消防点検コラム

消防法

2023.09.28

消防法施行令29条の連結送水管に関する基準を解説

消防法では、消火器や自動火災報知設備といった様々な消防用設備等の設置基準や技術基準が定められており、それらはとても細かい規定になっています。

なかでも細かい規定がなされている物のひとつが「連結送水管(れんけつそうすいかん)」で、消防法施行令29条および消防法施行規則第31条によって厳しい規定が設けられています。

連結送水管は、大型防火対象物における火災発生時にとても重要な役割を果たすため、建物管理者や防火管理者らは、これらの基準の要点を知っておくことが求められます。

そこでこの記事では、消防点検のプロが「消防法施行令29条の連結送水管に関する基準」について、その内容や合わせて知っておくべきことを含めて、初心者にもわかりやすく解説します。

消防法施行令29条とは

消防法施行令29条とは「連結送水管に関する基準」を定めたものです。具体的には、連結送水管を設置しなければいけない防火対象物の基準や、連結送水管そのものの設置基準などが規定されています。

消防法施行令29条の原文は、以下の通りです。

第二十九条 連結送水管は、次の各号に掲げる防火対象物に設置するものとする。

一 別表第一に掲げる建築物で、地階を除く階数が七以上のもの

二 前号に掲げるもののほか、地階を除く階数が五以上の別表第一に掲げる建築物で、延べ面積が六千平方メートル以上のもの

三 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの

四 別表第一(十八)項に掲げる防火対象物

五 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物で、道路の用に供される部分を有するもの

2 前項に規定するもののほか、連結送水管の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。

一 放水口は、次に掲げる防火対象物又はその階若しくはその部分ごとに、当該防火対象物又はその階若しくはその部分のいずれの場所からも一の放水口までの水平距離がそれぞれに定める距離以下となるように、かつ、階段室、非常用エレベーターの乗降ロビーその他これらに類する場所で消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置に設けること。

イ 前項第一号及び第二号に掲げる建築物の三階以上の階 五十メートル

ロ 前項第三号に掲げる防火対象物の地階 五十メートル

ハ 前項第四号に掲げる防火対象物 二十五メートル

ニ 前項第五号に掲げる防火対象物の道路の用に供される部分 二十五メートル

二 主管の内径は、百ミリメートル以上とすること。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。

三 送水口は、双口形とし、消防ポンプ自動車が容易に接近することができる位置に設けること。

四 地階を除く階数が十一以上の建築物に設置する連結送水管については、次のイからハまでに定めるところによること。

イ 当該建築物の十一階以上の部分に設ける放水口は、双口形とすること。

ロ 総務省令で定めるところにより、非常電源を附置した加圧送水装置を設けること。

ハ 総務省令で定めるところにより、放水用器具を格納した箱をイに規定する放水口に附置すること。ただし、放水用器具の搬送が容易である建築物として総務省令で定めるものについては、この限りでない”

上記の原文は連結送水管の設置基準について規定しており、要約すると連結送水管は以下の設置基準であると言えます。

・7階以上の建物(地階を除く)
・5階以上の建物(地階を除く)で、なおかつ延面積が6,000平方メートル以上
・延面積が1,000平方メートル以上の地下街
・長さが延べ50メートルを超えるアーケード

このように、消防法施行令29条は、連結送水管の具体的な設置基準について述べており、その内容は上記のようになっていることを知っておきましょう。(自治体の火災予防条例でさらに設置基準が規定されている場合もある)

加えて、連結送水管に関する詳細な技術仕様については「消防法施行規則第31条」で別途規定されているため、合わせて理解しなければいけません。

消防法施行規則第31条については、次で紹介します。

引用:消防法施行令第二十九条、連結送水管に関する基準

消防法施行規則第31条の連結送水管に関する基準の細目

消防法施行令29条では、連結送水管の設置基準が規定されているのに対し、消防法施行規則第31条では「連結送水管の技術仕様」について規定しています。

消防法施行規則第31条では具体的に、連結送水管の設置高や標識の設置基準、そして配管やそれに付随して用いる物の素材や強度、耐圧性能といった「細目(さいもく)」がまとめられています。

その詳細については割愛しますが、ポイントとして、連結送水管については、消防法施行令29条だけでなく消防法施行規則第31条の2つを十分に理解する必要があることを知っておいてください。

参考:消防法施行規則第三十一条、連結送水管に関する基準の細目

連結送水管の役割

消防法施行令29条などで規定されている連結送水管は、はしご車などを使って外部から消火活動ができないような場合に備え、建物外部の送水口から消防用水を火元付近まで配管を通じて送り、消防隊員が火元に最も近い放水口から消火活動できるようにする役割があります。

連結送水管は「送水口、配管、放水口、格納箱」の4つで構成されていますが、これら単体で機能することはありません。

実際に使用する場合は、消防ポンプ車等と対象の防火対象物外にある放水口を接続し、外から建物内へ加圧した状態の水を送ります。

そして、建物内の火元付近にいる消防隊員が格納箱に収納されているホースと放水口をつないで放水の準備が完了します。

連結送水管は防火対象物の外から中へ水を送ることだけが目的ではなく、あくまでも加圧した状態の水を送る必要があります。

加圧された水が送られることで、消火する際の水に勢いがつき、より効果的な消火活動が実施できるという訳です。

連結送水管は、最低でも5階建て以上の防火対象物で設置義務があるため、地上から5階あるいはそれ以上であっても、十分な加圧送水に耐えられる設計でなければいけません。

そのため、消防法施行規則第31条によって非常に細かな技術仕様が定められています。

11階建て(地階を除く)以上における設置基準

連結送水管の設置基準を理解するうえで見落としてはいけないこととして「11階建て(地階を除く)以上の防火対象物」に適用される設置基準があります。

地階を除く11階建て以上の防火対象物では、連結送水管の設置基準として以下の要件が追加されるので注意してください。

・11階以上に設ける放水口は双口タイプ
・ポンプには非常用電源を付設する
・ホースやノズル等の放水用器具を設置する

11階建て(地階を除く)以上の高層ビルや大型防火対象物の場合、はしご車が届かないことや、外部からの放水作業に限界があることから、火災が大きくなった場合はとくに消火活動の難航が予想されます。

このような事態に備えて、11階建て(地階を除く)以上の防火対象物では、消火活動をより効果的にするため「双口の放水口」を設置しなければいけません。

また、停電が起きた場合であっても確実に加圧送水を実現するために、非常用電源を設置する必要があります。

すべてのケースとは限らないものの、下層階から高層階へ消防隊員が容易に駆け付けられるよう、あらかじめ建物内に「放水用器具」を設置しておく場合もあるため、11階建て(地階を除く)以上の防火対象物は他よりも厳しい設置基準が適用されることを知っておきましょう。

連結送水管の点検

連結送水管は、設置基準や技術仕様と同じように点検も重要とされています。連結送水管は、非常時であっても正常に加圧送水ができるように、条件に該当する場合は「連結送水管耐圧試験」が義務付けられます。

「連結送水管耐圧試験」とは、耐圧試験機器を用いて、実際に使用する時と同じような環境を作って、加圧送水が規定を満たすかを確認するものです。

また、試験結果を所轄の消防署に報告書にして提出しなければいけません。実際の動作試験と書類提出の2つがセットになって完結するため、申告漏れがないよう注意する必要があります。

連結送水管耐圧試験の規定は、試験対象となる連結送水管の「設計送水圧力の1.5倍」が基準となり、1.5倍の水圧をかけた状態で「3分間」圧力が変化しないことを確認します。

連結送水管耐圧試験は、設置してから10年目、その後は3年毎に1回の頻度で実施しなければいけません。

仮に、連結送水管を初めて設置したという場合は「連結送水管放水試験」と呼ばれる、本番とまったく同じように「放水」までを含めた試験を、工事完了から4日以内に実施および報告する必要があります。

とくに、11階を超えるような大きなビルでは大がかりな試験になり、異常が確認された場合の原因究明も大変になると言われています。

送水口から放水口を繋いでいる配管が建物の外に設置してある場合は、紫外線や強風、外気温などの影響を受けやすく、配管を交換するとなると費用負担も大きくなるでしょう。

まとめ

消防法施行令29条では連結送水管に関する基準が定められており、連結送水管の技術仕様などについては消防法施行規則第31条で規定されています。

連結送水管は、一般的には触れることもなく、火災発生時であっても素人が操作するものではないため、身近な消防用設備等とは言えないでしょう。

しかし、連結送水管を巡る規定は非常に細かく、厳しい内容になっているだけでなく、点検についても特別な連結送水管耐圧試験が義務付けられます。

このようなことから、連結送水管は設置基準や点検基準などで思い違いや要件漏れが生じやすいと言えます。消防署から指摘や指導を受けないようにするためにも、消防点検のプロに相談するようにしてください。

 

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