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2023.01.27
消防法が遡及適用されるケースを知りたい!
消防法とは火災を未然に防いだり、発生しても被害を最小限に抑えるために定められている法律です。そのため、大きな事故があったり、時代に合わせて改正されています。
そして他の法律とは異なり、昔に建てた建物でも現行の基準が適用される場合があるんです。
今回はそんな消防法の遡及と該当する建物の条件などを解説していきます。
【目次】
1. 遡及とは?
2. 法改正された設備の追加の設置・工事が簡単な場合
3. 増改築や模様替えが大規模な場合
4. 守らなきゃだめなの?
5. まとめ
1. 遡及とは?
遡及とは過去に遡って言及するという意味で、法律を後から適用する場合によく使われます。
そして法律の遡及適用は、社会の安定と個人の利益侵害を犯す可能性があるため、原則として行うべきではないとされています。
しかしその中でも消防法は特殊で、遡及が適用されるケースがあるんです。
基本的には遡及適用されませんが、ある一定の条件を満たすと適用されます。
工事・作業が難しくないこと、ついでに作業がしやすいレベルの場合に遡及が適用されるイメージです。
それでは実際にどのような建物が該当するのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。
遡及にならない要件
まずは消防法が遡及適用されないケースを見ていきましょう。
下記の2ケースは基本的に消防法の遡及が適用されません。
・すでに完成している防火対象物
・工事中の防火対象物
新しい条文が施行もしくは適用されるタイミングで、すでに建っている防火対象物や工事中の防火対象物は基本的に遡及適用がされません。
つまり、法律が変わっているのにもかかわらず、新ルールに対応していない既存不適格建築物が発生します。
ですが、既存不適格建築物は不遡及なので、違反ではないということになります。
しかし、建築物の条件や、新しい法律のルールによっては消防法が遡及して適用される、例外のケースに当てはまる可能性があるんです。
遡及になる要件
消防法が遡及して適用されるケースは大別すると以下の3つです。
・設備の種類に準じて
・増改築や模様替えに応じて
・用途変更
それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。
2. 法改正された設備の追加の設置・工事が簡単な場合
消防設備のうち、後から設置したり工事したりするのが簡単なものに対して規定が改正された場合には、既存の防火対象物に設置されているものについても、新しい規定に合うように取り替えなければいけません。
消火器や避難器具などは設置が簡単なため、法改正に伴い取り替える必要があります。
その中でも、自火報やガス漏れ火災警報装置に関連した法改正が行われた場合は特定防火対象物のみ遡及対象となります。
特定防火対象物には、病院やショッピングセンターというような、いろんな人が出入りしたり、避難が困難な人が利用する施設が該当します。
法律では以下のものが該当します。
・簡易消火用具
・自動火災報知設備※特定防火対象物のみ
・ガス漏れ火災警報設備※特定防火対象物のみ
・漏電火災警報器
・常警報器具及び非常警報設備
・誘導灯及び誘導標識
・必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等であって、消火器、避難器具及び消防用設備等に類するものとして消防庁長官が定めるもの
3. 増改築や模様替えが大規模な場合
建物を増改築したり模様替えの程度によっては建物の改築と合わせて消防設備も現代のルールに即したものに変更しなければいけない可能性があります。
また、不幸なことに、良かれと思って任意設置の消防設備を設置していたら、いつの間にか法改正がされていて取り除くことができなくなる可能性もあります。
以下で詳しく見ていきましょう。
たまたま適合していたり任意設置の設備に関して法改正が行われた場合。
法改正中に工事をしていた、不遡及の条件を満たしている建物でも、設置しようとしている消防用設備が新しい規定に適合していると新しい規定に準じなければいけません。
つまり、設備工事の際には何も問題がありませんが、修理したり交換する際にも新しい法律を適用しなければいけないということになります。
設置しようとしていた消防設備が偶然新しい法改正に適合してしまった場合は、修理・交換をする際に注意が必要です。
これは任意で設置していた設備に関しても同様で、法改正により義務設置となった場合、どんな理由であっても取り外すことはできません。
法改正以前は任意設置のため取り外すのも問題がありませんでしたが、改正され、設置が義務付けられたので取り外すことはできなくなってしまいます。
今は任意設置だからとりあえずつけておいて様子見しようと考えていると、いつの間にか取り返しのつかないことになるかもしれませんよ。
増改築の場合
大規模な増改築や改修をおこなう場合は、程度によっては遡及適用されてしまうかもしれません。
例えば、A地区にあるとある学校は、法改正に伴い、既存不適格建築物になっていましたが、違法建築でもなかったため、そのまま運営されていました。
しかしこのたび、設備の老朽化に伴い大規模な改築を行うことにしました。
この場合は、改築に伴い、法改正後の新しいルールに則って消防用設備なども設置・工事する必要があります。
法律で定められている増改築は以下のような条件の場合です。
・延べ床面積が1000㎡以上の増改築
・延べ面積の2分の1以上の増改築
加えて、主要構造部である壁の過半の修繕または模様替えを行う場合も同様です。
せっかく大規模な工事をするなら消防設備も一緒に新しいルールに合わせてねということのようです。
工事の際には必ず所轄消防署に相談をして、法改正に準じる必要のある増改築に当たるのか確認をしておきましょう。
特定防火対象物の場合
該当の建物が特定防火対象物の場合は、法改正が行われるたびに新しい規定が適用されます。
たとえ工事中であっても新しい規定が適用されるので、設計変更や図面の変更など大変な作業となるでしょう。
特定防火対象物とは不特定多数の人や避難が困難な人が利用する施設のことで、火災発生時の事故発生率がそのほかの建築物よりも大きくなりがちです。
そのため、特定防火対象物は常に法改正に適合する必要があると判断されています。
これはまさに、現実の事例により消防法が改正された例の一つで、1972年に発生し、1000人以上の死者を出してしまったデパートの火災などを踏まえて、特定防火対象物も遡及対象になるという規定が追加されました。
施工する側としては大変なルールですが、このデパート火災が日本の最大のビル火災と呼ばれていることこそ、消防法の改正が役に立っている証拠ではないでしょうか。
従来の規定に元々違反している場合
いわゆる違法建築物がこれに該当します。
違法建築を是正するタイミングで適用される消防法は現在の最新ルールになるということです。
通常の建築済みの防火対象物であれば、遡及禁止のため現行の消防法に従う必要はありません。
しかしもともと消防法を守っていない建物にはそのルールは適用されません。
もともと違反している建物に慈悲はないのです。
用途変更する場合
建物の用途変更が行われた場合も、何から何に変えたかで遡及する・しないが変わってきます。
大まかに解説すると変更後の用途が非特定防火対象物の場合のみ、特例として用途変更前の基準で運用してよいとなっています。
特定防火対象物から非特定防火対象物に用途を変更した場合は特例で遡及しませんが、反対に、非特定防火対象物から特定防火対象物になった場合は、そもそも特定防火対象物が遡及対象なので消防法の遡及が行われることになります。
こちらも、消防法の遡及対象になっているかどうかについては必ず所轄消防署などで確認をしてください。
4. 守らなきゃだめなの?
ここまでで消防法の遡及について見てきました。
違法建築以外は、これまでの消防法に則って消防設備等の施工を行っていたわけです。
本当に新しいルールを守らないといけないのでしょうか。
もちろん守らなければいけません。
消防法も守らなかった場合、30万円以下の罰金か拘留をされる場合があります。
時代や技術に合わせて適切なルールへとアップデートしているからこそ法改正がされるんです。
消防設備は特に人命の救助にとても役立つ災害時の要といってもいい存在です。
そのため最新のルールに合わせて設備を更新していくことが重要です。
5. まとめ
このように通常の法律では遡及しませんが、消防法では遡及をして、昔の建物でも現在のルールに乗っ取らなければいけない場合があります。
基本的にすでに建っている防火対象物や法改正前に工事を始めていた建物に関しては、消防法の遡及適用は行われません。
遡及適用外の建物でも、特定の条件に該当している場合は遡及対象となるので注意が必要です。
しかし、不特定多数の人が利用する特定防火対象物は、たとえ昔の建物であっても建築途中であっても、新しい基準に即した消防設備などを整備しなければいけません。
消防法の遡及は、人命や資産保護に対して現行の法律の方がふさわしいという場合に適用されるイメージです。
日々しっかりと法改正の情報などもチェックして作業に当たる事が重要です。
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