消防点検コラム

消防用設備

2022.10.26

消防ポンプの仕組みや使い方を徹底解説

火災時の消火活動で不可欠な消防設備と言えば「消火ポンプ」ではないでしょうか。

 

一般的に「消防ポンプ」と言えばエンジンを搭載している消火ポンプのことを指します。また、消火ポンプは消防法によって細かく規定が決められており、いざという時に作動するように点検を欠かせないものです。

 

消防ポンプという名称こそ知っているけれども、その仕組みや使い方を理解していない人も多いかもしれません。

 

この記事では「消火ポンプ」について、仕組みや使い方などを交えて詳しく解説します。

 

消防ポンプとは

 

消防ポンプとは消防用水を供給するための装置です。「動力消防ポンプ」とも呼ばれることもあります。

 

消防ポンプはホース、ノズル、吸管および水源によって構成され、火災現場に消防用水を供給する「火災の消火」を目的にしています。

 

消防ポンプの仕組みは、消火用水槽や消火栓、さらには池や海の水と連結し、ポンプの力で水を吸い上げて、羽根車の圧力エネルギーを使って勢いよく排出します。

 

消防ポンプの技術規格や法定点検の義務については消防法(第二十一条の十六の三第一項)によって定められています。

 

消防ポンプの種類

 

消防ポンプは建物に備え付けられている「定置式」の物や、持ち運び可能な「可搬式」などがあり、私たちにとって最も身近な消防ポンプの代表例が消防車(消防ポンプ自動車)でしょう。

 

定置式の消防ポンプは、主にビルや建造物に設置されているスプリンクラーや消火栓などに消防用水を供給するために用いられます。

 

可搬式の消防ポンプは、屋外における火災時の消防用水を供給する際に用いられます。消防車が入り込めないような場所では、より小さな可搬式消防ポンプ(ポータブル発電機のようなタイプ)が活躍します。

 

消防ポンプの動力源は「電気式」、「内燃式(ガソリンエンジン・ディーゼルエンジン)」、そして「手動式」に区分されます。

 

消防ポンプのほとんどは電源が供給できない事態でも稼働するように「内燃式(ガソリンエンジン・ディーゼルエンジン)」のものです。

 

このように、ひと言で消防ポンプと言っても様々な物があり、用途や種類、そして放水量といった規格が異なることを覚えておきましょう。

動力消防ポンプの種類

 

エンジンを搭載した消防ポンプである「動力消防ポンプ」の種類について解説します。

 

消防ポンプ自動車

 

ポンプが自動車の車台に固定されているタイプです。街でよく見かける消防車の中のひとつと考えて良いでしょう。

 

基本的に消防ポンプ自動車はどのような火災でも出動し、消火栓や防火水槽などから水をくみ上げて、火災現場へ消防用水を供給します。

 

一般的には、毎分2,000リットル以上の消火用水を30メートルの高さまで放出できる高圧ポンプを搭載しており、車体1台に対して20メートルのホースを最低10本以上積んでいます。(物や規格によって異なります)

 

消防ポンプ自動車は、用途や特性によって枝分かれするようにして種類が分かれています。「はしご車」と呼ばれる車両をはじめ、火災現場ですぐに放水可能な「水槽付きポンプ車」、狭い道でも侵入可能な「小型動力ポンプ積載車」は、一般ポンプ車との中継役としても使われます。

 

可搬消防ポンプ

 

可搬消防ポンプは人力で搬送できるタイプの消防ポンプです。一般的に荷物を運ぶ際に使われる「台車」や「リヤカー」と一体型になった物を想像すると良いかもしれません。

 

また、車両に搭載されている物を取り外して使用できるような物もあります。人力で牽引できるような物や、小型発電機のように一人でも持ち運べる物も含まれます。

 

可搬消防ポンプは持ち運び出来る特性をいかして、消防ポンプ自動車が入り込めない山林火災などでも活躍します。

 

火災現場での消火活動が難しい環境であっても可搬消防ポンプを使うことで迅速かつ確実な消火が可能になります。

 

動力消防ポンプ設備の規格放水量

 

消防ポンプは消火栓といった水源から消火用水を火災現場まで供給する役割がありますが、その放水量については消防法(第二十条 3)によって規定が設けられています。

 

  • 屋内消火栓の代替として設置する場合:0.2㎥/分
  • 屋外消火栓の代替として設置する場合:0.4㎥/分

 

消防ポンプの級別と性能

 

消防ポンプには放水量や放水圧力によって「級別(等級)」があります。

 

消防ポンプ自動車には「B-1級以上」、可搬ポンプには「B-2級以下」のものが用いられます。

 

なお、D級のポンプは、規格放水量が0.2㎥以上を満たせないため、消防用ポンプとしては認められません。

 

級別規格放水圧力(MPa)規格放水量(㎥/min)
A-10.852.8
A-20.852
B-10.851.5
B-20.71
B-30.550.5
C-10.50.35
C-20.40.2
D-10.30.13
D-20.250.05

 

動力消防ポンプの水源位置と規格放水量

 

動力消防ポンプは水源と水量も規定されています。

 

動力消防ポンプを設置する際には「水源からの水平距離が半径100メートル以内」であることが定められています。

 

そして、水源位置からの距離によって、動力消防ポンプの「級別(等級)」を判断することになります。

 

水平距離

(水源からの半径)

規格放水量(㎥/min)
100m以下 0.5以上
40m以下 0.4~0.5未満
25m以下 0.4未満

 

例えば、水源から水平距離50mのところに設置されている消防ポンプは、規格放水量が「0.5以上」に該当することから「B-3」以上の物でなければいけません。

 

動力消防ポンプに使う水源の水量

 

動力消防ポンプの水源は「水量」も定められています。

 

使用する消防ポンプの規格放水量で「20分間」放水できることが条件です。例えば、B-3級の消防ポンプでは、規格放水量が毎分0.5㎥ですので、10㎥(0.5×20)となります。

 

つまり、B-3級の消防ポンプを設置している場合、水源の水量は「10㎥」確保していなければいけません。10㎥は10,000リットル、重さにして10トンです。

 

定式の消防ポンプを設置する時の流れ

 

新たに定式の消防ポンプを設置する場合、以下の条件を複合的に考慮しなければいけません。

 

  • 水源位置
  • 水量
  • 消防ポンプの規格および等級

 

基本的な流れとしては、最初に管轄の消防署へ設計書と着工届を提出し、その仕様が消防法に準拠しているかどうかや、認識の相違がないかなどを打合せます。

 

約10日間の審査期間を経て着工となり、工事完了後4日以内に試験結果と設置届を消防署へ提出します。

 

消防立会検査では、設置届通りの仕様になっているかや、外観点検などがおこなわれ、後日「試験結果通知書」が発行されることで完了です。

 

その後は法定点検として6か月に1回の「機器点検(消防用設備などの機器の状態や操作の確認)」と、1年に1回の「総合点検(消防用設備を総合的に機能するかどうかを機器ごとに確認)」をしなければいけません。

 

動力消防ポンプを設置する際の附帯工事

 

動力消防ポンプを設置する際、追加の工事が必要になるケースもあるので覚えておくと役に立つでしょう。

 

附帯工事は必須ではないものの、建物の立地や特性を考慮し、消防署との協議によって決めることをおすすめします。

 

セルスイッチ用の電気工事

 

動力消防ポンプを起動する際は、バッテリーで動く「セルスターター」を使う方法と「手動」による2つの方法があります。

 

セルスターターとは、消防ポンプの内燃機関(エンジン)を始動させるためのもので、多くの場合はダイヤルやスイッチを回すことで簡単に作動するようになっています。

 

セルスターターを使った始動方法であれば、緊急時であっても消防ポンプを速やかに始動させることが可能で、なおかつ使う人を選ばない利点があります。

 

しかし、セルスターターはバッテリーを必要とするため、長期間放置していると「バッテリーあがり」を起こしてしまい、肝心な時に使えなくなるかもしれません。

 

一方、手動による始動方法は、消防ポンプに付いている始動用の紐を引っ張ることで始動させるため、電気やバッテリーなどを使わなくとも始動させることが可能です。

 

しかし、手動による始動は一定の訓練が必要になることや、緊急時になかなかエンジンをかけられないこと、そして力を必要とする欠点があります。

 

このようなことから消防ポンプを設置する際に、セルスターターがいつでも使えるように「電気工事」を兼ねるケースもあります。

 

消防ポンプ格納庫の排気工事

 

消防ポンプは消防法により「火災、雨水等の影響を受けるおそれのない場所」に設置することが定められています。

 

そのため、格納庫に設置したうえで、非常時に格納庫内で作動させるケースがあります。この場合、エンジンの排気が格納庫内に溜まることを考慮し、格納庫内に換気扇や排気設備を取り付ける工事をおこないます。

 

可搬式の消防ポンプであれば格納庫から持ち出して使用すれば問題ありませんが、定式の消防ポンプの場合は検討しなければいけない工事です。

 

水源の水量確保の工事

 

消防ポンプは水源と水量も定められていることから、常に水源の水量を規定量にしておく必要があります。

 

これに対応するため、消火用水槽に給水管を繋げるための工事が必要になる可能性があります。

 

同時に、防火水槽の水量が規定量になると自動的に給水が止まるように「ボールタップ」と呼ばれる浮きを設置する工事も検討しなければいけません。

 

肝心な時に消火用水が不足していたり、消火に十分な水量が確保できなかったりということがないよう検討すべき工事と言えます。

 

まとめ

 

消防ポンプは火災発生時に消火用水を供給する重要な役割を担っています。また、消防ポンプ単体だけでなく、水源や水量なども併せて備えておく必要があります。その際には消防法で定められている基準や要件なども理解しておきましょう。

 

消防ポンプについては法定点検の際に外観点検だけでなく、関係者にその仕組みや使い方についても周知することをおすすめします。

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