消防用設備
2023.01.27
スプリンクラーの作動条件は?仕組みや原理を解説
「スプリンクラーが作動する条件はどんな時?」や「スプリンクラーが作動する仕組みは?」といった疑問を持ったことがある人は多いのではないでしょうか。
スプリンクラーは私たちにとって非常に身近な消防用設備のひとつですが、その作動条件や仕組みについて理解している人は少ないかもしれません。
また、建物管理者は消防点検や万が一の際にスプリンクラーの作動条件をはじめ、スプリンクラーを構成する装置についても把握しておく必要があります。
この記事では、スプリンクラーの作動条件や、スプリンクラーの仕組みなどについて初心者にもわかりやすく解説します。
【目次】
1. スプリンクラーとは
2. スプリンクラーが作動する条件
3. スプリンクラーの仕組みや原理
4. スプリンクラーの設置基準
5. まとめ
1. スプリンクラーとは
スプリンクラーとは、火災が発生したときに生じる熱の感知、火災報知器との連動または手動で散水して初期消火活動をおこなう消防用設備のひとつです。
一般的なスプリンクラーは、防火対象物の天井に設置されたスプリンクラー内部の感知体が熱を感知すると、スプリンクラーヘッド内部のヒューズが溶け(蓋が取れる)、その瞬間に配管内の圧力がかかった水が散水される仕組みです。
このようなスプリンクラーは常時スプリンクラーヘッドが「閉じている状態」であることから、閉鎖型スプリンクラーと呼ばれます。
また、閉鎖型スプリンクラーは「湿式」、「乾式」、そして「予作動式」の3つがあり、湿式は最も典型的なもの、乾式は寒冷地仕様、予作動式は火災報知器が作動するまで散水しないタイプといった特徴があります。
一方、常時スプリンクラーヘッドが「開いている状態」で、火災報知器が作動すると同時に、あるいは手動でスプリンクラーを作動させる開放型スプリンクラーもあります。
この他に、天井高が10メートル以上あるような展示場などに設置される、放水型のスプリンクラーなどもあります。
日頃、私たちが目にするスプリンクラーの多くは、閉鎖型スプリンクラーであると思ってよいでしょう。
人が多く集まり、火災が急速に広がる恐れがある倉庫といった場所では、開放型や放水型スプリンクラーが設置されています。
ひと言でスプリンクラーと言っても、建物の用途や面積などの条件によって使い分けられることを知っておいてください。
2. スプリンクラーが作動する条件
スプリンクラーが作動する条件の代表的なものが「作動温度」です。スプリンクラーが作動する温度は以下の3つに決められています。
・72度
・96度
・139度
スプリンクラーヘッド内部にある感熱体が、上記3つの作動温度に達した場合、水を堰き止めていた蓋が自動的に外れるようにして散水される仕組みです。
72度で作動するスプリンクラーヘッドは、最も広く普及しているものと言えるでしょう。11階以上にあるオフィスや販売店、病院などに設置されています。
96度で作動するスプリンクラーヘッドは、レストランの厨房や調理場といった比較的周辺温度が高くなりやすい場所に設置されます。
139度で作動するスプリンクラーヘッドは、常に高温状態にあるサウナなどに設置され、余程の高温状態にならない限り作動しないようになっています。
スプリンクラーの作動温度に幅がある理由は「誤作動を防ぐこと」が目的です。スプリンクラーはひとたび作動すると大量の水が散水されるため、建物内で「消火損害(火災の消火活動において発生する水損、破損、汚損等)」が起こりやすくなります。
事実、2022年9月、静岡県裾野市の市民文化センターでスプリンクラーが誤作動を起こし、オーケストラの楽器100点が水損被害に遭っています。
作動温度が分けられているのは、スプリンクラーが適切に作動することだけが目的ではなく、消火損害を防止、さらには混乱回避の意味も込められていることを覚えておきましょう。
参考:スプリンクラーで楽器被害 楽団側検討委が現地調査へ 裾野市 NHK
火災報知器との連動
スプリンクラーが作動する条件として「火災報知器との連動」も挙げられます。火災報知器が作動すると同時にスプリンクラーも作動する仕組みです。
火災報知器の一部である火災感知器(熱感知器または煙感知器)が火災を感知することで、スプリンクラーも作動するようになっています。
ただし、スプリンクラーは火に水を直接かけることで効果を発揮するものであるため、煙感知器と連動することでは効果を得にくいとされています。
仮に、煙感知器と連動させた場合、散水すべき箇所以外からの煙にも反応してしまう可能性があり、結果的に誤作動や消火損害を招く恐れがあります。
手動
スプリンクラーが作動する条件として「手動」によるものもあります。手動で作動させる場合はスプリンクラーの手動弁を開くことで散水される仕組みです。
火災の発生さらにはスプリンクラーを作動させるべき状況であると判断した場合などにおいて、速やかに作動させられることが利点です。
一方、スプリンクラーを作動させるか否かは人が判断する必要があり、なおかつスプリンクラーの手動弁の場所を把握しておくことや、確実に操作する訓練を積んでおく必要があると言えます。
3. スプリンクラーの仕組みや原理
スプリンクラーの作動条件が理解できたところで、スプリンクラーが作動する仕組みや原理についても合わせて覚えておきましょう。
スプリンクラーは主に以下のような設備で構成されています。(以下は一例)
・スプリンクラーポンプ(水源および加圧送水装置)
・起動装置(圧力タンク・手動起動装置)
・アラーム弁(流水検知装置)
・一斉開放弁(電動弁または手動弁)
・配管
・スプリンクラーヘッド
・末端試験弁
スプリンクラーが作動する仕組みは、水源から配管内に圧力がかかった状態の水を供給しておき、スプリンクラーヘッドの感熱体の蓋が取れることで散水されるようになっています。
また、スプリンクラーが作動することで配管内の圧力が低下し、この圧力低下によってスプリンクラーポンプが作動し、再び圧力がかかった水が供給され、散水が継続的におこなわれるよう工夫されています。
スプリンクラーを作動させるための重要なポイントは「圧力がかかった状態の水を供給すること」そして「散水を始めるタイミング」と言えるでしょう。
これを実現するために、スプリンクラーポンプおよび配管によって圧力がかかった状態の水を供給、そして熱を感知した際に自動でスプリンクラーヘッドの蓋が外れることで機能する仕組みになっています。
このような基本的な仕組みに加えて「アラーム弁」や「一斉開放弁」、そして「末端試験弁」などがあります。
「アラーム弁」は、スプリンクラーヘッドにつながる配管内の圧力差や流水を感知するためのもので、配管内の圧力が低下または水が流れた(スプリンクラーが作動したとみなす)ときに、火災報知器の火災受信機に警報信号を送る目的があります。
スプリンクラーが作動するということは火災発生であると理解し、1分以内に火災受信機へ信号を送る仕組みになっています。
とりわけ、大型ビルの一部屋でスプリンクラーが作動した場合、その周りに人がいないと火災に気がつかない可能性があり、消火活動の遅れを招く恐れがあります。
このような事態を避けるため、スプリンクラーが作動したと同時にアラーム弁が作動し、建物全体に異常を知らせるようになっています。
「一斉開放弁」は、スプリンクラー用配管の途中に設けられている弁のことで、スプリンクラーヘッドに送水するための制御弁のことです。
自動または手動により開放することでスプリンクラーから散水されるようになっています。
「末端試験弁」は、スプリンクラー設備の末端につける試験用弁のことです。スプリンクラーヘッドまでの配管内の圧力が正常であるかを確認するためのもので、末端で正常値が確認できれば、その手前部分にあるスプリンクラーヘッドも正常と判断できる理屈です。
スプリンクラーは作動することだけでなく、異常を知らせるアラーム弁、さらには点検時に使う末端試験弁など、様々な装置によって構成されていることを覚えておきましょう。
4. スプリンクラーの設置基準
スプリンクラーの作動条件や仕組みが理解できたところで、スプリンクラーの設置基準についても理解しておくことをおすすめします。
スプリンクラーの設置基準は消防法施工令第12条により、以下のように定められています。
・11階以上の建物
・病院、診療所、助産所
・地上1階から3階の建物の延床面積が3,000から6,000平方メートル(建物の種類によって変動)
・地上4階から10階の建物の延床面積が1,000から1,500平方メートル(建物の種類によって変動)
・地階または窓がない建物の延床面積が1,000平方メートル
スプリンクラーの設置基準は建物の用途や延床面積、そして階層によって変わるため、一概に基準を示すことは困難です。
そのため、基準を理解しやすくするために「建物の用途」、「延床面積」、そして「階層」の3つを把握することが重要になります。
加えて、市町村ごとに異なる条例も考慮しなければいけません。スプリンクラーの設置基準については、法令だけを理解すればよいとは限らないため、消防点検の専門家や管轄の消防署、そして行政と綿密に打ち合わせるようにしてください。
参考:消防法施工令第12条
5. まとめ
スプリンクラーの作動条件は、作動温度、火災報知器との連動、そして手動の3つが基本になっていることが分かったと思います。
また、スプリンクラーが作動する仕組みや、それを構成する装置の種類についても理解しておくようにしてください。
スプリンクラーの設置については、個人の知識や経験だけではうまくいかないケースもあるため、必ず消防点検の専門家に相談するようにしてください。
消火器、屋内消火栓、スプリンクラー、自動火災報知設備、避難器具、誘導灯など、消防法や火災予防条例に基づき設置されている消防用設備です。
また、屋内消火栓及びスプリンクラーを含む消防用設備は消防設備士または消防設備点検資格者による消防設備点検を実施しなければなりません。
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