消防点検コラム

誘導灯の60分と20分の違いは?消防法の設置基準も解説

「誘導灯には60分間タイプと20分間タイプがあるって本当?」や「誘導灯60分間タイプの設置基準は?」といった疑問を持ったことがある人は多いかもしれません。

誘導灯の60分間タイプは、2010年に設置義務の対象が拡大されたことを受けて、広く知られるようになりましたが、そもそも誘導灯に60分と20分のタイプがあることさえ知らなかったという人もまだまだいるようです。

そこでこの記事では「誘導灯の60分間タイプ」について、20分間タイプとはどのような違いがあるのかや、消防法で規定されている設置基準など、初心者も知っておきたいことを中心にして、消防点検のプロが分かりやすく解説します。

誘導灯とは

誘導灯とは、火災等が発生した時に、建物内から建物外へ避難するための避難誘導を目的にした防災用品照明器具のことです。

誘導灯には「避難口誘導灯」と「通路誘導灯」の2種類があります。避難口誘導灯は、建物の外へ繋がる避難口(多くは出入口)に設置されるのに対し、通路誘導灯は、避難口へ向かうための通路(主に廊下等)に設置されます。

それぞれの外観の特徴としては、避難口誘導灯は緑色を基調にしており、人が外へ向かって避難する姿が描かれている一方、通路誘導灯は白地に緑色の矢印で避難口までの方向を示しています。

誘導灯は、いかなる非常事態でも明確に避難通路と避難口の存在を示すために、常時点灯させる必要があり、停電時であっても最低20分間は非常電源(蓄電池)によって点灯が続くように規定されています。

昨今では、蛍光灯によって点灯させる物に代わり、LEDライトを採用した物が主流になりつつ、より高い省エネ性能や、維持管理にかかる手間やコストが簡略化されているのが特徴です。

このように、誘導灯とひと言で言っても、避難口を示す避難口誘導灯と、避難口につながる通路を示す通路誘導灯の2種類があり、いずれも電力の供給が途絶えたとしても最低20分は点灯するように非常電源(蓄電池)が内蔵されていることを知っておきましょう。

誘導灯の60分と20分の違い

誘導灯には20分タイプと60分タイプの2種類があります。これらの違いは、蓄電池によって作動する時間です。

20分間タイプは標準的なものとして知られており、火災等によって生じる停電時であっても最低20分間は平常時同様に点灯します。

60分間タイプは、蓄電池の容量が大きく、停電時であっても最低60分間は点灯し続けます。ふたつの違いについて言い換えれば、停電が起きてしまうような非常時における性能差と言えるでしょう。

また、誘導灯の60分間タイプは20分間タイプの物と比較して、倍ほど高価とされており、価格差も大きな違いと言えるかもしれません。

誘導灯に60分間タイプがある理由

誘導灯(避難口誘導灯と通路誘導灯)には、停電時でも可動する時間が20分のタイプと、60分のタイプの2つがあり、これらは消防法によって防火対象物の規模や用途によって使い分けなければいけないと規定されています。

具体的には、ごく一般的な建物であれば20分間タイプの誘導灯を設置しますが、大規模建物や地下街、そして高層ビルなどの建物においては、60分間タイプの誘導灯を設置しなければなりません。

この理由は「避難に要する時間」を考慮しているためです。60分間タイプを設置しなければいけないような大型施設の場合、建物内にいる全員が外部へ避難するのには時間を要します。

その際に、誘導灯が消えてしまっていると、逃げ遅れやパニックが起きてしまい、防げる被害が防げなくなってしまう可能性が高くなります。

避難に時間がかかるような場所において、より確実な避難を実現するために60分間タイプの誘導灯が存在している訳です。

誘導灯を設置しなければいけない防火対象物

誘導灯は、原則として以下の防火対象物で設置しなければいけない義務が生じます。

・不特定多数の人が多く出入りする建物(劇場、映画館、病院、百貨店、ホテル等)
・地階
・無窓階
・11階以上の建物

これらに共通することは「火災発生時に甚大な被害が想定される」ことです。また、自治体ごとに異なる火災予防条例によっては、より細かな規定が適用される可能性があるため、管轄の消防署や行政の確認が必須になります。

誘導灯の設置基準

誘導灯の設置基準は、消防法によって以下のように定められています。

・一 避難口誘導灯は、避難口である旨を表示した緑色の灯火とし、防火対象物又はその部分の避難口に、避難上有効なものとなるように設けること。
・二 通路誘導灯は、避難の方向を明示した緑色の灯火とし、防火対象物又はその部分の廊下、階段、通路その他避難上の設備がある場所に、避難上有効なものとなるように設けること。ただし、階段に設けるものにあつては、避難の方向を明示したものとすることを要しない。
・三 客席誘導灯は、客席に、総務省令で定めるところにより計つた客席の照度が〇・二ルクス以上となるように設けること。
・四 誘導灯には、非常電源を附置すること。
・五 誘導標識は、避難口である旨又は避難の方向を明示した緑色の標識とし、多数の者の目に触れやすい箇所に、避難上有効なものとなるように設けること。

参考:消防法施行令第二十六条の2、誘導灯及び誘導標識に関する基準

誘導灯の60分間タイプを設置しなければいけないケース

誘導灯の60分間タイプを設置しなければいけないケースは以下の通りです。

・延べ面積50,000平方メートル以上
・地下街で延べ面積1,000平方メートル以上
・地階を除く階数が15以上であり、なおかつ、延べ面積30,000平方メートル以上
・地下駅舎(乗車場、階段、通路など)

前述したように、60分間タイプの誘導灯は、避難するのに時間を要するようなケースを想定しており、上記のような大型施設や地下街、地下駅舎などは、必ず60分間タイプの誘導灯を設置する必要があります。

ちなみに、2010年まで「地下駅舎」は対象外でした。また、上記施設等における既設の20分タイプの誘導灯は、すべて60分タイプの誘導灯に変更することが義務付けられ、誘導灯の設置基準は過去よりも遥かに厳しくなったとされています。

誘導灯の設置が免除されるケース

厳しくなった誘導灯の設置基準ですが、以下のようなケースでは設置基準が緩和され免除になる措置が取られていますので、合わせて知っておくと役に立つかもしれません。

・小規模の建物(無窓階、地階を除く)
・居室のどこからでも避難口が容易に見渡せて識別できる
上記に該当し、さらに避難口誘導灯と通路誘導灯のそれぞれが、以下の歩行距離内であれば誘導灯の設置は免除される対象になります。

避難口誘導灯

・避難階:歩行距離20メートル
・避難階以外:歩行距離10メートル

通路誘導灯

・避難階:歩行距離40メートル
・避難階以外:歩行距離30メートル

一方で、これらの免除要件はあくまでも目安であることを忘れないでください。防火対象物内に設置してある物の位置などによっては、消防署が妥当ではないと判断することもあります。

また、自治体の火災予防条例によって認められないケースも考えられますので、誘導灯の設置や免除の基準については、所轄の消防署や消防点検のプロに相談しましょう。

誘導灯と非常灯の違い

誘導灯と勘違いしやすい物のひとつに「非常灯」があります。誘導灯と非常灯は全く別の物であり、混同しないように注意してください。

誘導灯は、消防法によって規定されています。火災等が発生した際に、初期段階の避難を円滑にするためのものです。

非常灯は、建築基準法によって規定されています。非常灯は、消防隊による救助作業時の明かりを確保することを目的にしており、誘導灯には求められない耐熱性(140度の火熱に30分間耐える性能)が必要です。

誘導灯および非常灯は、通常時での使用を想定しない点では共通しています。いずれも、火災等が発生した際に機能することを前提にしているため、通常時における点検やメンテナンスが欠かせない物と言えるでしょう。

誘導灯の点検要領

誘導灯は年に2回実施しなければいけない消防点検の対象です。誘導灯に関する点検は、主に以下のようなことを中心に実施されますので、消防点検時以外でも異常がないか確認することをおすすめします。

・外観点検:設置位置や適切な個数かどうかなど
・視認性:あらゆる位置から目視可能か、紛らわしいネオンなどがないか
・外形:変形、破損、固定の不具合など(とくにパネルの変色)
・表示:指定認定機関による認定証の有無
・非常電源:非常電源で正常に作動するかや、ヒューズ切れなど

上記の点検内容は専門的な要素も多いため、無資格者が実施することは現実的ではないかもしれません。

しかし、日常的にできる点検として「視認性」と「外形」は気を付けたいところです。とくに、経年劣化によって緑色のパネルが青色に変色してしまっているケースや、誘導灯周辺にそれを邪魔するような看板やネオン、広告等が設置されていないかなどに気を付けましょう。

誘導灯は、通常時はほとんど気に留めることがなく、また触れる機会も少ないため、点検漏れが起こりやすい物です。

消防点検の時だけでなく日常的なチェックを怠らないようにしましょう。

まとめ

誘導灯の60分間タイプは、火災等が発生した際、避難に時間がかかってしまうようなケースに対応したもので、避難を円滑にするだけでなく、避難する人たちのパニックを抑える役割もあります。

誘導灯は消防点検の対象でもありますので、日頃から不具合が生じていないかの点検を忘れないでください。

誘導灯の設置基準は消防法で規定されるもの以外に、火災予防条例や消防署の見解も考慮されますので、まずは消防点検のプロに相談するようにしてください。

 

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