消防用設備
2023.02.22
防火設備の「防火戸連動用感知器」の設置基準などを解説
煙の感知によって連動して防火戸を閉めるためには「防火戸連動用感知器」と呼ばれる感知器の設置が欠かせません。
防火戸連動用感知器は、名称では感知器単体を指していますが、実質的には防火戸や防火シャッターといった消防設備とセットで機能するものです。
この記事では、防火戸連動用感知器について、仕組みや構成、さらには設置基準などについてわかりやすく解説します。
防火戸連動用感知器とは
防火戸連動用感知器は、火災発生時に生じる煙を感知して火災信号を発すると同時に、自動的に防火戸や防火シャッターを閉め、防火区画および防煙区画を形成することを目的にしています。
わかりやすく言うと「火災時の炎や煙を一定区画で留めるための設備」となるでしょう。また、動作は煙感知器の作動と連動しているため、自動的であり、火災被害を最小限に食い止めることに役立ちます。
よくある勘違いとして、防火戸連動用感知器は自動火災報知設備のひとつというものがありますが、あくまでも「防火設備」に該当します。
防火設備は、火や煙が広がることを抑止するための設備であり、自動火災報知設備のような火災報知の役割はありません。
ただし、自動火災報知設備の受信機と連動しているケース(連動制御盤)がほとんどのため、実質的には同じ扱いであると言えます。(違いについては後述)
一方、防火戸連動用感知器が適切に作動するかなどについては、消防用設備点検や防火設備定期検査といった法令によって定められた点検対象のため、建物管理者や防災管理者は防火戸連動用感知器についても理解しておかなければいけません。
とりわけ、防火戸連動用感知器の構造や仕組み、設置基準は確実に理解しておきたいポイントと言えるでしょう。
仕組み
防火戸連動用感知器をはじめとする一連の動作の仕組みは、火災発生時に煙感知器が作動した際に発する火災信号が起点となり、受信機または制御盤が火災信号を受信することで防火戸などが作動するようになっています。
防火戸等が作動する仕組みそのものは至って単純ですが、作動の起点となるのが煙感知器であること、そして受信機または制御盤によって制御されている点がポイントと言えます。
作動までの流れ
防火戸連動用感知器が作動し、防火戸等が閉まる流れは以下の通りです。
1.煙感知器が作動する(火災信号を受信機または制御盤へ発信)
2.受信機または制御盤が防火戸などへ信号を発信
3.防火戸などが自動的に閉鎖する
費用
防火戸連動用感知器の新設や更新にかかる費用については、建物の規模や必要な新設設備などによって大きく異なるため、メーカーは価格を公表していません。
一般的には、光電式感知器(3種)がひとつ20,000円から40,000円程度、定温式スポット型感知器がひとつ10,000円から15,000円程度とされています。
仮に、防火戸や防火シャッター、さらには制御盤などを新設するとなると数百万円単位の費用がかかるでしょう。
防火戸連動用感知器等の構成
煙を感知して防火戸を連動して閉める防火戸連動用感知器周辺設備は、以下のようなもので構成されています。
・光電式スポット型煙感知器(3種)
・連動制御盤または火災受信機
・防火戸や防火シャッター
上記についてそれぞれ解説します。
光電式スポット型煙感知器(3種)
防火戸連動用感知器等を構成するひとつが「光電式スポット型煙感知器(3種)」です。光電式スポット型煙感知器(3種)は、一般的な煙感知器と外見も構造も同じですが「1種や2種よりも濃い煙で反応する」ことが特徴です。
つまり、他の煙感知器と比較して反応感度が鈍いと言えます。煙感知器はタバコの煙などが原因で反応することもあるため、非火災での誤作動を抑えることを目的に3種が指定されています。
誤作動の度に防火戸や防火シャッターが閉まっているようでは、日常に支障をきたすことや、かえって危険を招く恐れもあることから、光電式スポット型煙感知器(3種)に限定されているという訳です。
連動制御盤または火災受信機
防火戸連動用感知器等を構成する中心的な存在が「連動制御盤または火災受信機」です。連動制御盤または火災受信機とは、感知器が発した火災信号を受信すると同時に、防火戸等を閉める信号を発信する役割があります。
「連動制御盤」も「火災受信機」も役割は同じですが、連動制御盤は独立した制御盤であるのに対し、火災受信機は自動火災報知設備の火災受信機と統合された「複合型火災受信機」であることがほとんどです。
昨今では、複合型火災受信機が主流になりつつありますが、古い建物や後付け工事だった場合などは連動制御盤が設置されています。
防火戸や防火シャッター
防火戸連動用感知器等を構成するものには「防火戸や防火シャッター」があります。建物内に設置されている防火戸などは、連動制御盤または火災受信機とつながっており、これらから発せられる信号によって自動的に閉まります。
防火戸や防火シャッターの種類はメーカーによって様々ですが、基本的には「レリーズ」や「ラッチ」と呼ばれる留め具のような物で固定されています。
連動制御盤または火災受信機とレリーズがつながっており、火災発生時にはレリーズが作動してロックが外れ、防火戸や防火シャッターが閉まるようになっています。
また、レリーズが作動すると同時に、連動制御盤または火災受信機に「防火戸や防火シャッターが作動している」ことを示す表示が点灯します。
防火戸連動用感知器の設置基準
煙の感知と連動する防火戸や感知器に関する設置基準のポイントを解説します。
防火戸連動用感知器は対象の防火戸や防火扉などから「1メートル以上かつ10メートル以内」に設置しなければいけません。
ひとつの感知器によってすべての防火戸等を警戒するのではなく、10メートル以内にひとつ設置するということがポイントです。
基本的には、複数ある感知器のうちひとつが作動した場合、その感知器がある区画内すべての防火戸等を作動させて、防火区画を構成しなければいけません。(所轄の消防署の見解による)
なお、防火戸や防火シャッターなどの設置基準は「建築基準法」によって規定されます。設置基準は、原則として「建物の構造」と「広さ」の組み合わせによって変動します。
主要構造部が耐火構造になっている建物や準耐火構造では、100平方メートルから1,500平方メートルごとに防火戸等で防火区画を構成しなければいけません。
11階建て以上の高層建築物になると防火区画の基準がより厳しくなると考えてよいでしょう。防火戸の設置基準については建築基準法を満たす必要があることがポイントです。
よく問題になるのが改装等で防火区画の変更が生じた場合やスプリンクラー等の設備を追加した場合です。このような変更によって既存シャッターや防火扉の使用が必要なくなった場合、消防署の立ち会いのもと使用中止を確認し、その結果を特定行政庁へ報告する必要があります。また、その記録をしっかり残しておくことも重要です。
また、以前までは建築設備定期検査の中に防火戸・防火シャッターの点検も含まれていましたが、法改正により防火設備として別で有資格者が点検することとなりました。
これまで特定建築物の定期調査報告で行なってきた調査項目のうち対象防火設備の閉鎖または作動については、特定建築物の調査項目から外し、新たに創設された「防火設備定期検査報告」に加えられました。
防火設備と自動火災報知設備の違い
煙の感知に連動する防火戸や感知器などは「防火設備」に該当します。防火設備と自動火災報知設備の違いについても合わせて理解しておきましょう。
基本的には、防火設備は「火災を検知して火や煙を防ぐための設備」であるのに対し、自動火災報知設備は「火災発生を報知するための設備」と覚えておくようにしてください。
防火設備(防火戸連動用感知器、防火戸、防火シャッター等) | 自動火災報知設備 | |
関係法令 | 建築基準法 | 消防法 |
管轄官庁 | 各自治体の建築指導課など | 管轄の消防署 |
目的 | 煙や熱で火災感知し、防火区画または防煙区画を構成すること | 火災発生を感知し、周囲に報知すること |
感知器の種類 | 煙感知器(3種) | 煙感知器、熱感知器、炎感知器(1・2・3種) |
防火設備定期検査とは
煙の感知と連動する防火戸や防火シャッター、さらに煙感知器は「防火設備定期検査」の対象です。
防火設備定期検査とは、2017年から新たに始まった制度で、1年に1回の頻度で防火設備などに関する点検を実施し、報告書にまとめたうえで提出しなければいけない、法律で義務付けられている制度です。(条件に該当する防火対象物のみ)
さらに、点検および報告を実施できる者は「防火設備調査員有資格者」に限定され、この資格を取得するためには消防設備に関連する実務経験を必要とします。(実質的に外注せざるを得ない制度)
したがって、防火戸連動用感知器をはじめ防火戸などは、防火設備定期検査に備え、日頃から動作確認や障害物の有無などをチェックしておく必要があります。
主な検査項目
防火戸連動用感知器や防火戸などは防火設備定期検査の際に、以下のような項目がチェックされますので参考にしてください。
・防火扉:設置場所周辺の障害物有無や作動状況の確認
・防火シャッター:設置場所周辺の障害物有無や、駆動装置等の動作確認
・連動機構:設置位置、煙感知器の動作確認
一般的に、防火設備定期検査は「ソフト面(防災管理者の選定や書類等)」の点検とされていますが、防火戸連動用感知器等の点検については、外観点検よりも正常に作動するかどうかが重要なため、実際に作動させることになります。
参考:防火設備定期検査の点検基準一覧
まとめ
煙の感知で連動して作動する防火戸や防火シャッターは、防火戸連動用感知器が作動することで機能します。
防火戸連動用感知器には煙感知器(3種)を用いることをはじめ、10メートル以内の防火・防煙区画毎に設置することといった建築基準法による設置基準もあります。
防火戸連動用感知器や防火戸などは、法令上は建築基準法の範疇ではあるものの、実質的には消防法の一部とも言え、消防点検の対象です。
消防点検に備え日頃から点検や確認を怠らないように気を付けましょう。
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