防火ドア
2023.04.26
防火ドアの種類や基準について徹底解説
「防火ドアには設置義務があるの?」や「防火ドアにはどんな種類があるの?」と思ったことはありませんか?
防火ドアは多くの建物内に設置されている身近な防火設備のひとつで、万が一の時に煙や炎を遮る大切な役割があります。
一方で、防火ドアに関する設置基準や、防火ドアの種類などについてはあまり知られていないのが実情のようです。
そこでこの記事では「防火ドア」について、知っておきたいことを中心にして初心者にもわかりやすく解説します。
防火ドアとは
防火ドアとは、防火性能がある扉のことです。防火ドアはあくまでも通称であり、防火設備について定める建築基準法においては「防火戸(ぼうかど)」で統一されています。
防火ドア(防火戸)は「防火設備」と「特定防火設備」の2つに大きく区分されます。2000年の建築基準法改正により「乙種防火戸」と呼ばれていたものが「防火設備」に、「甲種防火戸」と呼ばれていたものが「特定防火設備」と呼び名が変更されました。(詳細は後述)
ちなみに、消防点検等を実施する業者や担当者によっては、法改正後も新呼称を使わずに「旧乙種防火戸」や「旧甲種防火戸」と表現することもあるため、混乱しないように注意してください。
防火設備と特定防火設備の違いは、火災に対する耐久時間です。それぞれ建築基準法で基準や仕様が細かく決まっていますが、防火設備は20分の耐久性、そして特定防火設備は1時間の耐久性を有する必要があります。
防火ドアの役割は、建物内で発生した火災による煙や炎を一定の区画で防ぐことです。また、火災が発生した建物から隣接する建物に延焼することを防ぐ目的もあり、火災を一定区画で食い止めるという非常に重要な役割を持っています。
火災などの際に防火ドアが正常に機能するように、6ヶ月毎あるいは1年毎の消防設備点検、さらに防火対象物定期点検などで、防火ドアが機能するか否かを確認することも義務付けられています。
このように、防火ドアについて規定しているのは建築基準法ですが、消防設備点検等の対象でもあることから、実質的な消防用設備のひとつとして点検や整備が求められます。
防火ドアと防火扉、防火戸の違い
防火ドアと似た呼称として「防火扉」や「防火戸」などがありますが、これらに違いはありません。
先述したように、建築基準法で用いられている表現は「防火戸」です。この表現が一般的な言葉として「防火ドア」や「防火扉」などと変化し、現在では防火ドアといった表現が定着しています。
それぞれの意味に違いはありませんが、建築基準法をはじめとして、正確には「防火戸」と表現することを覚えておいてください。
防火ドアの種類
防火ドア(防火戸)は、「防火設備(旧乙種防火戸)」と「特定防火設備(旧甲種防火戸)」の2種類に区分されます。
防火設備および特定防火設備の特徴の違いを解説します。
防火設備
防火設備(旧乙種防火戸)とは、建築基準法で「閉鎖時に通常の火災時における火炎を有効に遮るもの」と規定されており、遮炎時間が20分間持続するものです。
一般的に、周辺からの延焼を防ぐことを目的にしたものが多く、主に外壁で使用されることが特徴と言えます。
具体的には、網入りガラスや袖壁といったものが防火設備に該当します。鉄製や鉄筋コンクリート製、防火塗料を塗布した木材などが使われます。
これらはドアや扉ではないため、直感的に納得しにくいかもしれませんが、建築基準法では「防火戸」の括りです。
特定防火設備
特定防火設備(旧甲種防火戸)とは、建築基準法で「通常の火災の火炎(かえん)を受けても1時間以上火炎が貫通しない構造を有するもの」と定義されており、防火ドアと言えばこの特定防火設備を指すと考えてよいでしょう。
特定防火設備には、防火ドア以外にも防火シャッターなども含まれます。
防火ドアの構造
防火ドア(特定防火設備)は以下の2種類の構造に分けられています。
・常時閉鎖型防火戸
・随時閉鎖型防火戸
常時閉鎖型防火戸
常時閉鎖型防火戸とは、人が意図的に開放している時だけ開放されますが、それ以外では常に閉鎖されている構造の防火ドアです。
原則として常に閉鎖状態であることから、炎や煙の遮断性能が高い一方、開放する頻度によっては、ドアのヒンジが歪んだり、床あたり(ドアと床が擦れる)を起こしたりする側面があります。
また、常時閉鎖型防火戸は最大まで開放したとしても自動的に閉まる仕組みで、開放状態でロックされないことも特徴です。
随時閉鎖型防火戸
随時閉鎖型防火戸とは、火災を感知することで自動的に閉鎖される構造の防火ドアです。基本的には開放状態にあり、煙や炎を感知すると電気信号によって閉鎖されます。
日常的に開閉が発生しない分、ドアとしての耐久性が高い一方、感知器との連動が必要で、設備としては大掛かりなものになります。
閉鎖される起点となるのは「熱感知器」または「煙感知器」で、防火戸の上部に感知器を設置して警戒する仕組みです。
防火ドアの基準
防火ドアの性能は「遮炎時間」が基準になっています。遮炎時間は、保有遮炎時間とも呼ばれ、炎を遮る「遮炎」が継続する時間のことを指しています。
2つある防火戸の種類のうち「防火設備(旧乙種防火戸)」の場合は20分間、「特定防火設備(旧甲種防火戸)」の場合は1時間の遮炎時間が求められます。
遮炎時間の合否判定については、建築基準法で定められている性能検証試験において合格したものだけが、防火戸として使用できます。
また、合わせて知っておきたいこととして「くぐり戸」の基準があります。例えば、扉のサイズが3平方メートル以上の大きな防火戸(防火シャッター等)は、火災発生時に閉鎖されると、内部からの避難に支障が生じる可能性があります。
そのため、防火戸と同時にくぐり戸として「常時閉鎖式防火戸」を設けなければいけません。くぐり戸は、直接手で開けられて、なおかつ自動的に閉鎖される構造の必要があります。
防火戸の設置基準
防火戸の設置基準で知っておきたいポイントは以下の通りです。
・外壁部
・避難階段および特別避難階段
・地下街
・防火区画
外壁部
外壁部は、外壁開口部から炎が噴出することで近隣に延焼しないよう防ぐことが目的で防火戸が設置される部分です。
防火区画が外壁に突き当たる部分では、防火戸や耐火壁を設置しなければいけません。
避難階段および特別避難階段
避難階段および特別避難階段では、火災発生時の避難経路となる部分に遮煙性能がある防火戸を設置して、煙や炎が入り込まないようにします。
避難経路の出入口は、防火戸が設置してある最も典型的な例と言えるでしょう。
地下街
地下街も耐火性能および遮煙性能がある防火戸を設置して区画する対象です。地下街に防火戸を設置する場合、各市町村で異なる火災予防条例も考慮しなければいけません。
防火区画
防火戸はそれぞれ異なる条件の防火区画に合わせて設置する必要があります。防火区画には、面積区画、高層区画、竪穴区画、そして異種用途区画があり、それぞれで基準が設けられています。
例えば、面積区画の場合、耐火構造または準耐火構造で延べ面積が1,500平方メートル以上の建物の場合、原則では床面積1,500平方メートル以内ごとに防火戸を用いて区画しなければいけません。(他の消防用設備と併用すれば基準が緩和される)
他の例では、11階建ての高層階では、より狭い床面積で防火戸を使って区画する必要があります。この理由は、高層階は消火活動や救助活動が難しいためです。
防火戸を使って区画する際の基準は建物用途や面積、そして階数などによって大きく変わりますので、専門家や行政に相談が必須でしょう。
防火ドアに関する消防点検
防火ドアは建築基準法で規定されていますが、実質的には消防法の範疇と言えます。なかでも、重要なことが定期的に発生する消防点検です。
消防点検は6ヶ月に1回の機器点検、1年に1回の総合点検があります。これとは別に、建物の用途や規模によっては、防火対象物定期点検もあり、防火戸を点検しなければいけません。
具体的には、防火戸の周辺に避難を阻害する物が置かれていないかの確認や、開閉動作、外観点検(損傷や錆の有無など)があり、これらの点検や報告を怠ると罰則の対象になります。
従って、防火戸は設置基準を守るだけでなく、継続的に点検そして整備も義務付けられていると考えてください。
消防点検で指摘されやすい防火ドアのトラブル
防火戸は消防点検の対象です。消防点検の際によくある防火戸のトラブルは以下の通りです。
・付属金属の老朽化
・錆による腐食
・ヒンジの調整および交換
・防火ドアの歪みやねじれ
・床あたり
最も典型的なトラブル事例のひとつが「付属金属の老朽化」です。防火ドアはロックがなく、自動的に閉まる構造故に、油圧機構部品やスプリング機構などが使われています。
これらは消耗品であり、日常的に使用していなくても痛みます。意外な事例では、海の近くの建物では塩風害により、損傷や錆が生じて機能不全を起こすこともあります。
他にも、よくある事例として「床あたり」も挙げられます。ドアの底部分と床が擦れてしまう現象で、ひどい場合は開閉途中の状態で止まってしまうこともあります。
扉部分やフレームで捻じれや歪みが生じることが原因であることが多く、大掛かりな修理が必要になるかもしれません。
このような防火ドアを巡るトラブルを抱えていると消防点検で指摘や指導命令を受けることもあるので、日常的な点検を心がけてください。
まとめ
防火ドアは、建築基準法で言うところの「防火戸」のことです。防火戸には防火設備と特定防火設備があり、一般的には特定防火設備が防火ドアとして認識されています。
建築基準法で規定されているものではありますが、消防点検における重要な点検対象ですので、不具合や機能チェックは消防点検のプロに相談しましょう。
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