消防点検コラム

COLUMN

2023.02.22

地震の時にブレーカーを落とす理由の「通電火災」を解説

「地震の時にブレーカーを落とさないとどうなるの?」や「地震の時にブレーカーを落とす理由は?」と考えたことがある人は多いと思います。

日本は地震が発生しやすい環境にあり、過去に発生した大規模地震の際には電気が起因する火災被害が生じたことも事実です。

建物管理者や防災管理者は、地震をはじめとする自然災害等に備え、防災点検や消防点検といったことを機会に、地震とブレーカーの関係についてよく理解しておくことが求められます。

この記事では、地震発生時にブレーカーを落とすべきとされる理由などについて、わかりやすく解説します。

地震の時にブレーカーを落とす理由

避難や停電を伴うような地震の時にブレーカーを落とすべきとされる理由は「通電火災を防ぐため」です。

通電火災は、地震の揺れにより一時的に通電が停止(停電)した後、再び通電した際に電化製品から出火したり、地震により損傷した配線コードから出火することなどが該当します。

例えば、地震が発生した直後、ブレーカーを落とすことなく避難した場合、地震が収まって通電が再開されると、室内に誰もいない状態で電化製品が一斉に再起動することになります。

仮に、地震によって転倒した暖房器具等がそのままの状態で再起動してしまうと、周囲の燃えやすい物に火がうつってしまい、避難から戻った時には火災が発生してしまっていた、ということが起こり得る訳です。

とりわけ、通電が停止してしまうような大きな揺れを伴う地震が起きたり、長時間にわたって避難を伴う(家を離れざるを得ない状況)の場合に通電火災が起こりやすくなります。

事実、1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災の際に起きた火災原因の大半は電気が起因しているとされていることから、通電火災を防ぐ対策としてブレーカーを落とすことが推奨されています。

一方、停電が起きない程度の地震や、避難しなくても支障ない程度の地震であればブレーカーを落とす必要はなく、あくまでも部屋や建物から人が長時間離れざるを得ない状況下が対象になります。

つまり「地震=ブレーカーを落とす」という訳ではなく「停電や避難を伴う地震=ブレーカーを落とす」と認識しておくとよいでしょう。

通電火災とは

地震の時にブレーカーを落とす理由は通電火災を防ぐためですが、通電火災の具体例としては以下のようなことが挙げられます。

・通電再開時に火花が発生して出火
・家電製品等の配線が破損し、通電再開後にショートして出火
・暖房器具等が転倒した状態で通電再開し出火
・地震の揺れでカーテンや衣類が暖房器具等を覆い、通電再開後に出火

このように通電火災が起きる状況は様々ですが、地震により暖房器具などをはじめとする電化製品が「倒れる」「壊れる」「覆いかぶさる」といった状況で起こりやすくなります。

暖房器具等の多くは非常時(転倒時など)に自動で電源が切れる仕組みが採用されていますが、地震によって電源コードの被覆が剥がれるような損傷を受けることもあり、何が原因で火災につながるかはわかりません。

しかし、ブレーカーを落とすことで火災の原因となる通電を停止できることから、避難を伴うような地震発生時にはブレーカーを落とす必要があるのです。

通電火災の実例

地震の際にブレーカーを落とす理由である通電火災の実例を紹介します。

阪神淡路大震災

1995年に発生した阪神淡路大震災では285件(うち146件は原因不明)の火災が起き、139件中85件(約61パーセント)が電気に起因する火災だったとあります。

阪神淡路大震災が発生したのは真冬であったことから、電気ストーブやこたつといった暖房器具等が通電火災によって火元になったと言われています。

また、通電火災が原因となった火災の多くは、地震発生直後ではなく、通電が再開された数日後に発生したとされています。

東日本大震災

2011年に発生した東日本大震災では、163件の火災のうち108件(約66パーセント)が電気に起因する火災だっとまとめられています。

東日本大震災では、電源コードが損傷し、通電再開後に損傷部から出火したケースをはじめ、通電再開後に電気ストーブがカーテンに引火、さらには水槽用のヒーターが空焚き状態になって出火したケースもありました。

阪神淡路大震災で起きた通電火災と共通するケースも多かったことから、地震発生時にはブレーカーを落とすことの重要さが改めて浮き彫りになったと言えます。

参考:大規模地震時の電気火災の発生抑制対策の検討と推進について(大規模地震時の電気火災の発生抑制に関する検討会)

通電火災の原因

通電火災を防ぐために地震の時にはブレーカーを落とす必要がありますが、通電火災のメカニズムとも言える原因についても合わせて理解しておきましょう。

トラッキング現象

通電火災が起きる原因のひとつが「トラッキング現象」です。トラッキング現象とは、電化製品のプラグ部分に湿気や水分が付着した状態で通電すると火花放電が生じる現象のことを指しています。

具体的には、水分が生じやすい台所や洗面所周辺で使用される冷蔵庫や暖房器具等で生じることが多く、さらにはプラグに溜まった埃に引火して火災が広がるケースもあります。

また、地震の揺れによって観賞用水槽が転倒することで周囲の電化製品やプラグ部分を濡らし、通電をきっかけにして火花放電が起きることもあります。

電気ショート

通電火災が起きる原因として「電気ショート(短絡)」も挙げられます。一般的には「ショート」と呼ばれることが多く、本来の電気回路を通らずに電気が流れ、大きな電流が生じることを指しています。

電化製品の電源コードは2本の銅線が絶縁物質のビニールによって被覆され、それぞれ保護されていますが、地震によって家具が転倒したりすることで電源コードが破損し、被服が破れて2本がひとつになることでショートします。

このような状態で通電すると、ショート(大電流が流れる)して火花が生じ、燃えやすい物に引火するケースがあります。

また、被覆素材は経年劣化するため、古い電化製品の電源コードが地震によって火元になることもあり得ます。

通電火災が起こりやすい場所

地震が起きた時にブレーカーを落とす理由は通電火災を防ぐことにありますが、通電火災が起きやすい場所や状況を理解することも大切です。

ブレーカー周辺

停電や避難を伴うような地震発生時はブレーカーを落とす必要がありますが、ブレーカー本体そのものでトラッキング現象やショートが起きないようにしなければいけません。

とくに、一般住宅のような場合は、ブレーカー盤がむき出しの状態で取り付けられていることが多く、埃がたまりやすい環境にあります。

万が一の地震に備え、ブレーカー本体の埃を取り払っておくと同時に、ブレーカーを落とす手順も確認しておきましょう。

暖房器具等がある部屋

暖房器具等を設置しているリビングルームといった場所は通電火災が起きやすいため注意が必要です。

地震の揺れで暖房器具が転倒したとしても、引火してしまう物を周囲に置かないことはもちろんですが、電化製品の電源コードが破損してショートが起きるような事態を避けることも重要です。

とりわけ、電源コードが露出しており、燃えやすい布を使う「こたつ」は注意すべきでしょう。

通電火災の予防策

地震の際にブレーカーを落とす理由は「通電火災を防ぐため」ですが、具体的な対策方法として以下のようなことが挙げられます。

・地震に備えあらかじめ確認しておく
・ブレーカーを落とす
・電源プラグを抜く

上記の予防策についてそれぞれ解説します。

地震に備えあらかじめ確認しておく

避難や停電が生じるような地震発生時、速やかにブレーカーを落とせるように、日頃から備えておくことが最も重要です。

具体的には、ブレーカー盤(厳密には分電盤)の設置場所や、ブレーカーカバーの開閉方法の確認、メインブレーカー(厳密にはアンペアブレーカー)の場所や操作方法など、いずれも基本的なことですが、建物管理者や防災管理者以外も共有し確認するようにしておきましょう。

とくにオフィスビルなどにおいてはブレーカーの場所がわからないで、誰も対応できないというケースが想定されるので注意してください。

ブレーカーを落とす

地震発生後、避難したりその場を離れたりする際にはブレーカーを落とします。実際には、ブレーカー盤(分電盤)にある最も大きな「メインブレーカー(アンペアブレーカー)」を落とします。

ブレーカー盤によっては、漏電ブレーカーや安全ブレーカーと呼ばれる物が付いていることもありますが、落とすべきブレーカーは「メインブレーカー(アンペアブレーカー)」だけで問題ありません。

メインブレーカーは分電盤の左端に付いている最も大きなブレーカーであることが多く、緊急時であっても迷うことはないでしょう。

電源プラグを抜く

地震の際にブレーカーを落とすと同時に、電源プラグを抜くこともおすすめします。ブレーカーを落とすことで通電火災の予防にはなりますが、より安全性を高めるためには電化製品のプラグを抜いておくと安心です。

ただし、対応すべき電化製品が多いこともあるため、状況を見て判断してよいでしょう。ブレーカーを落とすことだけは忘れないでください。

まとめ

地震の時にブレーカーを落とす理由は「通電火災を防ぐため」です。通電火災は電気を使うものすべてで起きる可能性があるため、それらの可能性をゼロに近づけるためにもブレーカーを落とすことが有効と言えます。

避難や停電を伴うような地震が起きた時に備え、あらかじめブレーカーを落とすための基本的な手順や方法について確認しておくことをおすすめします。

消防設備点検なら全国消防点検.comまで


全国消防点検.comでは消防設備点検のご相談を承っております。

「古い建物でいつ設置されたものかわからない・・・」
「消防設備についてよくわからないし、点検もしているのかな?」

などなど、些細なことでもご相談を承っております。

消防点検に限らず、様々な設置や点検等も承っており、
依頼する業者をまとめたい、点検類をまとめて依頼したいなど幅広くご相談が可能です

まずはご相談だけでも大歓迎です!
どうぞお気軽にお問い合わせください。

全国適正価格を実現!お急ぎの方専用

カンタン10秒 お見積り・相談はこちら!

全国エリア網羅で適正価格の算出を可能に!
面倒な業者探しスケジュール調整も弊社で代行!