COLUMN
2023.05.31
連結送水管耐圧試験の圧力は?義務や周期、やり方を解説
消防法や消防用設備等に触れていると「連結送水管(れんけつそうすいかん)」という設備について耳にすることがあると思います。
連結送水管は、火災発生時に消防隊が円滑に消火活動できるよう、あらかじめ建物内外に設置してある配管設備一式のことで、一般人にはあまり馴染みがないかもしれません。
しかし、連結送水管は消防法によって「連結送水管耐圧試験」の実施が定められており、建物管理者や防火管理者にとっては無縁とは言えないものです。
そこでこの記事では「連結送水管耐圧試験の圧力」といったことを中心にして、消防点検のために色々なことを知っておきたいという人などに向け、消防点検のプロがわかりやすく解説します。
連結送水管とは
連結送水管とは「送水口・配管・放水口・格納箱」の4つで構成される消防用設備のことです。連結送水管は、火災時に消防隊が消火のために使用する消火用水を、火元近くまで送水する目的があります。
例えば、高層ビルの上階で火災が起き、はしご車を使ったとしても建物外から消火および救助活動ができないようなケースにおいて、連結送水管が機能します。
消防隊は、まず消防車等と「送水口」をつなぎ、火元にいる消防隊が付近の格納箱を開け「放水口」とホースを連結します。
そして、加圧給水すると配管を通って消火用水が火元まで届き、消火活動が行えるようになる仕組みです。
つまり、連結送水管は「建物内部に消火用水を送るための設備」と考えるとよいでしょう。一方で、連結送水管は万が一の時でも正常に機能することが求められるため、厳しい点検義務が定められています。
点検義務のなかで最も大掛かりで重要なこととされているのが「連結送水管耐圧試験」です。消防法では、設置から10年経過した配管に対して規定の圧力を加えて、異常がないかどうかを確認するということが定められており、10年経過後は3年毎に連結送水管耐圧試験を実施しなければいけません。
このように、連結送水管は日頃あまり馴染みがない消防用設備でありながら、10年を経過すると3年毎に大掛かりな試験が必要になるため、ビルのオーナーや防火管理者にとっては注意しなければいけない設備と言えるでしょう。
ちなみに、非常時に連結送水管を使用するのは原則として消防隊のみです。一般人が扱うことはないため、連結送水管の存在や使い方を知らない人が多いと言われています。
連結送水管の構成と仕組み
連結送水管耐圧試験について正しく理解するためには「連結送水管の構成と仕組み」を把握することが大切です。
連結送水管は以下の設備で構成されています。
・送水口
・放水口および格納箱
・配管
送水口
連結送水管が機能する仕組みのスタート地点と言えるのが「送水口」です。送水口は、消防ポンプ車と連結することを前提にし、建物外部に隣接するようにして設置されています。(常時駐車禁止エリアになっていることが多い)
消防隊が送水口と消防ポンプ車を連結して建物内部に水を送る、消火用水の「入口」と言えるでしょう。
放水口および格納箱
連結送水管の仕組みにおけるゴール地点となるのが「放水口」です。放水口は、建物内部の壁に埋め込まれるようにして「格納箱」に収まっています。
消防隊が放水口とホースを連結した後、送水口から配管を伝って送られてくる消火用水を放出する、いわば「出口」のような場所です。
配管
連結送水管の仕組みにおいて、入口と出口をつなぐ役目が「配管」です。配管は加圧送水に耐えうるほどの強度や、腐食しにくいといった性能が求められ、設置から10年経過後は3年毎に耐圧試験を実施し、その性能が維持されているか否かを点検しなければいけません。
多くの場合、非常に強度が高い「スケジュール管」が使われるため、配管そのものが破損することは考えにくいとされていますが、パッキン部分やホース接続口などの腐食や錆付きは起こりやすいと言われています。
連結送水管の種類
連結送水管耐圧試験で重視される配管ですが「湿式」と「乾式」のふたつがあり、それぞれ特徴が異なります。
「湿式」の連結送水管は、常時配管内に水が溜まっている状態であるのに対し「乾式」は配管内が空っぽの状態という違いがあります。
なぜ湿式と乾式のふたつがあるかと言うと「寒冷地」でも正常に機能することを考慮しているためです。
冬の間、気温が氷点下まで下がるような場所で湿式を使用すると、配管内で凍結や破裂を起こしてしまう可能性があります。
また、常時気温が低く、配管内が凍結する恐れがある「大型の冷凍倉庫」などもその対象で、このような場合は乾式が採用されます。
ちなみに、乾式は配管内部に水がないため、湿式よりも給水に時間を要します。これに対応するため、乾式を設置する場合は「送水口から最遠に位置する放水口において、1分内に放水できること」という規定が設けられています。
連結送水管耐圧試験とは
連結送水管耐圧試験に関しては試験時の圧力などの他、以下のようなことを理解しておきましょう。
連結送水管耐圧試験の周期
連結送水管耐圧試験の周期は、設置から10年目、そしてその後は3年毎と決められています。連結送水管の配管は、建物によっては建物に沿うようにして外部に設置されることもあり、外気温や紫外線、強風といった自然の影響を受けることが想定されます。
つまり、配管は腐食や損傷といった経年劣化が生じやすいと言えます。また、給水時には大きな圧力が加わるため、その性能を維持する必要がある訳です。
とくに設置から10年を超えた場合は、これらの懸念が起こりやすいため、耐圧試験が義務付けられています。
連結送水管耐圧試験のやり方
連結送水管耐圧試験の方法は、テストポンプやテスト用圧力計といった「耐圧試験機器」を用いて実施します。
基本的には「本番環境同様の流れ」となりますが、圧力計を送水口および最遠の放水口に設置したうえで、ゆっくり加圧して変化を観察します。(最初に空気圧、その後水圧にすることもある)
ごく簡単に言えば「加圧し、圧力計の変化を読む」ことで連結送水管の異常を確認可能ということです。
圧力計に変化が生じるということは、どこかで漏れなどが生じていることですので、絞り込むようにして問題箇所を特定していきます。
連結送水管耐圧試験の設定圧力
連結送水管耐圧試験の設定圧力は「設計送水圧力の1.5倍」と決められています。設計送水圧力は建物によって異なるため、一概に示すことができず、連結送水管耐圧試験の設定圧力も同様に規定値を示せません。
従って、設計送水圧力が「0.7MPaから1.0Mpa」の建物の場合、連結送水管耐圧試験の設定圧力は「1.5MPa」となります。
連結送水管耐圧試験の設定圧力は「送水圧力の1.5倍」と覚えておきましょう。ちなみに、設計送水圧力は「送水口」に明記してあります。
連結送水管耐圧試験の時間
連結送水管耐圧試験の時間は「3分間」です。厳密に言うと「配管内に設計送水圧力の1.5倍の水圧をかけた状態で3分間の保持」となります。
設計送水圧力の1.5倍の水圧に対して、配管内の圧力が3分間変化しないということがポイントです。
連結送水管耐圧試験の費用相場
連結送水管耐圧試験の費用相場は50,000円から100,000円が相場です。ただし、連結送水管が2系統以上ある場合や、高層階ビル、エアー試験の有無、消防署に提出する書類作成、さらにその他の消防点検を含むか否かによって大幅に変わります。
また、試験のなかで「配管等を交換する必要がある」と判断された場合は、交換費用なども追加でかかりますので注意しましょう。
罰則規定
連結送水管耐圧試験をやらなかった場合、罰金30万円以下、拘留の罰則規定に該当します。これは消防法で定められている「消防用設備点検」の違反行為となり、過失傷害罪と同等です。
連結送水管耐圧試験についても「知らなかった」という説明は受け入れられませんので、くれぐれも気を付けてください。
参考:消防法第第四十四条
報告書を消防署に提出
連結送水管耐圧試験は実施して終わりという訳ではありません。試験結果は「消防用設備等設置届出書」に試験結果報告書を添えて、管轄の消防署に提出する必要があります。
連結送水管耐圧試験は、試験そのものと書類作成および提出までがセットになったものと考えてください。
新規設置は連結送水管放水試験
連結送水管を新規に設置する場合は、耐圧試験のみならず、実際に放水までを行う「連結送水管放水試験」を実施しなければいけません。
連結送水管放水試験は工事完了から4日以内に実施し、その結果を管轄の消防署に届け出る必要があります。
連結送水管の設置が義務付けられる建物
連結送水管を設置しなければいけない建物は、主に以下のような条件に該当する場合です。
・7階以上の建物(地階を除く)
・5階以上の建物(地階を除く)で、なおかつ延面積が6,000平方メートル以上
・延面積が1,000平方メートル以上の地下街
・長さが延べ50メートルを超えるアーケード
気を付けたい点として「各市町村によって異なる火災予防条例」があります。消防法の規定では設置しなくていい場合であっても、町の火災予防条例が適用されて、設置義務の対象になるかもしれません。
連結送水管の設置については、火災予防条例についても精通している消防点検のプロに相談するようにしてください。
まとめ
連結送水管耐圧試験の圧力は、建物ごとに異なる設計送水圧力の1.5倍です。また、その圧力がかかった状態で3分間にわたり圧力が保持されなければいけません。
連結送水管耐圧試験は設置後10年が経過すると、3年毎に継続していかなければならず、試験結果の報告義務も課せられます。
連結送水管耐圧試験をやらなかった場合は、厳しい罰則を受ける可能性がありますので、消防点検のプロに相談するようにしてください。
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