COLUMN
2023.03.30
自動火災報知設備の感知器が免除されるケースを解説
「自動火災報知器の感知器は設置が免除される規定があるの?」や「自動火災報知設備の感知器が免除される条件が分からない」といったことで悩む人は多いようです。
自動火災報知設備は大がかりな消防用設備であり、なおかつコストもかかるため、消防法で定められている最低限の範囲内で収めたいと考える建物管理者は少なくないでしょう。
自動火災報知設備の設置を巡って気になる点のひとつが「免除」の規定だと思います。とりわけ、感知器の設置については様々な免除規定があるため、あらかじめしっかり理解しておきたいところです。
そこでこの記事では「自動火災報知設備における感知器の設置免除」について、規定やよくあるトラブルなどについて、初心者にもわかりやすく解説します。
自動火災報知設備の感知器とは
自動火災報知設備の感知器が免除されるケースを理解するうえで、感知器の種類についても知っておくと分かりやすくなります。
熱感知器
自動火災報知設備の感知器として最も典型的な物が「熱感知器」です。熱感知器には、差動式分布型感知器、差動式スポット型感知器、定温式スポット型感知器、熱アナログ式スポット型感知などがあります。
熱感知器の基本的な仕組みは「周辺温度の上昇」を捉えることです。例えば、感知器の周辺温度が65度まで上昇した際に作動するようなイメージです。
作動する設定温度は65度から150度と幅広く、台所やサウナといった周辺温度が高くなるような場所では作動温度が高い物を設置し、火災を警戒するのと同時に、誤作動が起こりにくくする工夫が取られています。
煙感知器
自動火災報知設備の感知器では「煙感知器」もあります。煙感知器は、光電式スポット型感知器、光電式分離型感知器、光電アナログ式スポット型感知器、光電アナログ式分離型感知器、イオン化式スポット型感知器など様々なタイプに分かれています。
煙感知器は原則として「煙の量」によって作動する仕組みです。例えば、感知器内部に煙が充満すると、感知器内部で光の乱反射が生じ、それをきっかけにして作動するイメージです。
煙感知器は熱感知器よりも火災発生を早く感知できるとされている一方で、熱感知器の4倍ほどのコストがかかると言われています。
炎感知器
自動火災報知設備の感知器には「炎感知器」もあります。炎感知器には、赤外線式スポット型感知器、紫外線式スポット型感知器などがあり、いずれも燃焼時に発せられる炎の放射エネルギーを利用して作動する仕組みです。
炎感知器は感知器のなかでも特殊であり、天井の高さが20m以上の場所などで設置されます。
感知器の重要性
自動火災報知設備の感知器は、熱や煙、そして炎などをいち早く感知し、周囲に火災発生を知らせる「起点としての役割」がある非常に重要な存在です。
また、自動火災報知設備が正常に作動する最低条件として「感知器が正常に作動すること」があり、感知器なくして自動火災報知設備は成立しないと言えます。
従って、自動火災報知設備の感知器の設置については、免除規定だけでなく設置義務基準もよく理解することを忘れないようにしましょう。
自動火災報知設備の感知器が免除される場所の例
自動火災報知設備の感知器の設置が免除される場所として以下のようなものが例として挙げられます。
・主要構造部が耐火構造の建築物天井裏
・準耐火構造建築物の天井裏などが不燃材料で区画された部分
・天井裏が上階の床との距離が0.5m未満
・プールの上部
・プールサイド(売場がないこと)
・スケートリンクの滑走部
・トイレや浴室、これらに類する場所
・金庫室内
・恒温室や冷蔵庫内(代替として温度異常警報装置を設置すること)
・感知器の機能保持が著しく困難な場所
上記に共通することとして「火災発生の可能性が低い、または火災被害が広がりにくい」ということが言えます。
仮に、上記に該当する場合であっても、感知器を設置しなくても良いとは言い切れません。なぜなら、市町村で基準が異なる火災予防条例や、所轄の消防署による見解が優先される可能性があるためです。
これらの注意点について、次で詳しく解説します。
自動火災報知設備の感知器設置免除に関する注意点
自動火災報知設備の感知器の設置免除について注意すべき点は以下のようなものがあります。
・火災予防条例
・消防署の見解
・例外のケース
上記それぞれについて、どのようなことに注意すべきなのか解説します。
火災予防条例
自動火災報知設備の感知器が免除される場合でも「火災予防条例」に注意しましょう。火災予防条例とは、各市町村で独自に設けられた火災予防に関する条例のことです。
具体的には「消防法の規定と火災予防条例の規定が異なる場合がある」ため注意しなければいけません。
消防法を順守していても、市町村が定める火災予防条例に違反するという事態が起きる可能性があります。
消防署の見解
自動火災報知設備の感知器が免除されるとして「消防署の見解」にも注意が必要です。例えば、消防法では設置が免除されているケースでも、建物の形状や用途などを理由に、所轄の消防署によって感知器を設置すべきと判断されることもあり得るということです。
または、感知器の設置は免除するが、代替の消防用設備を設置しなければいけないと判断されるかもしれません。
例外のケース
自動火災報知設備の感知器設置が免除されるケースであっても「例外のケース」に注意しましょう。
具体的には「トイレ」がその対象になりやすいとされています。(詳細は次で解説)先述したように、トイレや浴室は感知器の設置が免除される場所です。
しかし、トイレ内での喫煙行為などが想定されるため、免除の例外として感知器の設置が求められることもあり得ます。
ちなみに、なぜ消防法と市町村の条例で規定が異なる事態が起きるかというと、消防法で「市町村が政令と異なる規定を設けること」を認めているためです。
これは気候や風土の特殊性を考慮しているもので、必ずしも消防法で規定することが日本全国すべての市町村に最適とは限らないことへの配慮です。
参考:消防法第五条の五 基準の特例に関する条例の基準
感知器の設置免除を巡って混乱する事例
自動火災報知設備の感知器は一部で免除されるケースもありますが、頻繁に混乱が生じることも事実です。
具体的にどのようなことで混乱が生じるのか紹介します。
トイレ
自動火災報知設備の感知器設置が免除される場所で、その解釈を巡り混乱が生じやすいのがトイレです。
原則として、トイレは火災発生リスクが低いことから感知器を設置することが免除されています。
一方で、トイレ内の喫煙、いたずらによる放火、個室が多いことなどを理由に、火災発生リスクが高いという解釈も出来ます。
従って、法的には設置が免除されるものの、市町村の条例や消防署の判断によっては設置が求められることもあり、混乱が生じやすい事例です。
ちなみに、電気便座付き便器や自動洗浄乾燥式便器、2kWを超えるヒーターを内蔵した機器などを設置する場合、感知器の設置を義務付ける条例もあります。
トイレに感知器を設置するか否かを巡っては混乱が生じやすいことから、行政や消防署に確認するようにしましょう。
押入と物入
自動火災報知設備の感知器を設置するにあたり、免除の対象になるかどうか混乱するもののひとつに「押入と物入」があります。
例えば、大阪市では「押入は床面積に関係なく全て必要」であるのに対し「物入等は床面積1平方メートル未満であれば免除できる」としています。
つまり「押入」と「物入等」で免除の基準が異なり、なおかつ押入と物入等の区別を誤りやすいため、混乱が生じやすくなっています。
「押入」とは、和室にある布団や衣類を収納する室であるのに対し、「物入」は洋室の収納全般として区別されます。
一般的に、押入は布団など燻煙しやすいものが収納されることが多いため、押入には感知器を設置するよう規定されています。
大阪市の場合「1平方メートル未満の物入等」であれば、感知器の設置が免除されるため「1平方メートル未満の押入」までも免除されると誤解するケースが生じる訳です。
この結果、大阪市の一部では「1平方メートル未満の収納等は感知器の設置免除」という誤った解釈が広まってしまったそうです。
大阪市以外に目を向けると「押入や物入の面積が数値化されていない」や「0.81平方メートル未満」と規定されていることもあり、感知器を設置する際、押入や物入といった収納は混乱しやすくなっています
特定小規模施設用自動火災報知設備を設置する場合
感知器の設置免除を巡って混乱が生じやすいパターンのひとつに「特定小規模施設用自動火災報知設備を設置する場合」があります。
特定小規模施設用自動火災報知設備とは、300平方メートル未満の民泊など小規模建物向けの簡易自動火災報知設備のことで、感知器と警報器が一体型になった無線式感知器を用います。
消防法では、特定小規模施設用自動火災報知設備を設置している場合「収納等の面積が2平方メートル以上であれば感知器を設置すること」と規定しているため、2平方メートル未満の収納であれば感知器の設置は免除されます。
つまり、同じ収納であったとしても「自動火災報知設備」または「特定小規模施設用自動火災報知設備」で免除の規定が異なるため、混同してしまわないよう注意しましょう。
まとめ
自動火災報知設備の感知器を設置する際、免除となる規定は消防法や火災予防条例によって異なるため注意が必要です。
また、感知器の設置が免除される要件を満たしていたとしても、管轄の消防署から感知器の設置や、代替となる消防用設備の設置を求められることもあります。
自動火災報知設備の感知器を設置する際には、免除の規定だけを理解するのではなく、行政や消防署、そして消防点検のプロに相談するようにしてください。
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