消火器
2023.05.31
消火器の安全弁って何?消火器の仕組みを徹底解説
私たちにとって非常に身近な消防設備のひとつが「消火器」ではないでしょうか。消火器は火災発生時における初期消火活動に利用されることが多いため、誰しもが使用する可能性がある物と言えます。
消火器は身近な消防設備ということもあり、安全性についても考慮されています。高い圧力が加わる消火器には「安全弁」という機構が付いていて、不慮の破裂事故などを防いでいます。
そんな「消火器の安全弁」について、消火器のことを詳しく知りたいという人や、消防点検に備えて色々知っておきたいという人に向けて、消防点検のプロがわかりやすく解説します。
消火器の安全弁とは
消火器の安全弁とは、消火器本体(内部)の圧力が適正値を超えて上昇した際に、適正値まで減圧するための安全装置のことです。
消火器の安全弁が設けられている目的は、消火器容器内の圧力が何かしらの要因で上昇し、破裂してしまうことを防ぐためです。
消火器は消火剤を噴射するために一定の圧力を必要としますが、その圧力は適正値とされる「0.7MPaから0.98MPa」でなければいけません。
つまり、圧力は低すぎても、高すぎてもいけないという訳です。消火器内部の圧力が低すぎると十分な噴射時間が確保できなかったり、消火剤の噴射量が少なかったりし、消火器本来の機能が発揮できなくなります。
対照的に、消火器内部の圧力が高すぎると、消火器内部の容器が破裂する可能性があります。
過去には、消火器内部にかかる圧力が高すぎることで生じる破裂が原因で、死亡例や大怪我を負うといった事故が起きているため、消火器の安全弁は非常に重要な役割があります。
圧力数値の確認方法は、消火器上部に付いている「指示圧力計(圧力ゲージ)」を使用します。
複数の種類に分類される消火器のうち、昨今の定番消火器とされる「蓄圧式消火器」をはじめ「ABC強化液消火器」といった消火器内部の圧力を監視する必要があるものに備わっています。
消火器内部の圧力が低下する原因は「安全栓の抜け、緩み」や「パッキンの老朽化」などであるのに対し、圧力が高くなる主な原因は「温度(外気温や室内温度)」で、消火器を設置している環境に依存することが多いとされています。
消火器の安全弁は基本的には操作や調整することはありません。消火器には圧力上昇により破裂を防ぐ目的で「安全弁」という安全装置が付いているということを知っておいてください。
消火器の安全弁の種類
消火器の安全弁は以下の2種類があります。
・溶栓式安全弁(ようせんしきあんぜんべん)
・封板式安全弁(ふうばんしきあんぜんべん)
上記についてそれぞれ解説します。
溶栓式安全弁
溶栓式安全弁とは、消火器の温度が一定温度まで上がることで、封の役目がある可溶合金(はんだ等)が溶けて、圧力を逃がすための穴が開く仕組みの安全弁です。
溶栓式安全弁は、温度によって作用する安全弁と考えるとよいでしょう。
封板式安全弁
封板式安全弁とは、消火器内部の圧力が一定値まで上昇すると、封板が動くようにして圧力を逃がす仕組みの安全弁です。
封板式安全弁は、温度に左右されず機能することが特徴と言えるでしょう。二酸化炭素(炭酸ガス)消火器の場合、温度上昇に伴う圧力上昇率が大きいため、封板式安全弁しか使用できません。
仮に、溶栓式安全弁だとすると、溶栓式安全弁が作動する一定温度に達する前に破裂してしまう恐れがあります。
消火器の安全弁に関する基準(技術規格)
消火器の安全弁については、消防法により以下のような技術規格が定められています。安全弁ひとつに対しても厳しい規格が定められていることを知っておきましょう。
“消火器の安全弁は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 本体容器内の圧力を有効に減圧することができること。
二 みだりに分解し、又は調整することができないこと。
三 次項に規定する安全弁の取付ねじは、JIS B 〇二〇二に適合し、かつ、パッキンをはめ込んだ場合において、確実に取付部にかみ合うこと。
四 封板式のものにあつては、噴き出し口に封を施すこと。
五 「安全弁」と表示すること。
2 消火器の本体容器(高圧ガス保安法の適用を受けないものに限る。)又は容器弁以外のバルブに設ける安全弁は、次の表の上欄に掲げる当該安全弁を設ける消火器の区分に応じ、それぞれ当該下欄に掲げる作動圧力の範囲内で作動するものでなければならない。
4 容器弁に設ける安全弁は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 二酸化炭素消火器及び二酸化炭素を充塡する加圧用ガス容器の容器弁に設けるものにあつては封板式、その他の容器弁に設けるものにあつては封板式、溶栓せん式又は封板溶栓せん式であること。
二 封板式のものにあつては、次の表の上欄に掲げる当該容器弁を設ける容器の区分に応じ、それぞれ当該下欄に掲げる作動圧力の範囲内で作動すること。”
消火器の安全弁と安全栓の違い
消火器の安全弁に似たものとして「安全栓」があります。これらの違いを理解するうえで、安全栓についても知っておくことをおすすめします。
消火器の安全栓とは、消火器の誤噴射を防ぐための安全装置です。消火器上部のレバーに付属しており、引き抜くことで外れる(噴射できる状態)仕組みになっています。
消火器は噴射時の衝撃が大きく、とくに女性や高齢者にとっては危険を伴いやすいため、誤噴射による事故が起きると、その被害が大きくなる可能性があります。
また、地震や人との衝突等がきっかけとなり、消火器本体が倒れることで誤噴射が起きる可能性も否定できず、このような事態を防ぐために「安全栓」が取りつけられています。
つまり、安全弁は「消火器の破裂を防ぐための安全装置」であるのに対し、安全栓は「誤噴射を防ぐための安全装置」という違いがあります。
消火器の種類
消火器の安全弁がどのようなものか理解できたと思いますが、合わせて消火器の圧力方式の種類についても知っておくことをおすすめします。
消火器の圧力方式の種類は大きく分けて以下2つがあると考えてください。
・加圧式消火器
・蓄圧式消火器
それぞれについて解説します。
加圧式消火器
加圧式消火器とは、消火器の内部に加圧用ガス容器(窒素ガス等)が入っている構造で、ガスを噴射するのと同時に消火剤も飛び出る仕組みです。
その多くは、一度噴射すると途中で止めることができず、言わば「使い切り」タイプと言えるでしょう。
加圧式消火器は、消防法が改正された2022年までは主流とされてきた消火器ですが、老朽化したものは破裂する危険性が高いことから、徐々になくなりつつあります。(後述する蓄圧式消火器に移行している)
加圧式消火器には、消火器内部の圧力を示す「指示圧力計」が付いていません。そのため、指示圧力計の有無で加圧式消火器か蓄圧式消火器かを見極めることが可能です。
蓄圧式消火器
蓄圧式消火器とは、消火器内部がガスボンベのように常時圧力がかかった状態になっているタイプで、レバーを引くことで一定量を持続的に放射できることが特徴です。
加圧式消火器とは対照的に、途中で噴射を止めることが可能であることや、女性や高齢者でも扱いやすい利点があります。
消火器上部に「指示圧力計」が付いている場合は蓄圧式消火器であると判断可能です。昨今では、加圧式消火器にとって代わりつつあり、標準的な消火器と言えます。
消火器の点検内容
消火器の安全弁を含み、消火器は定期的な点検が消防法によって義務付けられています。注意すべき点として、消火器の点検は原則として「消防設備士乙種6類の有資格者」または「第一種消防設備点検資格者」が実施しなければいけないということがあります。
建物の延面積や用途、そして消火器の製造年からの経過年数などによって有資格者による点検が必須となります。
そのため、消火器の点検を実施する人物については、誰でもいいという訳ではありません。
消火器の点検は以下2つを実施する必要があります。
・外観点検
・機能点検
外観点検
消火器の点検で基本的なこととなるのが、6ヶ月に1回以上の頻度で実施しなければいけない「外観点検」です。
外観点検では主に「設置場所と設置間隔」「標識の有無」などに加え、消火器本体の「消火剤漏れ」や「破損や損傷」そして「安全栓の封」などを目視点検しなければいけません。
さらに蓄圧式消火器の場合は「指示圧力計」の数値も確認する必要があります。圧力ゲージが規定値の範囲内であるかを確認し、規定値より圧力が低くても高くてもいけません。
機能点検
消火器の点検には、6ヶ月に1回以上の頻度で「機能点検」を実施しなければいけません。原則として、対象となる消火器の製造年から5年未満のものは機能点検の対象外(外観点検のみ)となりますが、5年超10年未満の物に対しては機能点検をしなければいけません。
機能点検の内容は「消火器内部の錆や損傷確認」をはじめ「消火剤の抜き取り」「消火剤の再充填」そして「放射試験」などがあります。
ただし、すべての消火器が対象となる訳ではありません。設置してある全体の10%が対象となる「抜き取り検査(抜き取り方式)」が用いられます。
まとめ
消火器の安全弁は、消火器本体が破裂することを防ぐための重要な安全機構です。現在では蓄圧式消火器が主流であることから、破裂事故の可能性は低いとされているものの、定期的な点検は欠かせません。
日頃から圧力指示計の目盛りが規定値内であるかどうかや、消火器本体の錆や損傷の有無の確認を徹底しましょう。
消火器の点検は消防法でも義務付けられていますので、消防点検のプロに依頼することをおすすめします。
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