対して防炎物品の使用が義務付けられています。

まとめ:安全な民泊の運営

民泊を新たに運営するためには、関係各所への連絡と集客のための運営などを行わなければいけないため、非常に大変な道のりです。

しかし、法律に準拠しなければ、最悪の場合、営業できない可能性もありますのでしっかりと確認の上、対応する必要があります。

消防法に準拠して設備を整えることは、万が一の際に生命を守り、安全な運営を行うための第一歩です。

どうすればいいか分からない方は、消防のプロへ相談してみることをおすすめします。

 

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