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2023.12.26
消防用設備の修繕の内容や目安の時期を解説
マンションや大型ビルをはじめとする防火対象物には、自動火災報知設備やスプリンクラー設備といった様々な消防または消火を目的にした設備の設置が義務付けられていますが、これらは目安として10年に1度の頻度で修繕が必要になります。
建物の管理者にとって消防用設備の修繕は避けては通れないことで、うっかり忘れていたり、業者に一任していたので知らなかったということは許されません。
そこでこの記事では、消防点検のプロが「消防用設備の修繕」について、具体的にどんな内容なのかや、どんな時に対応が必要なのかといった基本的なことについて、初心者にもわかりやすく解説します。
【目次】
1. 消防用設備の修繕とは
2. 修繕の対象となる消防用設備の種類と修繕内容
3. 消防用設備の修繕が必要なケース
4. 消防用設備の修繕または改修時期の目安
5. まとめ
1. 消防用設備の修繕とは
消防用設備の修繕とは、防火対象物に設置されている消防用設備の交換、修理、増設といったことを指しています。(「改修」や「リニューアル」といった言葉も同じ意味にあたる。)
消防用設備の修繕は、具体的に「自動火災報知設備」や「屋内または屋外消火栓」、さらには「消火器」といった様々な消防用設備が対象です。
修繕を実施する必要があるタイミングも様々で、その多くはマンションの大規模修繕工事や設備工事、さらには消防署による点検で不備や不良が見つかった場合などがあります。
消防用設備の修繕は、様々なタイミングや内容があるため「どのような修繕内容が、どんな場合に必要なのか」を理解しておくことが大切です。
2. 修繕の対象となる消防用設備の種類と修繕内容
修繕の対象になる主な消防用設備には以下のような設備があります。具体的な修繕内容と一緒に把握しておきましょう。
・警報設備
・消火設備
・避難設備
・消防用水
・消火活動で必要となる設備
上記について解説します。
警報設備
修繕の対象となる消防用設備で最も代表的なのが「警報設備」です。具体的には、火災報知器や自動火災通報装置などを含む自動火災報知設備一式、漏電火災警報器、ガス漏れ火災警報器、さらには拡声器や手動式サイレンといった非常警報器具なども含まれます。
警報設備は、煙や熱、そしてガスの異常を自動的に検知し、周囲に警報することを目的にしていることから、絶えず正常に動作していることが不可欠です。
このようなことから、修繕ではすべての動作確認をしたうえで、異常個所が認められる感知器や受信機、発信機といった物の修理や交換が行われます。
また、これらは「型式失効」によって、すべて交換を余儀なくされるかもしれません。型式失効とは、消防法によって規定される技術基準が改正された結果、新規格に適合しなくなることで、型式失効した物は、例え正常に動作したとしても交換が義務付けられます。
仮に、自動火災報知設備の感知器が型式失効していると、大がかりな修繕工事が必要になり、費用や工期の負担が大きくなる可能性があります。
参考:自動火災報知設備(型式承認・個別検定証,P.18)、コイケ消防設備
消火設備
「消火設備」も修繕の対象となる消防用設備です。具体的には、屋内消火栓や屋外消火栓、スプリンクラー設備、さらには消火器などが該当します。
消火栓については、消防法によって放水時の水圧やホースの耐圧性能などが規定されているため、劣化や破損などがあると、比較的大きな修繕工事が発生する可能性があります。
また、消火器は修繕と言うよりも交換で対処可能なものの、設置個数が多い場合は、大がかりな対応になってしまいます。
避難設備
修繕の対象となる消防用設備には「避難設備」も含まれます。避難設備は、避難はしごや避難滑り台といった「避難器具」に加え、避難経路を示す「誘導灯や標識」といった物が対象です。
これらの修繕は、基本的には交換対応となるでしょう。なかでも、バルコニーなどの屋外に設置されている避難はしごは、古いスチール製だと環境によっては本体やハッチ部分、または枠部分に腐食や緩みなどの不具合があるかもしれません。
他には、誘導灯の球切れが想定されますが、軽微な修繕で対応できるでしょう。
参考:消防法第十七条の二の五
消防用水
「消防用水」も修繕の対象となる消防用設備のひとつです。これは火災発生時に消火用水として使う水を貯めておく防火水槽や、これに代わる貯水池などのことを指しています。
防火水槽等から消火用水を正常に供給できるかといった点検の上、必要に応じて修繕しなければいけないかもしれません。
参考:消防法第八条の二の二
消火活動で必要となる施設
修繕が必要になる消防設備には「消火活動上必要な施設」もあります。これは、火災発生時などに消防隊が消火活動で使用するための設備のことで、具体的には、連結送水管や連結散水設備、さらには非常用電源装置などが対象です。
とくに、消防ポンプ車と連結して建物内に消火用水を送水する連結送水管については、消防法による細かな規定(細目)があるため、これらに適合していなければいけません。
連結送水管は「送水口、配管、放水口、格納箱」で構成されており、これらを点検のうえ、規定に適合していなければ修繕する必要があります。
参考:消防法施行規則第三十一条、連結送水管に関する基準の細目
3. 消防用設備の修繕が必要なケース
消防用設備の修繕は主に以下のようなケースで必要になります。これらを理解しておくことで修繕への対応が円滑になるでしょう。
・大規模修繕工事
・設備の型式失効
・消防点検の結果で不具合等が発覚した
・建物の間取りや用途の変更
・消防法改正
・消防署による消防査察
それぞれ解説します。
大規模修繕工事
消防用設備の修繕が必要になるケースとして「大規模修繕工事」があります。これはマンションや大型ビルといった建物において、13年から16年に1回の頻度で実施される大規模修繕工事に伴うケースです。
最新の自動火災報知設備に切り替えることや、建物内部の使用用途に合わせた消防用設備の入れ替えなどが該当します。
設備の型式失効
「設備の型式失効」においても消防用設備の修繕が必要になります。これは消防法で規定されている消防用設備の技術仕様が変更されることに伴うケースです。
例えば、感知器(煙感知器や熱感知器等)や消火器、さらには動力消防ポンプなどが該当し、型式失効が発覚した場合は修繕対応しなければいけません。
消防点検の結果で不備等が発覚した
消防用設備の修繕が必要なケースには「消防点検の結果で不具合等が発覚した」もあります。これは、消防設備士や消防設備点検資格者による半年に1回の機器点検や、1年に1回の総合点検において、消防用設備に不備や不良があった際に必要なケースです。
建物の間取りや用途の変更
「建物の間取りや用途の変更」でも消防用設備の修繕が必要になるかもしれません。例えば、建物内を区切ることで間取りが変わった場合や、居住スペースだった箇所を店舗や飲食店に変更した際などに必要になります。
消防法改正
消防用設備の修繕が必要になるケースには「消防法改正」もあります。具体的には、消防用設備の技術仕様が変更になったというケースや、建物の用途によって設置が義務付けられる設備が強化されるといったことが考えられます。
消防署による消防査察
「消防署による消防査察」も消防用設備の修繕が必要になるケースです。これは、消防署による建物内への立入検査のことを指しており、立入検査の結果、設備の不備が指摘されることや、消防法に適合していないことが発覚した場合などが該当します。
この場合、修繕の必要性があることを消防署に把握されているため、対応を怠ると罰則につながるので、しっかり対応するようにしましょう。
4. 消防用設備の修繕または改修時期の目安
消防用設備の修繕は、設備ごとの耐用年数や製品寿命などによっても対応が変わるので、設備ごとの修繕時期の目安を知っておくと役に立つでしょう。
消防用設備のなかでも修繕や改修の機会が多いとされるものを中心に紹介します。以下の耐用年数や製品寿命を超えた物は対応する時期と考えてください。
・消火器:耐用年数10年
・屋内消火栓:耐用年数20年(設置から10年経過すると3年毎に要耐圧試験)
・消火ポンプ:耐用年数20年(設置から10年経過すると3年毎に要耐圧試験)
・自動火災報知設備の受信機:耐用年数および交換推奨年数15年
・自動火災報知設備の感知器:耐用年数および交換推奨年数10年
・自動火災報知設備の発信機:耐用年数および交換推奨年数20年
・自動火災報知設備の地区音響装置:耐用年数および交換推奨年数20年
(住宅用火災警報器については10年を目安に交換することを推奨)
・避難はしご:法定耐用年数8年(実質的な耐用年数は25~30年)
・閉鎖型スプリンクラーヘッド:耐用年数および交換推奨年数18~20年
・開放型スプリンクラーヘッド:耐用年数および交換推奨年数8~10年
・自家発電設備:耐用年数15年(国土交通省官庁営繕所基準の耐用年数は30年)
5. まとめ
消防用設備の修繕は、建物の大規模修繕工事や消防点検、さらには型式失効などを機に発生すると考えてください。
なかでも、消火器や自動火災報知設備(感知器)、消火栓といった設備は修繕する必要性が多い物と言われていますので、耐用年数や異常の有無などを確認し、対応するようにしましょう。
また、消防設備士や消防設備点検資格者による定期的点検を行い、消防長または消防署長に報告書を提出することが義務付けられています。
点検結果の報告をしない場合には、消防法第44条第11号により、30万円以下の罰金又は拘留となる可能性があります。
消防用設備の修繕は、建物の保有者や管理者の責任で実施しなければいけませんので、点検から修繕までを一貫して対応してくれる消防点検のプロに依頼することをおすすめします。