消防点検コラム

消防法

2023.02.22

特定一階段等防火対象物とは?消防法や避難器具を解説

みなさんは「特定一階段等防火対象物」という用語を聞いたことはありませんか?

特定一階段等防火対象物とは、消防法で定められている基準のひとつで、この基準に該当する建物の場合は、安全のために必要な様々な厳しい要件が課せられます。

一方、特定一階段等防火対象物については条文が難解複雑であることから、理解が難しいとされています。

そこでこの記事では、特定一階段等防火対象物について、消防法をはじめ、該当するケースや影響、そして例外などについて初心者にもわかりやすく解説します。

特定一階段等防火対象物とは

特定一階段等防火対象物とは、地階または3階以上の階に特定用途があり、そこから避難階までに通じる階段がひとつしかない建物のことです。

特定一階段等防火対象物は「特一(とくいち)」や「特定一階段」などと省略されて表現されることもありますが、基本的には同じ意味で使われています。

特定一階段等防火対象物をごく簡単に言うならば「不特定多数の人が集まりやすい飲食店やホテルといったフロアが地上から離れており、また避難するための階段がひとつしかない」ものと言えます。

この制度は、不特定多数の人が火災発生時に避難するのが困難になる可能性があり、かつ甚大な被害が想定されるケースを考慮しています。

例えば、3階に飲食店があると仮定した場合、この飲食店で避難が必要な火災が発生すると、室内階段がひとつだと逃げ遅れたり、混乱が生じたりして被害が拡大する可能性があります。

このような事態を想定した制度であり、特定一階段等防火対象物に該当する建物は通常よりも厳しい要件が義務化されます。

そのため、建物管理者や防災管理者は、特定一階段等防火対象物に該当するか否かを理解したうえで、消防用設備点検や防火対象物定期点検といった消防点検全般に備える必要があります。

特定用途とは

特定一階段等防火対象物について理解するのに、前提となるのが「特定用途」を把握することです。

特定用途は、消防法施行令別表第一で規定されており、以下のものが該当します。

劇場、集会場、キヤバレー・ナイトクラブ、遊技場・ダンスホール、性風俗店舗、カラオケ・個室ビデオボックス、料理屋(割烹・料亭など)、飲食店、百貨店・物品販売店舗、ホテル・旅館、病院、老人短期入所施設、老人デイサービスセンター、保育所、特別支援学校、幼稚園、蒸気浴場・サウナ、複合用途(特定用途が入居)雑居ビル、地下街

特定用途に該当する建物や用途は共通して「不特定多数の人が集まりやすい」そして「火災発生時に甚大な被害が想定される」ということです。

もし、上記の特定用途いずれかに該当する場合は、特定一階段等防火対象物に該当する可能性があると言えます。

参考:消防法施行令別表第一

特定一階段等防火対象物の消防法

特定一階段等防火対象物について、消防法では以下のように定められています。

消則23条4項7号へ 特定一階段等防火対象物

“当該階段及び傾斜路のうち、令別表第1(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が令第4条の2の2第2号に規定する避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段及び傾斜路の総数が2(当該階段及び傾斜路が屋外に設けられ、又は第4条の2の3に規定する避難上有効な構造を有する場合にあっては、1)以上設けられていないもの(小規模特定用途複合防火対象物を除く。)”

消令4条の2の2第2号

“別表第1(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階(建築基準法施行令第13条第1号に規定する避難階をいう。以下同じ。)以外の階(1階及び2階を除くものとし、総務省令で定める避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分が存する場合にあっては、その区画された部分とする。以下この号、第21条第1項第7号、第35条第1項第4号及び第36条第2項第3号において「避難階以外の階」という。)に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段(建築基準法施行令第26条に規定する傾斜路を含む。以下同じ。)が2(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあっては、1)以上設けられていないもの”

このように、特定一階段等防火対象物は非常に複雑な表現かつ理解に難しい条文です。改正時の責任者だった東京理科大学大学院国際火災科学研究科教授の小林恭一氏は、同条文の解説のなかで「タイムリミットに追われるギリギリの状況だった」と、表現の難解さを招いた事情を説明そして反省しています。

特定一階段等防火対象物については、条文から読み取ることが難しいため、要点を押さえて理解することが求められます。

引用:消防法施行規則もう少し知りたい防火法令の基礎知識

特定一階段等防火対象物が規定された背景

特定一階段等防火対象物が規定された背景には、2001年に起きた新宿歌舞伎町ビル火災(44人が死亡)があります。

この火災では、雑居ビル内に避難用階段がひとつしかなかったことや、その階段に障害物が置いてあったことなどが被害を大きくした原因とされました。

不特定多数の人が集まりやすい建物においては、ひとつの階段だけでは避難できない、または被害が大きくなる可能性があるため、特定一階段等防火対象物の制度により、通常よりも厳しい要件で被害を抑える工夫がとられたという訳です。

特定一階段等防火対象物に該当するケース

特定一階段等防火対象物に該当するケースは以下の通りです。

・地下階または3階以上の階に特定用途があり、屋内階段が1系統のみ
・屋内階段が2系統あったとしても、開口部がない区画壁が設置されている
・単体用途が非特定用途であったとしても、主たる用途が特定用途に該当する

注意すべきポイントは、屋内階段が2系統あったとしても、開口部がない区画壁が設置されているケースです。

建物内に開口部がない区画壁(往来できないような壁)で区切られていると、例え階段が2系統あっても特定一階段等防火対象物に該当します。(実質的に1系統しか使えないとみなされる)

他にも、単体用途が非特定用途に該当する場合(倉庫など)、それが飲食店や物販店が使う倉庫だとすると、特定用途としてみなされ、特定一階段等防火対象物に該当します。

特定用途に付随する倉庫や事務所などは注意が必要です。該当するか否かは、自己判断ではなく必ず管轄の消防署に相談してください。

特定一階段等防火対象物に該当しない例外ケース

特定一階段等防火対象物に該当しない例外は以下の通りです。

・避難階に通じる屋外階段が設置されている
・屋内避難階段が開口面積2平方メートル以上
・消防庁長官が定める排煙上有効な開口部が設置されている

例外として知っておきたいポイントが「屋外階段の有無」です。建物に階段がひとつしかなくても、それが避難階へつながる屋外階段であれば、特定一階段等防火対象物の対象外になります。

例外についても、所轄の消防署に相談および確認のうえ、判断するようにしましょう。

特定一階段等防火対象物に該当すると生じる影響

特定一階段等防火対象物に該当する場合、以下のような影響を受けます。

・防火対象物定期点検報告が義務化
・再鳴動方式受信機(自動火災報知設備)の設置義務化
・煙感知器の設置基準強化
・避難器具の仕様基準強化

防火対象物定期点検報告が義務化

特定一階段等防火対象物は「防火対象物定期点検報告が義務化」されます。防火対象物定期点検報告とは、1年に1回の頻度で防火対象物点検資格者によって、防火管理上必要な業務(ソフト面)が基準に適合しているかを点検および報告する義務です。

再鳴動方式受信機(自動火災報知設備)の設置義務化

特定一階段等防火対象物は、自動火災報知設備の設置が義務化されますが、その際に受信機(火災信号を受信し、音響ベル等で報知する設備)は「再鳴動方式受信機」を用いなければいけません。(一般的には再鳴動方式受信機がデフォルトで設置されている)

再鳴動方式受信機とは、音響ベル等が鳴動した際、一時的に音響を止めたとしても、2分から8分経過後、再び音響ベルが自動的に鳴動する仕組みの為、より確実に火災の報知ができます。

煙感知器の設置基準強化

特定一階段等防火対象物に該当する場合は「煙感知器の設置基準強化」の対象です。具体的には、屋内階段に設置する煙感知器は垂直距離7.5メートル毎にひとつとなります。

通常の屋内階段の場合は垂直距離15メートル毎にひとつですから、単純に倍の煙感知器を設置する必要があります。

避難器具の仕様基準強化

特定一階段等防火対象物に該当する場合は「避難器具の仕様基準強化」にも対応しなければいけません。

特定一階段等防火対象物に設置する避難器具には、以下の条件が定められています。

・安全でかつ容易に避難できる構造のもの
・容易かつ確実に使用できる状態で設置されているもの
・「一動作」で容易かつ確実に使用できるもの(開口部を開く動作や保安蔵置を解除する動作を除く)

ポイントは「一動作で使用できる」という条件で、具体的には「一動作に対応した緩降機」が該当します。例として、避難はしごや救助袋、避難ロープ、避難橋、避難用タラップなどがあげられます。
一方で、避難用タラップは設置場所が限られることから、近年ではあまり見かけることがない避難器具のひとつです。

避難はしごとは、火災などが発生した際、建物の高層階から地上に避難するためのはしご型の設備です。立てかけはしごやつり下げはしご、固定はしごやフレームユニット型はしごなど、多様な形式があります。
マンションなどでは、階ごとのバルコニーに上下階と結ぶ避難はしごと、床面の避難用ハッチが設けられるのが一般的です。

せっかく避難設備を使用して避難しても、そこからの避難経路や避難ハッチなどの降下空間に何かしらの物品で妨害されていては避難できません。
日頃から避難経路には物を置かないようにしましょう。

まとめ

特定一階段等防火対象物は、理解がとても難しい法令です。しかし、この記事で紹介したようなポイントを押さえることでわかるようになります。

特定一階段等防火対象物に該当すると様々な規制が強化されますので、所轄の消防署や消防点検の際に消防設備士等のプロの見解を聞くようにし、火災時の安全に備えましょう。

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