消防法
2023.01.27
消防検査は義務なの?対象や流れ、検査基準を解説
「消防検査って何?義務なの?」さらには「消防検査を受けないとどうなるの?」といった疑問を持ったことがある人は多いのではないでしょうか。
消防検査は消防用設備等の設置にあたり、所轄の消防署(消防士)に現地で確認してもらうことで、一定の基準を満たす建物の場合、消防検査を受ける義務があります。
一方で、消防検査を受ける義務の対象かどうかがわからない、あるいは消防検査の流れがわからないという悩みを持っている人も多いのが実情です。
そこでこの記事では、消防検査について、検査義務が課せられる防火対象物、検査の基準や流れ、検査を受けないとどうなるのかといったことについて、初心者にもわかりやすく解説します。
【目次】
1. 消防検査とは
2. 消防検査の対象となる防火対象物
3. 消防検査を受けないとどうなる?
4. 消防検査の流れ
5. 消防検査のチェック基準
6. まとめ
1. 消防検査とは
消防検査とは、消防用設備等を設置した際に実施する消防機関による検査のことです。正式には「消防用設備等の設置完了検査」ですが、一般的には消防検査と言われています。
消防検査が実施される目的は、消防用設備等の設置状況をはじめ、それぞれの設備が適切に機能するかどうかを、設置段階あるいは建物の使用開始前に確認することにあります。
加えて、消防用設備等の不備や不具合、法令に準しているかどうか、さらには未設置の設備がないかといったこともチェックします。
消防検査はすべての建物が対象になる訳ではありません。消防検査の義務対象については後述しますが、ひとつの目安として「宿泊を伴う施設」と「自動火災報知設備の設置義務がある建物」は例外なく消防検査を受ける義務があると思ってよいでしょう。
消防検査について理解するうえでポイントになるのが「消防検査義務の有無」、「消防検査の流れ」そして「消防検査のチェック基準」ですので、これら3つを中心に理解するようにしてください。
消防検査が導入された背景および法改正
消防検査が実施される背景には、1973年6月に熊本県熊本市で発生した大洋デパート火災(死者104人、負傷者67人、史上最悪のデパート火災)を受けた法改正があります。
この火災後、デパートが消防法令や指導に従っていなかったことや、防火シャッターの整備不良、さらにはスプリンクラーの設置工事が終わっていないにもかかわらず営業していたことなどが判明しました。
これを受け、翌年1974年6月に消防法が改正(強化)され、消防検査が導入されるようになりました。
参考:消防法第十七条の三の二
消防点検との違い
消防検査と混同しやすいのが「消防点検」です。消防検査と消防点検の主な違いは以下のようなことが挙げられます。
・消防検査は消防士による検査だが、消防点検は消防設備士及び消防設備点検資格者による検査
・消防検査は無料だが、消防点検は有料
・消防検査は原則1回だが、消防点検は6ヶ月に1回の頻度
消防検査と消防点検は非常に混同しやすいため、まったくの別物ということを覚えておきましょう。
立入検査との違い
消防検査と混同しやすいものとして「立入検査」も挙げられます。消防検査と立入検査の主な違いは以下の通りです。
・消防検査は日程調整がなされるが、立入検査は抜き打ちの可能性がある
・消防検査は原則1回だが、立入検査は不定期(最低でも3~4年に1回)
消防検査と立入検査は上記のような違いがあるものの、消防用設備等の機器点検と総合点検を目的にしていることで共通しています。
さらに、立入検査を実施するのは所轄の消防署(消防士)という点でも同様です。しかし、立入検査は「頻度」や「日程」に関する規定がないため、抜き打ち検査が実施される可能性があることに注意しましょう。
一般的には、指導や是正勧告を受けることが多い建物や、火災被害が想定される繫華街エリア、雑居ビルなどで頻繁に立入検査が実施され、なおかつ抜き打ち検査の対象になりやすいと言われています。
2. 消防検査の対象となる防火対象物
消防検査が義務付けられる防火対象物は以下の通りです。以下のいずれかに該当する場合は、消防検査を受ける義務があります。
・延床面積に関係なく、自動火災報知設備の設置が義務付けられている用途の建物
・特定防火対象物で、なおかつ延床面積が300平方メートル以上
・延床面積が300平方メートル以上の非特定防火対象物で、なおかつ消防長または消防署長が指定した建物
・特定一階段等防火対象物(地階や3階以上の階に特定用途があり、そこから避難階までの階段が1つしかない防火対象物)
上記の基準をわかりやすく解説すると、旅館やホテル、病院、カラオケボックス、共同住宅、高齢者福祉施設、そして11階建て以上の建物などは消防検査を受ける義務が生じます。
その他の用途で使用される建物については、延床面積300平方メートル以上かどうかによって変わります。
このように、消防検査を受ける義務の有無については複雑な基準があるため、所轄の消防署や消防点検の専門家に相談するようにしてください。
3. 消防検査を受けないとどうなる?
消防検査を受けなければならないはずの建物が消防検査を受けないと消防法令違反となり、行政処分の対象になります。
これにより、標識の設置や公報への掲載、さらには違反建物として公表されることもあります。
対象となる建物の用途が事業や飲食店、販売店などの場合、消防検査を受けて、なおかつ消防用設備等検査結果済証が発行されるまで営業できません。
消防法令違反がない安全な建物になってから使用開始することが義務付けられていることを忘れないようにしましょう。
参考:知らなかったは通じません 日本消防設備安全センター
4. 消防検査の流れ
消防検査の流れは大まかに以下の流れを辿ります。
1.所轄消防署の予防課へ「消防用設備等設置届出書」を提出
2.消防検査の実施
3.再検査または消防用設備等検査結果済証の受け取り
上記の流れについてそれぞれ解説します。
所轄消防署の予防課へ「消防用設備等設置届出書」を提出
消防検査の流れは、所轄の消防署(予防課)に対し「消防用設備等設置届出書」を提出することからはじまります。
消防用設備等を設置、すなわち工事が完了してから4日以内に届け出る必要があります。設置届を提出する段階で、消防検査の日程調整などの打ち合わせがおこなわれます。
なお、設置届を提出すると同時に、消防用設備等試験結果報告書や、消防用設備等の画像を添えることも可能で、後の消防検査を簡略化できることもあります。(消防機関の判断による)
消防検査の実施
消防検査の流れで最も重要となるのが「消防検査の実施」です。実際に所轄の消防署から消防士がやってきて検査します。
検査の内容については、建物内に設置してある消防用設備の内容や、建物の用途、さらには現場判断によって大きく変わります。
具体的には、ポンプ車とスプリンクラーを接続したうえで放水試験を求められることがある一方で、すべて写真の提出で完了することもあります。
なお、消防検査当日は建物管理者だけでなく、担当の消防設備士が立ち会うことが一般的で、その際の日程調整やコストが発生することも覚えておきましょう。
再検査または消防用設備等検査結果済証の受け取り
消防検査における最後の流れとなるのが「再検査または消防用設備等検査結果済証の受け取り」です。
消防検査の際に消防用設備に不具合などがあると再検査を求められますが、問題がなければ1週間以内に消防用設備等検査結果済証が発行され、消防検査が完了します。
消防検査は前もって日程調整されますので、消防用設備等はあらかじめ動作確認できる猶予があります。
つまり、あらかじめ準備しておくことで再検査は十分に回避可能と言えます。担当の消防用設備士としっかり打ち合わせするようにしましょう。
ちなみに、再検査となった場合、余程の大きな問題でない限り、修正箇所の画像提出で済むケースがほとんどです。
消防用設備等検査結果済証は、該当建物の営業開始にあたり行政窓口や保健所などで要求される非常に重要な書類ですので無くさないようにしましょう。
5. 消防検査のチェック基準
消防検査におけるチェック基準は多岐にわたりますが、所轄の消防署判断にも依存するため、具体的に示すことは難しいとされています。
ここでは、消防検査でチェックされることが多い主な基準を紹介します。
・消火器具や誘導灯(設置場所や個数、電気回線、停電時の動作確認など)
・自動火災報知設備(設置場所、感知器の動作確認、一連の動作確認など)
・火災通報装置(動作確認、自動音声の確認、停電時の動作確認など)
・屋内消火栓やスプリンクラー設備(設置場所や個数、散水障害の有無、水圧試験など)
・避難器具(設置場所や個数、取付位置や強度、標識の有無など)
・避難経路(障害物の有無、経路図の有無、電気錠の動作確認など)
・防炎物品(カーテンやカーペットが防炎物品かどうか)
このように消防検査の内容は非常に多く、建物に設置してある消防用設備によってもその内容が変わります。
原則として、消防検査にあたりあらかじめ提出する「消防用設備等設置届出書」と現場で相違ないかといったことに基づいた内容です。
6. まとめ
消防検査は所轄の消防署による消防用設備等の検査であり、一定の条件に該当する建物である場合は、検査が義務付けられています。
消防検査を受けないと罰則の対象になることもあるため、建物管理者は責任を持って消防点検の専門家や所轄の消防署に確認する必要があります。
消防検査は知らなかったでは済まされないことですので、ぜひ気をつけてください。
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