消防点検コラム

COLUMN

2023.03.30

消防法における火災報知器の設置基準を解説

消防法では消防用設備の火災報知器の設置基準が定められていますが、設置基準を理解することはとても難しいとされています。

この理由には、火災報知器の設置基準は「延べ面積」「収容人数」「用途」など様々な条件が規定されている他、例外規則や自治体によって異なる火災予防条例などが絡むことがあります。

火災報知器は家族の命と財産を守り、近隣住民への被害防止に効果があるものです。
消防庁の分析では、住宅火災100件当たりの死者数は、住宅用火災警報器の設置がない場合は12.1人なのに対し、設置がある場合は6.1人。
そのほか、住宅用火災警報器を設置している場合は、損害額は半減、焼損床面積は6割減。火災発生時のリスクが大きく減少していると報告されています。

そこでこの記事では「火災報知器の設置基準が分からない」や「火災報知器の設置は義務なの?」といった疑問を少しでも解消するために、初心者でも最低限は知っておきたいことをまとめました。

火災報知器とは

火災報知器とは、感知器によって煙や熱などを感知し、音響ベルや放送によって周囲に火災発生を報知するための機器の総称です。(消防法では火災報知機)

火災報知器は特定の機器を指している訳ではありません。あくまでも、煙感知器や火災受信機、さらに非常用放送設備などをまとめた総称です。(消防法で火災報知機になっているのはこれが理由と思われる)

自動火災報知設備とは、熱感知器または煙感知器、中継器、火災受信機、表示灯、音響装置などで構成される複合的な消防用設備です。

自動火災報知設備が作動する仕組みとしては、熱感知器や煙感知器が異常を感知した際に火災信号を発信し、その信号を受け取った火災受信機(制御盤のような物)が、非常ベルや非常用放送をすべて自動的に作動させます。

従って、火災報知器(火災報知機)は基本的に自動火災報知設備のことと考えてよいでしょう。

火災報知器は消防法によって大きく3つの種類に分けられており、それぞれで設置基準が異なりますので、まずは火災報知器の種類について理解しましょう。

火災報知器の種類については次で解説します。

消防法における火災報知器の種類

消防法では火災報知器は以下3つの種類に大きく分けられています。

・自動火災報知設備
・特定小規模施設用自動火災報知設備
・住宅用火災警報器

上記3種類について以下で詳しく解説します。

自動火災報知設備

自動火災報知設備とは、先述したように、感知器や受信機、音響装置などで構成される複合的な消防用設備です。

その設置基準を巡っては非常に複雑な規定があるため、自動火災報知設備の設置基準を理解することは難しいのが実情です。

特定小規模施設用自動火災報知設備

特定小規模施設用自動火災報知設備(特小と略される)とは、自動火災報知設備の簡易的な物のことです。

特小は、無線式の火災感知器で本体内に音響装置が内蔵されており、ひとつが煙や熱を感知すると、他の感知器も連動して警報を発する仕組みです。

消防法では、300平方メートル未満の小規模施設で設置義務が規定されており、自動火災報知設備と比較して導入コストや維持、管理費などが大幅に圧縮される特徴があります。

住宅用火災警報器

住宅用火災警報器とは、自動火災報知設備や特定小規模施設用自動火災報知設備などが設置されない建物が対象になる警報器です。

基本的には一般住宅向けになっており、単体で作動する物もあれば、複数台が連動して作動する物などがあります。(消防法には仕様に関する規定はない)

住宅用火災警報器は設置義務があるものの、違反した際の罰則規定がないことが特徴で、実質的には任意による設置になっており、寝室や寝室につながる階段などに設置しなければいけません。

一方、各市町村によって異なる火災予防条例では「居室」にも設置義務を設けていることもあり、設置基準の理解が難しいことは否めません。

火災報知器と火災警報器の違い

消防法における火災報知器の設置基準を理解するうえで混乱しがちな点として「火災報知器と火災警報器の違い」があります。

火災報知器と火災警報器の違いは仕組みです。火災報知器(火災報知機)は煙感知器や火災受信機、音響装置などによって火災発生を報知する仕組み(これを自動火災報知設備という)であるのに対し、火災警報器は主に一般住宅に設置される、感知器と警報器が一体になった機器のことです。

火災警報器すなわち自動火災報知設備は建物の面積や用途などによって設置基準が細かく規定されているのに対し、火災警報器は一般住宅向けのため設置基準はそれほど厳しくありません。(火災予防条例も絡むため複雑ではある)

消防法における火災報知器の設置基準

火災警報器とは何かが理解できたところで「消防法における火災警報器の設置基準」について、先述した消防法で区分されている3種類の火災報知器ごとに解説します。

自動火災報知設備

消防法では自動火災報知設備は大まかに以下のような設置基準が規定されています。原則として「該当するすべての建物に対する設置基準」「通常の設置基準」そして「通常の設置基準の例外」といった3つの基準を軸にして構成されています。

また、それぞれの設置基準は「延べ面積」「収容人数」「用途」さらに市町村で異なる「火災予防条例」によっても変わります。

「該当するすべての建物に対する設置基準」としては以下のものがあります。

・11階以上の階

・カラオケボックス等

・避難に介助が必要な病院

・避難に介助が必要な有床診療所

・病院、有床診療所、無床診療所

・老人デイサービスなどで入居又は宿泊ができるもの

・航空機などの格納庫

・文化財

・特定一階段等防火対象物(屋内階段が1つしかなく、1階と2階以外の階に遊技場や飲食店、販売店舗等の特定用途部分がある建物)

上記に該当する建物については、例外なく自動火災報知設備の設置が義務付けられています。ただし、上記に該当しなおかつ建物の延べ面積が300平方メートル未満の場合は「特定小規模施設用自動火災報知設備」の設置基準が適用されます。

これらに共通することは「火災発生時に甚大な被害が想定される」ことで、最も厳しい設置基準と言えるでしょう。

次に、「通常の設置基準」として以下が挙げられます。

・300平方メートル以上の劇場、集会場、キャバレー、性風俗特殊営業、料理店、飲食店、物品販売、百貨店など
・500平方メートル以上の共同住宅、学校、図書館、一般浴場、工場、スタジオ、車両停車場、車庫、倉庫など

通常の設置基準は「延べ面積」と「建物の用途」によって設置基準が変わります。

そして、「通常の設置基準の例外」として以下があります。

・無窓階
・地階
・3階以上

上記いずれかに該当する場合は「延べ面積」の基準が小さくなります。言い換えれば、設置基準が厳しくなるということです。

自動火災報知設備の設置基準については上記で述べたような基準だけでなく、各市町村で異なる「火災予防条例」も考慮しなければいけないことを忘れないでください。

例えば、東京都や横浜市の場合、耐火構造・準耐火構造以外の共同住宅は200平方メートル以上で設置義務が生じますが、消防法では500平方メートル以上とあり、大きな違いがあります。

つまり、消防法に沿っていたとしても火災予防条例に沿っていないという矛盾が生じ、消防点検の際に指導を受ける可能性があります。

参考:火災警報設備等に関する主な規定について

特定小規模施設用自動火災報知設備

消防法では特定小規模施設用自動火災報知設備の設置基準として以下が規定されています。

300平方メートル未満のカラオケボックス、個室ビデオなどの個室サービス、旅館、ホテル、避難のために介助が必要になる病院、有床診療所、助産所、老人短期入所施設、老人デイサービス、厚生施設、保育所で入居、宿泊させるもの

上記は、自動火災報知設備を設置するには小規模で、なおかつ不特定多数の人が集まりやすい用途の建物ということが分かると思います。

参考:特定小規模施設用自動火災報知設備の設置基準の検討について

住宅用火災警報器

消防法において住宅用火災警報器の設置基準は義務付けられています。改正消防法により、2006年以降の新築住宅が対象になった後、2011年以降は全市町村で設置が義務付けられました。

具体的には、寝室や階段、台所、居間などが対象で、各市町村の火災予防条例によって設置基準は異なります。

現在、火災報知器はすべての住宅に設置されることになっていますが、設置の有無についての報告義務も、設置していない場合の罰則もありません。
そのため、実際は全ての住宅に設置されているわけではなく、総務省消防庁の住宅用火災警報器の設置状況等の調査結果では、2023年6月時点、一般住宅(戸建て、アパート、マンション)での設置率は84.3%です。

参考:消防法第九条の二

まとめ

消防法による火災報知器の設置基準は非常に複雑です。設置基準を巡っては、消防法の理解に加えて各市町村で異なる火災予防条例の理解も求められます。

このことは、専門知識や経験がない人にとっては困難であり、プロに相談すべきことです。火災報知器の設置基準を確認したい場合は、消防法や火災予防条例に精通している消防点検のプロや専門家に相談することを強くおすすめします。

また、消防用設備の点検および報告義務は、消防法 第17条3の3で定められています。これによると、点検・報告の義務を負うのは防火対象物の「関係者」です。
一般的に点検の実施や費用負担の義務は「管理権原者」にあるとされています。
所轄の消防署や行政にも確認し、消防点検の際に指摘や指導を受けないよう入念に準備しましょう。

 

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