消防点検コラム

bcp

2023.10.31

企業のBCP(事業継続計画)では何をすればいい?

企業の防災担当者やリスクマネジメントに関わっている人たちが昨今で直面している課題のひとつが「BCP対策」ではないでしょうか?

BCP対策は、自然災害などが起きた際であっても、企業の中核事業を早期復旧または継続することを目的にした一連の計画のことです。

BCP対策という言葉こそ広まりつつありますが、まだまだ不透明な部分も多いようです。そこでこの記事では、防災や消防の専門家が「企業のBCP」について、初心者にもわかりやすく解説します。

BCP(事業継続計画)とは

BCP(Business Continuity Plan)は、日本語では「事業継続計画」または「業務継続計画」と呼ばれる、自然災害や感染症といった非常事態が起きた際に、企業が重要と位置付ける中核事業を早期に復旧し、継続するための様々な準備計画のことです。

具体的には、自然災害でインフラが停止した際のバックアップ体制やオペレーションの確立、感染症が深刻化した際の業務体制の変更、さらにはサプライチェーン強化や同業者との連携など、あらゆるリスクに対する様々な対策案が含まれます。

そもそも、企業のBCP対策が普及した背景は、東日本大震災や新型コロナウイルス、豪雨災害といった非常事態が頻発し、それに伴って多くの企業で事業縮小や廃業が相次いだことがあります。

このようなことを回避する意味で、あらかじめ備えておく「BCP」の重要性が再認識され、多くの企業がBCP対策を講じるようになりました。

一方、BCP対策は防災対策と何が違うのか、どうやってBCPを策定すればいいのか、予算を確保できないといった様々な課題を抱えている企業が多いのも実情で、とりわけ中小企業では普及が進んでいないとされています。

このような課題を解消すべく、政府ではガイドラインやひな形の用意、さらには助成金や補助金制度の拡充が進んでいます。

企業のBCP対策では、策定の目的や手順、そして活用できる助成金といったことに関する基本的な知識を身に付けることが求められます。

参考:事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-、内閣府

BCP(事業継続計画)と防災計画の違い

BCP(事業継続計画)によく似た計画が「防災計画」です。いずれもBCM(Business Continuity Management)と呼ばれる包括的な概念に含まれているため、混同しがちですが、明確な違いがあります。

BCPは「事業や業務の早期復旧または継続」を指しているのに対し、防災計画は「人命や建物などの被害を最小限に抑える」ことを目的にしています。

ごく簡単に言えば、目的の対象が「事業」か「人や物」の違いと言えるでしょう。従って、BCP対策は主に「事業や業務」に焦点を当てた対策と考えるようにしてください。

ただし、BCPと防災計画には共通する点も多々あります。例えば、従業員すなわち人の安全確保に対する計画は、BCPと防災計画でおおむね共通するでしょう。

企業のBCP(事業継続計画)は義務なのか?

企業のBCP対策は義務ではありません。企業規模や地域による差はなく、義務化されている訳ではないことを知っておきましょう。

一方、介護施設や介護事業所だけはBCPが義務付けられています。2024年4月1日から、入所系、通所系、そして訪問系といったすべての介護サービスを提供している企業だけは、BCPの策定が義務になります。

BCP策定が義務となる介護施設や介護事業所は「感染症用のBCP」と「自然災害用のBCP」の2つを策定しなければなりません。

この理由は、介護サービスは非常事態時において人命に関わる可能性が高いことや、介護サービスを利用せざるを得ない家族への影響が大きいことにあります。

企業のBCP(事業継続計画)が必要な理由

企業のBCP対策が求められている理由は以下の通りです。

・非常事態のリスクが増加している
・安定した経済活動を確保する
・地域貢献

それぞれの理由について解説します。

非常事態のリスクが増加している

企業のBCP対策が求められている理由のひとつが「非常事態のリスクが増加している」です。例えば、地震や豪雨、感染症といったことをはじめ、昨今ではサイバー攻撃によって事業が停止する問題も身近になっています。

企業のリスクは自然災害に留まらず、インターネットやインフラなどでも起こるため、BCP対策が重要という訳です。

安定した経済活動を確保する

「安定した経済活動を確保する」ことは、企業のBCP対策が求められている理由です。非常事態において、多くの企業の中核事業が停止してしまうことは、日本経済の鈍化につながります。

とりわけ、物流やサプライチェーンなどの停止は回避せねばならず、企業のBCP対策では重要なポイントになっています。

地域貢献

企業のBCP対策が必要な理由には「地域貢献」もあります。東日本大震災以降、地域住民への物資提供や避難場所の確保など、地元企業が地域を守る重要性が見直されています。

企業のBCP対策がしっかりしていることで、非常事態であっても行政より迅速で確実な対応が可能になることから、企業のBCP対策が求められている訳です。

企業におけるBCP(事業継続計画)の目的

企業のBCP対策は、以下のような目的を含みます。

・非常時でも事業を継続できる
・企業体質の強化
・企業価値の向上

それぞれ解説します。

非常時でも事業を継続できる

企業のBCPは「非常時でも事業を継続できる」ことが目的です。例えば、災害などによって電力供給が遮断されたことを想定し、自家発電設備を設置する計画を立てていれば、このような事態に直面しても事業は継続可能になるでしょう。

また、物流が停止しても、同業者同士で部品供給を融通する計画を立てることで、顧客への納品遅延といったトラブルが防げるでしょう。

非常時でも事業が継続できることは、減益を最小限に抑えることにつながります。

企業体質の強化

「企業体質の強化」は、企業のBCP策定の目的に含まれます。非常時に備えた計画を綿密に立てることで、社内の働き方改革やDX化も促進されるかもしれません。

具体的には、テレワークへの移行やクラウド化などが該当します。非常事態に直面しても事業のオペレーションが止まらない体制を構築することは企業体質の強化と言えます。

企業価値の向上

企業のBCPは「企業価値の向上」も目的です。株主や顧客といった社外に対して「災害に強い企業」をアピールできることは、社外からの信頼度が増すことや、株式市場からの高い評価につながるでしょう。

企業がBCP対策に注力する機運が高まっていることから、BCPの有無は企業の価値を図るひとつの基準になっています。

ちなみに、BCPが認定された企業は、経済産業省による「認定ロゴマーク」を使用できるようになります。

参考:令和5年事業継続力強化計画認定ロゴマーク

企業のBCP(事業継続計画)で活用できる助成金や補助金

企業のBCP策定には必ずと言っていいほど設備投資が必要になります。これに伴って直面するのが「資金調達」でしょう。

企業のBCP対策では、資金調達の手段として以下のような方法があることを知っておくと役に立つかもしれません。

・助成金や補助金
・融資
・税制優遇

それぞれ解説します。

助成金や補助金

企業のBCP対策では「助成金や補助金」が活用できます。具体的には、東京都の中小企業が対象となる「BCP実践促進助成金」をはじめ、各自治体独自のBCP関連の補助金制度があります。

BCP策定に伴い、非常用電源装置や太陽光パネルの設置、テレワーク用のパソコン購入、クラウド化、さらにはVPN環境の構築といった社内インフラを整える際はぜひ活用すべきです。

参考:BCP実践促進助成金、公益財団法人東京都中小企業振興公社

融資

「融資」は、企業のBCPで活用したいひとつの選択肢です。BCPに関連する資金調達の際、日本政策金融公庫をはじめ、一部民間金融機関から融資が受けられます。

とくに、日本公庫中小企業事業の社会環境対応施設整備資金は、最大7億2千万円と大きいため、有力な選択肢と言えるでしょう。

参考:社会環境対応施設整備資金、日本政策金融公庫

税制優遇

企業のBCP対策では「税制優遇」の対象になります。具体的には、2025年3月31日までに、事業継続力強化計画や連携事業継続力強化計画の認定を受けることを前提に、特別償却18%の税制措置が受けられます。

とくに、設備投資が負担になりやすい中小企業にとっては、実質的な税負担の軽減になるため、活用すべきです。

参考:税制優遇(中小企業防災・減災投資促進税制の優遇措置)について、独立行政法人中小企業基盤整備機構

企業のBCP(事業継続計画)策定手順

企業のBCPを策定する場合、基本的には以下のような手順を辿ります。

・BCPの目的設定
・中核事業およびリスクの洗い出し
・リスクの優先順位付け
・具体的な対策に落とし込む

それぞれのポイントについて解説します。

BCPの目的設定

企業のBCP対策は「BCPの目的設定」から始まります。「5W1H」を使って策定するのがおすすめです。

その際は、企業理念、経営方針、そしてビジョンなどに基づき設定するのがポイントです。

中核事業およびリスクの洗い出し

次が「中核事業およびリスクの洗い出し」です。非常事態であっても止める訳にはいかない中核となる事業が何なのかを明確にします。

また、想定されるリスクすべてを洗い出しましょう。その際は、内的要因と外的要因に分けることがポイントです。

リスクの優先順位付け

後に「リスクの優先順位付け」をしましょう。洗い出したリスクの発生頻度や、発生した際に予想される被害の度合いなどによって優先順位付けするのがポイントです。

具体的な対策に落とし込む

最後が「具体的な対策に落とし込む」ことです。人員、体制、設備、情報、そして資金の5要素において現実的に実現可能な具体策を立てることがポイントになります。

まとめ

企業のBCP対策は義務化されている訳ではありませんが(介護施設は義務)、その必要性や重要性が高まっているため、積極的に取り組むべき課題と言えます。

いつ何が起きるか分からないからこそ、平時に備えておく必要があります。BCP策定は、防災や消防といった災害等対策の専門家によるアドバイスを受けながら進めるのがおすすめです。

 

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