消防点検コラム

3C(クリーン・クリア・クール)に火災を解決する画期的設備とは!?

沖縄の歴史・文化を象徴し、観光地としても人気な首里城ですが、令和元年10月31日未明に、
正殿内部から発生した火災により、正殿をはじめとする9施設が消失をしてしまいました。

火災は約11時間に渡って燃え続けた後に鎮火されましが、
火災によって損害を受けたのは建物だけではなくその中に収容されていた工芸品なども約390点が焼失し、残りの360点も修復が必要な状態となっています。

こういった美術品などは、火が移ることはもちろん消火の際に水や泡を被ることでも大きな損害を受けます。
このようなケースには水や泡を使用せず、素早く消火できるガス系消火設備が効果的です。

今回は、こんなクリーン・クリア・クールに消火ができる設備の中の一つであるハロゲン化物消火設備について解説していきます。

ハロゲン化物消火設備とは?

留守中の点検

消火の際にガスを用いる消防設備のうちハロゲンを使用するものをハロゲン化物消化設備と言います。

ハロゲン化物とはフッ素や塩素、臭素などのハロゲン系列を含んでいる化合物質であり、
主な消火原理は冷却作用と燃料と酸素の化学反応を抑制して消火する仕組みです。

この消防設備を使用するメリット

この消防設備に使用されるハロン消火剤は大きく3つの特性があります。

高絶縁性、高浸透性、低汚損性などに優れる

・電気火災や散水障害のある場合などに有効
・防護対象物などの水損などの二次被害や消火剤に夜汚染拡大の防止に有効

毒性が低く、人体への安全性が高い

・人が立ち入る部分に設置可能

消化能力が高く、区画面積に対しての必要消火材料が少ない

・消火剤貯蔵場所の省スペース化による、設計の自由度、コスト面で有利
・区画内の圧力上昇防止そちが不要であり、設計の自由度、コスト面で有利
・区画内の圧力上昇による防護対象などの破損(二次被害)防止に有効

ガスによる消火で発揮性も高く、放射後に汚損を残さないことから図書や重要美術品などの火災にも適応しています。
そのほかにも電子計算機室、通信機器室、駐車場などの消火設備に幅広く使用されています。

不活性ガス消火設備との比較

同じくガスを使用して消火を行う設備には不活性設備というものがあります。
こちらも汚損の少なく早急に鎮火することを目的としていますが、ハロゲン化物消火設備とは大きな違いがあります。

不活性ガス(二酸化炭素)ハロゲン化物消火設備(ハロン1301)
消火原理酸素濃度の低下と冷却燃焼連鎖反応抑制
人体への影響人命に対し非常に危険消火時に有害な熱分解生成物が発生。人体に危険。退避が必要。
視界の良好度不良不良の可能性あり
消防法施行規則常時無人区画に設置有人区画に設置可
在室者制限危険放出前に退室必要特になし

 

人体への影響は?

現在、主流として使用されているのは「ハロン1301」というものです。
このガスは空気中に放射された場合でも人体にはほぼ無害です。

しかし、注意しないといけないのは「匂い」です。
人体には影響はないと言えど、ガス自体には独特の匂いがあるため、
こちらのガスを吸い込み気分が悪くなったという報告があります。

また、火と化合することで臭気を発生させるという性質もあるため注意が必要です。

環境への影響は?

この消防設備で使用されているハロン消火剤というものは、実はオゾン層を破壊する性質があるんです。
そのため、オゾン層保護の観点からウィーン条約(1985年)に基づき、モントリオール議定書(1987年)においてオゾン層破壊物質として指定され、生産・消費及び貿易を規制しています。

そこで、国内では上記のことを受け1994年に国内法の整備、生産全廃の措置を行い、
2000年に 「国家ハロンマネジメント戦略」というものが策定されました。

「国家ハロンマネジメント戦略」の主旨

消防法により、ハロゲン化物消火設備・機器の適正な設置・維持が確保され、不用意な放出防止、
排出抑制に効果をあげている我が国においては、

①防火安全上必要な用途における使用(クリティカルユース)については、ハロン消火設備等の新設を認める。

②既存のハロン消火設備等については、ハロンの補充を継続する。(クリティカルユースとみなす。)

③ハロン消火設備の設置等の状況についてデータベースを構築・管理し、設備が廃止される場合は、これを的確に回収、再生施設にて不純物を取り除く等品質を確認の上、防火安全上必要な用途に供給する。

④1〜3のハロン消火剤の再利用システムを適切に管理・運用し、適正なハロンの使用の推進を図ることでオゾン層の保護に取り組む。

環境に害を与える性質がありますが、適切な場所への使用、管理・維持をすることで
効果的に消火していくことが大事なんですね!

ハロゲン化物消火設備の使用が防火安全上必要とされる分野

人命の安全が求められる場合

・不特定の者の出入りがある場所
・特定の者が常時介在、または頻繁に出入りする。(1日2時間程度以上)

消火剤の性質を活かせる場合

・電気絶縁性、散水障害などが必要な場所
・設置部分の面積、堆積、用途(危険物、指定可燃物、火器設置など)が当てはまるもの

二次被害の防止をしたい場合

・水損、汚損、破損(圧力上昇、冷却など)などに弱い場所
・汚染の拡大(薬品、放射性物質など)の影響を受けやすい場所

早期復旧が必要な場合

・公共施設、重要インフラ施設などの場所

設計上、経済上の負担が必要な場合

・施設規模から水槽などを設けることが過大な負担になる場所
・施設の構造などから避圧口、避圧ダクト等を設けることが設計上困難である場所
・同一施設内の他の部分にクリティカルユースに該当しハロン消火剤を設置する(している)部分がある。(他の消火設備を別に設置させることが過剰な費用負担となる。)

これらの場合に、ハロゲン化物消火設備の設置が適用されます。

誤解しないで!!

罰則

現在、国内ではハロン消火剤の回収量が供給量を上回りどんどんと使われていないハロンが備蓄されています。

ハロゲン化物消火設備が国内で使用されていない原因は

・クリティカルユースに該当する場合でも設置されていない
・ハロン消火剤の設置状況に地域差がある

といったようなことが挙げられますが、
これらはハロゲン化物消火設備に対する誤解が生じていることが根本的な課題としてあります。

具体的には

「ハロンを設置しただけでオゾン層が破壊される」
「ハロン生産全廃=ハロン消火剤の使用禁止」
「ハロン生産全廃=ハロン消火剤の供給・補充停止」

といった誤解が多くの人に生じているんです。

これらにより、ハロンの回収・供給が現在のような傾向で今後も推移しハロンの需給バランスが崩れ拡大していくと…

・増えすぎた備蓄の長年放置により。劣化した容器からのハロンの漏洩
・備蓄が余剰と扱われ、破壊の対象になりみだりに大気へ放出される

といったような問題も起きてきます。

ハロゲン化物消火設備の点検は全国消防点検.com

ハロゲン化物消火設備の扱いにはさまざまな課題があることがわかりました。

その上で、使用抑制や適正利用に関する理解・認知の促進を多くの人へ行なっていくこと、
また、設備の点検や管理を行なっていくことが重要です。

全国消防点検.comでは、ハロゲン化物消火設備についても点検を承っております!
消防・防災のプロの観点から幅広くご提案をさせていただきます。

まずはご相談だけでも大歓迎です!

どうぞお気軽にお問い合わせください。

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