消防点検コラム

消防設備の改修はどんな時に必要?報告書についても解説

消防点検や設備工事、消防署の立入検査の結果、消防消火用設備等の不具合や不良が見つかることがあります。

このような場合、消防法の基準を満たすために、既存の消防用設備を改修したり、リニューアルしたりしなければいけませんが、これらは一般的に「消防用設備改修工事」と呼ばれ、改修すれば良いとはならず、報告書の提出といった大切な手続きを伴います。

この記事では、消防点検のプロが「消防用設備の改修」について、どのような時に改修工事が必要なのかや、改修の報告書にはどんなものがあるのかといったことを中心に、初心者にもわかりやすく解説します。


【目次】

1. 消防設備の改修とは
2. 消防設備の改修が必要なケース
3. 消防設備の改修で必要な報告書
4. 報告書の提出期限
5. 消防設備改修工事の責任
6. まとめ

1. 消防用設備の改修とは

消防設備の改修とは、あらゆる防火対象物において、消防法によって規定されている消防用設備等の設置基準を満たすために、既存の消防用設備等を交換、増設、修理、さらには新規設置することなどを指しています。

消防用設備の改修で必ず理解しておきたいことが「どのような時に必要なのか」と「報告書の作成および提出」の2点です。

とくに「どのような時に必要なのか」を理解しておかないと、知らぬ間に消防法違反を犯していたという事態に発展する可能性があります。

仮に、消防設備の改修工事を実施しないでいると「消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置維持命令」となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人だと3,000万円の罰金になるかもしれません。

従って、防火対象物を管理する責任がある人は、消防設備の改修工事が必要になるケースについてしっかり理解しておくようにしましょう。

参考:消防法における罰則規定一覧(予防分野)、総務省消防庁

2. 消防用設備の改修が必要なケース

消防用設備の改修工事が必要になる主なケースは以下の通りです。これらのケースを理解しておくことで、消防法に対する適合に対応し忘れたといった事態を防ぎ、罰則対象にならずに済むでしょう。

・消防点検の結果、不具合や不良個所が発覚した
・既存の消防用設備が型式失効した
・防火対象物内の間取りや間仕切り変更、増改築
・建物の用途変更
・管轄の消防署からの指導
・消防法の改正

上記のケースについて解説します。

消防点検の結果、不具合や不良個所が発覚した

消防用設備の改修工事が必要になる代表的なケースが「消防点検の結果、不具合や不良個所が発覚した」ことによるものです。

半年に1回の機器点検や、1年に1回の総合点検といった消防点検において、非常ベルや自動火災報知設備、スプリンクラー設備といった消防用設備に何かしらの不具合や不良が発覚した場合は、速やかに改修工事の対応を取らなければいけません。

具体的には、誘導灯の蛍光灯球切れや、非常ベルに付設している非常灯の球切れといった軽微な症状をはじめ、自動火災報知設備の感知器が警戒(動作)していないや、スプリンクラー設備の消火用水が規定の圧力に達していないなど、大がかりな工事が必要になる場合もあります。

既存の消防用設備が型式失効した

「既存の消防用設備が型式失効した」も、消防用設備の改修工事が必要になるケースです。ごく簡単に言うと「既存の消防用設備が古く、近年の規定にそぐわない」場合となります。

分かりやすい事例として、2021年12月31日を最後に旧型式の消火器は型式失効しました。これにより、旧型の消火器を設置してあったとしても、有効な消防用設備としては認められず、代わりに新型の消火器を設置しなければいけません。

型式失効する可能性がある消防用設備としては、自動火災報知設備の感知器や受信機、金属製避難はしごなどがあり、これらは消防法二十一条の二で規定される「形式承認」で適合した物だけが有効です。

参考:消防法二十一条の二

防火対象物内の間取りや間仕切り変更、増改築

消防用設備の改修工事が必要になるケースとして「防火対象物内の間取りや間仕切り変更、増改築」があります。

これは建物内における実質的な部屋数増となることから、消防法で規定される消火器や火災報知器といった消防用設備の増設工事が必要になるかもしれません。

とくに、間取り変更を実施した際は、間取り変更工事ばかりに気をとられ、消防用設備の改修工事を忘れてしまうといったことが起こりやすいので注意すべきでしょう。

建物の用途変更

「建物の用途変更」でも消防用設備の改修工事が必要になる可能性があります。例えば、元々は住居として使用していた建物において、リノベーションして宿泊所や介護施設、店舗等にする場合などが該当します。

建物の用途変更は様々なケースが想定されますが、元々設置してある消防用設備を流用するから改修工事は必要ないと思い込みがちです。

用途変更においては、消防用設備の改修や新設工事といったことが発生するのを前提にして、前もって所轄の消防署などに相談することをおすすめします。

管轄の消防署からの指導

消防用設備の改修工事が必要になるケースには「管轄の消防署からの指導」もあります。例えば、消防署の職員による立入検査(消防査察)などの結果において、様々な消防用設備の改修を求められるかもしれません。

立入検査の結果、罰則が即時に適用されることは考えにくいものの、消防署から直接指摘を受けたのであれば、対応しないでいると問題が大きくなりやすいでしょう。

ちなみに、消防署による立入検査は事前通告されるケースが多いものの、違反が続いているような建物や所有者などに対しては、抜き打ちで実施される可能性があるので注意してください。

消防法の改正

「消防法の改正」によって消防用設備の改修工事が必要になるケースもあります。これは前述したような「消火器の型式失効」や「自動火災報知設備の型式失効」などのようなことが当てはまり、設置基準などを規定する根幹のルールが変更されることに伴う必要性です。

消防法は、火災事故等の実例をもとに、絶えず改正が加えられています。また、建物の利用用途の多様化や、建物の防火性能といった時代に合わせた変化も加わるため、改正に合わせた対応が求められます。

従って、建物の保有者や管理者は、消防法の改正に関する情報を常に最新の状態に保つ努力が必要なことを忘れないようにしましょう。

3. 消防用設備の改修で必要な報告書

消防用設備の改修工事において大切な要素のひとつが「報告書」です。消防用設備等の改修工事では以下3つの報告書について知っておきましょう。

・消防用設備等点検報告改修計画書
・防火対象物(防災管理)点検報告改修計画書
・改修(計画)報告書

上記について解説します。

消防用設備等点検報告改修計画書

消防用設備等点検報告改修計画書とは、半年に1回の機器点検そして1年に1回の総合点検において発覚した、消防用設備等の不具合や不良を改修する際に使用する書類です。

ほとんどの場合、消防点検を実施した消防設備士または担当業者が、依頼者に確認してもらった上で作成し、所轄の消防署に提出します。

機器点検または総合点検において発覚する不具合や不良には、主に消火に用いる器具や自動火災報知設備といった設備が含まれ、それぞれの改修内容や予定日等を報告します。

参考:消防設備点検改修計画書の記入例、東京消防庁

防火対象物(防災管理)点検報告改修計画書

防火対象物(防災管理)点検報告改修計画書とは、特定用途の防火対象物において年に1回実施される防火対象物点検で発覚した、消防用設備等の改修内容を報告するための書類です。

防火対象物点検は、機器類といったハード面を主な点検対象とする消防用設備等点検とは異なり、防火管理体制(防火管理者、防災管理者の選定など)が適切に行われているかといったソフト面の点検で、工事と言うよりも「不備」に対する対応を報告することがほとんどでしょう。

参考:防火対象物点検改修計画の記入例、東京消防庁

改修(計画)報告書

改修(計画)報告書とは、消防署による立入検査「消防査察」の結果、指摘された消防用設備等の不具合や不備などに対する改修の対応を報告するための書類です。

立入検査後、消防署の職員によって発行される、結果通知書や警告書、さらには命令書などの指摘内容に基づいて、改修内容や改修予定日を報告しなければいけません。

改修(計画)報告書によって、対象となる防火対象物において不具合や不良が放置されたままにならないかを、消防署が把握できる仕組みになっています。

参考:改修(計画)報告書、東京消防庁

4. 報告書の提出期限

報告書の提出は具体的な期限はありません。しかしながら、一般的には「2週間」が目安とされています。

消防用設備等点検報告改修計画書と防火対象物(防災管理)点検報告改修計画書の場合は、控えが返却されてから2週間内、そして改修(計画)報告書は消防署からの通知を受けてから2週間内が目安です。

いずれも、提出期限は消防法で規定されている訳ではないものの、2週間内を目安にして速やかな対応が必要ということを覚えておきましょう。

5. 消防設備改修工事の責任

消防用設備改修工事の責任は、建物の所有者、管理者、占有者といった管理権原者(対象の防火対象物における消防法上の管理に関する権原を持つ者)です。

消防法第十七条の三の三では、消防用設備等の点検や報告の責任は「関係者」としていますが、実質的には所有者、管理者、占有者となります。

消防用設備等の改修は、点検だけでなく改修工事、さらに報告書の提出も、建物の管理権原者が責任を持って対応する必要があります。

「業者にまかせきりだった」や「業者が対応していると思っていた」ということがないよう、建物の管理権原者は十分に注意してください。

参考:消防法第十七条の三の三

6. まとめ

消防設備の改修は、主に消防機器点検や設備工事などで発覚した不具合や不良に対して改修の対応を取ること、そして改修の内容を所轄の消防署に報告書で報告することです。

建物の責任者は業者まかせにしてはいけません。消防設備の点検、改修工事、そして報告までを一貫して把握し、責任を持って対処してください。

よく分からない時や不安な場合は、点検から報告までをワンストップで対応してくれる消防点検のプロに依頼するのがおすすめです。

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