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消防点検コラム

COLUMN

2023.05.31

易操作性1号消火栓の使い方や他の消火栓との違いを解説

みなさんは日々の暮らしのなかで「屋内消火栓」を目にしたことはありませんか?屋内消火栓はその名の通り、建物内に設置してある消火栓のことで、ホースやノズル、開閉弁といった設備で構成されています。

そんな屋内消火栓には「易操作性1号消火栓」と呼ばれるものがあります。しかし、一般の人にとって易操作性1号消火栓をはじめ、その他の屋内消火栓の使い方や違いは、あまり理解されていないのが現状ではないでしょうか。

そこでこの記事では「易操作性1号消火栓」について、万が一の時でも慌てることなく使用したり、消防点検に備えたりする必要がある人に向けて、消防点検のプロがわかりやすく解説します。

易操作性1号消火栓とは

易操作性1号消火栓とは、1号消火栓同等の放水性能を有しながら、ひとりでも容易に扱えるように工夫された屋内消火栓のことで、読み方は「いそうさせいいちごうしょうかせん」です。

そもそも、屋内消火栓は1号と2号に区分されており、1号は2号よりも放水量や放水圧力が大きいことが特徴です。

言い換えれば、1号は2号よりも放水能力が高いと言え、火災が起きた際に1号消火栓であれば、より効果的な消火活動がしやすくなります。

一方で、1号消火栓はその取扱いが難しいという欠点があります。具体的には、長いホースの取り回しが難しいことや、放水時の衝撃が大きいため、訓練を積んでいないと怪我する恐れもあります。

そのため、1号屋内消火栓は原則として「ふたり以上(放水係と消火栓開閉係)」で操作することが求められます。

また、一連の操作に慣れるための訓練も必要とされているため、必ずしも非常時に使いやすいとは言えず、結果として初期消火活動に支障が及ぶことも考えられます。

このような事態に備えて、より簡単な操作で同様の消火活動ができる「易操作性1号消火栓」が1998年から普及するようになりました。

つまり、易操作性1号消火栓は1号消火栓の使い勝手を向上させ、誰でも迅速かつ安全に初期消火が出来るように改良されたものと言えます。

屋内消火栓の種類

易操作性1号消火栓をはじめとする「屋内消火栓の種類」についても知っておくと役に立つでしょう。

屋内消火栓には以下の種類があります。

・1号消火栓
・易操作性1号消火栓
・2号消火栓
・広範囲型2号消火栓
・パッケージ型消火設備(屋内消火栓の代替)

それぞれの種類について解説します。

1号消火栓

1号消火栓は屋内消火栓のなかで最も標準的な存在と言えます。易操作性1号消火栓が登場する1998年以前の建物内に設置してあることが多く、放水能力が最も高い消火栓です。

1号消火栓の放水量は毎分130リットル、放水圧力は0.17-0.7MPa以上で、ホースの形状は折りたたみ式(折りたたみ平型)です。

先述したように、1号消火栓は「ふたり以上」で操作する必要があり、なおかつ正確に使うための訓練を要します。

このような特徴から、1号消火栓は「放水能力に長けているが、操作性が容易とは言えない」ものとして知っておくとよいでしょう。

易操作性1号消火栓

易操作性1号消火栓は1号消火栓をより使いやすくしたものです。放水量および放水圧力は1号消火栓と同様ですが、ホースの形状が「保形ホース」であることが特徴的でしょう。

保形ホースとは、常時「筒状」になっているホースのことで、1号消火栓の折りたたみ式ホースと比較して、ねじれたり、折れたりしにくいのが特徴です。(洗濯機の排水ホースのような形状)

一刻を争うような火災発生時において、ホースがねじれてしまっては消火活動に影響が生じてしまいますが、易操作性1号消火栓はこの心配がほとんどありません。

2号消火栓

2号消火栓はひとりでも操作しやすいよう、1号消火栓よりも放水量(毎分60リットル)や放水圧力(0.25-0.7MPa)を少なくしたものです。

また、ホースの形状は保形ホースであることから、ホースの取り回しが容易で、放水時の衝撃が少ないといった特徴があります。

一方で、1号消火栓や易操作性1号消火栓と比較して、放水能力が低いため、倉庫や工場といった場所には設置できません。(1号は倉庫や工場でも可)

1号消火栓や易操作性1号消火栓の設置間隔は水平距離25メートル以下であるのに対し、2号消火栓は水平距離15メートル以下となり、設置基準が厳しくなることも知っておきましょう。

広範囲型2号消火栓

広範囲型2号消火栓とは、2号消火栓同様にひとりで操作可能ながら、放水量が毎分80リットル、放水圧力は0.17-0.7MPa、保形ホースを採用していることが特徴の消火栓です。

広範囲型2号消火栓には「アスピレートノズル」と呼ばれるノズルが使われており、2号消火栓よりも放水能力が向上しているものと言えます。

これにより、設置間隔は1号消火栓同様に水平距離25メートル以下となり、既設の1号消火栓から改修することも可能です。

パッケージ型消火設備(屋内消火栓の代替)

厳密には屋内消火栓に含まれませんが、屋内消火栓の代替として利用されることがあるのが「パッケージ型消火設備」です。

パッケージ型消火設備とは、ホース、ノズル、加圧ボンベ、そして消火薬剤貯蔵容器などがひとつにまとまっている消防用設備です。

屋内消火栓と違う点は、水ではなく「消火薬剤」を使用することで、水を使わないため、水源や圧力ポンプ、給水管などを必要としません。

一方、各屋内消火栓と比べて設置できる場所が限定され、地階や無窓階などには設置できません。

屋内消火栓の構成

易操作性1号消火栓を含む屋内消火栓は主に以下の設備で構成されています。

・ノズル
・ホース
・消火栓開閉弁
・発信機(起動ボタン兼用)
・加圧送水装置(圧力ポンプ)
・送水用配管
・水源
・非常用電源装置
・屋内消火栓格納箱

屋内消火栓は上記のような設備で構成されていますが、メーカーによって構成および使用方法が異なります。

例えば、易操作性1号消火栓のように操作性を優先しているものは、起動ボタンを兼ねる「発信機」を押さずとも、消火栓開閉弁を開くことで加圧送水装置が起動して、放水できるようになるものもあります。

ひとりで操作できるほど簡単な易操作性1号消火栓であったとしても、メーカーによって構成や使用方法が異なることを知っておきましょう。

易操作性1号消火栓と2号消火栓の違い

易操作性1号消火栓は2号消火栓と似ていますが、具体的には以下に関する違いがあります。(易操作性1号消火栓:2号消火栓)

・放水量(毎分130L:毎分60L)
・放水圧力(0.17-0.7MPa:0.25-0.7MPa)
・水源量(2.6㎥:1.2㎥)
・配管(呼称50mm:呼称32mm)
・水平距離・設置間隔(25m以下:15m以下)
・設置場所(2号は工場、倉庫、無窓階、4階以上などは不可)

易操作性1号消火栓と2号消火栓には上記のような違いがありますが、以下の点においては共通しています。

・ひとりで操作可能
・保形ホース

つまり、易操作性1号消火栓と2号消火栓は「ひとりで操作できるが、その放水能力や設置場所に違いがある」と言えます。

易操作性1号消火栓の使い方(起動方法)

易操作性1号消火栓の使い方は以下の手順です。

1.消火栓格納箱を開けて、ノズルを取り出す
2.開閉弁を開ける(ポンプ起動ボタンの押下が必要な場合もある)
3.ノズルのバルブを開ける
4.火元に向けて放水する

このように、易操作性1号消火栓の使い方は非常に簡素です。仮に、1号消火栓を使う場合は「ホースを伸ばす」と「ホースのねじれをなくす」という作業が必要で、なおかつ作業者2名の間で「放水開始」の意思疎通といった行為も加わります。(放水時の転倒事故を防ぐため)

1号消火栓は日頃から訓練を積んだ消防隊員などでなければ、迅速かつ確実に操作することは難しいでしょう。

一方、易操作性1号消火栓であれば、非常時であっても女性ひとりで操作できるほど簡素化されています。

易操作性1号消火栓の設置基準

易操作性1号消火栓を含む屋内消火栓の設置基準は、主な場合において以下のように規定されています。

劇場、映画館、演芸場、講堂など人が多く集まる場所では、

・木造建築は延面積500平方メートル以上
・準耐火性建築は延面積1,000平方メートル以上
・耐火性建築では延面積1,500平方メートル以上

地階、無窓階、4階以上の場合では、

・木造建築は延面積100平方メートル以上
・準耐火性建築は延面積200平方メートル以上
・耐火性建築では延面積300平方メートル以上

このように、屋内消火栓の設置基準は「建物の延面積」「建物の耐火性能」「地階、無窓階、4階以上」といった条件によって細かく分かれています。

ちなみに、工場または作業場、倉庫の場合と、これらが地階、無窓階、4階以上にある場合は、1号消火栓または易操作性1号消火栓でなければいけません。

また「指定可燃物貯蔵庫」も同様に、1号消火栓または易操作性1号消火栓を設置しなければいけないことを覚えておきましょう。

参考:屋内消火栓設備設置基準(抜粋)

易操作性1号消火栓の費用相場

易操作性1号消火栓の価格は建物の構造や、必要になる工事の内容、水槽の設置などの有無で大幅に変わるため、どのメーカーも公表していません。

最も大掛かりとされる新規設置の場合は1,000万円を超えることもあるとされていますが、既存設備を使用する場合は25万円から100万円の範囲で収まることもあります。

このような事情から、易操作性1号消火栓を設置する場合は、複数の業者に見積もってもらうことをおすすめします。

また、消防点検の際などに前もって相談するのもよいでしょう。

まとめ

易操作性1号消火栓は1号消火栓と同等の放水性能を持ちながら、ひとりで操作できるほど利便性が追及されている消火栓です。

その他の消火栓との違いや設置基準について理解することも大切ですが、万が一の時でも円滑かつ安全に使用できるよう日頃から訓練することをおすすめします。

易操作性1号消火栓の設置や保守、点検、そして使用方法などについては、消防点検のプロに相談するようにしましょう。

 

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