火災報知器設備
2023.04.26
マンションで火災報知器が誤作動を起こす6つの原因
消防庁によると、火災死者の7割は住宅で発生しています。火災発生の初期段階に気づき逃げ遅れを防止するため、消防法の改正で、火災警報知器が設置が義務付けられています。
また、消防庁が住宅火災における被害状況を分析したところ、住宅火災警報器が設置されている場合は、設置されていない場合に比べ、死者数と損害額は半減、焼損床面積は約6割減した結果となりました。
ですが、誤作動が頻繁に起こることや、火災報知器が鳴ったらどうすればいいのかわからない、さらには火災報知器の止め方がわからず困ったということも起こりやすいようです。
そこでこの記事では「マンションの火災報知器」について、なぜ誤作動が頻発するのかや、火災報知器が鳴った場合の対応方法などについて解説します。
マンションの火災報知器の仕組み
まず、住宅用火災警報器と火災報知器の違いを説明しますと、一般的に住宅に取り付けられ、火災時の煙や熱を検知して本体自体が音声やブザーで知らせるのが住宅用火災警報器、マンションやビル等に設置して、火災時の煙や熱を検知して受信器という総合盤に情報が送られ、建物各所に設置しているベルや音声(スピーカー)で火災を知らせる建物によって取り付けるのが火災報知器です。火災報知器は自動火災報知設備とも呼ばれています。
多くのマンションには火災報知器(自動火災報知設備)が設置してあります。マンションでは、寝室や、共有廊下などに設置してあると思います。他にも各市町村の火災予防条例により、台所等にも設置が必要な地域があります。
マンションをはじめとする建物において、火災報知器が誤作動を起こすケースのほとんどは「感知器が作動した」ことを意味します。
マンションの火災報知器が誤作動を起こす6つの原因
マンションの火災報知器を巡っては「誤作動」が最も身近な問題と言われています。マンションの火災報知器が誤作動を起こす主な原因は以下の6つです。
・感知器の老朽化
・異物混入
・エアコンによる温度差
・衝撃による破損
・水漏れや結露
・気圧の変化
上記の原因についてそれぞれ解説します。
感知器の老朽化
マンションの火災報知器が誤作動を起こす原因として「感知器の老朽化」が挙げられます。一般的に、マンションに設置される感知器の製品寿命や耐久年数は「10年」です。
10年を超えた場合、感知器が電池切れになっていたり、感知器内部の配線が損傷(錆など)していたりする可能性が生じます。
老朽化によって最も起こりやすいのが、長年にわたる埃の蓄積です。感知器内部の温度上昇を感知する熱感知器などに設けてある「リーク孔(空気を逃がす穴)」に埃が蓄積すると、わずかな温度上昇や煙によって感知器が作動し、結果的に誤作動を引き起こしてしまうので、交換が必要になります。
異物混入
マンションの火災報知器が誤作動を起こす原因には「異物混入」もあります。具体例には、感知器内部に羽虫や蜘蛛といった小さな昆虫が入り込むといったことが挙げられます。
他にも、バルサンなどをはじめとする燻煙式の殺虫剤、リフォーム工事などの室内工事をした際の粉塵なども異物混入の要因になり得ます。
異物混入は感知器の使用年数に関係なく起こることもあるため、マンション居住者として日頃から注意しなければいけないポイントです。
エアコンによる温度差
「エアコンによる温度差」もマンションで火災警報器が誤作動を起こす原因です。マンションに設置してある火災警報器の種類には「差動式スポット型熱感知器(詳細は後述)」というものがあり、温度差で作動するものがあります。
例えば、エアコンからの温風が感知器に直接当たるような状況にある場合、感知器が温度差を検知して作動してしまうかもしれません。
このような事態を防ぐために、感知器の設置基準としてエアコンから1.5メートルの距離を開ける必要がありますが、大型タンスや荷物の置き方によっては温風が感知器に流れ込むことも考えられます。
ちなみに、エアコン以外でも、送風機能が付いている家電製品全般で同様のことが起こる可能性がありますので、感知器の誤作動を防ぐためにも置き方に気を付けるようにしてください。
衝撃による破損
マンションの火災報知器が誤作動を起こす原因として「衝撃による破損」もあります。例えば、引越し作業や模様替え、掃除などの際に、何らかの形で感知器に物をぶつけてしまうことが考えられます。
他にも、子どもがおもちゃなどで遊んでいる際に感知器にぶつけてしまって、感知器が変形し、感知器内部に熱がこもりやすくなり、結果として誤作動を起こすことがあります。
破損したままにしていると、思わぬ形で作動してしまうことがあるので注意しなければいけません。
水漏れや結露
「水漏れや結露」もマンションの火災報知器が誤作動を起こす原因です。具体的には、上の階から水が漏れてきて感知器がショートしてしまった結果、誤作動が起きてしまうことがあります。
また、煙感知器内においては、結露が生じることにより水蒸気が発生し、誤作動を起こすことも考えられます。
マンションは不特定多数の人が生活しているため、自分だけが気を付けていても上階などの住人が原因となる可能性があることを忘れてはいけません。
気圧の変化
マンションの火災報知器が誤作動を起こす原因には「気圧の変化」も挙げられます。最も考えられるケースは、台風などの低気圧が発生することです。
台風などが近づくと大気圧が低下し、感知器内部の空気が膨張してしまいます。この結果、感知器が誤作動を起こしてしまう仕組みです。
このようなケースは稀ではあるものの、使用年数が10年を超えているような古い感知器ほど気圧の変化を受けてしまうかもしれません。
マンションに設置してある感知器の種類
マンションで火災報知器が誤作動を起こす起点となるのが「感知器の作動」ということが分かったと思います。
感知器には「熱感知器」「煙感知器」「炎感知器」の3種類があることを知っておきましょう。3つの感知器について解説します。
熱感知器
マンションの火災報知器として設置してある代表的な物が「熱感知器」です。熱感知器には「差動式スポット型熱感知器」と「定温式スポット型熱感知器」があります。
差動式スポット型熱感知器が作動する仕組みは、感知器周辺の温度上昇変化に伴う空気膨張を利用しています。
これに対し、定温式スポット型熱感知器は、感知器内部が一定温度(70度など)に達した時点で作動します。
熱感知器はタバコや料理の煙などで作動することはありません。一方で、エアコンなどの温風が直接当たり続けたり、気圧の変化が生じたり、物理的な破損などが原因で誤作動を起こす可能性があります。
煙感知器
マンションの火災報知器では「煙感知器」が設置されていることもあります。煙感知器は「光電式スポット型煙感知器」が一般的で、煙が感知器内部に充満して光が遮られることで作動する仕組みです。
煙感知器は温度上昇や気圧の変化などで作動することはありません。その一方で、タバコや料理の煙、水蒸気、御香といった煙に反応しやすいため、室内環境によっては誤作動が起こりやすくなるかもしれません。
煙感知器はタバコ1本の煙程度では反応しないようリーク孔が設けられていますが、埃やチリなどでリーク孔が塞がっているとタバコでも反応し、誤作動を招く恐れがあります。
炎感知器
炎感知器は、マンションの火災報知器として使われるケースはほとんどありません。大型劇場や天井が高いコンサートホールなどで用いられる感知器で、炎から発せられる赤外線や紫外線の受光量の変化によって作動する仕組みです。
マンションで火災報知器が鳴るとどうなる?
マンションで火災警報器が作動するとどのようなことになるのか、あらかじめ知っておくと万が一の際でも冷静に対応できるようになるでしょう。
自動火災報知設備が設置してあるような大型マンション(11階以上のマンション等)では、感知器が作動すると非常ベルと同時に「発報放送」が流れます。
発報放送は、シグナル音に続いて、女性の声で「ただいま(○階で)火災感知器が作動しました。係員が確認しておりますので次の放送にご注意ください」と流れます。
火災発生が確定すると、シグナル音に続いて、男性の声で「火事です火事です(○階で)火災が発生しました。落ち着いて避難してください」という火災放送が流れます。
自動火災報知設備を設置していない小規模なマンションやアパートの場合「住宅用火災警報器」が作動します。
機器本体からブザー音やフラッシュライトなどにより火災発生を警報する仕組みです。
マンションの火災報知器を止めるには
マンションで火災報知器が誤作動を起こした場合、止めるのは管理人やビルオーナーといった防災管理者になることがほとんどです。
理由として、マンションのような大型居住施設は、管理人室や防災センター室などに火災報知設備の制御盤とも言える火災受信機が設置してあるためです。
誤作動だと確定しても、火災受信機を操作するまでは止めることはできません。従って、マンションで火災報知器が誤作動を起こした場合、待つしかないのが実情です。
一方、住宅用火災警報器などであれば住居者が「警報停止ボタン」を操作することで、警報を止められます。
マンションで火災報知器が誤作動を起こした時は、身の安全を最優先し、止めることよりも冷静に状況を把握するようにしましょう。
まとめ
誤作動を防ぐためには日常的に感知器の異常有無を確認するようにしましょう。住宅防火対策としてマンションでのルールや非常時対応マニュアルなどを確認することをおすすめします。
また、本当に火災を感知した時のためにも、住宅用消火器等を用意し、使い方を確認しておくとよいでしょう。
火災から大切な家族やあなた自身の命を守るためにも点検・交換を行いましょう。
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