消防点検コラム

bcp

2023.10.31

介護施設・事業所で義務化されたBCPを分かりやすく解説

介護施設や介護事業所に関係している人のなかには「BCP」という言葉を聞いたことがあるという人は多いと思います。

なかには「介護施設のBCPの義務化っていつから?」や「介護事業所のBCP策定は何から始めればいいの?」といった具体的な課題に直面している人もいるかもしれません。

そこでこの記事では、様々なリスクマネジメントの知識と経験がある消防点検のプロが、介護施設等で義務化されたBCPについて、担当者がぜひともしっておきたい基本的なことを中心に、分かりやすく解説します。

BCPとは

2024年4月1日からすべての介護施設や事業所において義務化されたBCPとは「Business Continuity Plan」の頭文字をとったもので、日本語では「事業継続計画」または「業務継続計画」と呼ばれます。

BCP策定が求められるのは、企業や団体といった組織ですが、一般的に企業では「業務継続計画」と認識されているのに対し、介護施設等では「業務継続計画」と表現されることが多く、混乱を避ける意味でも「BCP」という表現で統一されつつあります。

BCPを策定する目的は、介護施設などをはじめとする企業や団体が、自然災害、テロ、感染症といった非常事態においても、事業や業務を早期復旧または継続できるようにすることにあります。

ごく簡単に言えば、非常事態であっても正常に業務を続けられるためのルール策定と言え、企業や団体にとっては、重要なリスクマネジメントのひとつです。

BCP策定が広まりつつある背景には、2011年の東日本大震災や、2020年のコロナウイルス感染拡大といった有事の際に、病院や介護施設の運営や、多くの企業の事業が正常に機能しなくなった経験があります。

つまり、BCPは災害等の発生を想定し、企業などが業務を円滑に継続できるよう、あらかじめ対策を講じることと言えます。

介護事業所にBCPが義務化された理由

BCPの策定が義務化される対象は「介護施設や介護事業所」です。義務化は、3年間の経過措置を経て、2024年4月1日から開始されます。

なぜ介護施設や介護事業所だけにBCP策定が義務化されたかと言うと、非常時において人命に直結する可能性が高いことや、利用者の家族にまで影響が及ぶことが想定されるためです。

例えば、インフラの停止が起きた際、様々な形態の介護サービスが提供できなくなってしまうと、利用者の命だけでなく、介護サービスに依存せざるを得ない家族の負担までもが大きくなることが予想されます。

正常なサービス提供が人命に直結していること、そしてそのサービスがなくてはならない家族もいることが、BCP義務化の理由と言えるでしょう。

予測できる最悪のケースに備えて、様々な準備をすることがBCPの目的であり、とりわけ、その重要性が高いとされる介護施設や介護事業所に対して求められている訳です。

介護施設や事業所がBCPを策定することで得られるメリット

介護施設や介護事業所が、BCPを策定するメリットには、以下のようなことがあります。

・人命を守れる
・経済的な損害を抑えられる
・税制優遇措置
・補助金や助成金制度
・ワクチン接種の優先権

それぞれのメリットについて解説します。

人命を守れる

介護施設や介護事業所がBCPを策定するメリットは「人命を守れる」ことがあります。例えば、自然災害などによって水道や電気の供給が止まった場合であっても、入念なBCP策定がなされていることで、対処可能です。

万が一のことが起きた際にも、落ち着いて対処できることは、何よりも重要な人命を守ることにつながります。

経済的な損害を抑えられる

「経済的な損害を抑えられる」ことも、介護施設や介護事業所がBCPを策定するメリットです。

BCPは、非常時でも業務を正常に継続できるようにするための計画であり、計画がしっかりしていれば、事業が円滑に進み、経済的な損失を最小限に抑えられます。

また、BCPによって事業縮小や廃業といったリスク回避にもつながるため、事業を守るメリットもあります。

税制優遇措置

介護施設や介護事業所がBCPを策定するメリットには「税制優遇措置」もあります。具体的には「中小企業防災・減災投資促進税制(特定事業継続力強化設備等の特別償却制度)」の対象となり、防災や減災といったことに対する設備投資をした場合に、最大20%の税制優遇が受けられます。

要件や税制優遇措置の種類は、事業の規模などによって異なるものの、BCP策定は税制優遇措置が受けやすいことを知っておくとよいでしょう。

参考:中小企業防災・減災投資促進税制(特定事業継続力強化設備等の特別償却制度)

補助金や助成金制度

「補助金や助成金制度」は、介護施設や介護事業所がBCPを策定するメリットです。例えば、BCP策定にあたり、コンサルタント会社を利用した場合や、設備投資などに対して、補助金や助成金制度が適用されるかもしれません。

これらの制度は、自治体によって異なるものの、BCPに関連する補助金や助成金制度は充実していることを知っておきましょう。

ワクチン接種の優先権

介護施設や介護事業所がBCPを策定するメリットには「ワクチン接種の優先権」があります。万が一、感染症が拡大し、なおかつワクチン接種が急がれるような場合、BCP対策を済ませている介護事業所には優先的なワクチン配布が実施されることが法律で規定されています。

参考:新型インフルエンザ等対策特別措置法(特定接種)第二十八条

BCPが義務化された介護事業所の種類

2024年4月1日からBCPが義務化される介護施設や介護事業所には、様々な種類がありますが、以下の種類が対象です。

・入所系介護サービス
・通所系介護サービス
・訪問系介護サービス

入所系介護サービス

「入所系介護サービス」とは、一般的には特別養護老人ホームや介護老人福祉施設などが該当しますが、これらの事業を展開している場合は、BCP義務化の対象です。

具体的には、非常事態において、インフラが停止した場合などに備える必要があり、BCPを策定する際には、その内容は多岐に及ぶでしょう。

通所系介護サービス

「通所系介護サービス」は、いわゆる老人デイケアセンターと呼ばれるもので、要介護認定を受けた人が利用しますが、これもBCP策定が義務付けられます。

BCP策定においては、非常時にあっても、利用する施設が正常に機能することや、送迎に対する対処なども考慮する必要があります。

訪問系介護サービス

「訪問系介護サービス」とは、介護福祉士らが利用者の自宅を訪問し、サービスを提供するタイプですが、こちらも例外なくBCP策定が義務付けられます。

例えば、非常時に誰がどのようにして訪問しサービスを継続するかなど、人的リソースに対する備えなどをしっかり準備する必要があるでしょう。

介護施設や介護事業所におけるBCPは2つ

介護施設や介護事業所などが策定しなければならないBCPは、ガイドラインによって以下2つを軸にして策定することが求められています。

・新型コロナウイルス感染症対策
・自然災害対策

介護施設や介護事業所では、人命に直結しやすい新型コロナウイルスをはじめとする感染症に対する備えが重要であることから「感染症対策のBCP」と「自然災害のBCP」2つの準備が必要です。

また、ガイドラインのひな形は、入所系、通所系、そして訪問系の3つが用意されているため、それぞれガイドラインに沿ってBCPを策定する必要があることを覚えておきましょう。

参考:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修、厚生労働省

介護事業所の感染症におけるBCP対策

介護施設や介護事業所に対して義務化されているBCP策定のひとつ目が「感染症」のBCPです。

厚生労働省のガイドラインによると、感染症に対するBCPのポイントは以下の3つです。

・情報を正確に入手し、その都度、的確に判断をしていくことが重要
・業務継続は、主にヒトのやりくりの問題
・感染防止策が重要

ガイドライン(P.5)で上記のポイントが解説されていますが、要約すると、正確な情報を入手し、人員と物資の確保、そしてさらなる感染拡大を抑えるためのルールを確立することと言えます。

感染症に関するBCPは、自然災害のBCPと比較して「被害の対象(人であり建物ではない)」や「被害の期間(長期化する恐れがある)」が違うため、それぞれ独立したBCPの策定が求められていることを理解しましょう。

参考:介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン

介護事業所の自然災害におけるBCP対策

介護施設や介護事業所が策定しなければいけないBCPのもうひとつが「自然災害」のBCPです。

ガイドライン(P.7)では、以下の4つをポイントとして挙げています。

・正確な情報集約と判断ができる体制を構築
・自然災害対策を「事前の対策」と「被災時の対策」に分けて、同時にその対策を準備
・業務の優先順位の整理
・計画を実行できるよう普段からの周知・研修、訓練

上記のBCP策定のポイントを理解することも重要ですが、その根底には「サービスの継続」「利用者の安全確保」「職員の安全確保」そして「地域への貢献」があることも知っておきましょう。

参考:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン

介護事業所が知っておきたいBCP関連の補助金や助成金制度

介護施設や介護事業所はBCP策定が義務付けられていますが、費用の捻出が懸念点になる場合も多いことでしょう。

BCPの策定にあたり、以下のような補助金や助成金制度があることを知っておくと役立ちます。

・BCP実践促進助成金(東京都)
・介護施設等における感染拡大防止対策に係る支援
・地域介護・福祉空間整備等設備整備交付金
・地域医療介護総合確保基金

これらは、BCP策定の際に広く活用されている補助金の一例です。具体的には、施設の改修費や換気設備の設置、スプリンクラー設備の設置、非常用電源の設置で活用できる可能性があります。

詳細は自治体によって異なりますが、介護施設や介護事業所のBCP策定は、補助金や助成金制度を活用しやすいことを知っておきましょう。

まとめ

介護施設や介護事業所では、2024年4月1日からBCPが義務化されます。BCPの策定には、人や時間といった入念な準備を要しますので、早めに行動することをおすすめします。

リスクマネジメントや防災管理の一環として、消防点検のプロに相談するのもよいでしょう。

 

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