COLUMN
2023.02.22
動力消防ポンプ(消防用小型ポンプ)の使い方を徹底解説
「動力消防ポンプの使い方を知りたい」や「動力消防ポンプのトラブルシューティングを理解しておきたい」と考える人は多いと思います。
動力消防ポンプは、初期消火の際に活躍する機会が多く、日頃からその使い方や注意点を理解しておくことで、万が一の時でも対応しやすくなります。
そこでこの記事では、動力消防ポンプの使い方をはじめ、小型ポンプの構造、トラブルシューティング事例など、初心者も知っておきたいことをわかりやすく解説します。
動力消防ポンプとは
動力消防ポンプとは、動力(エンジン)を使って防火水槽などの水源から吸水し、加圧した状態の水を放水するための消火用設備です。
動力消防ポンプは、工事現場などでも用いられる発電機のような形状をしていますが、重量は100キログラムほどあるため、使用時には2名から3名の人員が必要です。
動力消防ポンプの基本的な役割は「水源から水を吸水して放水すること」ですが、これを実現するためには「吸水操作」と「ポンプ始動操作」そして「放水操作」の3つの使い方を理解しておかなければいけません。
一方、動力消防ポンプは様々なメーカーから販売されており、吸水や放水性能、さらにはセルスターター機能やオーバーヒート防止機能などの付加価値が付いた物も流通しています。
このことから、日頃からお手持ちの消防用小型ポンプの特性と使い方を理解したうえで、万が一の時に備えておかなければいけません。
使い方を理解し、実際の操作方法に慣れておくことは非常に重要です。
屋外消火栓代用設置
動力消防ポンプは消防法施行令第19条第4項に基づき、屋外消火栓の代替設備として設置可能な場合があります。
どのような場合に代替可能かというと、動力消防ポンプから半径100m未満に収まる場合、動力消防ポンプでも設置可能です。
動力消防ポンプの構造
動力消防ポンプの使い方を理解するうえで構造についても知っておきましょう。動力消防ポンプは基本的に「ポンプ部」と「エンジン部」のふたつに区分されており、以下のような構造になっています。
ポンプ部の構造
圧力計:ポンプの圧力が表示される
放水弁ハンドル:放水の開閉を操作する
放水口(差込式またはねじ式):放水ホースを接続する部分
吸水レバー:水源から吸水する際に操作する
吸水口:水源から吸水するための吸管を接続する部分
ドレンバルブ:ポンプ内の水を排水するための部分
真空ポンプ排水パイプ:吸水時に水が出ているかを確認する部分
吸管:水源から吸水するために使用するホース
エンジン部の構造
燃料タンク:ガソリン等の燃料を入れる部分
スロットルレバー(スロットルダイヤル):エンジンの回転数を調整する部分
停止スイッチ:エンジンの停止を操作
燃料コック:エンジンに燃料を送るパイプ管の開閉を操作
オイルタンク:エンジンオイルを入れる部分
スターターロープ(リコイルスターターロープ):エンジン始動時に使用するロープ
セルスタータースイッチ:エンジン始動時に使用するスイッチ
この他に「ホース(ポンプからノズルまで消火用水を送る)」や「筒先(ホース先端に取り付けるノズル)」といった外付けの装備も含まれます。
動力消防ポンプの使い方
動力消防ポンプの使い方について、パートごとに解説します。
吸水の操作
・動力消防ポンプで吸水するための水源を確認(防火水槽等)
・吸管を消防用小型ポンプの吸水口に接続する
・吸管を水源に投入または接続する
・動力消防ポンプの放水口とホースを接続する
・ホースに筒先(ノズル)を装着する
・燃料コックを開いてエンジンに燃料を送る
・スロットルレバー(スロットルダイヤル)を始動位置に合わせる
吸水の操作においてポイントとなるのが、吸管と消防用小型ポンプ、ホースと消防用小型ポンプいずれの接続口においても緩みや隙間が生じていないかを確認することです。
また、緊急時や不慣れな時は「燃料コックの開き忘れ」が生じやすく、エンジンがかからない原因になるので注意しましょう。
水源が受水槽の場合、受水槽のバルブを開くことも忘れないでください。日頃から動力消防ポンプの使い方だけでなく、水源の使い方も合わせて確認することをおすすめします。
ポンプ始動操作
・スターターロープまたはセルスタータースイッチでエンジンを始動する
・真空ポンプ排水パイプから水が出ているか確認する
・吸水レバーを吸水側に合わせる
ポンプ始動操作においてポイントになるのが、エンジン始動です。セルスターターの場合は、ダイヤルやスイッチを操作すればエンジンが始動しますが、長期間使用していない場合やバッテリー切れ、電子回路の故障などが原因でエンジンが始動しないことも考えられます。
このような事態に備えて、原始的な始動方法であるスターターロープによる始動を練習しておきましょう。
スターターロープは腕の力だけで引くのではなく、背中の筋肉(広背筋)を使うようにすれば力が加わりやすく、円滑にエンジンが始動するはずです。
放水および停止操作
・放水弁ハンドルを開ける(半開がある場合はまずは半開に合わせる)
・筒先を噴射状態に合わせて放水開始
・放水完了後、筒先を閉止状態に合わせる
・消防用小型ポンプのスロットルレバーを低速に合わせる
放水および停止操作においてポイントになるのが、放水弁ハンドルの開閉です。ホースおよび筒先を持っている人が準備できていない段階で放水弁ハンドルを全開にすると、ホースやノズルが暴れてしまい非常に危険です。
これを防ぐために、放水弁ハンドルの開閉は「半開」や、徐々に開閉するようにしましょう。また「放水の合図や号令」も安全に操作するために欠かせません。
ポンプ停止操作
・放水弁ハンドルを閉める
・停止スイッチを押してエンジンを停止する
・燃料コックを閉める
・放水弁ハンドルとドレインバルブを開いて排水する
・排水後、放水弁ハンドルとドレインバルブを閉める
ポンプ停止操作においてポイントになるのが排水です。エンジン停止後には消防用小型ポンプ内に溜まった水を十分に排水し、故障や不具合の原因にならないよう備えましょう。
動力消防ポンプの点検方法
動力消防ポンプの使い方と合わせて点検方法についても理解しておくことをおすすめします。
吸管:損傷や詰まりの有無、パッキンの劣化の確認
エンジン(内燃機関):燃料とオイルの残量、ラジエーターや冷却装置の動作確認、点火プラグの損傷や汚れ、定期的な試運転、始動方法の確認
ホースおよび筒先:損傷や腐食の確認、延長ホースの接続方法
積載器具:損傷やタイヤ圧の確認、固定ベルトやスプリングの確認
貯水槽:水量、損傷の有無、蓋の開閉方法、給水装置の確認(接続方法の確認も忘れずに)
動力消防ポンプは6ヶ月に1度の消火設備点検(機器点検)、1年に1回の総合点検(消防設備をすべて作動させる)の対象ですので、少なくとも6ヶ月に1回は点検するようにしてください。
また、長期間使用しないまま保管していると、エンジンがかからないことや、燃料やオイルの揮発が起きる場合があるため、定期的な試運転を心がけましょう。
動力消防ポンプのトラブルシューティング事例
動力消防ポンプの使い方を理解するだけでなく、起こりうる様々なトラブルにも対応できるようにしておいてください。
主なトラブルに合わせたトラブルシューティングを紹介します。
エンジンがかからない
動力消防ポンプで最も起こりやすいトラブルが「エンジンがかからない」ことでしょう。動力消防ポンプのエンジンがかからない場合は、以下を確認してください。
・燃料が入っているか
・燃料が古すぎないか(ガソリンは3ヶ月で劣化し始める)
・燃料コックが「開」になっているか
・スロットルレバー(スロットルダイヤル)が始動または吸水位置に合わせてあるか
・チョークが定位置に戻っているか
・点火プラグの損傷や汚れがないか
・インペラ(羽根車)の損傷や異物を確認
動力消防ポンプのエンジンがかからないことはよくあることです。また、その原因は燃料コックの開き忘れや、燃料の劣化、スロットルレバーが停止位置にあるといった単純なミスであることが多く、緊急時にこのような事態にならないためにも使い方を理解しておきましょう。
オーバーヒートする
動力消防ポンプでよくあるトラブルが「オーバーヒート」です。オーバーヒートが起きると吸水も放水もできなくなるため、オーバーヒートを未然に防ぐことが重要になります。
・エンジン始動したら速やかに放水する
・放水時は筒先を使って放水する(冷却水を循環させられる)
・オーバーヒートセンサー付きの物は設定をONにする
動力消防ポンプのオーバーヒートは「放水しないこと」が原因です。放水することで冷却水がポンプ内に循環するため、使用時はノズルとホースを付けた状態で速やかに放水してください。
吸水できない
動力消防ポンプで吸水できないトラブルの場合は以下を確認しましょう。
・ドレンバルブが閉まっているか(真空状態にすること)
・吸管および吸水口の目詰まりが起きていないか
・放水弁ハンドルが閉まっているか
吸水できない場合の原因は「ポンプが真空状態になっていない」ことがほとんどです。ドレインバルブや放水弁ハンドルが閉まっているか確認しましょう。
放水圧力の低下
動力消防ポンプの放水圧力が低い場合は以下を確認してください。
・水源と吸管に高低差がありすぎないか
・吸管および吸水口の目詰まりが起きていないか
・放水弁ハンドルがしっかり開いているか
・ホースとポンプが隙間なく接続されているか
・ホースのねじれや折れ、障害物がないか
放水圧力が低い場合は目詰まりやホースの折れなどから疑うことをおすすめします。
まとめ
動力消防ポンプ設備(消防用小型ポンプ)の使い方は、知識だけでなく実際に始動させることで身に付きやすくなるでしょう。
消防点検の際だけでなく、可能な限り試運転や練習をし、使い方やトラブルからの復帰手順に慣れるようにしてください。
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