解説
2022.10.26
消火器の使用期限は10年?消防法も詳しく解説
私たちにとって身近な消防用設備と言えば「消火器」ではないでしょうか。
消火器は設置に関するルールだけでなく、個体の能力や点検方法なども消防法によって細かく定められています。
消火器に関する消防法の中で最も気になる点が「消火器の使用期限」という人も多いと思います。
この記事では、法定点検でも役立つ知識として、消火器の使用期限や消火器の種類、消防法で定められていることなどを詳しく解説します。
【目次】
1. 消火器の使用期限
2. 消火器の種類
3. 消火器の処分とリサイクル
1. 消火器の使用期限
消火器は「業務用消火器」と「住宅用消火器・消火具」の2つに分類され、それぞれで使用期限が異なります。
業務用消火器の使用期限は「おおむね10年」です。
住宅用消火器・消火具の使用期限は「おおむね5年」とされています。
消火器の使用期限に関係なく注意すべきこと
消火器の使用期限に関係なく、法定点検の際には以下のようなことに注意してください。
- 腐食(腐食が原因で消火器が暴発し死亡事故が起きている)
- 消火器本体部の凹み
- レバー部の錆による固着
上記のようなダメージは非常に稀なケースですが、消火器を設置している建物内の環境や、建物の周辺環境によっては十分に想定できます。
例えば、飲食店のキッチンや、海に近い建物などは注意すべきでしょう。非常時に消火器が機能するように「6か月に1回」の法定点検(外観点検と維持台帳への記録)を欠かさないようにしてください。
また、消火器の外観に異常が認められた場合は、速やかに販売元に相談し、点検を受けるようにしましょう。
耐圧性能点検(水圧試験)が必要な消火器
製造から10年経過した消火器は「耐圧性能点検(水圧試験)」が義務付けられます。さらに、以降3年毎に同様の点検を受けなければいけません。
また、外観点検の際に腐食が認められた消火器についても同様に耐圧性能点検(水圧試験)が義務付けられます。
消火器メーカーは、耐圧性能点検(水圧試験)をするよりも、新しい消火器に交換する方がコストを抑えられると同時に、消火器の安全性も確保できるとしています。
10年を超える古い消火器を維持し続けるよりも、新品に交換した方が良い場合もあることを覚えておくと良いでしょう。
消火器に使用期限が書いていない場合
ごく稀に消火器の使用期限が書いていない場合や、製造年しか書いていないケースがあります。
また、保管状態が悪く、ラベルが剥がれていたり、使用期限が判読できなくなっていたりすることもあるようです。
このような場合、消火器の使用期限で判断するのではなく「消火器が使用できるか否か」で判断することも可能です。
消火器が使用出来るかどうかを確かめるためには「消火器の種類」を理解する必要があります。
次で、消火器の種類について解説します。
2. 消火器の種類
消火器は構造の違いによって「蓄圧式消火器」と「加圧式消火器」の2つに分類されます。それぞれの特徴を理解すれば、消火器の使用期限を頼らずに有効性を確認可能です。
蓄圧式消火器
「蓄圧式消火器」は、製造段階で消火器本体内にガスを封入しているタイプです。使用する際にレバーを握ることで内管の弁が開いて薬剤と一緒に噴射される仕組みになっています。
蓄圧式消火器のレバー付近には「圧力計」が付いているため、それが蓄圧式消火器であるかどうかはすぐに分かります。
また、法定点検の際には使用期限の他に、圧力計も確認することで使用可能かどうかが分かります。
蓄圧式消火器の圧力計が「0.7MPaから0.98MPa」を示していれば問題ありません。多くの消火器は、一目で判別出来るように緑色のゲージが付いており、目盛りの針が緑のゲージ内を指していれば異常なしと言えます。
ちなみに、圧力が1.0MPaを超えると「高圧ガス保安法」で定義される「高圧ガス設備」に該当してしまうため、消火器は0.98MPaの「ガス設備」になるよう設計されています。
蓄圧式消火器は以下の特徴があります。
- 破裂リスクが少なく、安全性に優れている
- 圧力計を見るだけで有効性が判別可能
- 握力がない人でも一定量を持続して放射可能
- ストップ機能がある
- 近年主流になりつつある
- 1本あたり5,000円程度で購入可能(実質的な価格)
加圧式消火器
「加圧式消火器」は、消火器内部に加圧用圧力ボンベが内蔵してあります。レバーを握ることで内部にガスが放出されて薬剤を噴射する仕組みです。
加圧式消火器は一度使用するとすべての薬剤が噴射されるため「使い切りタイプの消火器」と言えるでしょう。
有効性を確かめる際には「重量」または「ノズル先端に薬剤が付着しているかどうか」で判断可能です。
一般的な10型の消火器であれば未使用なら6kg程度ですが、使用品だと3kg程度(薬剤が3kgのため)になるため、重量に明らかな違いが生じます。
加圧式消火器は以下の特徴があります。
- 蓄圧式消火器よりも安全性に劣る
- 原則として使い切り
- ストップ機能がない
- 放射時の反動が大きいため使う人を選ぶ
- 徐々になくなりつつある
消火器の型式失効に注意しよう
2011年1月1日、消火器の技術上の規格を定める規格省令改正が執行され、これにより消火器の規格が新規格に変更されています。
旧規格の消火器から新規格の消火器へ移行するために設けられた猶予は10年間で、その期限が2021年12月31日です。
つまり、2022年1月1日以降は「新規格の消火器」でなければ、使用可能な消火器を設置してあったとしても「消防法を満たしていない(消防法第21条の5)」となり、罰則の対象になります。
もし、新規格の消火器に交換しないまま旧規格の消火器を設置していると「消防用設備等の設置維持命令(第 17 条の 4第 1 項又は第 2 項)」が発せられ、それでも改善されなかった場合に「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられます。
旧規格からの移行には10年の猶予期間こそ与えられていますが、日常的に消火器の点検を実施していない人は思わぬ指摘を受けてしまうかもしれないので注意してください。
ちなみに、家庭用の消火器はこの対象外であるため交換義務はありません。しかし、家庭内に旧規格の消火器がある場合は、可能な限り早めに交換するよう検討しましょう。
消火器の新旧規格の見分け方
2022年1月1日以降は新規格の消火器しか認められなくなりました。
「旧規格の消火器」を見分けるポイントは以下の2つです。
- 製造年が2010年以前の物
- 適応火災表示のマークが絵ではなく文字で書かれている物
消火器本体ラベルに記載されている製造年が「2012年以降」の物はすべて新規格の消火器です。
最も分かりやすく判別できる方法は「適応火災表示のマーク」で、旧型は日本語表記ですが、新型は誰でも理解できるよう絵になっています。
一般社団法人日本消火器工業会は、周知を目的にした広報用チラシを用意しているので、確認してみてください。
なお、新旧規格の見分け方は業務用消火器も家庭用消火器も同じです。
3. 消火器の処分とリサイクル
使用期限を迎えた消火器や、古い消火器を処分するのには手順が決められています。また、処分にはコストがかかります。
消火器を処分またはリサイクルする場合「リサイクルシール(粗大ゴミシールのような物)」を購入する必要があります。(2009年以前の消火器が対象)
2012年以降に販売された消火器には本体裏にリサイクルシールが貼り付けられているため、リサイクルシールの購入は不要です。(処分前にリサイクルシールの貼付を必ず確認してください)
リサイクルシールは1回の申し込みで最大5枚まで、価格はオープン価格(場所によって価格が異なる)、特定窓口または指定引取場所でしか購入できないため、初めての人にとってはハードルが高めです。
処分する消火器を持ち込む場合は送料や輸送費はかかりませんが、業者に依頼するとこの分のコストもかかります。
一般的には消火器1本あたり2,000円程度で処分できるとされています。(小型の消火器なら1,000円未満)ただし、家庭ゴミや粗大ゴミとしては捨てられないので注意してください。
古い消火器を処分すると同時に、新品に買い替える場合は、販売元に古い消火器を引き取ってもらえるかどうかを確認しましょう。もしくは、下取りをしてくれるケースもあります。
一部のホームセンターでは古い消火器を引き取ってくれるサービスを実施していますが、新品の消火器を購入することが条件で、割高な消火器しか取り扱っていないこともあります。
消火器の処分はコストや手間がかかるため、処分と同時に新品の消火器と交換する方法がおすすめです。
まとめ
製造から10年を超える消火器を保持するだけでれば違法ではありませんが安全性を考慮すると得策とは言えません。とくに、古い消火器による事故がなくならないことを憂慮すべきです。
従って、業務用消火器は10年、家庭用消火器は5年を念頭に置いて消火器の交換を計画することをおすすめします。
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