消防点検コラム

消防点検

2024.02.09

アパートの消防設備点検について、費用や相場などを事例を交えて解説します

アパートの住人が快適かつ安全に暮らすためには、管理者による定期的な消防設備点検が欠かせません。しかしながら、消防設備点検は定期的に実施しなければならないため、意外と費用がかかるものです。

この記事では、アパートの消防設備点検にかかる費用や相場、費用を抑える方法などについて徹底解説します。

【目次】

1. アパートの消防設備点検の費用・相場
2. アパートの消防設備点検とは?
3. アパートに必要な消防設備、点検対象
4. 消防設備点検業者の選び方
5. 消防設備点検の法的義務と罰則
6. アパートの消防設備点検に関するよくある質問
7. まとめ

1. アパートの消防設備点検の費用・相場

アパートの消防設備点検の費用は、アパートの維持管理費用の一部として、入居者から徴収されることが一般的です。費用を抑えるためには、点検の頻度や範囲を適正に管理することが重要です。さらに、分譲マンションのように、長期的な視点で自主管理を行うことも、コスト削減の一つの方法です。

また、アパートの消防設備項目にかかる費用は、建物の規模や点検項目によって大きく変動します。以下では、アパートの消防設備点検の標準的な費用・相場を紹介します。

費用・相場

アパートの消防設備点検に必要な費用は、依頼する業者によって異なります。延べ床面積を基準に複数社の費用を調査して、アパートの消防設備点検にかかる費用相場を以下の表にまとめました。

延べ面積費用相場
〜300平方メートル1万〜2万円
300平方〜500平方メートル2万〜4万円
500平方〜1,000平方メートル3万〜6万円
1,000平方〜2,000平方メートル4万〜8万円
2,000平方〜3,000平方メートル5万円〜10万円
3,000平方〜5,000平方メートル8万〜18万円
5,000平方〜1万平方メートル15万〜30万円
1万平方〜2万5,000平方メートル20万〜50万
2万5,000平方メートル以上30万円以上
その他の必要経費
交通費50km~70km1万円
70km~100km2万円
消費税費用の10%
具体例
アパートの規模点検項目費用相場
2階建て(10戸)消火器2本6,000円
2階建て(10戸)消火器2本、漏電火災警報器1万円

※金額は2024年4月調査時点の参考価格となります。実際の金額は点検業者にお問い合わせ下さい。

※延べ床面と点検項目が同じでも、アパートの階数や戸数、点検項目が異なれば費用に差が生じます。

※定期的な点検を怠ると、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

建物の規模と点検費用

アパートの消防設備点検費用は、建物の規模、特に床面積によって大きく上下します。小規模なアパートでは費用が比較的低く抑えられますが、大規模な建物になると点検にかかる費用が高くなります。

点検項目と費用の関係

点検する消防設備の項目が多いほど、費用は増加します。自動火災報知設備や消火器、連結送水管など、消防法によって点検が義務化されている項目に基づいて費用を見積もりましょう。

費用を左右する要素

消防設備の種類や状態、建物の特性なども費用に影響します。例えば、築年数が長いアパートや特殊な構造のアパートでは、点検に必要な手間や技術が増えるため、費用が高くなることがあります。

2. アパートの消防設備点検とは?

そもそもアパートを管理する際、なぜ消防設備をこまめに点検する必要があるのでしょうか。ここでは、消防設備点検が重要である理由を解説した上で、法定点検と任意点検の2つの違いを紹介します。

消防設備点検の重要性

アパートなどの共同住宅では、火災事故を予防するためにも消防設備の定期的な点検が欠かせません。万が一火災が発生した場合も、消火器や自動火災報知設備、連結送水管などの消防用設備が正しく機能すれば、アパートの住民はより安全に逃げることができます。

消防設備の点検は、消防法によって次のように義務付けられています。

第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(第八条の二の二第一項の防火対象物にあつては、消防用設備等又は特殊消防用設備等の機能)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。

消防法第十七条の三の三

アパートの消防設備点検を怠ると火災事故の発生リスクが高まるだけでなく、管理者に罰金や拘留が科せられる可能性もあります。火災を予防するため、また法的ペナルティを回避するためにも、適切かつ定期的な点検とメンテナンスが必要です。

法定点検と任意点検の違い

消防設備点検には、法定点検と任意点検の二種類があります。

法定点検は、消防法や建築基準法で定められた基準に基づいて、消防設備点検資格者や消防設備士などの有資格者が行う点検です。自分が所有および管理しているアパートが特定防火対象物に該当する場合は、必ず有資格者の手で法定点検を実施しなければなりません。特定防火対象物の条件は次のとおりです。

延べ床面積が1,000平方メートル以上

地下または3階以上の階に特定用途があり、屋内階段(避難経路)が建物内に1か所しかない(特定用途とは、飲食店やホテルなど不特定多数の人が出入りする建物を指します)

逆に、延べ床面積が1,000平方メートル未満で、屋内階段があり、地下または3階以上の階に不特定多数が出入りする特定用途が入っていないアパートの場合、資格を持っていない管理人も自分で点検できるといえます。

一方の任意点検は、建物の安全性を高めるために大家や管理組合が自主的に行う点検です。具体的には、自動ドアや宅配ボックス、機械式駐車場などの点検が任意点検に該当します。

法定点検とは異なり、任意点検は法律で義務付けられているわけではありません。しかしながら、アパートの住人が快適に暮らすためには、これらの任意点検が必要不可欠です。

3. アパートに必要な消防設備、点検対象

アパートの火災事故を予防するためには、適切な消防設備の設置と定期的な点検が必要です。点検が求められる消防設備には、次のようなものが挙げられます。

自動火災報知設備・非常警報装置・消火器・避難器具・連結送水管

ここでは点検対象となる消防設備を詳しく紹介します。

自動火災報知設備

自動火災報知設備は、火災発生時に自動で警報を発し、住人の避難を促す重要な設備です。専有部分の天井に設置して単体で通知されるタイプと、建物全体の設備と連動して通知されるタイプの2種類があります。

非常警報装置

非常警報装置は、周囲の人間に火災の発生を知らせるための設備です。自動火災報知設備とは異なり、手動で操作します。具体的には、非常ベルや自動サイレン、手動サイレンなどが非常警報装置に該当します。

消火器

消火器は、発生して間もない火災を鎮火する際に用いられる消防用設備です。アパートの延べ面積や建物の構造に応じて設置数が定められており、消防設備士による半年ごとの点検が必要です。

避難器具

避難時の安全を確保するためには、避難はしごや非常ベル、救助袋、誘導灯、誘導標識、滑り台などの設置が重要です。これらの避難器具が適切に機能すれば、火災が発生した際も住人が安全に建物から逃げることができます。

連結送水管

連結送水管は、消防隊が迅速に消火活動を行うために不可欠な設備です。消防車から建物内の消火栓まで水を供給するために使用される連結送水管は、定期的な負荷試験や点検が欠かせません。

消防法では設置後10年が経過した連結送水管を対象に、屋内消火栓、屋外消火栓、連結送水管設備等のホース、配管などの耐圧性能点検の実施を義務付けています。初回の点検が済んだ後も、3年が経過するごとに耐圧性能試験が必要です。

4. 消防設備点検業者の選び方

アパートの消防設備点検を行う業者の選定は、安全性を確保する上で極めて重要です。ここでは業者選びに失敗しないためのポイントを3つ紹介します。

資格と経験

消防設備点検を依頼する業者を選ぶ際は、有資格者が在籍しているか、また経験や実績が豊富な業者であるかをはじめにチェックしましょう。特に、消防設備士やその他関連資格を保有するスタッフがいることや、自分が管理するアパートの建築規模や築年数と近い物件の点検実績があるかどうかが重要です。

費用の透明性

点検業者を選ぶ際は、費用の内訳がわかりやすいかどうかにも注目すべきです。事前に明確な見積もりを提供してくれるか、追加料金が発生する場合の条件は何か、といった点を確認しましょう。

緊急時の対応能力

自動火災報知設備や連結送水管などの消防設備に急なトラブルが発生した際、迅速かつ的確に対応できる業者かどうかも重要です。緊急時の連絡体制や対応スピードについては、点検を依頼する前によく確認しましょう。

5. 消防設備点検の法的義務と罰則

アパートやマンションの消防設備点検は、所有者や管理会社に法的な義務と責任が伴います。ここでは、消防設備点検の義務を怠った場合の罰則について具体的に解説します。

消防法に基づく義務

防火対象物のオーナーや管理会社は消防用設備の点検結果について、所在地を管轄する消防長又は消防署長に報告する義務があります。この報告義務は、上掲の消防法第十七条の三の三で定められています。

点検を怠った場合の罰則

定期的な点検や報告を怠ると、消防法の規定に基づいて行政機関による立ち入り検査と指導が実施されます。さらに、立ち入り検査の実施後も定期的な報告をしなかった場合、大家や管理組合に対して罰則が科される可能性があるため注意が必要です。

具体的に、消防法では次のように定められています。

次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。

(中略)

十一 第八条の二の二第一項(第三十六条第一項において準用する場合を含む。)又は第十七条の三の三の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

消防法第四十四条

点検結果の報告を怠る、もしくは嘘の点検結果を報告すると、罰金もしくは拘留のおそれがあります。加えて、点検不足が原因で火災事故が発生した場合、損害賠償問題にも発展しかねません。

アパートを管理している方は、ルールを守って定期的に消防設備を点検しましょう。

6. アパートの消防設備点検に関するよくある質問

消防設備点検に関して、アパート経営者や管理会社の担当者からよく寄せられる質問を3つ紹介します。

点検頻度やスケジュールは決められているのか

消防法では、消防設備点検を機器点検と総合点検の2種類に分けた上で、それぞれの点検頻度を定めています。機器点検と総合点検の違い、および点検頻度は次のとおりです

点検の種類点検内容点検頻度
機器点検建物の外観を目視で確認する、消防設備の配置確認および簡易操作をする半年に一回
総合点検消防設備の全部もしくは一部を実際に作動させて、正しく機能するかどうか確認する1年に一回

 

費用の支払い責任者

消防設備点検の費用はアパートの大家が支払うケースが一般的です。賃貸契約や管理契約によっては、管理会社が費用を負担する場合もあります。点検費用を支払う責任者が誰なのか、事前に明確にしておきましょう。

点検報告書の提出

点検後は、消防設備が正常に作動するかどうかを確認し、その結果を報告書にまとめます。この報告書は、管轄の消防長または消防署長へ提出することが義務付けられています。報告書の提出を怠ると、罰則の対象となる場合があります。

なお、点検結果の報告頻度については、管理する建物が特定防火対象物かどうかによって異なります。特定防火対象物は次の2つの条件に該当する建物を指します。

延べ床面積が1,000平方メートル以上

地下または3階以上の階に特定用途があり、屋内階段(避難経路)が建物内に1か所しかない(特定用途とは、飲食店やホテルなど不特定多数の人が出入りする建物を指します)

特定防火対象物の場合、1年に一回の頻度で管轄の消防長または消防署長へ点検結果を報告しなければなりません。特定防火対象物でない建物については、3年に一回の頻度で報告が義務付けられています。

7. まとめ

消防設備点検の重要性の再確認

アパートの消防・防災設備点検は、住人の安全を確保するために不可欠です。消防法に基づいて定期的に行われるこの点検は、火災報知機やガス漏れ警報設備、非常ベル、消火器などの機能や設置場所を確認し正常に保つことで、万が一の火災時に迅速かつ効果的な対応を可能にします。この点検は、火災の事故のリスクを軽減するだけでなく、住民の安心感を得ることにもなります。

適切な業者選びのポイント

消防設備点検業者を選ぶ際は、資格と経験を考慮することが重要です。消防設備士あるいは消防設備点検資格者が行う点検は、設備の適切な管理と安全性を確実にします。また、費用の透明性と火災時の対応能力も重要な尺度です。業者選びは、アパートの安全管理において重要な役割を果たすのです。

法的義務と安全の確保

消防・防災設備点検は、消防法により法的に義務付けられています。この義務を怠ると、罰則を受ける可能性があります。管理組合は、定期的な点検を実施した後は、点検報告書を適切に作成・保有し、必要に応じて所轄消防署へ報告することが求められます。これにより、アパートの危機管理が可能となり、住人の安心と信頼を得ることができます。

アパートの消防設備点検は、単なる法令の義務を超え、防災により住人の命と安全を守るための重要な措置です。適切な業者選定と定期的な点検実施により、安全な居住環境を確保しましょう。アパートの消防設備点検は人命を守るために不可欠なプロセスであり、入居者と管理者双方の協力が必要です。適切な点検と管理により、安全で快適なアパート生活を実現できます。

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