消防点検コラム

エアコン点検義務や点検項目について徹底解説

「エアコン点検って義務なの?」や「業務用エアコンの点検って何をするの?」と疑問を持ったことがある人は多いと思います。

とりわけ、消防点検などの責任が生じるビルの管理者さんにとっては、エアコン点検は定期的に訪れる重要な仕事とも言えます。

一方で、エアコン点検が義務であることや、どのような責任を負っているのか、さらには罰則規定について知らない人もいるのが実情のようです。

そこでこの記事では「エアコン点検」について、義務や責任の詳細、さらに具体的な点検項目などについて初心者にもわかりやすく解説します。

エアコン点検とは

エアコン点検とは、フロン排出抑制法に基づく業務用エアコン等の定期点検のことです。業務用エアコンをはじめとする対象機器の管理者に対し、3ヶ月に1回の簡易点検、そして規模に合わせて1年から3年ごとに1回の定期点検が義務付けられています。

エアコン点検について理解するうえで大切なポイントになるのが「管理者の定義」と「該当する機器」の2つです。

「管理者の定義」と「該当する機器」について、以下でそれぞれ解説します。

管理者の定義

ひとつ目の「管理者の定義」は、エアコン点検に関する法的な責任を負う者のことで、エアコンの所有または管理の形態によって、管理者の定義が異なるため注意しなければいけないポイントです。

エアコン点検に関する管理者の定義は以下の通りです。

・自己所有および管理:設備所有者

・自己所有しておらずリースやレンタルの場合:使用者(所有者ではない)

・自己所有しておらず他者(ビル)所有および管理:ビルオーナー(使用者ではない)

管理者の定義を見て分かるように「リースやレンタル」の場合だと、エアコン点検の責任は「エアコンの使用者」です。

一方、建物に備え付けられている場合は、使用者ではなく、ビルのオーナーがエアコン点検の責任を負うことになります。

エアコン点検を巡っては、一般的に「リースは使用者責任」「レンタルは所有者責任」とされることが多いものの、賃貸契約の際に確認すべき項目です。

該当する機器

エアコン点検では2つ目の「該当する機器」もポイントです。フロン排出抑制法は業務用エアコンを点検対象にしていますが、その内訳は多岐にわたるため、よく確認しなければいけません。

エアコン点検の対象となる機器は以下の通りです。

・パッケージエアコン(店舗用、ビル用、設備用、ウォールスルー、分散型水熱源)

・マルチエアコン

・ビル空調用ターボ冷凍機

・空調用チラー

・スクリュー冷凍機

・ガスヒートポンプエアコン

フロン排出抑制法では「業務用の空調機、冷蔵機器、冷凍機器」といった「第一種特定製品」を対象にしており、エアコン点検はその一部である「業務用の空調機」に該当します。

ちなみに、家庭用エアコンはエアコン点検の対象ではありません。あくまでも「業務用空調機」が対象です。

エアコン点検が義務化された背景

エアコン点検が義務化された背景について解説します。エアコン点検は、フロン回収・破壊法の改訂により、2015年4月1日に施行された「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(通称:フロン排出抑制法)」が背景にあります。

さらに、2020年4月1日からは、塩素が含まれている「特定フロン」の生産が禁止され、業務用エアコン等の廃棄時にフロンガスを確実に回収できるよう、再び改訂されています。

つまり、オゾン層破壊や温室効果ガスといった環境への配慮として、エアコン点検制度が導入されたという訳です。

エアコン点検に関する6つの義務

エアコン点検では、以下6つの義務が課せられます。

・設置および使用環境維持の義務

・点検義務

・漏洩時の義務

・漏洩時の報告義務

・記録と保存の義務

廃棄時の義務

上記6つの義務についてそれぞれ解説します。

設置および使用環境維持の義務

エアコン点検では「設置および使用環境維持の義務」があります。業務用エアコンを設置または使用する際の環境を、適切な状態にする義務のことです。

具体的には、以下のような内容を参考にしてください。

・業務用エアコン本体に損傷を与えるような環境に設置しない

・機器周辺は点検および整備しやすいよう空間を確保する

・エアコンや室外機周辺は定期的に清掃する

点検義務

「点検義務」は業務用エアコンの仕様に応じて定期的にエアコンを点検する義務のことです。点検は「簡易点検」と「定期点検」の2つがあります。

「簡易点検」は誰でも出来ますが、「定期点検」は有資格者でなければいけないことから、手間もコストもかかります。

一般的に、エアコン点検と言えば「定期点検」のことを指すと考えてよいでしょう。

漏洩時の義務

エアコン点検では「漏洩時の義務」もあります。エアコン点検実施者からフロンの漏洩を指摘された場合、管理者の責任の元で修理しなければいけません。

また、漏洩の可能性があるにもかかわらず、フロンを充填したり、機器を交換または破棄しなかったりすると罰則対象になります。

エアコン点検において、管理者はフロンの漏洩に対する責任もあることを忘れてはいけません。

漏洩時の報告義務

「漏洩時の報告義務」もエアコン点検に関する義務です。漏洩したフロンの量を地球温暖化係数(GWP:GlobalWarmingPotential)で換算したうえで、1,000トン以上なら報告義務が生じます。

参考:<フロン類算定漏えい量>フロン類算定漏えい量の算定方法・算定手順

記録と保存の義務

エアコン点検では「記録と保存の義務」もあります。具体的には、業務用エアコン1台ずつに対し、点検や修理、フロンガス充填および回収といったすべての記録を付けたうえで保存する必要があります。

記録は「3年間保存」と「機器廃棄時まで保存」の2パターンあり、以下のように区分されています。

・3年間保存:委託確認書、再委託承諾書、委託確認書兼引取証明書

・機器廃棄時まで保存:漏洩点検記録簿(充填証明書と回収証明書は推奨)

エアコン点検では、点検だけでなく「記録を控えること」も重要ですので、注意しましょう。

廃棄時の義務

「廃棄時の義務」もエアコン点検の重要な義務です。管理者の責任の元で、エアコンを廃棄する際は「第一種フロン類充填回収業者」によるフロン回収を実施し、そのうえでエアコンを廃棄しなければいけません。

廃棄時には、先述した「機器廃棄時まで保存」対象の「回収証明書」も保管するようにしましょう。

エアコン点検の点検項目

エアコン点検は「簡易点検」と「定期点検」の2つがあります。それぞれで対応が異なりますので、具体的な内容を把握しておいてください。

簡易点検

エアコン点検では3ヶ月に1回の頻度で「簡易点検」を実施しなければいけません。簡易点検の点検項目は主に以下のような内容です。

・外観点検(損傷や傾き等)

・異音や振動の有無

・オイルなどの液体漏れの有無

・配管および熱交換器周辺に霜が付着していないか

・室外機周辺の環境確認(ゴミや埃の蓄積など)

参考:業務用冷凍空調機器ユーザーによる簡易点検の手引き

定期点検

エアコン点検では、空調機の定格出力に応じて1年から3年ごとに「定期点検」を実施しなければいけません。

・空調機器の定格出力が7.5kW以上:3年に1回

・空調機器の定格出力が50kW以上:1年に1回以上

また、定期点検は「十分な知見を有する者」が実施せねばならず、具体的には以下の有資格者が対象です。

・冷凍空調技士(日本冷凍空調学会)

・高圧ガス製造保安責任者:冷凍機械(高圧ガス保安協会)

・上記保安責任者(冷凍機械以外)であって、第一種特定製品の製造又は管理に関する業務に5年以上従事した者

・冷凍空気調和機器施工技能士(中央職業能力開発協会)

・高圧ガス保安協会冷凍空調施設工事事業所の保安管理者

・自動車電気装置整備士(対象は、自動車に搭載された第一種特定製品に限る。)(ただし、平成20年3月以降の国土交通省検定登録試験により当該資格を取得した者、又は平成20年3月以前に当該資格を取得し、各県電装品整備商工組合が主催するフロン回収に関する講習会を受講した者に限る。)

つまり、エアコンの定期点検は「1年または3年に1回の頻度で専門業者が実施する」ことになります。

引用:十分な知見を有する者について

エアコン点検をしないとどうなる?

エアコン点検をしないと罰則の対象になるため注意しましょう。エアコン点検に関する罰則規定は主に以下のようなものが挙げられます。

・フロン類を放出したり漏洩を放置したりした場合:1年以下の懲役または50万円以下の罰金

・点検義務や漏洩時の対応および記録保管に違反した場合:50万円以下の罰金

・各自治体の立入検査を拒否または妨げた場合:20万円以下の罰金

・フロン算定漏洩量の未報告または虚偽報告の場合:10万円以下の罰金

・フロン類回収時の行程管理表の交付を怠った場合:50万円以下の罰金

このように、エアコン点検については、点検未実施だけでなく、記録不備や立入検査を拒むことなどにも罰則規定が設けられていることが特徴で、厳しい内容と言えます。

とくに「フロンガスを回収しない場合」の罰則が厳しく、指導や勧告、命令を経ることなく、管理者が罰せられる「直接罰」であることに注意しましょう。

まとめ

エアコン点検は、その管理者に対して1年または3年に1回の頻度で義務付けられています。ビルのオーナーが管理者になることが多く、消防点検と同様に知らなかったでは済まされません。

エアコン点検や消防点検といった基本的な義務を怠らないように、あらかじめ専門家にアドバイスをもらうことをおすすめします。

 

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