消防点検コラム

消火栓

2023.06.26

消火栓の配管にはどんな基準があるの?

「消火栓の配管には基準があるの?」や「消火栓の配管にはどんな種類がある?」といった疑問を持ったことはありませんか?

屋内消火栓をはじめ、スプリンクラー設備などは身近な消防用設備ですが、これらの消防用設備は消火配管と呼ばれる専用の配管で水源やポンプと繋がっています。

消防用設備には設置基準があるように、消火配管そのものにも技術仕様や素材が決められていることはあまり知られていないようです。

そこでこの記事では「消火栓の配管」を中心にして、消火配管が使われている消防用設備、さらには消火配管の基準などについて、消防点検のプロが分かりやすく解説します。

消火配管とは

消火配管とは、消火栓やスプリンクラー設備などと繋がる配管のことです。一般的には、配管と言えば通じますが、この場合だと必ずしも消防用設備に使われる物とは限らないため、厳密には「消火配管」と言うことを知っておきましょう。

消火配管については、消防法施行令規則に細かな規定があります。その内容は、消火配管の素材(規格)や耐圧性能といったこと以外に、継手やバルブなどのように配管に関連する部品に対しても及びます。

消火配管に関する数ある既定のなかで押さえておきたいポイントは、消火配管は原則として「消防用設備等専用」で、なおかつ「消火設備ごと専用」と定められていることです。

例えば、屋内消火栓の配管は、屋内消火栓専用の配管を用いなければいけないことになります。

コストを抑えたいからといって、屋内消火栓の配管をスプリンクラー設備と兼用にするといったことは出来ません。

ただし、配管を複数の消火設備と共有する場合、屋内消火栓を起動させたと同時に、他の消防用設備への送水が遮断されるようになっていれば、この限りではないとあります。

消火栓をはじめとする消火設備用の配管は、原則として「専用」にすることを覚えておくとよいでしょう。

参考:消防法施行規則第十二条第六項(屋内消火栓設備に関する基準の細目)

消火用配管が必要な主な消防用設備

消火栓などに使われる配管は、これ以外にも様々な消防用設備に使われています。消火配管がどのような設備に使われているかを把握しましょう。

消火配管が不可欠な主な消火設備は以下の通りでしょう。

・屋内消火栓
・屋外消火栓
・スプリンクラー設備
・水噴霧消火設備
・泡消火設備
・連結送水管

上記それぞれについて詳しく解説します。

屋内消火栓

「屋内消火栓」は消火配管が不可欠な消防用設備の代表的なものです。屋内消火栓は防火対象物内の廊下等の壁に設置される消火栓のことで、主に初期消火活動に使用されます。

消火配管は、消火用のノズルやホース、開閉バルブが収まった「収納箱」と、消火用水がある貯水槽から水を汲み上げて各消火栓まで水を供給するための「ポンプ」との間を繋いでいます。

屋内消火栓は、ノズルから放水される際の水量と水圧が定められており、1号消火栓の場合は水圧が「0.17MPa~0.7MPa」、放水量は「毎分130リットル」のため、これに耐えられる仕様の消火配管が必要となります。

屋外消火栓

消火配管を用いる消火設備には「屋外消火栓」もあります。屋外消火栓は、建物外からの消火活動を目的にしており、厳密には器具格納式消火栓、地下式消火栓、そして地上式消火栓の3つに分類されます。

屋外消火栓における消火配管の役割や仕組みは屋内消火栓と同じです。一方、屋外消火栓は放水圧力が「0.25MPa~0.6MPa」、放水量は「毎分350リットル」と規定されています。

スプリンクラー設備

「スプリンクラー設備」も消火配管を用いる設備です。スプリンクラー設備は、防火対象物の天井や屋根下などに設置する消火設備のことで、火災発生時の煙または熱を感知すると自動的に散水が始まる仕組みになっています。

スプリンクラー設備の場合、消火用水を汲み上げる「ポンプ」と、実際に散水する部分となる「スプリンクラーヘッド」を消火配管が結んでいます。

合わせて覚えておきたいこととして、スプリンクラー設備には「湿式」と「乾式」のふたつが存在することがあります。

「湿式」は、消火配管内に絶えず消火用水が充満しており、火災を感知した瞬間に散水が始まる仕組みです。

これに対し「乾式」は、消火配管内は加圧空気のみであり、消火用水は入っていません。この理由は、寒冷地などにおいて消火配管内の水が凍結してしまうことを防ぐことにあります。

水噴霧消火設備

消火配管を使う消防用設備には「水噴霧消火設備」もあります。水噴霧消火設備とはスプリンクラー設備と同じ仕組みの消火設備ですが、冷却効果および窒息効果によって消火することが特徴です。

消火配管はヘッド部分とポンプ部分を結び、火災発生時には霧状の水を噴射します。噴射された水が蒸発する際に熱を奪う冷却効果、そして燃焼箇所を蒸気で覆って酸素を遮断する窒息効果によって消火します。

泡消火設備

「泡消火設備」においても消火配管が必要です。泡消火設備は、水と泡消火薬剤を一定の比率で混合した水溶液に空気を混ぜるようにして泡を放射する仕組みで、消火配管はこの際に使用する水を供給します。

泡消火設備は主に危険物施設をはじめ、駐車場、ヘリポートといった、水による消火方法では消火が困難な場所で用いられます。

連結送水管

消火配管は「連結送水管」にも用いられます。連結送水管とは、はしご車等による消火活動が難しい高層ビルなどにおいて、建物内の火元近くで消防隊が使う消火用水を送水するための設備です。

消火配管は、消防車等から消火用水を汲み取る「送水口」と、建物内にある「放水口」を結び、加圧送水することで消火用水が配管内を通って火元まで届けられる仕組みです。

連結送水管そのものに消火機能はありませんが、高層ビルなどで外部から内部へ十分な消火用水を供給するために役立つ重要な設備と言えます。

消火栓の消火用配管の規定

消火栓の消火用配管に関する規定は消防法施行規則により、以下のような基準が規定されています。

“(イ)日本産業規格G三四四二、G三四四八、G三四五二、G三四五四若しくはG三四五九に適合する管又はこれらと同等以上の強度、耐食性及び耐熱性を有する金属製の管”

“(ロ)気密性、強度、耐食性、耐候性及び耐熱性を有するものとして消防庁長官が定める基準に適合する合成樹脂製の管”

基本的には、消防用設備等を製造販売、または敷設するメーカーが基準をクリアした物だけを扱っているため、ビルのオーナーや管理者がこれらを覚える必要はありませんが、参考までに知っておくことをおすすめします。

引用:消防法施行規則第十二条第六項(屋内消火栓設備に関する基準の細目)

配管の材質

消火栓の配管の素材や強度といった規定は、日本産業規格(JIS規格)に基づき、以下の規定があります。

・JISG3442:水配管用亜鉛めっき鋼管(SGPW)
・JISG3452:配管用炭素鋼鋼管(SGP)
・JISG3454:圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG)
・JISG3448:一般配管用ステンレス鋼管(SUS-TPD)
・JISG3459:配管用ステンレス鋼鋼管(SUS-TP)

上記の他に、気密性や強度、耐熱性、腐食性などの基準をクリアしたものであれば「合成樹脂製の管(ポリエチレン管等)」も認められます。

これまでは、消火配管には金属製の管のみしか使用できませんでしたが、現在ではより安価で施工性が高い、そしてメンテナンスしやすい合成樹脂製も使うことが可能になりました。

なお、ポンプ(加圧送水装置)から防火対象物各階へ垂直方向に繋がる主管となる配管「立ち上がり管(ライザー管)」については、呼び径が50ミリメートル以上という規定があることを忘れないようにしましょう。

参考:JIS検索、日本産業標準調査会

配管の継手

屋内消火栓をはじめとする消火配管では、管と管を連結、または特定の方向に導くために使用される部品である「継手」にも基準があります。

継手は「フランジ継手」もしくは「フランジ継手以外」のふたつに大きく分けられます。また、それぞれ「ねじ込み式継手」か「溶接式継手」に分かれます。

フランジ継手(ねじ込み式):

・JISB2220:鋼製管フランジ
・JISB2239:鋳鉄製管フランジ

フランジ継手(溶接式継手):

・JISB2220:鋼製管フランジ

フランジ継手以外(ねじ込み式):

・JISB2301:可鍛鋳鉄製管継手
・JISB2302:鋼管製管継手
・JISB2308:ステンレス鋼製管継手

*これらのうち、材料に圧力容器用ステンレス鋼鋳鋼品(JISG3214)またはステンレス鋼鋳鋼品(JISG5121)を用いるもの

フランジ継手以外(溶接式継手):

・JISB2309:一般配管用ステンレス鋼製突合せ溶接式管継手
・JISB2311:一般配管用鋼製突合せ溶接式管継手
・JISB2312:配管用鋼製突合せ溶接式管継手
・JISB2313:配管用鋼板製突合せ溶接式管継手

*ただし、配管用溶接大径ステンレス鋼鋼管(JISG3468)を材料とするものは除く

なお、継手に関する注意点として、ゴム製のパッキンを用いたシール構造である「ネジなし鋼管用継手」は、消火配管には使えないことを覚えておきましょう。

バルブ

消火栓等に使用する配管まわりの「バルブ」にも基準がありますので、合わせて覚えておいてください。

バルブの材質については以下の規定があります。

・JISG5101:炭素鋼鋳鋼品
・JISG5501:ねずみ鋳鉄品
・JISG5502:球状黒鉛鋳鉄品
・JISG5705:黒心可鍛鋳鉄品に限る
・JISH5120:銅及び銅合金鋳物
・JISH5121:銅合金連続鋳造鋳物

上記以外にも、同等以上の強度や耐熱性、そして使用圧力時以上(締切圧力の1.5倍以上)といった基準を満たすものであれば使用可能です。

まとめ

消火栓の配管とひと言でいっても様々な消火設備に用いられていることや、材質などにも細かな規定があることが分かったと思います。

消火栓の配管に限らず、消火用配管の基準を遵守することは、専門業者が責任を持って対応すべき点ですので、この記事で紹介したような内容に対してもしっかり説明してくれる業者を選ぶようにしましょう。

 

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