消防点検コラム

非常警報器具とは?非常警報設備との違いを解説

消防用設備のなかで、似ているために混乱しやすいとされているのが「非常警報器具」と「非常警報設備」です。

このふたつは、一般人からすれば言葉そして意味も似ているため、同義として扱ってしまいやすいですが、消防法においてはまったくの別物として扱われています。

このことから、非常警報器具と非常警報設備の違いを理解していないと、消防点検時だけでなく、火災発生時などでも思わぬ混乱が生じるかもしれません。

そこでこの記事では、消防点検のプロが初心者に向けて「非常警報器具」について、具体的な意味、さらには非常警報設備との違いなどを分かりやすく解説します。

非常警報器具とは

非常警報器具とは、拡声器や手動式サイレンといった、火災をはじめとする非常事態を周囲に警報するために用いる器具のことです。

最も身近な非常警報器具とされているのが「携帯用拡声器(メガホン)」で、主に小規模ながら人が集まりやすい、コンビニエンスストアやカラオケボックス、さらには小規模宿泊施設などで設置義務があります。

具体的な使用方法としては、火災が発生した際、建物内にいる人たちを円滑に避難させるために拡声器を使って外へ誘導したり、煙で視界が遮られていても拡声器によって声を確実に届けたりするケースが想定されます。

この他の非常警報設備として、手動式サイレンや警鐘(けいしょう)などがありますが、これらは火災発生をより確実に周囲へ伝達するために音を鳴らすようにして使用します。

このように、非常警報器具はあくまでも「器具」です。携行性や操作性に長けており、非常事態を周囲に知らせることを目的としている物として覚えておきましょう。

非常警報器具の種類

非常警報器具の種類は、主に以下のような物があります。

・携帯用拡声器(メガホン)
・手動式サイレン
・ゴング
・警鐘(けいしょう)

それぞれ詳しく解説します。

携帯用拡声器(メガホン)

非常警報器具の代表格と言えるのが「携帯用拡声器(メガホン)」です。使用者の声を拡声できることが特徴で、避難誘導や火災の状況などを周知する際に用いられます。

一般的な電池式の拡声器とまったく同じ仕組みであるものの、非常警報器具として使用されるものは、全体が赤色、サイレン機能付き、防水型など様々なものがあります。

一方、現行の消防法において携帯用拡声器の仕様や要件を定める規定はないため、スポーツ観戦等で見かける、プラスチック製の簡易的なメガホンでもよいと解釈することも可能です。(火災時に役立たないかもしれないため現実的とは言えない)

手動式サイレン

「手動式サイレン」も非常警報器具のひとつです。手動式サイレンは、火災発生時に手動操作することで警報(サイレン)を鳴らし、周囲へ警報することを目的にしています。

広く知られている物としては、片手でサイレンを握り、もう一方の手でハンドルを回すことでサイレンが鳴る「手回し式」のものがあります。

非常警報器具として流通している物の多くは、全体が赤色で、わずかな力でハンドルが回せること、そして110dB(車のクラクションや電車のガード下相当)の音が鳴ることが特徴で、より確実に警報が届くよう工夫されています。

ゴング

非常警報器具には「ゴング」も含まれます。ゴングは非常ベルを想像すると分かりやすいでしょう。

フライパンを裏返したような形状の金属に、音を鳴らすための金属を小刻みに打ち付けるようにして音を鳴らし、周囲に異常事態を警報する仕組みです。

機械式の物であれば高速連打されるため「ジリリリリ」といった音が鳴りますが、手動の場合は連打に限界があるため「カンカンカン」といった音になります。

警鐘(けいしょう)

「警鐘」も非常警報器具のひとつです。警鐘とは、昔ながらの「鐘」と思うとよいでしょう。片手で警鐘を吊り下げるようにして持ち、もう一方の手で警鐘を叩くようにして周囲に異常を知らせます。

近年では見かけることさえ少なくなりましたが、いかなる状況であっても、電気に頼らなくても済むという点においては重宝するかもしれません。

ただし、非常警報器具として警鐘を設置するケースは少ないでしょう。非常警報器具として認められるということを知っておくと役に立つかもしれません。

非常警報設備とは

非常警報器具と間違いやすいとされるものが「非常警報設備」です。非常警報設備とは、主に火災発生を周知するために用いられる「設備」のことを指しています。

前述した非常警報器具は、携行性や操作性に優れた「器具」であるのに対し、非常警報器具は建物内に常設される「設備」という点が異なります。

非常警報設備の代表的なものが「自動火災報知設備」です。自動火災報知設備は、制御盤とも言える「受信機」、煙や炎を感知する「感知器」、人為的に作動させるための「発信機」、そして火災などの異常を建物内に知らせる「地区音響装置」などで構成されており、これらは「器具」と表現するよりも「設備」と言うべき大掛かりなシステムです。

また、この他にも、建物内に火災放送を伝える「音響装置」や、自動火災報知設備の作動と連動して消防へ自動的に通報される「火災通報装置」、さらには防火扉や防火シャッター、防火ダンパー、そして排煙口といった設備を連動して制御する「連動制御盤(連動制御器)」などを含む場合もあります。

このように、非常警報設備は、まさしく「設備」と表現するのが相応しいものであり、器具とは概念そのものが大きく異なります。

非常警報器具と非常警報設備の違い

非常警報器具と非常警報設備の主な違いとしては、以下のようなことが挙げられます。

・携行性
・簡易性
・設置基準

上記それぞれについて解説します。

携行性

非常警報器具と非常警報設備の違いには「携行性」があります。具体的には、非常警報器具は携帯用拡声器や手動式サイレンのように、持ち運んで使用できる物である一方、非常警報設備は防火対象物内の設備として組み込まれており、携行性はありません。

簡易性

「簡易性」も非常警報器具と非常警報設備の違いに挙げられます。非常警報器具はメガホンや手動式サイレンといった専門知識や訓練を伴わずに誰でも使える物であるのに対し、非常警報設備は自動火災報知設備のように、操作に関する知識や仕組みをしっかり把握しなければ使えません。

設置基準

非常警報器具と非常警報設備の違いには「設置基準」もあります。設置基準については、ごく簡単に言えば、小規模建物なら非常警報器具、大規模建物は非常警報設備となります。

つまり、非常警報器具は非常警報設備を伴わない建物に設置する必要がある訳です。設置基準については、次の章で詳しく解説します。

非常警報器具の設置基準

非常警報器具の設置基準は、おおまかには以下のようになっています。

・収容人員が20名以上50名未満の建物

具体的には、コンビニエンスストア、カラオケボックス、宿泊所といった建物が該当するケースが多いでしょう。

また、合わせて知っておきたいこととして、非常警報設備の設置基準もあります。非常ベルや非常サイレンといった非常警報設備の設置基準は「50名以上300名未満」の建物が対象となり、さらに300名以上の場合は放送設備を伴う非常警報設備が必要です。

つまり、非常警報器具は小規模建物に限って設置されるものと言えます。

非常警報器具の点検や整備

非常警報器具は簡易的な器具類であるものの、消防法で定められている消防点検の対象になっています。

消防点検は半年に1回以上の機器点検、そして1年に1回以上の総合点検があるため、最低でも1年に2回の頻度で非常警報器具一式を点検および整備しなければいけません。

非常警報器具に対する点検内容は、主に以下の通りです。

・外観に破損や腐食、変形などがなく、付属品なども一緒に設置してあるか(ゴングや警鐘を叩くための物等)
・明瞭な音が出るか
・携帯用拡声器のバッテリー残量や拡声機能の確認

このように、消防点検における非常警報器具の点検内容はとても簡素であり、不具合が見つかった場合でも対処しやすいと言えます。

一方、簡易な物とは言え、法律で規定されている点検対象であることには違いないため、非常警報器具の点検は忘れてはいけません。

事実、非常警報器具の点検を怠っていたケースや、点検対象であることさえ把握していなかったというケースはよく見られます。

非常警報設備の点検や整備

非常警報器具の点検と合わせて非常警報設備の点検についても要点を知っておくことをおすすめします。

自動火災報知設備などをはじめとする非常警報設備も消防点検の対象です。非常警報器具の点検や整備と比較すると遥かに大がかりと言え、不具合などの対応も大変になるでしょう。

非常警報設備の点検では、主に以下のような項目を点検します。

・全設備の外観点検(破損、腐食、変形の有無)
・自動火災報知設備全体の電圧や通電
・非常電源との切り替えで正常動作が維持されるか
・非常灯(赤色の表示灯)が規定値内で点灯しているか

上記に加え、1年に1回以上の総合点検では、すべてを作動させて正常に機能するかどうかを確認しなければなりません。

非常ベルの鳴動や非常放送の試験、さらには火災通報装置の連動といったことなどを含み、大がかりと言えるでしょう。

まとめ

非常警報器具とは、携帯用拡声器や手動式サイレン、さらにはゴングや警鐘といった物を指しています。

いずれも火災発生に伴う異常事態を周囲に警報する目的があります。これらは、携行できることや、簡易的な物であるため、うっかり存在を忘れてしまいがちですが、消防点検の対象です。

非常警報器具は、非常警報設備と混同しやすいですが、この記事で紹介したような明確な違いがあることをしっかり覚えておきましょう。

 

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