消防点検コラム

防火構造と耐火構造の違いや基準を徹底解説

「防火構造とは何?」や「防火構造と耐火構造にはどんな違いがあるの?」と疑問に思ったことがある人は多いのではないでしょうか。

消防点検の際などに「防火構造」という言葉を耳にすることがあると思います。しかし、耐火構造や準耐火構造といった似たような専門用語もあるため、これらの違いを含め、あまり理解できていない人が多いのが実情のようです。

そこでこの記事では「防火構造」とはいったい何かや、耐火構造との違い、さらには告示の内容などについて初心者にもわかりやすく解説します。

防火構造とは

防火構造とは、該当する建物周辺で火災が発生した際に、外壁および軒裏が延焼(燃え移る)、破損、倒壊してしまうことを防ぐ目的で定められた「防火性能」を表す基準のことです。

防火構造をごく簡単に言うならば「建物外から燃え移ったり、倒壊したりすることを防ぐ構造」となります。

防火構造に求められる基準は、外壁や軒裏に使用する材料が、30分間加熱しても変形や破壊が起きず、材料の裏面が出火に達する危険温度にならないことです。

つまり、防火構造とは、建物外部からの延焼を抑制するのに有用な防火性能を満たす外壁材や軒裏材などを備えた建物と言えます。

防火構造を理解するうえでポイントとなるのが「建物外部からの延焼を防ぐ」という点です。このことから、防火構造は「外壁・軒裏防火構造」と表現されることもあります。

耐火構造とは

防火構造とは何かを理解するうえで混同しやすいのが「耐火構造」でしょう。耐火構造とは、建物内部にある壁や床などの部分が、一定基準の耐火性能を満たす構造のことです。

耐火構造の目的は「建物内部からの炎上、延焼、崩壊を抑制する」ことにあります。耐火構造であれば、出火元の部屋から隣接する部屋に燃え広がりにくい、あるいは一定時間にわたって建物の倒壊や変形を防ぎ、避難できるようになる訳です。

また、ひとたび火災が発生した際に、火災が周囲に広がらないよう「留める」ことができる構造とも言えます。

このことから耐火構造の建物は、建物が密集するエリアや、火災発生時に甚大な被害が想定されるエリアなどに適用されます。

耐火構造を理解するうえでポイントになるのが「建物内部からの延焼と崩壊を防ぐ」ということです。

防火構造と耐火構造の違い

防火構造と耐火構造の違いについて理解するには、それぞれの目的を知ると分かりやすくなります。

防火構造は「外部」からの延焼や破壊を防ぐことが目的であるのに対し、耐火構造は「内部」からの延焼および倒壊を防ぐことが目的です。

いずれも「火災による延焼を最小限に抑える」という点において共通しています。

防火構造は外部からの延焼を抑制するために、外壁および軒裏において、建築基準法で定められた防火性能を満たす材料を用いなければなりません。

耐火構造は内部からの延焼と崩壊を防ぐために、壁や床、階段、屋根といった部分で、同じく建築基準法で規定される耐火性能を満たす材料を使う必要があります。

従って、防火構造と耐火構造の大きな違いは「外部か内部」と考えるとよいでしょう。この違いに加えて、建築基準法で規定されている基準や地域などが細かく分かれています。

防火構造の基準や地域については、次で解説します。

防火構造の基準に関する告示

防火構造に関する基準は、建築基準法施行令第108条で以下のように告示されています。

(防火性能に関する技術的基準)

第百八条 法第二条第八号の政令で定める技術的基準は、次に掲げるものとする。

一、耐力壁である外壁にあつては、これに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。

二、外壁及び軒裏にあつては、これらに建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないものであること。

この告示内容をわかりやすく要約すると「建物周辺で火災が発生した場合に備え、該当建物の外壁および軒裏において、延焼、破壊、変形などが起こらないようにするため、30分間の加熱耐久性能または可燃物延焼温度以上にならないようにすること」となります。

この要件を満たす構造が「防火構造」という訳です。

引用:建築基準法施行令

防火地域と準防火地域

防火構造を理解するにあたり「防火地域と準防火地域」についても知っておく必要があります。

防火地域および準防火地域とは都市計画法による規定のことです。具体的には、市街地における火災被害の防除を目的にした建築物の構造規制を設けた地域(区分)を指しています。

例えば、建物が密集している繫華街や住宅街、大きな道路沿い、駅周辺などが該当します。防火地域や準防火地域が規定されている目的は、これらの地域で火災が発生した際、延焼を抑制したり、消防車の通行などを含む消火活動を円滑にしたりするためです。

一般的に、防火地域はビルなどの建物が密集しやすい繁華街や幹線道路沿いなどが該当し、その周辺が準防火地域として扱われています。

防火地域または準防火地域に該当するか否かによって、建物の構造が耐火構造や準耐火構造でなければいけなかったり、防火構造でなければいけなかったりします。

つまり、防火構造や耐火構造の要件は、建物の構造だけでなく「建物の立地(地域)」によっても変わることを知っておく必要があります。

ちなみに、防火地域や準防火地域の指定については、各自治体によって異なるため、あらかじめ行政や建築会社に相談するか、消防点検などの専門家に確認することをおすすめします。

参考:都市計画法

防火構造が求められるケース

該当建物が防火構造でなければならないケースとして以下の3つが挙げられます。

・準防火地域内の地上1階または地上2階の建築物

・準防火地域内の3階建の建築物

・防火地域内の付属建築物

「準防火地域内の地上1階または地上2階の建築物」は、本来ならば準防火地域内において延べ面積が500平方メートル以下の地上1階または地上2階の建築物は、耐火建築物または準耐火建築物でなければなりませんが、木造の場合は防火構造にする必要があります。

「準防火地域内の3階建の建築物」は、準防火地域内の延べ面積が500平方メートル以下の3階建て建築物は耐火建築物や準耐火建築物にするか、防火上必要な技術基準を満たす防火構造でなければいけません。

「防火地域内の付属建築物」は、防火地域内において延べ面積50平方メートル未満の平屋建て付属建築物を建てる場合、耐火建築物または準耐火建築物でなければいけませんが、木造の場合は防火構造でなければいけません。

このように、防火構造にしなければいけないケースは「防火地域や準防火地域」そして「建物の延べ面積と階数」によって条件が変わります。

また、先述したように「防火地域や準防火地域」は自治体ごとに違うため、防火構造を求められる要件については、一概に言えないほど複雑であることを知っておいてください。

防火構造の具体例

防火構造とはどのような規定かがわかってきたと思います。ここでは、防火構造の具体的な要件について解説します。

防火構造の要件は「外壁および軒裏」が対象です。防火構造の要件を満たす外壁および軒裏は、国土交通省から認定を受けた建材を使うことになり、基本的には既に建材メーカーが認定を受けた物を使用します。

木造住宅の外壁を具体例として挙げるならば、外側は厚さ15ミリの鉄網モルタル塗り、内側は9.5ミリ以上の石膏ボード、合板は4ミリ以上でなければいけません。

また、4ミリ厚の合板と組み合わせて、グラスウールやロックウールを使用する場合も防火構造として認められます。

防火構造の要件については、建材単体の仕様だけでなく、建材の複合使用によっても変わるため、建築会社や行政と入念なすり合わせが求められます。

また、必ずしも建築会社が防火構造について正確に把握しているとは限らないので、注意しましょう。

建築基準法における防火性能の仕組み

防火構造を理解するのと合わせて、建築基準法における「防火性能の仕組み」も把握しておきましょう。

建築基準法では防火性能について「耐火構造」「準耐火構造」そして「防火構造」の3つが規定されています。

最も厳しい要件が「耐火構造」、次が「準耐火構造」、そして最も要件が緩いとされているのが「防火構造」です。

「耐火構造」は建物内からの延焼および崩壊を防げるよう、柱や壁に耐火性能を備えた建材を使用しなければいけません。

「準耐火構造」は、通常火災による延焼を防ぐための耐火性能を備えた建材を使用せねばならず、耐火構造と比較して、要件が緩い特徴があります。

「防火構造」は建物外部からの延焼を受け、該当建物が「もらい火」を受けないこと、そして崩壊しないことが求められます。

いずれも「使用する建材」で基準を満たす必要があり、各建材に対して国土交通省による厳しい基準が定められています。

防火構造だけを理解するよりも「耐火構造」と「準耐火構造」を合わせた、防火性能に関する3つの区分があることを知っておくと役立つでしょう。

まとめ

防火構造は、建物外部からの延焼および崩壊を防ぐことを目的にした建築基準法の規定です。とくに外壁と軒裏に関して、国土交通省が定める防火性能を満たした資材を用いなければいけません。

また、防火地域や準防火地域といった要件も考慮せねばならず、建築会社や自治体、さらには消防点検のプロによるチェックが欠かせないことです。

防火構造の要件を誤って解釈しないよう、必ず専門家に相談するようにしましょう。

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