消防点検コラム

消防用設備

2022.10.07

消火ポンプの法定点検や設置基準を解説!選定にも役立つ!

消火ポンプは屋内消火栓やスプリンクラーといった消火装置を動かすために必ず必要なものです。 

設置対象となる建物の管理者は、消火ポンプの設置と定期的な法令点検が法律で義務付けられているため、設置や法定点検についてあらかじめよく理解しておくことが大切です。 

この記事では、消火ポンプの種類や仕組みといった基本的なことから、法定点検や設置基準、そして価格相場など、消火ポンプに関することについて解説します。

消火ポンプとは?

消火ポンプとは、建物内外で火災が発生した際に、初期消火および中期消火をするための消防用水を供給するための装置です。

消火ポンプは建物内に設置されている消火栓やスプリンクラーに圧力がかかった水を送る重要な役割を担っています。

火災時に消火ポンプが機能しないと初期消火活動に支障が生じて被害が広がるため、消火ポンプの設置や点検は欠かせません。

消火ポンプは、耐火構造や内装制限といった「建物の構造」と、建物の用途ごとに設定されている「面積」の組み合わせによって設置が義務付けられます。

消火ポンプ本体の価格相場は200万円から600万円ほどで、さらに設置費用や工賃などが加わる計算です。

また、15年から20年で交換する必要があるため、その都度に更新工事が必要になります。消火ポンプの更新工事にかかる費用の相場は250万円から1,000万円程度です。

消火ポンプの種類と用途

消火ポンプは用途に応じて以下3つの種類に分けられます。 

 ・屋内消火栓設備用
 ・屋外消火栓設備用
 ・スプリンクラー用

上記3つの種類について解説します。

屋内消火栓設備

屋内消火栓設備とは、建物内部で消火ポンプ(多くは地下に設置)と消火栓箱(非常ベルが付いており、ホースが格納されている箱)を専用の配管で結び、火災発生時に貯水槽から消火栓箱へ消火用水を送る消火設備のことです。

消火栓ポンプは消火栓始動器によって管理されています。火災信号を受信した消火栓始動器が中継し、消火栓ポンプに起動信号を送信する仕組みです。

また、消火栓始動器は各消火栓に付いているランプを点滅させることで、消火ポンプが作動しているかが分かるようになっています。消火栓ランプが点滅していれば、すぐにでも放水可能を意味し、緊急時であっても判断に迷わずに済む設計です。

屋内消火栓設備には、使用にあたり2人以上必要で、なおかつ訓練が求められる「1号消火栓」や、ひとりでも操作と放水可能な「易操作1号消火栓」および「2号消火栓」などがあります。

いずれも、稼働させるためには消火ポンプが不可欠です。

屋外消火栓設備

屋外消火栓設備とは、建物下層階(1階から2階)の消火を目的にして設置される消火設備のことです。
消火栓が屋外に設置されており、消火器や簡易的な消火装置で消火出来ない事態の際に使用されます。

基本的な仕組みは屋内消火栓設備と同じで、火災発生時に消火栓始動器が始動することで消火ポンプが起動し、消火栓から放水出来るようになります。

屋外消火栓設備は防護出来る水平距離が40m以上と定められており、屋内消火栓設備の25mと比較して広範囲に対応していることが特徴です。

屋外消火栓設備は建物の2階部分までの消火を想定していることから、平屋や工場、作業所などに設置されています。

屋外消火栓設備には大きく区分して以下3つの種類があります。

器具格納式消火栓

格納箱内にホースや開閉弁などがまとめてあるタイプ

地下式消火栓

地面下に設置するタイプ(ノズルとホースは5m内に設置)

地上式消火栓

赤いポール型で街でも見かける最も一般的なタイプ(ノズルとホースは5m内に設置)

スプリンクラー用

スプリンクラー設備とは、天井に専用の配管を設置し、消火用水を散水するためのスプリンクラーヘッドを取り付けた固定式消火設備のことです。

配管内に消火用水を充填加圧した状態で、スプリンクラーヘッドの感熱装置(温度ヒューズが溶ける)が作動することで一気に散水します。 

作動後、スプリンクラーの配管内部の圧力が低下してくると、スプリンクラーの圧力タンクの内圧も低下します。その減圧を感知した圧力スイッチが作動することで消火ポンプが起動し、消火用水を送り続ける仕組みです。

消火ポンプと消火栓が起動する仕組み

消火ポンプおよび消火栓が起動する仕組みについて解説します。

消火栓始動器

消火ポンプが起動する仕組みで重要になるのが「消火栓始動器」です。

消火栓始動器は中継器の役割を担っています。具体的には、火災発生時に火災報知器の非常ボタンを押すと火災受信機から消火栓始動器へ信号が送られ、消火栓始動器から消火ポンプへ起動信号が中継されます。

消火ポンプが起動すると専用の配管を通って建物の各所に設置されている消火栓まで圧力がかかった消火用水が送られます。 

そして、消火栓箱内にある消火栓開閉弁を開くことで勢いがある水が放出される仕組みです。

 

消火ポンプが起動するまでの流れは以下のようになります。

 ・火災報知器のボタンを押す

 ・火災受信機が消火栓始動器へ信号を送信

 ・消火栓始動器から消火ポンプへ起動信号を送信

 ・消火ポンプが起動し、各消火栓が有効な状態になる

消火ポンプが起動したら消火栓を操作

消火ポンプが起動した後、建物の各所にある「消火栓」を操作します。

ほとんど場合、建物内各所の壁に埋め込まれるように「消火栓箱」が設置してあります。
消火栓箱内には「ノズル一体型のホース」と「消火栓開閉弁」があり、緊急時にはノズルを取り出してから消火栓開閉弁を開くことで散水可能です。

 

屋内消火栓は大きく分けて以下の4つがあり、それぞれ満たすべき基準が異なります。 

 ・1号消火栓:放水圧力0.17MPa、放水量130L/分以上

 ・易操作性1号消火栓:放水圧力0.17MPa、放水量130L/分以上

 ・2号消火栓:放水圧力0.25MPa、放水量60L/分以上

 ・広範囲型2号消火栓:放水圧力0.17MPa、放水量80L/分以上

 

消火栓に関する基準は見直されることもあるため、新基準を満たせる消火ポンプや消火栓といった設備のアップデートが必要になることも覚えておきましょう。

 

近年では、訓練を必要とせず、より簡易そして確実に消火活動が出来るよう、簡易操作に対応した消火栓の導入が進みつつあります。 

これに伴い、法定点検を機に消火ポンプや消火栓の新調を検討する建物管理者も増えています。

消火ポンプの法定点検 

消火ポンプを含む消防用設備等を設置した建物には法定点検が義務付けられます。

これは「消防用設備等点検報告制度」と呼ばれるもので、消防法第17条の3の3「防火対象物の関係者は、消防用設備等又は特殊消防用設備等について、定期点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。」を指しています。

消防用設備等点検報告制度は、大きく2つに分けられ「6か月に1回の機器点検」と「1年に1回の総合点検」があります。

消火ポンプも点検対象のため、6か月に1回そして1年に1回は、消防設備士または消防設備点検有資格者による点検を受ける必要があります。

点検を受けた後、定期的に消防署長または市町村長へ報告しなければなりません。報告期間は建物の種類によって異なります。

1年に1回

特定防火対象物(飲食店、百貨店、旅館、ホテル、病院、地下街など)

3年に1回

非特定防火対象物(共同住宅、工場、倉庫、駐車場など)

消火ポンプの価格相場

消火ポンプの価格は200万円から600万円程度です。

消火ポンプを販売しているメーカーのほとんどは価格を公表していません。この理由は、建物によって配管や消火栓の数などが異なり工賃に開きが生じるためです。

消火ポンプの正確な価格を知るためには業者に建物を見てもらったうえで、見積りをしてもらう必要があります。

また、15年から20年に一度は消火ポンプを取り換える「更新工事」も必要です。更新工事の相場は250万円から1,000万円程度とされています。

なお、法定点検の結果、消火ポンプに不具合が見つかった場合、その都度、部品代やメンテナンス代がかかることも覚えておきましょう。

消火ポンプと屋内消火栓を設置する基準

消火ポンプと屋内消火栓を設置する際の基準は、原則として「構造」と「面積」の組み合わせによって決まります。さらに、内装や建物の用途などの条件も加わります。

建物の構造

消火ポンプや屋内消火栓を設置する場合、防火性能に応じて大まかに以下3つの構造に分けられます。
(正式な構造は建物登記簿謄本に記載されている)

 ・耐火構造:鉄筋鉄骨コンクリート(SRC)、鉄筋コンクリート(RC)、鉄骨+耐火処理

 ・準耐火構造:鉄骨造

 ・それ以外:木造

内装制限の有無

内装制限とは、火災時に被害が拡大しないように壁や天井に使用する材料を燃えにくい材料に限定する規制のことです。(建築基準法で定められている)

建物の壁や天井などに使用される材料が、不燃材や準不燃材、難燃材料といった耐火性に優れている物の場合、消火ポンプなどの設置条件が緩くなります。 

 ・耐火構造+内装制限:規制が緩い

 ・耐火構造(準耐火構造+内装制限):規制がやや緩い

 ・それ以外:規制が厳しい

建物の用途と設定面積

建物の用途ごとに設定された面積も基準になります。

消火ポンプなどの設備は、設定面積内であれば不要ですが、設定面積を超える場合は設置義務があります。

劇場や料理店、ホテルといった人が多く集まる場所は設定面積が小さく、火災時の被害が少ないような場所は設定面積が大きいことが特徴です。

なお、建物の用途だけで設置の有無が決まることはありません。設定面積は用途ごとに建物の構造や内装制限も加味されます。

例えば、建物の用途がホテルの場合、耐火構造+内装制限があるホテル(2,100㎡)と、木造ホテル(700㎡)では設定面積が異なります。

まとめ

消火ポンプは一定の基準を満たす建物に設置が義務付けられています。また、定期的な法定点検と報告、さらには更新工事についても考慮する必要があります。

消火ポンプの法定点検や設置、更新をする場合、業者任せにならないよう、基準や仕組みを理解しておくことをおすすめします。

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