COLUMN
2023.03.30
消防法における有窓と無窓の判定や基準を解説
消防法の有窓についてその意味や定義について理解している人はあまり多くないかもしれません。
消防法における有窓とは、読んで字のごとく「窓がある」という意味ではないため、法律上の定義をしっかり理解しておく必要があります。
また、消防法では有窓だけでなく「無窓」も頻出する用語であり、無窓についてもよく理解しておかなければいけません。
この記事では、消防法における有窓について、さらには有窓と無窓は何が違い、どのような影響が生じるのかといったことについて、初心者にもわかりやすく解説します。
消防法における有窓とは
消防法における有窓(ゆうそう)とは、避難および消火活動で有効とされる開口部を有することを指しています。
消防法においては、有窓および無窓は「階」が判定単位となるため「有窓階」または「無窓階」として扱われます。
つまり、対象階が消防法の判定基準を満たしている場合は有窓階で、そうでなければ無窓階と判定される訳です。(特定の部屋ではなく階であることがポイント)
消防法では有窓階または無窓階の判定基準が存在し、以下のように厳密に定められています。
“令第十条第一項第五号の総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階は、十一階以上の階にあつては直径五十センチメートル以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が当該階の床面積の三十分の一を超える階(以下「普通階」という。)以外の階、十階以下の階にあつては直径一メートル以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上の開口部を二以上有する普通階以外の階とする。”
上記の条文を要約すると以下のようになります。
・建物が10階以下だと「直径1メートル以上の円が内接できる開口部、または幅75センチ以上、高さ1.2メートル以上の開口部を2つ以上有し、かつ直径50センチ以上の円が内接できる開口部との面積の合計が1/30以下」
・建物が11階以上だと「直径50センチ以上の円が内接できる開口部との面積の合計が1/30以下」
これに加えて、開口部が配置される場所についても規定があります。開口部は「床面からの高さが1.2メートル以内で、なおかつ幅1メートル以上の通路や空地に面していること」とされています。
また、開口部の建具の素材も考慮しなければいけません。ガラス厚は原則6ミリ以下、網入りガラスは不可といった自治体で異なる可能性がある条件も存在し、所轄の消防署や行政へ確認する必要があります。
消防法では、有窓すなわち有窓階は「普通階」と呼ばれることもあります。さらに、有窓階(普通階)の基準を満たさない階を「無窓階」と呼び、どちらかと言えば有窓階よりも無窓階の方が頻出します。
消防法においては、有窓階よりも無窓階の方が消防用設備の設置基準が厳しくなるため、原則として無窓階の基準を覚え、それ以外は有窓階として考えた方が理解しやすいかもしれません。
消防法の有窓階を理解するためにも、無窓階の判定基準をよく把握しておくことをおすすめします。
参考:消防法施行規則第五条の三
消防法における無窓とは
消防法における無窓とは、避難および消火活動で有効とされる開口部を有さないことです。有窓階と同様で、判定単位は「階」であり、無窓階と表記されます。
先述した、有窓階の判定基準を満たさない場合が無窓階として扱われます。よくある誤解として、建物や対象階に窓がない場合が無窓階になるというものがありますが、消防法では「避難や進入に有効な開口部の有無」が基準であることを忘れないようにしましょう。
また、消防法では「地階」という別の基準が存在します。地下は窓がないため無窓階として扱いがちですが、地下は無窓階ではなく「地階」として別の基準が適用されるので、無窓階と地階は別ものとして覚えておきましょう。
消防法上の有窓と無窓の違い
消防法上の有窓と無窓の違いは「避難や進入に有効な開口部の有無」です。有効な開口部があれば有窓階、有効な開口部がなければ無窓階として扱われます。
仮に、開口部があったとしても消防法で定められている厳密な規定に沿っていなければ有効とはみなされないため、あくまでも「有効な開口部」であることが求められます。
有窓や無窓に関して頻繫に誤解が生じることとして「建築基準法の無窓居室」があります。建築基準法では、採光・換気・排煙・避難という4つの基準があり、それぞれの基準を満たさない居室を「無窓居室」と呼びます。
同じ「無窓」であっても消防法と建築基準法では定義が異なりますので、違いがあることを知っておきましょう。
開口部の構造
消防法の有窓階や無窓階を理解する際に重要なポイントとなるのが「開口部」です。開口部に関する規定についてよく把握するようにしてください。
設置位置
消防法では有窓階または無窓階を「開口部の設置位置」を使って判定します。具体的には「開口部は、開口部の下端が床面より1.2メートル以内で、なおかつ開口部がある面は幅1メートル以上の通路や空き地に面していること」となっています。
開口部の設置位置が決められているのには、消防隊がボンベなどの装備を背負っていても容易に進入できることが背景にあります。
11階以上の高層階においては、消防隊が外部から進入するケースは稀なため、10階以下と比較すると、開口部の条件が緩いことが分かると思います。
また、開口部は外部からの進入を考慮するだけでなく、内部から外部へ容易に避難できるよう、開口部周辺に障害物がないかどうかも気をつけなければいけません。
防火対象物定期点検や消防用設備等点検の際に指導を受けることがないよう、開口部については外部と内部の両方で規定に従う必要があります。
素材
消防法の有窓階または無窓階については「開口部の素材」も考慮しなければいけません。消防法では「開口部は容易に破壊でき進入可能なものであること」と定められているため、開口部の建具に使用する素材も重要な要素になります。
例えば、開口部に網入りガラスを使用していたり、防音効果を高めるための厚手ガラス(10ミリ以上)を使用していたり、格子を入れていたりすると無窓階として判定されてしまう可能性があります。
また、防犯のために鉄製の扉を設置していると外部から容易に破壊できないため、消防隊が内側のサムターンにアクセスできるようガラスの小窓が付いていないといけないといった条件が生じます。
とりわけ、販売店舗などが広告用に使用するガラスフィルムも気を付ける必要があります。ガラスフィルムの厚みや材料によっては破壊が困難となるため、無窓階判定になるかもしれません。
このように、開口部の素材については、消防隊の進入や消防隊が容易に破壊できることが求められ、詳細については所轄の消防署に相談する必要があります。
つまり、消防法の規定に沿っていたとしても、都道府県ごとに異なる基準や、所轄の消防署による判断が優先される可能性があるため、十分に注意すべきポイントと言えます。
ガラス構造
消防法の有窓階または無窓階の判定基準として気を付けたいポイントが「ガラス構造」です。先述したように、開口部に使用するガラス(建具)は「容易に破壊できること」が規定されています。
この「容易に破壊できる」ひとつの目安として「ガラスの厚みは6ミリ」と言われているものの、フロート板ガラスや熱線吸収板ガラスは8ミリ、強化ガラスや耐熱板ガラスは5ミリといったように、ガラスの構造によって誤差があります。
従って、開口部にガラスを使用する場合は、所轄の消防署に相談したうえで対処しなければいけません。
消防法の有窓と無窓によって生じる影響
消防法の有窓階または無窓階の判定の結果によっては、消防用設備の設置基準が厳しくなるため、建物管理者は経済的な負担が増える可能性があります。
仮に「無窓階」と判断された場合、対象階では主に以下のような影響が生じます。
・屋内消火栓やスプリンクラーの設置義務付け
・自動火災報知設備の煙感知器設置義務付け
・非常警報設備の設置基準強化(建物収容人数が50名から20名になる)
・有窓なら不要な箇所に誘導灯の設置義務
・避難器具の設置義務など
このように、消防法上の有窓階と認められなければ、消防用設備の設置基準が厳しくなり、それらの導入コストや管理コストの負担が増えることになります。
また、6ヶ月に1回の消防用設備点検や、12ヶ月に1回の消防用設備点検(総合点検)の負担も増すでしょう。
建物管理者としては有窓階として認められる方が、経済的な負担が軽く済むことから、消防法の有窓階または無窓階の基準を把握することが重要とされる理由になっているのです。
まとめ
消防法の有窓とは、有効な開口部が設置されていることです。この「有効な開口部」には非常に厳しい規定があり、なおかつ都道府県や所轄の消防署によって基準や判定が変わることもあるため、消防点検などの際に食い違いが生じやすいとされています。
また、無窓階判定を受けてしまうと消防用設備の設置基準が厳しくなり、コストや時間の負担が増える可能性があります。
消防法の有窓階または無窓階の判定については、消防点検の経験が豊富なプロに依頼し、行政や消防署と入念な打ち合わせをすることをおすすめします。
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