COLUMN
2023.05.31
令8区画について図解がなくても分かるポイントを解説
消防法に触れる機会が多い人が頻繁に目にするであろう言葉のひとつに「令8区画(れいはちくかく)」というものがあります。
令8区画は消防法施行令第8条で定められている防火区画のことで、省略して「令8区画」と呼ばれています。
令8区画については、その規定を理解することが難しいとされている一方で、正しく理解しないと消防用設備の導入にも影響するため、しっかり理解することが求められる重要なポイントです。
そこでこの記事では、令8区画について図解がなくても理解できるよう、消防点検のプロが初心者にもわかりやすくポイントを解説します。
令8区画とは
令8区画とは、消防法施行令第8条の規定に基づき、防火対象物内の区画された一部分を別の防火対象物としてみなすことが可能になる規定の通称です。
例えば、事務所と倉庫が並んで同一階にあるような場合、事務所と倉庫を区切る壁が消防法施行令第8条に準じていれば、事務所と倉庫を「別の防火対象物」として扱うことが可能になります。
「別の防火対象物」としてみなされるということは、同じビル内であっても対象となる区画に応じた消防法が適用されることになります。
この結果、ビル全体に適用される消防法ではなく、その対象区画に応じた消防法が適用されるため、消防用設備が簡素化されたり、消防用設備を設置しなくてもよくなったりする可能性があります。
つまり、令8区画は消防法の規制緩和が受けられる可能性があると言えます。このことから、複合ビルをはじめとする、様々な使用用途のテナントが入居するビルでは、令8区画に該当するか否かによって、消防用設備導入にかかる費用や、消防点検の負担が大きく変わるかもしれません。
一方で、令8区画として認められるためには、消防法で規定されている厳しい条件を満たす必要があり、簡単に令8区画を用意することはできません。
また、令8区画に関する規定はパターンが多いだけでなく、どのような場合なら問題ないのかといった判断が難しいとされており、初めのうちは図解を使った説明でも理解しにくいかもしれません。
令8区画を正しく理解するためには、まずは令8区画に関する条文をはじめ、令8区画の構造、そして防火区画の種類など、基礎知識を身に付けることが大切です。
令8区画に関する消防法の条文
令8区画について図解がなくとも理解できるようになるには、消防法施行令第8条で以下のように定められている条文のポイントを押さえましょう。
“防火対象物が開口部のない耐火構造(建築基準法第二条第七号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)の床又は壁で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす。”
この条文をわかりやすく言い換えると「窓や出入口など(開口部)がなく、床や壁が2時間以上耐える耐火構造の場合は、それぞれ別の防火対象物としてみなす」となります。
この条文を理解するうえで、多くの人にとって気になる部分が「開口部」でしょう。この場合における開口部とは、建物の床や壁に、採光、通風、換気に使う窓をはじめ、人が使う出入口などのことを指しています。
つまり、実質的には耐火構造で覆われた「穴がない壁」のような状態でなければ、令8区画として認められないという訳です。
令8区画に関する条文で最も大切なポイントは「開口部がない耐火構造の床や壁」という部分です。
引用:消防法施行令第八条
令8区画の構造
令8区画を図解で理解する前に、令8区画の構造に求められる条件を把握することをおすすめします。
令8区画の構造については、以下のような規定があります。
1.鉄筋コンクリート造(RC)、鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC)、これらと同等以上の堅牢かつ容易に変更できない耐火構造であること
2.通常火災で生じる加熱に2時間以上の耐火性能があること
3.令8区画の床や壁の両端または上部は、防火対象物の外壁面または屋根面から50センチメートル以上の「突き出し」を有していること。ただし、令8区画を設けた部分の外壁面または屋根面が、令8区画を含む幅3.6メートル以上に渡って耐火構造であり、なおかつ以下2つのいずれかに該当する場合は「突き出し」は不要。
・開口部がない
・開口部がある場合は、令8区画を介して90センチメートル以上離れており、なおかつ開口部は防火戸であること令8区画の構造を理解するポイントのひとつが「突き出し」です。突き出しは、建物内を仕切る(区画)ための耐火構造の壁が、建物の外部(外壁および屋根)に50センチ以上突き出していなければいけないことを指しています。突き出しを設けない場合は、幅3.6メートル以上にわたって、開口部がない耐火構造で仕切る必要があります。また、3.6メートル以上耐火構造で仕切ったうえで、網入りガラスや防火戸といった防火設備を使用し、なおかつ開口部同士を90センチ以上離すことで窓が取りつけられるようになります。
なぜ令8区画が用いられるのか
令8区画が用いられる理由についても合わせて理解しておくことをおすすめします。令8区画が用いられる理由は、主に以下ふたつです。
消防用設備の簡素化
現実的な事情
上記についてそれぞれ解説します。
消防用設備の簡素化
令8区画が用いられる理由のひとつが「消防用設備の簡素化」です。先述したように、令8区画として認められれば、それぞれを別の防火対象物としてみなすことが可能になります。
消防法では「建物の延べ面積」などで必要な消防用設備が変わるため、防火対象物の延べ面積が小さければ、消防用設備の設置義務から外れる可能性が上がります。
この結果、消防用設備の購入費用や消防点検にかかる手間やコストなどが簡素化できるという訳です。
現実的な事情
令8区画が用いられる理由には「現実的な事情」もあります。具体的には、ひとつのビルの中で、事務所や住居、さらにコンビニや医療機関などが混在するとき、そのビル全体に対してひとつの消防法を適用させることは、現実的ではない場合があります。
このような場合、1階と2階を令8区画で区切って、1階部分にコンビニと医療機関、そして2階以上に事務所や住居とすれば、令8区画によってひとつのビルでありながら「1階部分」と「2階以上」というように別々の防火対象物としてみなされます。
この結果、先述したように消防用設備の設置義務が大きく変わることも考えられるのです。
令8区画の配管および貫通部について
令8区画を理解するうえで重要なポイントとなるのが「令8区画を貫通する配管と貫通部の処理」についてです。
令8区画は、原則として配管が貫通することは認められません。そもそも、令8区画は「開口部がない耐火構造の床や壁」であることから、そこを配管が貫通していると防火区画としての意味をなさないことになります。
しかし、必要不可欠とされる「給排水管」については、条件を満たした場合に限り例外として認められています。
令8区画における給排水管は以下の条件を満たしていなければいけませんので、覚えておくことをおすすめします。
・認められるのは原則として給水配管のみ(付属する通気管を含む)
・鋼管、鋳鉄管、繊維強化モルタルなどで外装を被覆した塩ビ管(外装被覆のない塩ビ管は不可)
・配管の呼び径は200ミリメートル以下
・貫通穴の直径は300ミリメートル以下
・貫通穴の相互離隔距離は、貫通する穴の直径が大きい方の直径以上を確保すること
・配管および貫通部は火災時の加熱に2時間以上耐えられる性能を有すること
・貫通部はモルタル等の不燃材料を使い、完全に気密できるように施行すること
・熱伝導で配管表面に可燃物が接触した場合に発火するような事態に備え、可燃物が配管の表面に接触しないよう措置をとること
このように、令8区画の配管や貫通部については、給排水管だけに限定されていることをはじめ、素材や施工法などについても非常に厳しい条件が定められています。
なお、令8区画では電気やガスなどのために用いる配管は、いかなる措置をとったとしても貫通させることはできませんので注意しましょう。
消防法における区画の種類
令8区画の理解を深めるためには「区画(防火区画)」の種類についても知っておくとよいでしょう。
防火区画は以下4つの種類があります。
・面積区画
・高層区画
・竪穴区画
・異種用途区画
面積区画
面積区画とは、一定の面積で区切る区画のことです。建築基準法施行令によって、延床面積や耐火建築物の構造など様々な条件が規定されています。
面積区画は、主に火災発生時における水平方向の延焼を防ぐことを目的にしています。
高層区画
高層区画とは、11階建て以上の高層建築物が対象で、火災発生時にはしご車による消火活動が難しい場合を想定しています。
高層区画は面積区画よりも狭い延床面積が適用され、万が一の時でも可能な限り狭い範囲で火災を留めることを目的にして設定されています。
竪穴区画
竪穴区画とは、階段やエレベーター、建物内の吹き抜けといった「階をまたいで煙や炎が拡散しやすい場所」に適用される区画のことです。
垂直方向に空間が広がるような場所は、煙の伝搬経路になりやすいため竪穴区画の基準が設けられています。
異種用途区画
異種用途区画とは、ひとつの防火対象物内に異なる用途が混在しているような場合を想定して設けられています。
建築基準法27条における一定の規模と用途(例:劇場や映画館で主階が1階にないもの等)に該当する場合において、他の用途との間に設けなければいけない区画のことを指しています。
このように、区画は「火災被害を一定範囲内で留めること」を目的にしているのを忘れないでください。
まとめ
令8区画は図解を使って理解することも大切ですが、条文や規定をよく読むことも忘れないようにしましょう。
また、令8区画を巡っては、所轄の消防署と見解が異なることが起こりやすいため、消防点検のプロに相談することをおすすめします。
消防設備点検なら全国消防点検.comまで
全国消防点検.comでは消防設備点検のご相談を承っております。
「古い建物でいつ設置されたものかわからない・・・」
「消防設備についてよくわからないし、点検もしているのかな?」
などなど、些細なことでもご相談を承っております。
消防点検に限らず、様々な設置や点検等も承っており、
依頼する業者をまとめたい、点検類をまとめて依頼したいなど幅広くご相談が可能です
まずはご相談だけでも大歓迎です!
どうぞお気軽にお問い合わせください。